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2012年11月19日 (月)

夢のシネマパラダイス337番シアター:“世界一運の悪い男”ブルース・ウィリス!

RED/レッド(2010年・アメリカ・111分)WOWOW

 監督:ロベルト・シュヴェンケ

 出演:ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、リチャード・ドレイファス、メアリー=ルイーズ・パーカー

 内容:元CIAエージェントのフランク。引退し田舎で一人暮らしをする今は、年金顧客係の独身女性サラと電話でチャットすることが唯一の楽しみ。が、そんなある日、フランクの家に謎の武装集団が侵入。難なく一味を仕留めた彼はサラの身の危険を案じ、彼女のもとへ馳せ参じるのだったが・・・。

評価★★★/60点

大御所たちのハチャメチャなノリは見ていて楽しめるが、ストーリーラインのハチャメチャなノリはややついて行くのをやめたくなる・・。

それはつまるところ話の展開として、巻き込まれ型ヒーロー、ブルース・ウィリスが事務のお姉さん(といっても46歳!)を巻き込んでいくというブルース視点の話になっているのだけど、ここはあくまでお姉さん視点に徹してほしかったという所に行き着く。

ブルースが陰謀に巻き込まれるというのはもう五万と見てきたわけで、これをメインにするのはあまりにも意外性に欠ける。

その点、顔も知らない年金受給者のオッサンの他愛もない話に付き合う46歳のオバハンという地味な設定をこそ活かすべきで、「ブリジット・ジョーンズの日記」のブリジット嬢の10数年後の姿を想起させつつ大変な事態に巻き込まれるという、いわばヒッチコックの巻き込まれ型サスペンスの王道を踏んだ方が断然面白かったと思う。

ここの軸がしっかりしていれば脇でいくらおフザケをしようとも話のまとまりはつくだろうし。

最初は46歳のオバハンだけを映しつづけて、ブルースは電話の声だけにしてさ、いきなりオバハンの部屋に現れるところでブルース登場!の方がインパクトもあると思うんだけどなぁ~。

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隣のヒットマン

2001038 出演:ブルース・ウィリス、マシュー・ペリー、ロザンナ・アークエット、マイケル・クラーク・ダンカン

監督:ジョナサン・リン

(2000年・アメリカ・99分)MOVIX仙台

内容:カナダのモントリオールで歯科医をしているオズ。経営は火の車で、妻との仲も冷え切っていた。そんなオズの家の隣に“チューリップ”の別名を持つ殺し屋ジミーが引っ越してきた。引退した彼の首には高額の賞金がかかっているというのだが・・・。

評価★★★/60点

そろいも揃ってバカだとこっちもバカになれるから安心して観れてしまう。

しかもひねりというものがないから記憶に引っかかることもないという・・・

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キッド

Kid 出演:ブルース・ウィリス、スペンサー・ブレスリン、エミリー・モーティマー

監督:ジョン・タートルトーブ

(2000年・アメリカ・105分)DVD

評価★★/40点

内容:39歳、優秀なイメージコンサルタントのラスは多忙な毎日を送っているが、他人も唯一の肉親である父親さえをも寄せ付けない男。そんな彼の前にある日、8歳の頃の自分が現れ、自分が何一つ子供の頃の夢を叶えていなかったことに気付かされる。。。

“未来へ敷かれた既知のレールのとおりに生きていくなんて、俺はイヤだ!”

で、いまだにお先真っ暗闇のレールを走っているわたくしなのでした・・。そろそろ視界が開けてきてもいいんでないかい

それにしてもいくら子役とはいえあれはひど過ぎ。

話のつくりにしてもさ、タイムパラドックスがないというのは自分本人同士が会っちゃうという設定からいうと納得できるのだけど、せめて話の落とし前としてあのガキは実は幻影だったとか、あのガキは他の人には実は見えていなかった、とかそういうふうにしてほしかったんだよなぁ。

なのに、え゛っ?何?さらに未来の自分まで出てくるのかよみたいな。ア然ボー然とはこのことよ・・・。

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マーシャル・ロー

Qtyugnvip 出演:デンゼル・ワシントン、アネット・ベニング、ブルース・ウィリス、トニー・シャルホウブ

監督・脚本:エドワード・ズウィック

(1998年・アメリカ・117分)WOWOW

評価★★★★/75点

内容:ブルックリンでバス爆破事件が発生。その後NYが連続爆破テロの脅威にさらされ、政府は戒厳令を発布する事態に・・・。過激派テロとFBI、謎のCIA職員、そして武力行使で弾圧する軍隊の息詰まる攻防戦が展開する社会派問題作。

“つくられた小細工めいたテロのオンパレードや戒厳令よりなにより、悠々と立っている貿易センタービルの姿がなんともいえない不気味さと悲しさを想起させてしまう。”

この監督が真摯な態度でこの映画に取り組もうとしているのはよく伝わってくるので一応この評点。

しかし、物足りなさを感じたのもまた事実。

自分たちの飼い慣らした犬に咬まれるというのはスーパーパワー・アメリカの本質をうまく突いているのはよいとしても、問題は一介の将軍にすぎないデヴローに罪をなすりつけて、アラブ系の市民たちが解放されて終わるいかにもなハリウッド映画らしいラストの描写。

監督ぅ、、ここをぼかしちゃダメっすよ。

デヴローの背後に広がる軍産複合体という広大な闇。それこそがスーパーパワー・アメリカの真の本質なのだから。

ま、いかに反骨精神ハリウッド&アメリカの良心といえどもそこまで足を踏み入れるのは危険すぎるか。

その領域はマイケル・ムーアにまかせるしかないってか(笑)。

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フィフス・エレメント

Pda914 出演:ブルース・ウィリス、ゲイリー・オールドマン、ミラ・ジョヴォヴィッチ

監督・脚本:リュック・べッソン

(1997年・仏/米・127分)仙台第1東宝

評価★★★/65点

内容:2214年のNY。正体不明の有機体が地球に接近し、それが5000年に一度地球にやって来る邪悪な反生命体であることが判明した。その頃、元統一宇宙連邦軍の精鋭で今はタクシー運転手のコーベンは、謎めいた少女リールーと出会う。やがて2人は武器商人のゾーグやマンガロワ人に妨害されながらも、人類を救うため宇宙へと旅立った。

“こんなにケバくて騒々しい「アニメ」観たことない。。”

ド派手な原色カラーの鉄板にイマジネーションをとにかく何でも放り込んで、べッソン&ゴルチエ爆走バーナーでバンバンはじけさせたトンでもアニメ。

頭ん中すっからかんにして観てもこの評価が限界です・・・。

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パルプ・フィクション

00000447781l 出演:ブルース・ウィリス、ジョン・トラヴォルタ、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、ティム・ロス

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ

(1994年・アメリカ・154分)

評価★★★★/80点

内容:『レザボア・ドッグス』で一躍世界から注目される存在となったタランティーノが、アメリカのB級犯罪小説であるパルプマガジン的なストーリーを目指して、交錯するギャングの一味とその周辺の人々の3つのエピソードをバイオレンスあり、コメディありで描いていく異色作。ボスの留守中にボスの若い妻ミアの食事の相手を命じられたヴィンセントの悲喜劇、八百長試合を請け負いながらそれを裏切るボクサーのエピソードなどが重なり合っていく・・・。カンヌ国際映画祭作品賞、アカデミー賞でも7部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

“カンヌ受賞の壇上で平然と中指をおっ立てたのはこの男が最初で最後だろう。その意味でも歴史に残るであろうこの三文小説を一度は手にとって観るべし。”

あるいは、「デスペラード」にこの男が出演したときに、劇中飲み屋のバーでバーテンダーに自慢げに語るこの男がいうところのジョーク、、、

男「ここから何メートルも離れたコップに俺のションベンを一滴残さず入れることができるんだけど、できるかできないか300ドル賭けをしないか。」

バーテンダー「よっしゃ、できない方に賭ける。」

男「グヘヘヘ・・・・。そうくると思った。実は外にいる連中とも賭けをしていて、アンタが今の賭けに乗ってくるかこないかで500ドル賭けてたんだ。ようするに俺は200ドル儲けちゃうわけだ。グヘヘヘ・・・。ジョークだよ旦那。」

、、こんなレベルの男が作った映画としては上出来すぎるくらい上出来な映画パルプ・フィクションをやはり一度は摂取してみるべきだろう。

その結果、ハイになるか気分を害するか、二つに一つだが・・。

この男の名は、クエンティン・タランティーノ。

いびつな顔をしているこの男の映画も、またいびつだった。。

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ティアーズ・オブ・ザ・サン(2003年・アメリカ・121分)WOWOW

 監督:アントワン・フーワク

 出演:ブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチ、コール・ハウザー、イーモン・ウォーカー

 内容:『ダイ・ハード』4作目の企画から転じた戦争映画。内戦下のナイジェリア。米海軍特殊部隊SEALのウォーターズ大尉率いる米軍部隊がアメリカ人女医リーナの救出に向かい、難なく彼女を助け出すことに成功。が、リーナは難民を置き去りにして任地を離れることに激しく抵抗。1度は現地を飛び立ったものの、あまりの惨状にウォーターズは任務に反して難民の救出を決意し、たった8人で300人の敵兵を突破しようと試みる・・・。

評価★★★/55点

“映画を観終わった後ははっきりいって徒労感しか残らない。”

最初っから救出してろよっつう話だろ。

それを120分見せられつづけるハイテンションで付き合わされ、それから解放されたときに残るのはなんともいえない徒労感のみ。誰かオイラの肩を担いでくれ。。

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ホステージ(2005年・アメリカ・113分)WOWOW

 監督:フローラン・シリ

 出演:ブルース・ウィリス、ケビン・ポラック、ジョナサン・タッカー

 内容:元ロス市警の人質解放交渉人だったジェフは、ある事件で失敗し、現在は小さな町の警察署長になっていた。そんなある日、若者3人組が会計士ウォルターの住む郊外の豪邸に侵入する立てこもり事件が発生。ジェフはすぐに交渉に向かうが、そこには思いもよらない運命が待ち受けていた・・・。

評価★★★/65点

“これをビッグマック戦術という・・・。”

J.フォスターの「パニック・ルーム」を「パニック・ハウス」にグレードアップしてみたり、「ホーム・アローン」からコメディ&おトボケ要素を完全剥離してみたり、「ダイ・ハード」の奥さん&娘救出バージョンに、あげくの果てに「シックス・センス」の切なそうな抑え目演技のB.ウィリスなど、あの手この手の手練手管を用いて体裁を整えようとしているのが見え見え。

なのだが、それらのイイとこ取りなので味は思ったほど悪くはないんだな。。

マクドナルドのビッグマックなみに詰め込んだボリューム感はあるけど、サクッと消化できてしまうのが売りかもね、これは。そのかわり所詮はファーストフードレベルだから記憶には残りそうにないけど・・・。

夢のシネマパラダイス481番シアター:BALLAD 名もなき恋のうた

BALLAD 名もなき恋のうた

125215378606316208210_balladp 出演:草彅剛、新垣結衣、大沢たかお、夏川結衣、筒井道隆、吹越満、香川京子、中村敦夫

監督・脚本:山崎貴

(2009年・東宝・132分)CS

内容:どこにでもいるフツーの小学生、川上真一。ある日、地元でも有名な巨木の下で古い手紙を見つけた真一は、途端に1574年の戦国時代にタイムスリップしてしまう。そこは春日という小国。無類の強さを誇る侍、井尻又兵衛と出会った真一はお城へ出向くが、そこで見た美しき姫君、廉姫はよく夢に出てくる女性にそっくりだった。一方、又兵衛と廉姫は幼い頃から一緒に育ち、身分違いの恋心を秘めていたのだが・・・。

評価★★☆/50点

ランドセル背負った少年がタイムスリップするという聞こえがいい題材なのに、タイムスリップに至る描写、またタイムスリップそのものの描写があまりにもいい加減であ然とした。

車の中で眠ってたらタイムスリップしちゃったって、、そんなアホな話ある!?

こんなに心躍らないタイムスリップ見たのも初めてだわさ・・

さらにこのタイムスリップする両親の行動にもリアリティがなくて説得力がなく、天正2年に息子がいると信じ込む夏川結衣の深刻さなんて逆に笑えてしまうくらいw

またタイムスリップしても何するでもなく、ただの傍観者気取りでは何の意味もない。

もうちょっと時間をかけてプロローグおよびキャラクターを描くとか、例えば両親を崩壊直前の夫婦仲にするとか味付けを加えた方がよかったと思う。

城攻めなどの合戦シーンはかなりよく撮れていただけに、、う~ん。。ていうか、草彅くんが撃たれるラストも唐突すぎて、なんで??ってかんじだったし。

まさに小学校低学年レベルのお話だったな・・。

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戦国自衛隊

Kabd79 出演:千葉真一、夏木勲、渡瀬恒彦、中康次、三浦洋一、小野みゆき、薬師丸ひろ子

監督:斎藤光正

(1979年・東宝・138分)WOWOW

評価★★/40点

内容:戦国時代にタイムスリップした自衛隊員たちのたどる数奇な運命を描いたSFアクション。大演習に向かう途中の自衛隊一個小隊が、戦車やヘリコプターなどの装備とともに400年前の戦国時代にタイムスリップした。事態を飲み込めないでいた伊庭三尉をはじめとする隊員たち21名は、伊庭たちの近代兵器の威力に目をつけた長尾景虎、後の上杉謙信と同盟を結ぶ。景虎の天下統一を後押しすることに男としての生きがいを見出した伊庭は、川中島の戦いに臨み、総勢2万の武田軍を迎え撃った・・・。

“爽やかなBGMをバックに繰り広げられるモラルもヘッタクレもない糞ミソ戦争ごっこ”

爽やかなBGMをバックに映し出される強姦シーンには思わず吐き気をもよおしてしまった。何なんだこの音楽・・・。

この映画が公開された頃に生まれた自分にとっては、この映画を世代間ギャップで片付けるのは簡単だが、それにしたって最低限の品は持っていてほしいものだ。

とにかく奴らが現代に戻ってこなくて良かったよ(笑)。。

マンガにすればおそらく武論尊&原哲夫の世界と筆致になっちゃうんだろうな。

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戦国自衛隊1549(2005年・東宝・119分)仙台第1東宝

 監督:手塚昌明

 出演:江口洋介、鈴木京香、鹿賀丈史、北村一輝、綾瀬はるか、伊武雅刀

 内容:陸上自衛隊の東富士駐屯地で対プラズマ用人工磁場シールドの実験中に事故が発生。実験に参加していた的場1佐らの中隊が460年前の戦国時代にタイムスリップしてしまう。それから数年後、過去への干渉が原因とみられる異常事態が日本各地で起こってしまう。この事態収拾のため、的場の元部下・鹿島らのロメオ隊が結成され、事故と同じ状況を作り出し、2度目のタイムスリップを敢行し1549年へと向かうが・・・。1979年の「戦国自衛隊」をもとに、人気作家・福井晴敏が新たに書き下ろしたストーリーをもとにリメイク。

評価★★/40点

“武士とYシャツとおぬし

作詞:レアル・マドリディスタ

作曲:平松愛里

唄:嶋大輔

お願いがあるのよ あなたの時代に来た拙者

大事に思うならば ちゃんと聞いてほしい

飲み込む謎のホ~ル 3日半までは許すけど

4日目 つぶれた世界 恐れて過去に帰らないで

武士とYシャツとおぬし 愛する姫のため

毎日磨いていたいから~ ちゃんとした服を着せろよ

愛する姫のため キレイでいさせて

♪     ♪     ♪     ♪     ♪

退屈させないで 客の勘は鋭いもの

映画が嘘つくとき 屁理屈こねまくる

ドラマ酷すぎたら 子供だましの絵に気をつけて

監督 知恵をしぼって ゴジラ入りスープで道連れにしよう

武士とYシャツとおぬし 愛する映画のため

毎日観つづけていたいから~ 彼女を誘うデートに

この映画は不似合い 他のに行かせて

♪     ♪     ♪     ♪     ♪

大地を這うような ヘリの爆音も爆撃も

もう暗闇にCG処理 陳腐すぎて 嫌

だけど もし寝言で 他の映画を呼ばぬように

気に入らないそんなときは “パトレイバー2”と大声で呼んで

角川60周年 娯楽の王道人生

突然 捨てたくなったなら~ 最初に相談してね

私はあなたとなら ホントに大丈夫!?

♪     ♪     ♪     ♪     ♪

もし続編作るなら 鎌倉時代に行ってね

日本を元寇から守るため~ 自衛隊は旅立つわ

初めての自衛戦 見届けてみたいの

武士とYシャツとおぬし 愛する映画のため

毎日観つづけていたいから~ 人生の記念日には

映画観たいと言わせる そんな映画を作って~          

夢のシネマパラダイス71番シアター:あしたのジョー

あしたのジョー

11082901 出演:山下智久、伊勢谷友介、香里奈、香川照之、杉本哲太、倍賞美津子、津川雅彦

監督:曽利文彦

(2010年・東宝・131分)WOWOW

内容:昭和40年代の東京。下町のドヤ街でケンカに明け暮れている男、その名は矢吹丈。そんな丈にボクシングの才能を見出し惚れ込んだ元ボクサーの丹下段平は、丈を執拗に誘うのだが丈はつれない顔。しかし、少年院で出会ったプロボクサーの力石徹にボコボコにされたことで、打倒力石を決意した丈は、段平がドヤ街に開いたオンボロジムで血の滲む特訓を続けていく・・・。

評価★★★/60点

原作漫画を再現しようという心意気は感じられる作品ではあった。

クロスカウンターパンチが炸裂した瞬間や、力石の必殺アッパーをくらったジョーがマットに沈んでいく瞬間、はたまた力石の遺体が安置されている控え室にジョーが入っていく時のカット割りなど、原作における場面場面の決定的な1コマをよく再現できている。

また、役者陣もおおむね良好で、特に力石の死という答えが最初から分かっている中で、キャラクターの生々しさを体現できていた伊勢谷はスゴイの一言で、彼の死への道程を見るのは胸が痛くてツライものがあった。

、、のだが、力石のガチ度に比べると、やはり山Pのジョーはいまいち。。野性味がなくスマートすぎるのだ・・・。

ボクシングとはかくあるべしという信念のもとストイックなボクサーとしての王道をいく力石に対し、つまはじきにされた体制に反逆するアウトローのジョーの方がヒール役という構図なわけで、そういう反発心のかたまりみたいなギラギラしたかんじが山Pにはないんだよね。ギラギラじゃなくてキラキラ、、反発じゃなくて素直になってちゃ何の意味もない・・・。

まぁ、アウトローがヒーローたりえない今の時代には合致するといえばそれまでだが・・。

あと、基本的にあしたのジョーは、梶原一騎のホラ話をちばてつやのキャラ描写=人間ドラマが強引にねじ伏せた作品だと思うのだけど、辰吉丈一郎がマットに崩れ落ちる瞬間や、はたまたメディアに持ち上げられたかと思えば一転して血祭りにあげられた亀田一家などをリアルタイムで見てきた世代からすると、やはりノーガード&クロスカウンター戦法をはじめとするリアリティのなさを補強すべき人間ドラマが弱かったのは痛かった。

力石がウェイトを落としてまでジョーにこだわる理由が全く伝わってこないし、白木葉子をドヤ街出身という設定に変えたりして試行錯誤のあとは見えるものの、かえって話がオカシくなってしまった感が・・・。

また、ボクシングシーンもスローモーションを多用してばかりでボクシング映画にあるべき痛みが伝わってこない。こんなに心が揺り動かされないボクシングシーンを初めて見たw

いろんな点でイタかった、、というオチってそりゃあないだろう。そもそもこれは女性にシナリオ書かせるべきじゃないだろっていう・・

まぁ、原作のコマ割りを忠実に再現することか、それとも原作発表から40年後の今の時代になってジョーを甦らせるリアリティの追求か、どちらに立ち足を置くかでかなり変わってくる実写化だったと思うのだけど、前者を取ったとすればこれはこれで出来の良い作品なのかも・・。

でも、やっぱ漫画なら許せるけど実写だとどうなんだコレという違和感はつきまとってしまい、正直パッとしなかったなぁ。。

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レイジング・ブル

1900_0166 出演:ロバート・デ・ニーロ、キャシー・モリアーティ、ジョー・ぺシ

監督:マーティン・スコセッシ

(1980年・アメリカ・128分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:実在のプロボクサー、ジェイク・ラ・モッタを主人公に、彼の不屈の闘志をセミドキュメンタリータッチで描いた作品。

“言っちゃなんだけど、、、雄牛よりもたち悪いだろ、このおっさん”

同じボクシング映画でもこの映画は「ロッキー」のような努力とド根性のスポ根映画ではない。

努力も何もない映画だ。ただ拳闘の強い男ジェイク・ラ・モッタが存在するだけの映画だ。

では何を描くのか。

普通ならば、このての映画はリング外での物語がポイントになってくるが、主人公のリング外での成長度合いなどといったカタルシスもこの映画ではかえって生ぬるいだけだ。優しさや暖かさは、そこには無い。

あるのは嫉妬、猜疑、独善、獰猛。まさに獣の匂いそのものである。

それゆえ、リング上での闘いの結果がどうであろうと観ている側にとってはほとんどどうでもいい。そこにカタルシスなど得られるわけがないのだから。

となると、リング上にあるのはこの映画では痛みだけである。

その点この映画でのボクシングシーンは的を射ている。

顔のズームアップを多用し、血しぶきが飛んだり、顔がひしゃげたりといった痛々しさが痛烈に伝わってくる。

そう、ただの痛み。感情の入り込む隙がないただの痛みである。

観ている側にとってはこれほど痛いものはない。そこに何ら意味を感じ取ることさえできないのだから。何か意味をもたせるとすれば、それは相手をマットにたたき付けるという貪欲さだけである。

そもそもジェイクが、なぜボクシングをやろうと思ったのかということでさえ、この映画では描かれていないのだから、考えてみるとスゴイことである。

逆にいえば、リングを降りても人間としては幼稚だが獰猛でいつも危険な香りを漂わせる獣であり続けるジェイクを描ききること、あるいは見つめ観察することに着眼点が置かれているのだといえよう。

リングが檻の中だとすれば、リングの外にいるジェイクは檻から解き放たれた状態の獣に他ならない。

リングの中とリングの外、どちらが危険かは言うまでもない。

この実話がもたらした逆転の構図にこそ観ている側は怖れを抱きおののくのだ。

この映画はボクシング映画でありながらボクシング映画ではない。スリラーともいえる部類の映画だといえる。

そして感情の入り込むことさえ許さない。

この映画は、白黒で正解だった。

(追記)キャシー・モリアーティがローレン・バコールにとても似ていて驚いた。

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ザ・ファイター

T0009756q出演:マーク・ウォルバーグ、クリスチャン・ベイル、エイミー・アダムス、メリッサ・レオ、ジャック・マクギー

監督:デヴィッド・O・ラッセル

(2010年・アメリカ・116分)NHK-BS

内容:マサチューセッツ州の低所得労働者の街ローウェル。かつて天才ボクサーとしてスポットライトを浴び街のヒーローだったディッキーは、今ではドラッグまみれの荒んだ日々を送っていた。一方、そのディッキーの異父弟ミッキーもボクサーだが、トレーナーの兄とマネージャーの母アリスの無理難題に振り回され連敗続き。完全に行き詰ったミッキーは、家族と袂を分かち、恋人シャーリーンと共に再起を図ることにするが・・・。

評価★★★☆/70点

アメリカ版石田さんちの大家族といえばいいのか、いやあのむちゃくちゃな破天荒ぶりはビッグダディの方かw

しかし、9人兄妹でありながらミッキー(マーク・ウォルバーグ)とディッキー(クリスチャン・ベイル)以外の7人姉妹は金魚のフンみたいなその他大勢の添え物的扱いで、存在意義がなくて邪魔だったんですけど

あと、ミッキーがボクシングの試合でボコボコにされながらも起死回生の一発逆転劇をキメる展開って言うなればロッキースタイルなんだけど、そのわりにはカタルシスに乏しく、ボクシングシーンが味気なかったなぁというのもマイナス要素。。

ただ、ヤク中兄貴、ビッグマミー、タフネス彼女の三つ巴のバトルとそれに翻弄されながらボクシングに打ち込むミッキーの人間ドラマは見応えがあり、マイナス要素を補ってあまりある。

つまり、ミッキーの最大の敵はボクシングの試合相手ではなく家族だったというオチ。。

まぁ、実話の持つ強度がそのまま反映されたようには感じられなかったけど、その不足分を役者陣が充填していたし、プラスマイナスでいうと完全なプラス映画ではあった。

P.S. エンドロールにミッキー、ディッキー実の本人が出てきた時にディッキーを見てまんまじゃん!というくらいクリスチャン・ベイルの役作りにドン引き(笑)。

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傷だらけの栄光(1956年・アメリカ・113分)NHK-BS

 監督:ロバート・ワイズ

 出演:ポール・ニューマン、ピア・アンジェリ、サル・ミネオ、アイリーン・ヘッカート

 内容:NYの下町に生まれ育ったロッキー・グラジアーノ。感化院送りになった不良少年時代を経て軍隊に入隊するものの、そこでも軍刑務所送りに。しかし、そこで出会った刑務官に素質を認められ、プロボクサーを目指すが・・・。ポール・ニューマンの出世作にして、スティーブ・マックィーンのデビュー作としても有名。

評価★★★★/75点

“これがホンマもんのロッキーだった!”

ロッキー・グラジアーノのケンカと暴力に明け暮れる世間知らずのチンピラ男風情は、まるで矢吹丈そのもので、特に前半のロッキーの手のつけられない暴走っぷりは、まんまあしたのジョー。

しかも、それを体現するポール・ニューマンがカッコ良いのなんのとくれば映画に引き込まれないわけがない。

とにかく、これが実質デビュー作というのが信じられないくらいのポール・ニューマンのキレキレの存在感にただただ圧倒されっぱなしの2時間だった。

難点としては、宿敵ゼールの存在感がちょい薄かったことくらいかな。

とはいえ、試合の演出なんかも50年代という時代を考えればよく出来てたし、シルベスター・スタローンのロッキーと見比べてみても面白いと思ったし、かなり収穫のある映画だったことはたしかだ。

ポール・ニューマンの映画見直してみよっ。

2012年11月 4日 (日)

夢のシネマパラダイス304番シアター:ピクサーアニメ第1倉庫

トイ・ストーリー

Toystory_small 声の出演(日本語吹き替え):唐沢寿明、所ジョージ、名古屋章、永井一郎、戸田恵子

監督:ジョン・ラセター

(1995年・アメリカ・81分)盛岡ピカデリー

評価★★★★/75点

内容:おもちゃたちの友情と冒険を描いた、世界初の全編フルCGによる長編アニメーション。アンディの6歳の誕生日に、プレゼントとして最新式のアクション人形バズ・ライトイヤーがやって来た。木製のカウボーイ人形ウッディは、バズにアンディのお気に入りの座を奪われてしまい、気が気ではない毎日。ある日、ひょんなきっかけで家の外に飛び出たウッディとバズは、いがみ合ううちに隣家の悪ガキ・シドに捕まってしまった・・・。

“ここにわたくしは罪を告白いたします・・・”

帰ってきたウルトラマンとウルトラマンタロウのフィギュアの首を取って付け替えてしまったことをどうかお許し下さい。

メカ恐竜のゾイドをすべり台から滑らして落としてしまい、アガッアガッと言ったあと動かなくさせてしまったことをどうかお許し下さい。

キン肉マン消しゴム通称キン消しで本当に字が消えるのかやってみたところ、なかなか消えなくて意地になってこすってたら腕から真っ二つに裂けてしまったことをどうかお許し下さい。

妹が大事にしていたリカちゃん人形のスカートをめくってみたり、顔に油性マジックで鼻毛などを落書きしたところ消えなくなってしまい、あの美貌を汚してしまったことをどうかお許し下さい。

ロシアのお土産で歴代大統領の姿を木で模してつくった置き物マトリョーシカ、エリツィンの上半分を取るとその中に一回り小さいゴルバチョフが入ってて、それをまた取っていくとさらに小さいフルシチョフが入ってるマトリョーシカの中にロウソクを立てて密封したところ(酸素がなくなって火は消えると思ったんです・・・)、エリツィンが激しく燃えてしまったことをどうかお許し下さい。

ミッキーマウスのぬいぐるみを兄弟げんかの時に投げ合ったことをどうかお許し下さい。

田宮のミニ四駆を友達より速く走らせるためにパーツを軽量化しようとして、どこかしこに肉抜きや穴あけをしまくったところぶっ壊れてしまったことをどうかお許し下さい。

その他諸々のおもちゃに対する非人道的な行為をどうかお許し下さい。

ちなみにこれらは自分が小学生のときのお話ですから、、、

この罪は自分に子供ができたときにしっかり教え諭すことで償いたいと思います。

決してシドみたいな子供にはさせませんので。許してーw

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バグズライフ(1998年・アメリカ・94分)仙台日之出プラザ

 監督:ジョン・ラセター

 声の出演(日本語吹き替え):宮本充、土井美加、須藤祐実、磯辺万沙子

 内容:ホッパー率いるバッタ軍団に収める食料を集めるため、重労働を強いられるアント・アイランドのアリたち。発明家の働きアリ・フリックはバッタに対抗するために用心棒を捜しに都会へ旅立ち、七人の侍ならぬ8匹の昆虫たちを連れてくるが、彼らはただのサーカス団員で・・・。

評価★★★/65点

NGシーンを心底楽しめるまでに各キャラクターの味わいが深くなかったのが、なにか物足りなさを残す。

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トイ・ストーリー2(1999年・アメリカ・92分)MOVIX仙台

 監督:ジョン・ラセター

 声の出演(日本語吹き替え):唐沢寿明、所ジョージ、日下由美、名古屋章、三ツ矢雄二

 内容:ある日、ウッディがガレージセールでおもちゃ屋のアルにさらわれてしまう。超レアもののビンテージ品としての価値に目をつけたアルは、彼を博物館へ売りつけようと画策。バズたちはウッディを助けるためアルの行方を追うのだが・・・。

評価★★★/60点

このシリーズは子供に絶対見させておいて損はない!いや、見せるべき作品だ!ていうかピクサーの映画は全部そう。

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ファインディング・ニモ

51tfxw6bjpl__aa240_ 声の出演(日本語吹き替え):木梨憲武、室井滋、宮谷恵多、山路和弘

監督:アンドリュー・スタントン

(2003年・アメリカ・101分)2003/12/20・MOVIX仙台

内容:オーストラリアのグレートバリアリーフ。カクレクマノミのマーリンは妻のコーラルとの間にできた400個の卵が孵化するのを楽しみにしていた。が、ある日サメに襲われ、コーラルの命が奪われたあげく、無事に卵から生まれたのはたった1つだけだった。父親となったマーリンは、この子をニモと名付け、過保護なまでに大事に育てていく。そして6歳になったニモが初めて学校へ行く日がやってきた。が、好奇心旺盛なニモがボートに近づいていったそのとき、人間のダイバーにニモがさらわれてしまう。マーリンは陽気なナンヨウハギのドリーの助けを借りてニモを取り戻す旅に出るが・・・。

評価★★★★★/90点

あ゛っ・・・。シドニーセラピーじゃなくてカキピーじゃなくてワラビー、、、ワラビーだぁっ。シドニーワラビー通り、、、ギャーーッ。マジで思い出せない。ド忘れしちまったぁー。

誰か助けて下さい。夜も眠れません。(((;゜д゜))アワアワ・・・...

でもでもいいんだ!この映画のことは決して忘れることはないのだから。

でも、、、眠れねぇーー!

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Mr.インクレディブル

B0006jeeh0_09_lzzzzzzz1 声の出演(日本語吹き替え):三浦友和、黒木瞳、綾瀬はるか、海鋒拓也、宮迫博之

監督・脚本:ブラッド・バード

(2004年・アメリカ・115分)2004/12/23・MOVIX仙台

評価★★★★/80点

内容:Mr.インクレディブルは、かつては世界の危機を救ったスーパーヒーローだったが、15年前に、被害を受けた一般市民に告訴されて敗訴して以来、スーパーヒーローとしての活動を禁じられていた。今では保険会社のクレーム担当のサラリーマンとして働く日々を送っており、妻と3人の子供も正体を隠しながら生活していた。しかし、巷で元ヒーローたちが次々と行方不明になる事件が続発しはじめ・・・。

“黒木瞳の大開脚スプリングかかと落としを後頭部に喰らいたい!”

ピクサーでは人間をモチーフにして描いた最初の作品ということだったわけだけど、個人的には少なからず懐疑的な目を向けていたというか、不安があったのはたしかだ。

それは、それまでのピクサー作品に出てくる人間がまったく形式的かつ機械的なものとしてしか描かれていなかったからだ。いわば漫画、アニメにおける記号としての人間。

しかし、その不安は全くの杞憂に終わった。

もちろんそれまでの作品において人間は完全な従として登場してきたわけだけど、その点を差し置いてもこの映画におけるキャラクター、人間造型にはさすがだなと唸らされた。

特に顔の表情は、今までのハリウッド製アニメにはなかった生き生きとした実感が刻まれており、正直ド肝を抜かれた。

ダッシュの通う学校の先生や、ボブの勤める保険会社の上司など、脇に至るまで非常に個性的で魅力的だし、インクレディブル一家もヴァイオレットなんかは貞子そっくりで思わず笑ったけど、髪の毛を耳にかけるという仕草だけで彼女の成長を表現してしまうあたりは、もうホントほれぼれしちゃいますわな。

ボブの上司にしても、カレンダーの枠線の上に鉛筆を重ねて置かないと気が済まないという、いかにも几帳面で神経質な性格を表わしていて、シナリオにどのくらい時間かけてるのか知らないけど、アニメでこういう細かいところまで設定を生き生きと活かせるというのは珍しいと思うし、スゴイの一言しか出てこない。

そして、なんといってもヘレン=イラスティガールだ。

正直ストーリーそのものは至極単純で魅力に乏しかったのだけど、ヘレンの一挙手一投足に集中することで、この映画の世界に居続けることができたし、ヘレンをはじめとするキャラクター同士の楽しく魅力的なコラボが映画を支えていたと思う。

キャラに関しては全ての歯車がかみ合っていたといっていい。

欲をいえば、やはりストーリーにやや奥深さが足りなかったかなと。

ヴァイオレットとダッシュの学校生活なり日常生活を一つ二つ付け加えただけで、もっと面白い作品になったと思うんだけど。

でも、ヴァイオレットとダッシュが夕飯中にケンカするシーンはこの映画の白眉で、「ズルイよ、シールド使うのは!」には爆笑ですた。この映画最高の名セリフでしたな。

あと、これも付け加えておかないと。

車よ車

次作が「カーズ」なためなのかどうかはともかく、車の造型がピカイチ。ボブの乗る小さい車なんて、あれはMr.ビーンの車か、はたまたカリオストロでルパンが乗る壁よじ登りカーでしょ。

車が角を曲がる時のコーナーリングも文句なし。「おもひでぽろぽろ」(1991)で柳葉敏郎が運転していた車の微妙なぎこちなさは完全に払拭されたね。

ピクサー。いいっス。

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カーズ

20060716cars640_s 声の出演(日本語吹き替え):土田大、山口智充、戸田恵子、浦山迅、パンツェッタ・ジローラモ

監督・脚本:ジョン・ラセター

(2006年・アメリカ・122分)2006/07/11・盛岡フォーラム

評価★★★★☆/85点

内容:ライトニング・マックイーンは、ピストンカップで史上初の新人チャンピオンを狙う若き天才レーサーだが、自己チューで生意気な性格が玉にキズ。そんな彼が、レース会場への移動中に辺鄙な片田舎ラジエーター・スプリングスに迷い込んでしまい、町をメチャクチャにしてしまう。早くレース会場に戻らなければと焦るマックイーンだったが、町の住人に道路の補修をしていけと言われ・・・。

“カリオストロの城から26年。やっとこさオイラを納得させるカー・アクションが現れた!”

「映画史上もっとも完璧なカーチェイス」とスピルバーグが絶賛してやまない宮崎駿の「ルパン3世カリオストロの城」(1979)の冒頭におけるフィアット500、シトロエン2CV、ハンバースーパースナイプの激走カーチェイスは、お金を払って見てもお釣りが返ってくるほどの素晴らしさと面白さで満ち満ちている。

フィアットが片輪走行で対向車の大型バスをかわしたり、崖を疾走したり林の中を突っ切ったり、シトロエンがボロボロになっていく有り様など、アニメにしかできない創造力とリアリティの新境地にド肝を抜かれた。

それから様々なアニメで車の動きを見るたびに、動きの滑らかさや機動性、そしてアニメの心を忘れない面白さという点で、カリオストロを超える描写はなかなか世に出てこなかった。

しかし、カリオストロから26年。

やっとで万人が納得できる車・車・車映画が出来上がった。

3DCGをフル活用しているという点で、26年前とは手法がもろに異なっているけど、しかし、デジタルとアナログという違いはあれ、出来上がった作品世界の匂いみたいなものは共通していたと思う。

今回の映画が心魅かれるのは、デジタル技術に特化していながら、作品からアナログ感が程よく漂ってくる点だと思う。

もちろん、CG技術のハイクオリティによる車の自然な動きと滑らかさは特筆もので、ボディの質感、揺れ具合、傾斜、タイヤの躍動感、陰影、ボディに反射する景色や照明、、、素材という素材を完璧に作りこんだリアリティにはもはや脱帽するほかない。

「ターミネーター2」のT-1000型ターミネーターを見たとき以来の衝撃と言ったら大げさだろうか。

そして、さらにそのリアリティあふれる車を完全に擬人化し、変幻自在の表情をつけることでアニメキャラとしての心と魂が吹き込まれた。

目の表情はもとより、口元が小粋でイイんだよね。メーターの出っ歯とか、チック・ヒックスの口ヒゲとか。ホント、生き物だよあれはw。

十人十色のキャラクターが完璧ともいえる造型=演技で表情豊かに走り回るさまは見ていてホントに心が躍ったし楽しかった。

アニメで表現するということの意味や意義みたいなものをしっかり分かってると思うな。この映画の作り手さんは。

3DCGというと、とかく実写なみの写実性に走りがちだけど、策士策におぼれるみたいにアニメでこれを使うことの目的意図からどんどんかけ離れていく傾向にあっただけに、アニメ本来の面白さを忘れていないピクサーにはホンマもんの拍手を送りたいです。

マックイーンとサリーのデートドライブなんかはグランツーリスモを彷彿させたりしてホンモノ感もしっかりアピールしていたし、カリオストロに出てくるフィアット500が今回の映画でタイヤ専門店の店主ルイジとして出てくるのだけど(オマージュだと思う)、宮崎フィアットと互角かそれ以上に渡り合える小粋なイタリアンフィアットにうまくアレンジされていることを見ても、文句の付けどころがない完璧さだろう。

また、時代に置き去りにされていくルート66の田舎町を舞台にし、登場する車も1950~70年代型にすることで、アナログ感を程よく醸し出すことに成功していたと思う。

デジタル技術でアナログを表現する。

上手い、巧い、美味い

車がヨガのエクササイズに励むなんて最高じゃないッスか。

DVD買ってまた観よっ。

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レミーのおいしいレストラン

Ratatouille 声の出演(日本語吹き替え):岸尾だいすけ、佐藤隆太、浦山迅、甲斐田裕子、有川博

監督・脚本:ブラッド・バード

(2007年・アメリカ・120分)2007/08/10・盛岡フォーラム

評価★★★★★/95点

内容:ドブネズミでありながら天才的な料理の才能を持つレミーは、尊敬する名シェフであるグストーの著書を読みながら一流レストランのシェフになるという夢を持っていた。しかし、そのグストーは料理批評家イーゴに店の星を減らされ、失意のうちに急死してしまう。そんなある日、レミーは嵐で家族とはぐれてしまい、パリのグストーのレストランにたどり着く。そこの厨房で、雑用係のリングイニがスープを台無しにするのを見たレミーは、こっそりとスープを作り直すのだが・・・。

“偉大な映画は勇気から生まれる!”

ミッキーマウスというディズニーが誇る世界最強の“ネズミ”キャラクターを差し置いて、グレーの毛並みの1本1本まで実に生々しくフサフサしている醜悪なドブネズミを造型して主人公にしてしまった勇気(ちなみにピクサーは06年にディズニーの完全子会社になっている)。

そして調理場の最大の敵である西の横綱がゴキブリならば東の横綱は紛うことなくネズミ、そのネズミに料理をさせてしまおうという身の毛もよだつようなお話を作ってしまった冒険。

耳で聞くぶんには、とてもじゃないが目にはしたくない作品なのだが、恐る恐るフタを開けてみたら、アントン・イーゴの言葉のごとくオイラの先入観は見事なまでに大きくくつがえされた。

これは決して大げさな表現ではない。まさに衝撃だった。

小麦粉と卵、砂糖とバニラビーンズ、そしてほのかなビターレモンの香りが漂ってくるスクリーンの中のえもいわれぬ世界に完全に酔いしれてしまった。

やはり5つ星レストラン、ピクサーは期待以上の仕事をしてくれる。

さすがに天井裏にビッシリと張り付いたネズミが部屋にワッサと落ちてきたシーンや、キッチンを占拠しているシーンは思わず背筋にゾワゾワッと悪寒が走ったけど(笑)。

でも、料理するのに手を汚したくないから地面に手を付けて歩きたくないといったレミーのキャラクターだとか、それとは対極の雑食たるネズミがグルメを解すわけがないという兄・エミールの位置付け、また、魔女の陰険な執事を思わせるイーゴの造型などよく練り込まれていて面白かったし、日常生活の中でなかなか思い切って前へ歩み出すことができない自分がドブネズミに説教くらってるような複雑な気分になるのもなにやらシュールなかんじで、ネズミに出来るのにオレに出来ないわけがない!と変な勇気までおみやにもらっちゃって、もう何も言うことはございません。

ゴチになりましたぁーーっ

また、美味しそうなんだ料理が

ただ、強いていえば、グストーのレストランのわけありの従業員たちのことをもっと描いてほしかったかなぁ。なんかもったいなかったような。

だって親指だけで人を殺せるってのはホントすごいことだぞ(笑)。

とにかく、またお腹をすかして、ピクサーレストランに足を運ぼうと思います。今度はどういう料理を出してくれるのかなぁ。。

夢のシネマパラダイス72番シアター:パラノーマル・アクティビティ

パラノーマル・アクティビティ

Poster2 出演:ケイティ・フェザーストン、ミカ・スロート、マーク・フレドリックス、アンバー・アームストロング

監督・脚本:オーレン・ぺリ

(2007年・アメリカ・86分)WOWOW

内容:幼少の頃から怪現象に悩まされてきたケイティ。同棲している恋人のミカは、夜ごと悩まされる現象の実態を突き止めようと部屋の中にビデオカメラを設置する・・・。

評価★★★/60点

アイデア勝負の映画である。

基本的に手持ちカメラ(動)-日常生活、固定カメラ(静)-心霊現象というふうに使い分けがなされているのだけども、これは今までの凡百のホラー映画とは逆のパターンであり、この発想の転換は買いたい。

まぁ、寝室のドアを開けっぱなしにして寝るかフツー!?というツッコミは置いとくとしてもw、思わずドアの奥の闇にジッと目を凝らしてしまったり、かすかな異音をキャッチしようと耳をそばだててしまう緊張態勢に持ち込む、すなわち人間の原初的に持つ“怖いもの見たさ”を引き出すという点で定点カメラの有効性に着目したのは上手い。

のだけれども、21夜かけてこの好奇心をコチョコチョくすぐるだけに終始してしまい、変化に乏しい=恐怖が増幅しないという弱みを克服できないまま終わっちゃったのは痛い。

はっきりいって怖さレベルは最低ラインにあるといっていい。

けど、手持ちカメラの動パートが最低ラインのさらに下のラインに設定されているのでなんとか見れてしまうのがズルイ・・w

結局終わってみれば、普段ハリウッドのホラー映画に対して大仰で過剰な刺激だけで怖がらせてツマラナイとボヤいていたのに、まさか何も起こらなさすぎて刺激がないからツマラナイとボヤくことになろうとは思いもよらなかった・・・。

90分に満たない尺だったからまだ許せるけど、超えてたら貧乏ゆすりのしすぎで発狂するとこだった(笑)。

例えば階段の踊り場に固定カメラをもう1台置くとかすれば伸びしろはもっとあったと思うのになぁ。。

P.S. しかし、、この映画を見た夜、ベッドに入り寝ようとしてたら、カサッ、コツッ、ていう音に超敏感になっていたことは、恥ずかしくて誰にも言えない・・

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パラノーマル・アクティビティ2(2010年・アメリカ・91分)WOWOW

 監督:トッド・ウィリアムズ

 出演:ケイティ・フェザーストン、スプレイグ・グレイデン、ブライアン・ボーランド、ミカ・スロート

 内容:前作の2ヶ月前。あの事件の被害者ケイティの妹クリスティは夫と子供2人の4人で暮らしていた。そんなある日空き巣被害が発生し、彼らは防犯のため家中に監視カメラを設置する。ところがその夜から、家の中では不可解な現象が立て続けに起こり始め・・・。

評価★★★/60点

1作目の前日譚という意味ではエピソード0といっていいけど、1台のカメラで手持ちと固定の2役を使い分けていた1作目から予算が増えたのか、一気に6台もの監視カメラを据えることに成功!他にもハンディ1台で計7台と一気にグレードアップ。

その結果、怖さレベルは前作から5%増しになった(笑)!

定点カメラを6台にしたことで演出の幅や選択肢が増えた効果は多少なりともあったとは思うのだけど、予測の範疇を超えず新味がないんだよね。

流してないウンコにギャーッとなったり、赤ん坊の泣き声、、犬が何かに気付く、、フライパンが落ちる、、旦那のイタズラなど恐怖ネタの小出し祭りは前作にも増して健在で、それが怖さじゃなくて倦怠感につながってしまうのが痛いところ・・。

終盤、ハンディを使って「エイリアン」ぽい画にトライしたりするものの、終わってみれば1作目より緩いジェットコースターに乗っちゃったかんじ・・・。

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