夢のシネマパラダイス73番シアター:旅は道連れ世は情け
あなたへ
出演:高倉健、田中裕子、佐藤浩市、草彅剛、余貴美子、綾瀬はるか、三浦貴大、大滝秀治、長塚京三、原田美枝子、浅野忠信、ビートたけし
監督:降旗康男
(2012年・東宝・111分)CS
内容:富山の刑務所で定年後も指導技官をしている倉島英二のもとに、ある日、亡き妻・洋子から遺言状が2通届いた。1通目には遺骨を故郷の長崎の海に散骨してほしいとあり、もう1通は長崎の平戸に局留めになっていて現地で受け取らなければならないという。そこで英二は自分製のキャンピングカーで妻の故郷・長崎へ向かうことに・・・。
評価★★★/65点
幸福の黄色いハンカチが刑務所から出所した受刑者が妻の待つ家へ帰る旅だったのに対し、今回は刑務所に勤めている刑務官が妻の遺骨を胸に彼女の故郷へ赴く旅というロードムービーとして好対照をなす作品になっている。
しかし、“旅をするのは帰る家があるからだ、、さすらいの旅ほど淋しいものはない”と長渕剛が歌っているけど、今回の映画は後者の色彩が強く、もっといえば亡き妻との道行きの旅という印象を受けてしまう。
つまりは高倉健を送る旅なのだ、という感覚に陥ったのは自分だけではあるまい。これが高倉健の最後の映画になるのかもしれないと。。
普通、寅さん風に作れば、長崎に一気に舞台を飛ばして食堂を切り盛りする女性(余貴美子)と娘(綾瀬はるか)、そして借金返済のために海難事故を装って失踪した夫(佐藤浩市)の話のみにシフトし、高倉健には“鳩を飛ばす”キューピットの役割をはなっから与えれば済む話だろう。
これをロードムービーにしたことで中だるみ感が強くなったことは否めないし、変に感傷的すぎてツマラない映画になってしまったと思う。
しかし、それでも高倉健である。
飾らず謙虚で不器用な人柄、そして人生の切なさを奥歯でグッとかみしめた者を一貫して演じ続けてきた高倉健という役者の集大成がこの映画の主人公なのだ。生きるとは切ないことなのだと伝え続けてきた高倉健という生きざま。
健さんは寅さんにはなりえなかった。それでいいのだと思う。
“日本人”の一方に寅さんがいて、もう一方に健さんがいた。
2人の映画を無性に見たくなってしまう時があるのはそういうことなのだと思う。
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星守る犬
出演:西田敏行、玉山鉄二、川島海荷、余貴美子、中村獅童、岸本加世子、藤竜也、三浦友和
監督:瀧本智行
(2011年・東宝・128分)WOWOW
内容:夏の北海道。山中に放置されたワゴン車の中から死後半年ほど経った身元不明の中年男性の白骨死体が発見される。さらに、そばにはつい最近まで生きていたと思われる犬の亡骸も。遺体の処理を請け負った市役所の奥津は、見つかったレシートを手がかりに、男性と犬の足どりをたどる旅に出る・・。
評価★★★/60点
これ見て真っ先に思い浮かべたのが山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」なのだけど、あちらが北海道を旅するのに対し、今回は東京→北海道とかなりの長旅。
その中で、リストラに遭い妻子にも去られ、愛犬とともに旅に出るおとうさんの物語とその旅の軌跡をたどる青年の物語の二つのストーリーが並行して描かれるのだけども、かなりテンポが悪く、おとうさんの感情の流れがいちいち断ち切られてしまい映画に入り込むことができない。
原作通りなのかは知らないけど、玉山&川島海荷の旅のくだりはいらなかったのではなかろうか。この旅で2人が何を得て、どう成長したのかが全く伝わってこないでは意味がない。
それよりも、いわきにしろ遠野にしろ風景をもっとちゃんと撮ってくれよと言いたい。岩手県人の自分からすると遠野があれっぽっちじゃ殺風景も甚だしい。
あとは、やっぱ物語の組み立てがなぁ・・・。
例えば弘前で岸本加世子と娘が出てきて、おとうさんは会わずにスルーしちゃうんだけど、この3人の関係というのが、おとうさんが亡くなる間際になって回想されるって、描く順番が逆だろと思うわけ・・。どうもちぐはぐなんだよなぁ。
泣けないです。。
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幸福の黄色いハンカチ
監督・脚本:山田洋次
(1977年・松竹・108分)NHK-BS
内容:失恋した工員の欽也は仕事を辞め、無理して中古車を買って北海道にやって来た。欽也は網走で一人旅をしていた若い娘・朱実を車に乗せ、さらに海岸で寡黙な中年男・勇作と出会い、一緒に旅を続ける。実は勇作はちょっとした喧嘩でチンピラを殺してしまった罪で服役し、網走の刑務所から6年ぶりに出所したばかりであった。旅を続けるうち、勇作はようやく重い口を開いて、夕張に残してきた妻のことを語り始める。彼は「迎えてくれるなら家の前に黄色いハンカチを掲げてほしい。ハンカチがなかったら、あきらめる」という手紙を妻宛てに送っていた。その話を聞いた欽也は一路夕張に向けて走り出す・・・。
評価★★★★★/100点
予定調和がこれほど痛快愉快にハマっている映画はないし、登場人物がことごとく善人であることがこれほど清々しい映画もない。
一転すれば駄作の根拠になってしまうこれらの要素を傑作に導く山田洋次の話の持って行き方はやはり素晴らしい。
あとはやはり3人の役者のアンサンブルだろう。
強さと真心を芯に持ち、どっしりと構えた存在感で映画にリアリティを与えている高倉健、愛すべき軽薄さでコメディリリーフ役を務める武田鉄也、そして不器用だけど純な桃井かおり。
最高です!
P.S.40代も後半になってから種子島でなんとか運転免許を取ったはずの武田鉄矢が、なんで20代の時に新車で北海道をドライブしてるのよ(笑)。
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イエロー・ハンカチーフ(2008年・アメリカ・96分)WOWOW
監督:ウダヤン・プラサッド
出演:ウィリアム・ハート、マリア・ベロ、エディ・レッドメイン、クリステン・スチュワート、桃井かおり
内容:6年の刑期を終え出所した中年男ブレットは、ミシシッピー川のほとりで2人の若い男女ゴーディとマーティーンに出会う。意気投合した3人はゴーディの車でドライブへ繰り出すことに。やがてブレットは自分の過去を語り始め、妻メイが暮らすニューオリンズに行って確かめなければならないことがあると言うのだった・・。
評価★★★/60点
山田洋次のユーモアあふれる人情喜劇を感傷漬けにどっぷり浸して描くとこうなっちゃうんだ、みたいな。。陰気くさすぎてイマイチ好きになれなかった・・。
顔面が感傷と哀しさだけでしかできていないウィリアム・ハートが、その陰気くささを倍増させていて個人的にはミスキャスト。もう断然ケビン・コスナーだろ!
白人青年ゴーディもユーモアのかけらもないただのウザキャラにしかなっていなかったし・・。
「リトル・ミス・サンシャイン」のような笑ってたのにいつの間にか泣いちゃってるような、そんなロードムービーを期待していただけにかなり残念。。
とはいえ、イエローハンカチーフがいくつもたなびくラストを見ると涙が出るようにセッティングされている自分は幾分点数を甘くせざるを得ないのだった・・w
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夢のシネマパラダイス73番シアター:星守る犬: ジプスィーずのそれでも恋するベルナベウ [url=http://www.idfresearch.org/tomsshoesoutlet.html]toms outlet[/url] toms outlet
投稿: toms outlet | 2013年4月24日 (水) 00時51分