夢のシネマパラダイス34番シアター:王様はつらいよ!
英国王のスピーチ
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、デレク・ジャコビ、マイケル・ガンボン
監督:トム・フーパー
(2010年・英/豪・118分)DVD
内容:英国王ジョージ5世の次男ジョージ6世は、吃音症に悩まされ、上手くスピーチ出来ないことから人前に出ることを極端に恐れるようになっていた。何人もの言語聴覚士の治療を受けるものの一向に改善の兆しは見られず、そんな夫を心配する妻エリザベスが最後に頼ったのはオーストラリア人の聴覚士ライオネルだった。王族をも恐れぬ歯に衣着せないライオネルの態度に6世は激怒するが、兄である長男エドワード8世が次期王位からトンズラしたため、王位を継がねばならなくなり、いやでもライオネルに頼らざるを得なくなるのだった・・・。
評価★★★★/80点
英王室を描いた映画はどれもこれもというわけではないけど、本家本元の権威と伝統という厚化粧のにおいがプンプンして性に合わない。
なのでこの映画も見る前は色眼鏡をかけて身構えてしまったのだけれど、冒頭の演説シーンでどもりまくるジョージ6世=バーティの姿を見て一気に映画の中に入っていってしまった。
そして、国王という役者稼業の舞台になんて上がりたくないとゴネるバーティ=コリン・ファースと舞台に上がりたくて上がりたくて仕方がない大根役者ライオネル・ローグ=ジェフリー・ラッシュの“演技合戦”を軸として紡がれる友情と成長の物語はアカデミー受賞も納得の出来。
特に2人が信頼を醸成していく会話劇の妙は、さすがシェイクスピアを生んだイギリスならではのウィットに富んだ面白さで飽きさせない。
また、静的な室内劇でありながら、顔のクローズアップや突き放したような俯瞰ショットなどを使いながら空間を意識し、必要最低限の情報量で状況や感情の機微を捉えていく巧みな演出も出色で、アカデミー監督賞も納得の腕前。
あとはなんといっても役者陣。
主演男優賞のコリン・ファースも良かったけど、個人的には断然ジェフリー・ラッシュに軍配をあげたい。
この人がいれば安心できると思えるような知性とユーモアあふれる存在感にグイグイ引き込まれた。
ヘレナ・ボナム=カーターもいつもの風変わりな役柄とは異なる味を出していて秀逸だったし、やはりどこからどう見ても「ソーシャルネットワーク」を打ち負かすに足る堂々たる作品だったと思うわけですw納得。
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マリー・アントワネット
出演:キルスティン・ダンスト、ジェイソン・シュワルツマン、リップ・トーン、ジュディ・デイヴィス
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
(2006年・アメリカ・123分)WOWOW
評価★★★/65点
内容:1769年、フランスとの同盟関係を確固とするために、オーストリア大公マリア・テレジアは14歳の皇女マリー・アントワネットを15歳のフランス王太子ルイのもとへ嫁がせる。フランスへ渡ったマリーは、ベルサイユ宮殿での結婚生活に胸をふくらませるが、夫はまるで彼女に関心がなく、世継ぎを求める声がプレッシャーとなってのしかかってくる始末。そんな孤独を紛らわそうと、贅沢三昧な宮廷生活に明け暮れるのだったが・・・。
“現代女子高生のマリー・アントワネットなりきり体験ツアー!”
まるでアイドルグループがマリー・アントワネットになりきって、アタシ、オーストリア高校からベルサイユ高校に新しく転校してきたマリー・アントワネットといいます!よろしくネ
、、、みたいなポップといえば聞こえはいいが、軽いノリのアイドル学園映画といった方がしっくりくるような出来に、大仰なコスチュームプレイにお固く退屈なイメージを抱いてしまっているオイラは、やや面食らってしまった。
だって歴史ものとしての体をほとんど成してないもんこれ(笑)。
もちろんベルサイユ宮殿をはじめとして、衣装、調度品、美術、装飾などは圧倒的なホンモノ感を漂わせてはいる。しかし、その中で繰り広げられるべき人間模様は非常に浅く、歴史的背景もベルサイユから外に出ることはない。
また、マリー・アントワネットの人物像ひとつとっても、苦悩や葛藤などの内面はほとんど描かれることなく、あるとすればどうすれば夫とSEXできるのかということだけ・・・。
権謀術数うず巻くフランス版大奥ともいうべき歴史の裏側には全く目もくれずに、浮世離れしたベルサイユのしきたりの中で底抜けに明るいマリー・アントワネットが体験する宮廷生活のみにフォーカスした描き方は物足りなさを感じてしまい、観終わってイの1番に出てくる感想は、、で、何を描きたかったの?ということだけなんだけど、逆にこれだけ贅沢な映画のつくりもないだろうと思わせてしまう。この内容で(笑)。。
そういう意味でも、世間知らずのティーンエージャーがマリー・アントワネット体験ツアーに参加してみましたといった軽っぽさ感をこの映画から拭い去ることはできない。
が、オイラみたいな隠れキルスティン・ダンストFAN(これをオイラは隠れキリシタンと呼ぶw)にとっては、120分間延々と彼女を堪能できてしまうのだから、これほど嬉しいことはない。
そう考えるとやっぱ贅沢だわ、この映画。
でも、、、それでいいのか?ソフィア・コッポラさん・・・。
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ラストエンペラー
出演:ジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本龍一
監督・脚本:ベルナルド・ベルトリッチ
(1987年・伊/英/中・163分)NHK-BS
評価★★★★☆/85点
内容:わずか3歳の時に西太后によって北京・紫禁城に迎えられた溥儀は、間もなく清朝の皇帝に任命された。6歳の時に辛亥革命が起きて彼は皇帝を退位するが、紫禁城からは出られず、その後起きたクーデターによって城を追われると、日本軍の甘粕大尉によって天津へと逃亡する。やがて溥儀は甘粕らの計らいで満州国の皇帝となるが、ただの操り人形にすぎないことを知るのだった・・・。清朝最後の皇帝・溥儀の半生を描き、アカデミー作品賞・監督賞をはじめ9部門を獲得した歴史ドラマ。
“これほどまでに映像が物語を創造していく映画を自分は知らない。”
極彩色にゆらめく豊潤な映像美に誘われた時間旅行に映画を見たぞー!という満足感と恍惚感に浸ることができる。
映画に酔いしれるというのは、こういうことを言うのかもしれない。
しかしまぁ、きな臭い悪魔のような激流に翻弄されていた時代の中国を、東洋ロマンあふれる悠久の大河のごとき筆致で描ききることができたのは、西欧人ならではの視点じゃないと作れないだろうなとは思った。
いずれにしても息をのむようなビジュアルにただただ圧倒されてしまうのだが、その中で紡がれる物語に関しても、門と堀に囲まれた紫禁城から一歩も出られない皇帝と、同じく門と塀に囲まれた収容所から一歩も出られない囚人を同義的に語る視点は面白かったし、戦前・戦中は取り残されたあるいは祭り上げられた権力の象徴を、そして戦後は悪の象徴を担わされた人間・溥儀の絶対的孤独が観る側に対峙して深々と迫ってきて見応えは十分だった。
そういう意味では、現在日本の象徴天皇が置かれている現状にも通じるかんじがして、興味深かった。
静かだけど劇的な映画だったな。
溥儀を演じたジョン・ローンの憂いを含んだまなざしと、ラストの夢幻のような幕の下ろし方が脳裏に焼きついて離れない。
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王の男(2006年・韓国・122分)WOWOW
監督:イ・ジュニク
出演:カム・ウソン、イ・ジュンギ、チョン・ジニョン、カン・ソンヨン
内容:16世紀初頭。旅芸人のチャンセンと女形のコンギルは、国一番の芸人になろうと漢陽の都にやって来る。そこで時の王・燕山君(ヨンサングン)の悪評を耳にした2人は、宮廷を皮肉る芝居をやって一儲けたくらむのだが、あえなく王の重臣に捕まってしまう。しかしチャンセンは、その芝居を人前で笑ったことがない王の前で披露し、王を笑わせてみせると豪語。もちろん笑わなければ死刑。はてさて2人の運命やいかに・・・。韓国史上最悪の暴君といわれる燕山君をモチーフに描く宮廷劇。
評価★★★☆/70点
“芸人は、今も昔も命張ってます!”
下ネタ満載の痛烈な風刺劇はフツーに見ていて面白いのだが、それ以上に大仰なまでの人格破綻者ぶりをひけらかす王ヨンサングンの方が個人的には見応えがあった。
「達磨よ、遊ぼう!」(2001)、「達磨よ、ソウルに行こう!」(2004)でのコメディ演技ぶりが印象的だったチョン・ジニョンが演じているというところも大きかったのだと思う。
韓国史上最悪の暴君といわれているらしいヨンサングン(燕山君)だが、その歴史的背景やその時代を韓国人のように知識として分かっていればもっとこの映画を楽しめたのかもしれない。
日本だと織田信長とかになるんだろうか。。
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クンドゥン(1997年・アメリカ・135分)NHK-BS
監督:マーティン・スコセッシ
出演:テンジン・トゥタブ・ツァロン、ギュルメ・テトン、テンチョー・ギャルポ
内容:1937年、チベットのある寒村を僧侶たちが訪れた。彼らは4年前に逝去したダライ・ラマ13世の生まれ変わりを探す旅を続けていたが、この寒村でついにダライ・ラマ14世になるべき幼子に出会う・・・。名匠マーティン・スコセッシがダライ・ラマ14世の半生を描いた野心作。
評価★★★/65点
チベットとダライ・ラマについてのさわりをササッとなぞっただけという感は否めない。
しかし、心を洗うような流麗な映像と音楽の力によって武器などビタ一文付け入るすきのないチベットの荘厳な風景が印象的だったし、国是とする非暴力主義に十分すぎるほどの説得力をもたせていたとは思う。
暴力を徹底して描いてきたスコセッシが、非暴力をこれだけ貫いて描くというのもある意味では見所なのかもね。
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王様と私
出演:デボラ・カー、ユル・ブリナー、リタ・モレノ、マーティン・ベンソン
監督:ウォルター・ラング
(1956年・アメリカ・133分)DVD
内容:1862年、イギリス人の未亡人アンナは、シャム君主モンクートの子供たちの家庭教師としてバンコクにやって来た。が、赴任早々アンナは、ビルマ大公からの貢ぎ物の姫タプティムを寵愛し、さらに十指に余る王妃に囲まれている王の前時代的な暮らしぶりを見て愕然。しかし、王にはどこか憎めない一面もあり、アンナは彼の目を世界に向けさせようと努力する・・・。絢爛豪華なシャム王家の宮殿を舞台にしたミュージカル映画で、アカデミー主演男優賞などを受賞。
評価★★★☆/70点
死の床に伏せた王様がアンナに感謝の気持ちを伝えて王位を息子に譲るというラストに現実味がない・・・。
どっからどう見たって死にそうな男に見えないもん(笑)。だってモーゼはアホや!と豪語するねんで。
それくらいユル・ブリナーのバイタリティあふれる粗野な王様っぷりは強烈で魅力的なものだった。
ミュージカルナンバーも“シャル・ウィ・ダンス”をはじめとして、どれも忘れがたい魅力にあふれていて、東洋と西洋の出会い、伝統と近代化というやや押しつけがましいテーマを難なく表現することができており、非常に印象的。
でも、やっぱり最後、行きつくところはユル・ブリナーだな。なんか一瞬、渡辺謙に見えなくもなかったけど。
しかし、1951年の初演から4600回以上上演されたブロードウェイの舞台版でも主演を務めていたブリナーは、1985年の最終公演でガンに侵されていることを告白、病を押してステージを務め上げたという。
やっぱスゴイ役者さんだったんだなぁ。
エキサイティングな映画でございました、、エトセトラ~エトセトラ~
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