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2013年6月17日 (月)

夢のシネマパラダイス293番シアター:殺人の追憶

ドラゴン・タトゥーの女

Img_1203636_36724469_2 出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーヴン・バーコフ、ステラン・スカルスガルド、ヨリック・ヴァン・ヴァーへニンゲン

監督:デヴィッド・フィンチャー

(2011年・アメリカ・158分)WOWOW

 

内容:大物実業家との名誉毀損裁判に負けたジャーナリストのミカエルは多額の賠償金を課せられ窮地に陥っていた。そんな彼に、国内有数企業ヴァンゲル財閥の元会長ヘンリックから依頼が舞い込む。それは、40年前に起きた一族の娘ハリエット失踪事件の再調査というものだった。そして調べを進める中、ミカエルは助手として天才的な情報収集能力を持つ女・リスベットを紹介される・・・。

評価★★★☆/70点

正直、こういう淫らでエグイ映画はお断りタイプなのだけど、ハイテンポなカット割りとモノトーン気味のシャープで引き締まった映像が、まるで格調高い高級車が滑らかに進んでいくような流麗さで畳み掛けてきて160分一気に見入ってしまった。

最初は人物関係がなかなかつかめず、誰と誰が親子?こいつとこいつは姉妹?とか混乱して結局2回見たけど、見終わってみればミステリーとしてはなんかイマイチな印象。

ただ、聖書になぞらえた猟奇殺人という点で「セブン」を彷彿とさせるけど、今回はあまり謎解きには力が入っていないというか、そこには重点が置かれていなくて、逆にそういうジャンルの垣根を越えたところにこの映画はあるように感じた。

例えば、誰がハリエットを殺したのかという真相が分かった上で2回目を見ると、もはや謎解きはどうでもよく、リスベットという女性はどういう人間なのかという超難問を解く方にとりつかれていた。

黒づくめの服と全身ピアスにタトゥーという、ノスタルジーさえ入り込む隙のないいかつい装いで外界を排除し、背負ってきた人生を覆い隠すリスベット。

しかしその決して癒されない悲しみを理解しようと格闘するには、彼女がまとう鎧はあまりにも分厚すぎた・・・。

しかも圧倒的なめまぐるしい情報量を満載しておきながら、リスベットに関しては最低限の情報しか与えてくれない不親切さには参っちゃったけど、その鎧の内側に潜む優しさや健気さが少しでも垣間見えたのはせめてもの救いだったのかも。

例えば、後見人に無理やり性的サービスをさせられる彼女が、傷ついたミカエルの前で平気でパンツを下ろしてSEXしてしまう愛情表現の乏しさには、なんて可哀想な女のコなんだろうといたたまれなくなったけど、次第に心を開いていき、「友だちができたの」と吐露する彼女の笑顔には思わず胸がしめつけられた。

そしてそれがあっての切ないラスト、そこで鳴り渡るバイクのうなり声が哀しく心に響いてきたけど、幾分ばかりか人間として成長したリスベットの巣立ちの羽ばたきであることを願うばかりだ。

結局終わってみれば、ミカエルが冷蔵庫の上から落ちたペットボトルをスイッとキャッチするシーンにまで行き渡る淀みのなさと、惨劇の序曲に耳心地の良いエンヤを持ってくる性悪な感性にしてやられますたw

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ゾディアック

20071111_256484 出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワーズ、ブライアン・コックス

監督:デヴィッド・フィンチャー

(2006年・アメリカ・157分)CS

 

評価★★★★/75点

内容:1969年7月4日、カリフォルニアで若いカップルが銃撃され、男性は一命をとりとめたものの、9発もの弾丸を浴びた女性は絶命、警察に通報してきた男が自分が犯人だと言い残した。それから約1ヵ月後の8月1日、新聞社に一通の手紙が届いた。それは、のちに自らを“ゾディアック”と名乗る者からの犯行声明で、差出人に通じる暗号文も添えられていた。そして、その暗号文を新聞の一面に載せなければ大量殺人を決行すると脅迫してきたのだった。以来、新聞記者エイブリーと風刺漫画家グレイスミスはこの事件に没頭していくことになる・・・。

“「ダーティハリー」のハリー・キャラハン刑事の行動が初めて理解できた気がする。。”

1968年のクリスマスに幕を開けた“ゾディアック”による連続殺人事件と、その最も危険なゲームに翻弄されつづけた4人の男の人生。

10日後、、1ヵ月後、、3ヵ月後、、半年後、、1年後、、1年半後、、2年後、、4年後、、7年後、、、と矢継ぎ早かつ淡々と時間と場所を飛ばしていき、結局1991年にロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)が本を出版するまでの23年間にわたる長いスパンを描いていくのだが、2時間40分の長尺の中でデヴィッド・フィンチャーにしてはかなり単調な構成になっていて、観る側にかなりの労苦と忍耐を強いるものになっている。

しかし、それが逆に泥沼にはまって抜け出せなくなった事件捜査関係者の徒労と疲弊、そして人間の知への果てなる探求心やマニアックなまでの欲求をも体感させるものになっていて、最後までジッと見入ってしまった。

そして、ドッと疲れた・・・。

掴めそうで掴めないジレンマ、解かれることを望まない謎、限りなく黒に近い灰色、トークショーに生出演したシリアル・キラー、、、追えば追うだけハマる迷宮。。そして、2時間40分咀嚼し続けなければならない徒労感。

しかし、結局映画を通して最も見せつけられたのは、1番この事件にのめり込んだのは間違いなくオレなんだ!と自信をもって豪語しているデヴィッド・フィンチャーの自己顕示欲だったというオチ・・・。

「セブン」や「ゲーム」などとはまた違った形で今回またそれを見せ付けられたかんじがして、胸くそ悪くなってきた(れっきとしたホメ言葉ですので・・・w)。

しかし、「ダーティハリー」でイーストウッドが44マグナムを問答無用で犯人(ゾディアックがモデルになっている)のどてっ腹にブッ放し、警察バッジを投げ捨てたのも分かるわなぁ、今回のを見ちゃうと。。

あな恐ろしや・・・。オイラはこんなんハマりたくありません。。。

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殺人の追憶

Mom出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、キム・レハ

監督・脚本:ポン・ジュノ

(2003年・韓国・131分)2004/04/06・とうきゅうスクエア

内容:1986年、ソウル近郊。若い女性の変死体が発見された。その後も同じ手口の殺人事件が連続して発生。特別捜査本部が設置され、個性も操作方法も全く違う2人の刑事が事件の解明にあたる。韓国を震撼させた実際に起こった未解決連続殺人事件をもとにしたサスペンス。

評価★★★★☆/85点

証拠捏造、自白強要、拷問聴取。現場証拠を耕運機に踏みつぶされる失態。現場から陰毛が発見されていないので犯人はアソコを剃ってるはずの近くのお寺の坊さんだと決めつける行き当たりばったり感。あげくの果てに行きつく霊媒師頼み。。

残虐非道な実録殺人事件の類を見ない笑えなさと、思わず笑ってしまう警察の無能ぶりの恐るべき共存に、映画として類を見ない面白さを見出す。

例えば同時代に日本で起きた宮崎勤事件で同じように描けるかというと逆に映画の凄さが分かるというものだけど、シリアスとユーモアの共存を糊付けするもの、すなわち時代性=時代の空気や背景、歴史といったベースを的確に捉えていることがこの映画のポイントなのだろう。

つまりは時代の追憶。

ただ、それがDNAに刻み込まれている韓国の人々にとっては自分と社会、時代とのつながりや関わりを事件を通して追体験できると思うのだけど、韓国で行われていた防空訓練なぞ知りもしない日本人にとっては、なかなかそれを理解するのは難しい。

なのにこの上なく面白いのは、人間の可笑しさ哀しさ猥雑さをつまびらかに描けているからなのだと思う。

つまりは重喜劇。

日本映画がとっくに忘れてしまった回路を現代に繋げることができるポン・ジュノの今後から目が離せない。

Posted at 2004.04.15

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インソムニア

Pac2_2 出演:アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムス、ヒラリー・スワンク、モーラ・ティアニー

監督:クリストファー・ノーラン

(2002年・アメリカ・119分)MOVIX仙台

評価★★★/60点

 

内容:24時間太陽が沈まないアラスカの町ナイトミュートで、爪を切られ洗髪された17歳の少女の全裸死体が発見される猟奇殺人事件が発生。ロス市警から派遣された不眠症の刑事、地元の女性刑事、犯人の三つ巴の心理劇が繰り広げられる。

“インソムニアって体長10cmくらいのムカデかなにかの虫の学術名かと勝手に思ってた。とにかく足がいっぱいあるやつ・・・”

予備知識は猟奇殺人ものということしか知らなかったので、何なんだろうインソムニアってと考えてたら、なんか古生代や中生代あたりから生き永らえている虫の名前にありそうだなと勝手に思ってしまった。

そして死体からそのムカデが出てくる。。プチプチッて。ウゲェッ、オェッ

でもなぜ死体からムカデが、、どうやって死体にムカデを入れた、、いやもしかして生きている間に体内に?、、とかなんとか勝手に想像してしまった。

そしたらなぁ~んだ、、、不眠症かよっ

しかも冒頭からすでに、あ、犯人ってロビン・ウィリアムスだとすぐに感づく。

となるとアル・パチーノら捜査陣はいかにしてロビンにたどりつくのか、そのプロセスを丹念に追っていく久々の正統派路線をとるんだろうな、と序盤の作り込みを見てて勝手に思ってしまった。

が、しかし、、あ゛っ、仲間撃った・・・え?

と霧の中の事故からいきなりそれまでの路線を脱線して別路線へと乗り換えてしまった。

オイラは正直とまどってしまった。

だって「セルピコ」であんなに熱血で正義感の塊の新米警官だったパチーノが、30年後には自己保身に奔走してるんだもの。そんなのありってかんじ。。

でもラストで警官としての道を再度取り戻したので良しとするか。

ただこれだけは確実にいえるな。

「セルピコ」のときからずっっと不眠症だったと(笑)。

あ、「セルピコ」のラストでも死ぬんだっけ・・・。

夢のシネマパラダイス403番シアター:三谷幸喜特集

12人の優しい日本人

00000398526l 出演:相島一之、塩見三省、豊川悦司、大河内浩、梶原善

監督:中原俊

(1991年・日本・116分)NHK-BS

 

評価★★★★★/100点

内容:シドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」に触発された三谷幸喜の同名舞台劇を映画化したディスカッション・コメディ。殺人事件の陪審員に選ばれた12人の男女が評決を下すまでの数時間を描く。始めは全員が無罪に投票したが、陪審員2号が意義を唱えて有罪に意見を変えたため、12人は延々と続く議論を始めることになった。

“Shall We Talk?”

監督の個性の赴くままに撮られているようでいて実は完璧に計算されつくした理詰めの緻密なカット割りのもとで、陪審員室という密室を縦横無尽に回転させ緊迫した鼓動を響かせた「十二人の怒れる男」。

一方、監督の個性の赴くままに撮られているようでいて実際まったくその通りな本作「12人の優しい日本人」。

そこに映画的な鼓動は見当たらない。

しかし、三谷幸喜の個性の赴くままにあっち行ったりこっち来たりで混乱をきたすシナリオのようでありながら実は完璧に計算されつくした理詰めの構成とセリフと人物造型のもとで、陪審員室という密室を笑いと興奮のるつぼに満ちあふれさせたことは、先の欠点を補って余りある。

そして自分はこちらの方も好きで好きでたまらないのだ。

P.S.

<陪審員 みんなでやれば 怖くない>by日本人

ちなみにアメリカ人なら、

<陪審員 ヒーローになれるから 怖くない>

ドイツなら、

<陪審員 規則でやるから 怖くない>ってとこでしょうかね。。

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ラヂオの時間(1997年・東宝・103分)DVD

 監督・脚本:三谷幸喜

 出演:唐沢寿明、鈴木京香、西村雅彦、戸田恵子、細川俊之

 内容:生まれて初めて書いたシナリオが採用され、脚本家としてデビューすることになった主婦・鈴木みや子は、そのラジオドラマ「運命の女」の生放送の収録スタジオにやって来た。ところが本番直前になって、主演女優の千本ノッコが自分の役名が気に入らないとゴネ始め、プロデューサーの牛島はその場を納めるために彼女の要求通り役名をメアリー・ジェーンに変更する。が、それに合わせて他の登場人物の役名も外国人名に変えていくうちに物語はつじつまが合わなくなっていき・・・。

評価★★★☆/70点

CM入りっぱなしのラジオドラマ「運命の女」は眠気をもよおすツマラなさ、、なのに映画はそこそこ面白い・・・。

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みんなのいえ

Minnanoie02 出演:唐沢寿明、田中邦衛、田中直樹、八木亜希子、伊原剛志、野際陽子、中井貴一

監督・脚本:三谷幸喜

(2001年・東宝・115分)2001/06/19・日劇

評価★★★/65点

 

内容:脚本家の直介(ココリコ)と妻の民子(元フジアナ)はオシャレなマイホームを夢見る若夫婦。2人は新進気鋭のインテリア・デザイナー柳沢(唐沢)に設計を依頼し、施工は民子の父親で大工の長一郎(北の国から)が行うことになる。が、柳沢があげてきた設計図を見て頑固一徹の長一郎は絶句。。プライドの高い正反対の性格である2人はことあるごとに対立を繰り返し・・・。果たして新居は完成するのか!?

“「ダメだ、、、、自分の問題ですから。」とバーテン真田広之みたいに客を無視して一から妥協しないで作り直してもらいたいかも、職人三谷さん。。”

とはいうものの映画というのは、そもそものところどこかしら妥協の産物なのだろうからなぁ、黒澤天皇といった例外を除けば。

さらにいえば、脚本、演出家として一流の職人である三谷幸喜のものづくりに対するモットーがそっくりそのままこの映画に反映されているのかもしれない。

脚本は基本的には一人で完成させることができるが、映画にしろ舞台にしろ一人の力で作り上げるのはまず不可能。

様々な分野の職人が寄り集まって1つの作品を完成させるのだから。

その際、職人と職人、プロとプロとのぶつかり合いの中で、やはりどこかで妥協というものが必要になってくるわけで、そう、この映画で描かれた家造りと同じように。

バーテン真田は完全に一個人の世界へと没入していく、だからこそまさに自分の問題であるわけで、三谷さん自身もシナリオ作りに関してはバーテン真田になっているのだろう。

しかし、それらの集合体としてのひとつの家造り、映画作りは三谷さんに言わせれば題名にある通り、まさにみんなの問題なのだ。家族みんなの。監督一人の問題ではなくスタッフみんなの。

もしかして、それは田中邦衛親父のような職人の本来の気質とは相容れない考え方なのかもしれない。

三谷さん自身もシナリオ作りに関してはそういう面を持っているのだろうが、映画づくりにおいては唐沢デザイナーへと変貌を遂げるのだろう。一歩引いた形での立ち位置で。

ものづくりは傲慢にならなければ良いものを作り上げることはできないという面もある。しかし三谷さんはそういうやり方じゃなくても、ひとつの目的に向かってみんなが同じ方向を向いて作り上げる上においては、傲慢ではなく妥協と譲歩によってこそ良いものができるのだと言っているのだと思う。

これは笑いというある意味では最も難しい題材を毎回取り上げている三谷さんだからこそ言えるなんとも奥深い含蓄ある主張だと思うんだよね。

ここまで書いてきて、あれ、それで評価★3つなの??と気付いたけど・・・・。

やはり傲慢な血がたぎりまくっている映画を観るとこっちも熱くなるんだよな・・・。そういう独善的な映画の方が実際好きなのだ。。。

ごめんなさい三谷さん。

あなたはイイ人だ。これからもあなたの映画を観続けていくことだけは間違いない。大好きです!

取ってつけたような、、、(笑)ホントにゴメンなさい。。

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竜馬の妻とその夫と愛人

Vxbregygu 出演:木梨憲武、中井貴一、鈴木京香、江口洋介、橋爪功、トータス松本

監督:市川準

(2002年・東宝・115分)2002/09/24・シャンテ・シネ

評価★★★/60点

内容:三谷幸喜が2000年に書き下ろした舞台劇の映画化。坂本竜馬が暗殺されてから13年後の明治13年。新政府の間に維新の英雄である坂本竜馬の妻おりょうのよからぬ噂が広まっていた。これ以上竜馬の名声を汚すわけにはいかんと、役人でおりょうの義弟・菅野覚兵衛が竜馬の十三回忌を催すためという名目でおりょうの下に送られる。そこで彼が見たものは、西村松兵衛というサエないテキヤと再婚し、なおかつ竜馬にそっくりの愛人・虎蔵と駆け落ち寸前という有り得ない状況にあるおりょうの姿だった・・・。

“舞台という三次元的な文法を映画という二次元的な文法に落としこむことができていないため、どうしても単調かつ窮屈に感じてしまう。”

舞台のテンポや臨場感を出すための必須方法として長回しをこの映画でも使ってはいるが、なかなか画面に効果として表れてこないのが苦しい。

特に松兵衛のおんぼろ長屋での松兵衛&覚兵衛vs虎蔵のおりょう争奪舌戦(おりょうは外で最初待機しているが途中で中に入ってくる)での4人の掛け合い応酬のシーンなどはその典型で、どうも市川準のテンポにうまく乗ることができない。。

まぁ、シナリオの面白さだけが浮き立ってしまったかんじだが、その中でまるでビックリ箱みたいにどんなサプライズが出てくるのか良い意味で分からないノリさんの演技に救われたかんじかな。

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笑の大学

Wara 出演:役所広司、稲垣吾郎、高橋昌也、小松政夫

監督:星護

(2004年・東宝・121分)2004/11/08・MOVIX仙台

評価★★★★/75点

 

内容:太平洋戦争突入目前の昭和15年。言論・思想統制が厳しさを増す時代、芝居もまた台本の段階で厳しい検閲を受けていた。そんな年の秋、連日バッサバッサと検閲で台本を切り捨てていくカタブツ検閲官・向坂(役所)のもとに今日やって来たのは、浅草の軽演劇一座“笑の大学”の座付き作家・椿(ゴロー丸)。ここに一度も笑ったことがない男と笑いに命をかける男の必死の攻防戦が幕を開ける!

“役所広司の椿は想像できるが、稲垣の向坂は想像できない。”

それだけ役所広司の役者としての幅が広いのは一目瞭然で、もし両者が役を入れ替えたら稲垣の向坂よりも役所広司の椿の役回りの方で笑えてしまうのではないかと容易に勘ぐってしまうくらいだ。

例えばこの映画で向坂のサルマタ失敬!は笑えるが、椿のサルマタ失敬は笑えない。

それは当然といえば当然で、お堅い検閲官がサルマタ失敬!をやるから笑えるのであって、笑いをつくる椿がそれをしても笑えないのかもしれないが、役所広司が椿だったら笑えるんじゃないかという期待が俄然出てくる。それくらい役所広司は凄いし巧いと思う。

この映画で笑えるところといったらほとんどが役所広司・向坂パートで、稲垣の椿パートで笑えたのは椿と向坂の最初のやり取りで稲垣がセリフを噛みそうなところくらいだ(笑)。ウンナンのナンチャンに負けず劣らずカミカミマンかも。。

もうちょっとなんかこう椿はなんとかならなかったかなぁ、と。

その他脚本、演出ともに別段映画にしなくてもいいのではないかと思わせてしまうくらい特に取り立てて言うべきこともないのだけど、役所広司はホントに凄いというただ1点のみだけでこの映画を観る価値はなんとか見出せた。

向坂の指示どおりに椿が最後に書いてきた笑えない台本を読んだときの役所広司の演技は絶品です。

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THE 有頂天ホテル

B000c5pnt6_09_lzzzzzzz 出演:役所広司、松たか子、佐藤浩市、香取慎吾、篠原涼子、戸田恵子、生瀬勝久、麻生久美子、YOU、オダジョー、角野卓造、寺島進、原田美枝子、唐沢寿明、津川雅彦、伊東四朗、西田敏行etc..

監督・脚本:三谷幸喜

(2005年・東宝・136分)2006/01/26・盛岡フォーラム

 

評価★★★★★/90点

内容:新年を控えた大みそかの夜。都内の高級ホテル“ホテルアバンティ”ではカウントダウンパーティーを2時間後に控えていた。ホテルの威信に関わる一大イベントを無事に終えることが副支配人の新堂に課せられた責務だったが、そんな新堂をあざ笑うかのように従業員とワケあり宿泊客たちを襲う数々のトラブル。はたして彼らは新年を無事に迎えることができるのか!?

“観終わって自然と笑みがこぼれ幸せになれる映画。”

単純なことだけど、昨今そういう映画がことに少ない。

最近はとかく考えさせる映画が流行りだが、中にはただ無駄に凝っているだけで、当の映画、作り手が世界をどう捉えているかが全く分からない意味不明な作品も多々存在する。

その中で、三谷作品は世界を、人間をどのように捉え、どのように考え、どのように表現するかという「創る」ことに関して非常に洗練されていると思う。

それは25人(+1匹)の人間たちの多面的な人生模様を個性を殺さずに切り取っていることからだけでも十分すぎるほど分かる。

しかも、彼らの人生模様は連鎖しつながっているのだ。

ミスチルが人間は連鎖する生き物だよ♪と歌っているように、人と人はつながっているんだということを面白おかしく36度5分の人の温もりで描写していく。

“幸せを運んでくるお人形”を巧く使ってリレーのように接点を分かりやすく明示したのも手法として本当にうまいと思う。

また、特に今回の作品では3番目のどのように表現するかという部分で三谷“監督”は腕をあげたといっていいのではないかと思う。

今までの三谷映画は舞台のエッセンスが前面に押し出され、「映画」という枠の中で見るにはどこか違和感がつきまとっていた。

しかし、今回の作品は、舞台的でありながら、しかし決して舞台ではないその微妙なバランスの中でれっきとした映画として何の違和感もなく最後まで見ることができた。

それは、セットの緻密さといった美術や裏方の面の貢献も大きいと思うのだが、三谷演出も長回しなど舞台演出の味を残して底上げしつつ、映画としてのレベルを保っていたと感じた。

とにもかくにも上質で純粋に面白い“パクリ”映画を心ゆくまで楽しませてもらった。良い意味でのパクリでっせ。。

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ザ・マジックアワー

The_magic_hourthumb 出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行、小日向文世、寺島進、戸田恵子、伊吹吾郎、香川照之

監督・脚本:三谷幸喜

(2008年・東宝・136分)2008/07/04・盛岡フォーラム

内容:港町・守加護。街を牛耳るギャングのボス・天塩(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)に手を出し、海に沈められる寸前の備後(妻夫木聡)。助かる唯一の条件として天塩が示したのは、5日以内に伝説の殺し屋デラ富樫を連れてくること。そこで備後は最後の手段として映画監督になりすまし、無名の俳優・村田大樹(佐藤浩市)を雇って、映画撮影と称してデラ富樫役を演じさせ、天塩をダマすことを画策するが・・・。

評価★★★★★/100点

三谷監督の前作「THE有頂天ホテル」の流れをくむ愛すべき“パクリ”映画といえると思うけど、今回のパクリ方は壮大そのもので、ギャングが街を牛耳る暗黒街=シカゴを連想させる架空の町・守加護(スカゴ)を舞台にしているのがキモで、今までの作品をはるかに超える大風呂敷の広げ方といっていい。

しかも、街のメインストリートといい港の波止場といい、あからさまにこれはオープンセットですよといわんばかりのリアリティのない舞台装置の造りは完全に舞台演劇向きで、これを映画で仕立てようというのはかなりの力量を要するといわなければならない。

が、今回、三谷監督はそれを嬉々としてやってのけてしまった。

映画の撮影と思い込んで伝説の殺し屋役を演じる売れない役者と、伝説の殺し屋と思い込んで仲間に引き入れる本物のギャングが誤解に誤解を重ねるシチュエーションコメディというストーリーラインの設定の勝利といえばそれまでだけど、マジックアワーが太陽が地平線の向こうに落ちてから光が消えてなくなるまでの淡い光に包まれた昼と夜の境目を表わすごとく、虚構と現実を時には重ね合わせ時には逆転させ行き来させた巧さは特筆もので、まさに喜劇のマジックアワーを堪能できてしまう。

そして、その虚構と現実の境目にある守加護というつくりものの街がまぁ見事にマッチしているんだわ。

また、裏方さんに至るまでそれぞれの登場人物に“人生で最も輝く瞬間”を提供しているのも三谷監督らしい演出ぶりで買いだし、なによりも映画への愛にあふれているのがイイ。

市川崑監督の「黒い十人の女」(1961)のオマージュを中井貴一&天海祐希の劇中映画で出してくるのを皮切りに、映画撮影の舞台裏を表舞台に反転させたシナリオは三谷監督の並々ならぬ映画好きが滲み出てくるものになっている。

「カサブランカ」(1942)をパロッたと思われる「暗黒街の用心棒」なる名画(?)に憧れる売れない役者の映画にかける思い、スクリーンにかける思いがイタイくらいに伝わってくるのも印象的で、思いもかけず自分の大写しの映像がスクリーンいっぱいに映し出されているのを見るシーンは涙してしまうほど感動してしまった

ギャングのボス天塩と愛人マリがラストで元サヤに収まるオチも「純然たるコメディ」を貫いていてヨロシイし、最後まで抱腹絶倒の映画を作ってくれた三谷監督に拍手!

それに加えて、家族みんなで見に行ったんだけども、館内もゲラゲラ笑いっぱなしで、映画の本来あるべき姿というのを体感できてもの凄く幸せなひとときを過ごすことができた気がする。

三谷監督は日本のビリー・ワイルダーといっても過言ではない!?

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1 出演:深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、浅野忠信、草彅剛、中井貴一、市村正親、小日向文世

監督・脚本:三谷幸喜

(2010年・東宝・142分)WOWOW

内容:三流弁護士・宝生エミは、資産家の妻殺しの容疑者の弁護を担当することに。事件当夜、泊まった旅館で金縛りに遭っていたという容疑者のアリバイを確かめに行ったエミは、実際に落武者の幽霊・更科六兵衛と遭遇。無実を確信したエミは、六兵衛に法廷での証言を依頼するが・・・。

評価★★★★★/100点

前作で三谷監督は日本のビリー・ワイルダーだと褒めそやしたけど、今回は日本のフランク・キャプラときたもんだ。

とかく昨今ハリウッドをみてもおバカ系で下ネタ満載のコメディしかない中、上質な純然たるコメディを一貫して作り続ける三谷幸喜は世界最高のコメディライターだと信じて疑わないわけだけど、それを疑う者はこの映画を見れば100%納得するだろう。

それくらい完璧なコメディで、画面にクギ付けならぬ画面に金縛りに遭いながら見てしまった。まさにステキな金縛り♪

ホンがしっかりしていることが前提にあるのはいうまでもないけど、贅沢すぎる役者陣の羽を伸ばしっぱなしの芝居も含めて観客をとことん楽しませようという姿勢が、この映画を最高にステキなものにしている。

深キョンのウェイトレスや生瀬勝久の落武者タクシー運転手、佐藤浩市の売れない三流役者(前作の主人公)など、お遊び感覚も満載なんだけど、個人的には市村正親の「我こそは安倍清明の無二の親友、安倍メイメイから数えて35代目、安倍つくつく!」ていう言い回しがドツボにハマッてしまったww

あとはなんといっても深津絵里だろう。

とにかく可愛い。犯罪的に可愛いのだ(笑)。

今回の映画で唯一演技らしい演技をしていたといってもいいw深津絵里の代表作は、賞を総ナメにした「悪人」ではなく、このステキな金縛りだと自分は言いたい。

あ、あと、言いたいことといえば三谷監督!次作ではぜひとも大泉洋にちゃんとした役を与えておくれw

夢のシネマパラダイス208番シアター:ディア・ドクター

神様のカルテ

Img_63257_10050348_1 出演:櫻井翔、宮崎あおい、要潤、吉瀬美智子、岡田義徳、原田泰造、池脇千鶴、加賀まりこ、柄本明

監督:深川栄洋

(2011年・東宝・128分)WOWOW

内容:信州松本に暮らす青年内科医・栗原一止。24時間365日対応の本庄病院に勤めて5年目になる彼は、厳しい地方医療の現実と日々格闘しながらも、有能な同僚たちと力を合わせて懸命に激務をこなしていた。そんな彼の癒しと支えは、同じアパートに住む個性豊かな仲間たち、そして最愛の妻・榛名の存在だった。そんな折、彼は最先端医療を学べる大学病院への誘いを受けるが・・・。

評価★★★/60点

優しい映画である。

いや、優しすぎるといった方がいいか。

こちらが面食らってしまうほどゆったりとしたテンポなのはいいとしても、あまりにも一本調子すぎて逆に疲れた。見終わったあと出た第一声が「あー終わっちゃった」ではなく、「ハァ~終わった×2」だったのが正直な気持ちで。。

人生が変わる1分間の深イイ話とか似合いそうな100%イイ話なのはたしかだけど、メリハリのない130分間はどこか居心地の悪イイ話になってしまい・・・

ひとつ屋根の下で共同生活を送るドクトル、姫、男爵、学士殿のサイドストーリーも彼らの生活感や人生というものがあまり見えてこず中途半端なかんじがしたし、感動の押し売りとまではいかないまでも、どこかあざとさを感じてしまったかな・・・。

しかし、自分にも必ず訪れるであろう死を考えたとき、自分を看取ってくれる人っているのだろうか!?とか幸せで安らかな死に場所がいいなとか、、そんなことを思いめぐらせてしまった三十路男って、なんだか哀しくなってきた・・・

安曇さん(加賀まりこ)が「病は人を孤独にする」とポツリとこぼした言葉が印象的だったけど、やはり人と人のつながり、出会いというのは人生において最も大切な財産なんだなとこの映画を見てしみじみ思った。。

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神様のカルテ2(2014年・東宝・116分)WOWOW

 監督:深川栄洋

 出演:櫻井翔、宮崎あおい、藤原竜也、要潤、吉瀬美智子、原田泰造、濱田岳、吹石一恵、池脇千鶴、市毛良枝、柄本明

 内容:信州松本。本庄病院に勤務する医師・栗原一止は、妻・榛名の出産を心の励みに、患者のために身を粉に働く日々。そんなある日、一止の大学時代の同期・進藤辰也が東京から赴任してくる。旧友との再会を喜ぶ一止だったが、辰也の勤務態度には“医学部の良心”と言われたかつての面影はすっかりなくなっていた。一方、そんな時、一止の恩師である貫田内科部長が過労で倒れてしまう・・・。

評価★★★/60点

前作に引き続き病院の屋上に患者を連れ出して感動エンドというパターンを踏襲しているのは思わず笑っちゃったけど、まぁ真摯な映画であることに変わりはない。

高級車に乗って豪邸に住んで年収1千万2千万なんて軽く超えるであろう医者にはどうしても羨望のまなざしを向けてしまうけど、地方病院の勤務医の労働実態の過酷さはよく伝わってきた。1年に3日しか休みがなく家庭を捨ててまで働かなければならない現実と、そっちの方が時間通りに切り上げる医者より良い医者だと信頼される周りの環境。

実にゆゆしき問題だと思う。

また、「医療はボランティアではない、ビジネスだ!」という経営側の合理論と、「これは医師の話ではない、人間の話をしている!」という一止先生の人としての良心・感情論のせめぎ合いも理想に先走る青臭さはあるものの見応えはあった。

まぁ、将来病院のベッドで苦しまず安らかに看取られることになればいいなと思っている自分にとってはw、医者には万全の状態で診てもらいたいってことに尽きるけどね

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終の信託

Poster_2出演:草刈民代、役所広司、浅野忠信、細田よしひこ、中村久美、大沢たかお

監督・脚本:周防正行

(2012年・東宝・144分)WOWOW

内容:1997年、天音中央病院。呼吸器内科医・折井綾乃は、同僚医師との不倫が破たんしたショックから自殺未遂騒動を起こしてしまう。そんな彼女は、重度の喘息で入退院を繰り返していた患者・江木の優しさに救われ、いつしか2人はプラトニックな信頼関係で結ばれていく。やがて彼女は、自らの死期を悟った江木から「その時が来たら先生の手で楽にしてほしい」と思いを託されるのだった・・・。

評価★★★/65点

患者に対して最善の医療を施す義務がある医者と、自分の最期は自分で決めたい患者。

患者の苦しみを取り除くことが仕事の医者と、苦しまずに死にたい患者、そしてやはり少しでも長く生きていてほしいと願う家族。

延命医療を望むか望まないかという選択と、延命医療を止めるのは罪になるのかという問題、そして医療現場の実情と法制度のかい離。

終末期医療をめぐる倫理的問題に関しては、白黒・善悪の二元論では割り切れない様々な議論があると思うのだけど、それらを問題提起するのが今回の映画のテーマだったのだろう。

が、しかし、このケースはどうだろう。どっからどう見ても折井先生(草刈民代)の有罪は当然なんじゃないかっていう・・・

江木(役所広司)が家族に終の信託をしていなかったことが最大の問題ではあるのだけど、だからこそ折井先生の感情に先走った行為は独善的な職権乱用にしか見えなくて。。

しかも最期の時を看取る家族を差し置いて子守唄を歌っちゃいます!?ていう気持ちの悪さとか、どうもこの折井先生には共感できない部分が多かったような・・。

結論ありきの冷血キャラにしか見えない検事は感情移入は全くできないまでも、言ってることは正論としかいえなくて、この白黒はっきりつける冷徹な論理を破る覚悟と情念に説得力が感じられなかったのはイマイチだった。

この映画を見て得たというか考えさせられたことは、ただ1つ。

自分の死期の意思表示は家族と医師を交えてしっかりと書面で残しておくってこと。これに尽きる。

少なくとも家族とはそういう話はしておくべきなんだろうなって。

でも、実はこの映画を見て1番思ったのは、苦しまずに死のうというのは虫のいい話で、やっぱり苦しんで死ぬんだなぁってことww

それくらい臨終のシーンは凄まじかった・・・。

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ディア・ドクター

Original  出演:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、松重豊、香川照之、八千草薫

監督・脚本:西川美和

(2009年・日本・127分)WOWOW

内容:人口1500人あまりの山あいの小さな村。長らく無医村だったこの地に3年半前、伊野(笑福亭鶴瓶)が着任。以来ベテラン看護士(余貴美子)に支えられ、村人から絶大な信頼を寄せられていた。そんな彼のもとに、東京から相馬(瑛太)が研修医としてやって来る。最初はへき地の厳しい現実に戸惑い、困惑する相馬だったが、村の人々に親身になって献身的に接する伊野の姿に次第に共感を覚えていく。そんなある日、一人暮らしの未亡人かづ子(八千草薫)を診療することになった伊野は、病気のことを都会で医師をしている娘に知られたくないからと、かづ子から一緒に嘘をついてほしいと頼まれるのだが・・・。

評価★★★★☆/85点

オイラの地元・岩手県は地域の基幹病院にまで及ぶほど医師不足が深刻で、外来休診なんて日常茶飯事。

まさに医療崩壊の極みに達している中で、2010年には県立宮古病院に新たに着任予定だった常勤医が実は医師免許を持っていなかったことが分かり逮捕されるという事件まで起こってしまった。

宮古病院では循環器科の常勤医がおらず、心臓疾患の救急は2時間かかる盛岡に搬送されるという実情を知った自称大阪赤十字病院の救急専門医が、手助けしたいと勤務を名乗り出て、3回の面接を経て採用が決まったのだが、、フタを開けてみたら医療経験も医師免許も持たないただの無職女だったというオチが・・。

巧みに専門用語をあやつり院長をだまくらかしたこの女・44歳は、借金を抱え生活保護を受けていたというが、過去に医師との婚姻歴があったという。とはいえド素人には違いなく、年収2千万を狙っての詐欺事件となったわけだが、実際に医療行為を行ってはいなかったことから不起訴処分で釈放となった。

東北の片田舎で起こった映画のようなホントの話、、とはいえ岩手県人からすると宮古病院は地域のたいそうな病院なわけで、こんなバレバレなことをなんでするんだ!?と思っちゃうんだけど、大阪からみた岩手って掛け値なしのド田舎なんだろうな・・ww

でも宮古って市なんだよ一応

しかし、実際に医療行為を行ったホンモノのニセ医者でも懲役2,3年程度にしかならないらしいけど、それこそへんぴな村の診療所とかだったらバレずにやってるニセ医者なんてゴロゴロいそうなかんじがするなw

、、と思ったらここにいたよ!鶴瓶はん!

てことで本題の映画だけど、鶴瓶について語ればこの映画を語れるってなもんで、白衣を着た鶴瓶がチョコンと診察室のイスに座っている、その恐ろしいまでのなじみ具合と、屈託のない笑顔の奥に光る全てを見据えた黒い瞳が映画のトーンを決定づけるほど印象的で、本物よりも本物らしいペテン師に圧倒されてしまう。

そして、彼のときに滑稽でときに物悲しい佇まいが、真実と嘘、善と悪の狭間、グレーゾーンで生きるしかない人間のもがき、人間の業というものを巧みに浮かび上がらせる。

勧善懲悪のキレイ事では片付けられない、白黒つけられない人間の曖昧さ、わけの分からなさをよどみない語り口で探り見つめていく面白さは珠玉のレベルにあるといっていい。

「ゆれる」と同様のテーマといっていいと思うけど、見えないロジカルを積み上げていくシナリオの構成力、緩みなきカットの並べ方といい、映画の文法をとことん追求した作劇の方程式はより精緻に組み立てられ、凡人のオイラには反論するすべがない。

西川美和には2本つづけて完璧な映画を見せつけられてしまった。

次回作が最も待ち遠しい監督である。

Posted by 2010/08/01

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ジーン・ワルツ(2011年・東映・111分)WOWOW

 監督:大谷健太郎

 出演:菅野美穂、田辺誠一、白石美帆、桐谷美玲、大杉漣、南果歩、風吹ジュン、浅丘ルリ子

 内容:帝華大学病院の医師・曾根崎理恵は、そこの産科に勤務しながら一方で、廃院の決まった小さな産婦人科医院マリアクリニックでも妊婦の診療に当たっていた。そこには現在、それぞれに事情を抱えた4人の妊婦が通っていた。ところが、理恵にはマリアクリニックでの治療に関してある疑惑が向けられていて・・・。

評価★★☆/50点

代理出産や不妊治療、中絶、医療ミス、産科医不足など今日的なテーマを扱っているものの、各エピソードを詰め込みすぎて薄味になっているどころか回収できていないものまであり、かなり散漫な印象を受ける。

あげくの果てに、医療崩壊じゃなくて台風による診療所崩壊がオチになるとは笑うに笑えない。

また、妊婦さんたちの日常風景が見えてこないのも気になるところで、赤ちゃんに外の世界の光を見せてあげたいとのたまっているわりに物語が外に開いていかないのは本末転倒だろう。

あと菅野美穂は正直ミスキャストじゃなかろうか。頑張ってクールにやろうとしているのは分かるんだけど、ちょっと合わないよねてかんじ。気さくで飾らない雰囲気が菅野ちゃんの本領だからねぇ。。誰だろ、、篠原涼子あたりとか?

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孤高のメス(2010年・東映・126分)WOWOW

 監督:成島出

 出演:堤真一、夏川結衣、吉沢悠、中越典子、松重豊、成宮寛貴、余貴美子、生瀬勝久、柄本明

 内容:急死した看護師の母、浪子(夏川結衣)の葬式を終えた息子の弘平(成宮寛貴)は、母の古い日記帳を見つける。そこには、看護師としての様々な日々が綴られていた・・・。1989年、地方都市にあるさざなみ市民病院。そこへアメリカ帰りの当麻(堤真一)が第二外科医長として赴任してくる。外科手術もまともに出来ない地方病院で仕事のモチベーションも下がっていた浪子は、患者のことだけを考えて行動する当麻の姿勢に接するうちに仕事への情熱を取り戻していく・・・。

評価★★★★/80点

地味でぶきっちょで舌足らずだけど、誠実で真剣で丁寧な映画だったと思う。地味におススメできる映画だ。

田舎の港町の市民病院を舞台に、生体肝移植や僻地医療など現代医療が抱えるデリケートな問題を扱っている今回の作品。

しかし、成島出はシリアスでドロドロした重しやひねりを敢えて取っ払い、目の前の命を救いたい、目の前の命を救ってほしい、目の前の命を役立ててほしいという純粋な人の思いを当麻先生のメスに託して描いていく。

そういう点では分かりやすすぎるくらい分かりやすく、たいしてドラマチックな映画ではないのだけども、その薄味仕立てを精緻でリアルな手術シーンと役者陣のたしかな演技力でカバーし実に説得力と見応えのある作品に仕上げている。

人のつながり、家族のつながり、命のつながり、思いのつながり。

人と人の絆を感じられ、温かい余韻に浸れる良作だった。

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パッチ・アダムス

00000587003l  出演:ロビン・ウィリアムス、モニカ・ポッター、フィリップ・シーモア・ホフマン

監督:トム・シャドヤック

(1998年・アメリカ・116分)仙台セントラル劇場

評価★★★★/80点

内容:医師と患者は対等という信念のもと、笑いと思いやりを治療に取り入れて独自の医療活動を行ってきた実在の精神科医、パッチ・アダムスの若き日の物語を綴るヒューマンドラマ。

“死ぬまでに1回はパッチみたいな医者に出会いたい。”

先日ほんと何年ぶりかで病院(皮膚科)に行った。

、、、参ったね全く。

午前中けっこう早く行ったにもかかわらず、まぁ初診だったこともあるけどさ、1時間半くらい待たされーの。

んでやっとで自分の番。

「はい、どうぞ、そこに座って。ハイ、見せて」

手とひざの後ろを見せるオレ。

「はい、いいですよ。今までアトピーって言われたことないの?」

「あ、あります。」

「そうでしょぉ・・・。薬出しときますから1日2回塗るように。。。今日は終りです。」

「はっ、はぁ~ハイ。」

1時間半待って、診察1分30秒。

なんやねん、早く終わって嬉しいような悲しいような・・・。

でもよ、ギャグの1発くらいかませよおバタリアン女医。アンタの顔がギャグだったけどさ(笑)。

ただまるで機械的な処理をされるとちょっとムッときますね。

そんな先日の小言でございました。

まぁ日本にはパッチみたいな医者なんていないよねぇ。特にデッカイ大学病院とかには。ウチのオカンが看護師してるから耳にタコができるくらい内幕話を聞かされるから・・

2013年6月 9日 (日)

レアル・マドリー狂想曲第83番:2012-13シーズンを振り返って・・

1368824629_extras_albumes_0おお!神よー!なぜこんな仕打ちをお下しになるのですか!

今シーズンを一言で言い表すとすればこうなるよね。

なんてったって今季はこのブログで我が愛しのレアル・マドリーを取り上げるのはやっとで2回目なのだから、、って今シーズン終了だよ・・。いかに応援してる自分のテンションが低かったのかってことだよね

まぁ、序盤も序盤でバルサに独走を許してしまったリーガでの躓きに一気にテンションを下げられてしまったわけだけど、最初のリーグ4節で1勝1分2敗。この開幕1ヶ月の取りこぼしが最後まで響いてしまった。

第7節アウェイでのクラシコでなんとかドローに持ち込み勝ち点8差で踏みとどまったものの、年内最後の17節終了時には16差をつけられ、リーガは終焉。

1368866371_006205_1368866450_notici ←今季の憂いを象徴する男、カシージャス。

そして、成績が上がってこないとつきまとってくるのがチーム内のゴタゴタ。レアルもご他聞にもれずやらかしてくれ、ますますこちらのテンションは下がっていった・・。

まずその先鞭をつけたのがロナウド。リーガ第3節で2ゴールを決めながらもゴールを祝わず、「悲しいから祝わなかった」発言で物議を醸した。

さらに今季のロッカールームのゴタゴタを象徴したのがキャプテンとしてチームを引っ張ってきたカシージャスと監督モウリーニョの確執だ。

第17節の年内最後の試合マラガ戦でスタメンを外され、次の新年最初の第18節ソシエダ戦も控えに回されるも、その試合でアダンが1発レッドで退場し、即スタメン復帰。その後数試合こなすも1月中旬に行われた国王杯で手指を骨折してしまい、レアルは急遽ディエゴ・ロペスを補強。2ヶ月半戦列を離れ、4月始めに戻ってくるものの、モウリーニョはディエゴ・ロペスを使い続け、結局その後1試合も使われることはなかった・・。

カシージャスが戦列を離れている間、正GKとして君臨し、クラシコやCLなどビッグマッチでも好セーブを連発したことからすれば、ディエゴ・ロペスをファーストチョイスで使い続けるというのはフツーのクラブでは当然のことだろう。

が、控えに回されるのがレアルとスペイン代表でキャプテンを務めるマドリディスモの体現者であるとすれば話はややこしくなってくる。いや、実際ややこしくなってしまった・・。

1368872865_447797_1368872963_noti_2 カシージャスを控えに回していることに関して、「監督にとって全ての選手は平等に1選手にすぎず、平等に扱われることを当然のごとく受け入れる選手とは何の問題も生じない。しかし、自分は他の選手よりも上の存在だと勘違いしている選手とは問題が生じる」とコメントし、カシージャスを暗に批判した。

それに対し、当のカシージャスは無言を貫き、ベンチに座り続けた。

カシージャスこそ、まさに真の男である!

一方モウリーニョは、カシージャスを擁護する発言をしたぺぺを干してしまう小っちぇえ男だぜww

結局チームをかき回すだけかき回してチェルシーに去っていったモウリーニョ。過去2シーズンで最強バルサと互角に渡り合えるまでにした手腕は認めなければならないが、目につくもの全てを敵とみなすやり方は、3シーズン目にして自チームのシンボルでさえも標的にしてしまう度を越したものになってしまった。

チャレンジャーとして臨むにはこの手法はそれなりに効果があるのだろうし、バルサに水を開けられていた最初の2シーズンはそれなりに上手く回っていたのだけど、リーガを制しCL優勝を狙う王者としての振る舞いを求められる今季のレアルにとってはもはや最大の害悪以外のなにものでもなかった・・・。

1362519793_extras_albumes_1_2 3月はじめに、1週間で国王杯クラシコ、リーガクラシコ、CLマンU戦を3連勝した時が今シーズンのハイライトだったな。

が、終わってみればリーガ2位、CLベスト4、国王杯準優勝かぁ。。うーん、、あともう一手が、、溜め息しか出てこないわなぁ・・。

しかし、選手たちは総じてよくやったと思う。

特に最終ラインをしっかり引き締めたSラモスと、今季も規格外の個人能力を発揮したロナウドがMVP級。

あとは、20歳のラファエル・ヴァランが大ブレイクを果たしたのが収穫か。

来シーズンはヴァランはもちろん、2年目のモドリッチにも期待がもてるし、怪我で今季ほとんど棒に振ったマルセロの復活にも大いに期待したい。

まぁとにかく早く新監督決めてくれないと。アンチェロッティ?バイエルンを最強に導いたユップ・ハインケス?はたまたジダンww??

いつ決めるの?

今でしょ!!いや、7月のプレシーズンまでホント時間ないんだってば

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