息もできない
出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン、チョン・マンシク、ユン・スンフン
監督・脚本:ヤン・イクチュン
(2008年・韓国・130分)WOWOW
内容:借金の取り立て屋をしているキム・サンフンは、周りから恐れられるほど容赦のない暴力男。ある日彼は、道端で唾を吐いたことがきっかけで女子高生ヨニと出会う。最悪な出会いを果たした2人だったが、次第に心を通わせていくようになる。そんな中、ヨニの弟ヨンジェが偶然にもサンフンの手下となり取り立ての仕事を始めるのだが・・・。
評価★★★☆/70点
大仰で劇的でありながら昼ドラばりのライト感覚で見れてしまう韓国ドラマと、露骨で生々しく見るのに怖気づいてしまう韓国映画とのギャップにはいつも面食らってしまうのだけども、今回も強烈なアッパーカットをもらってしまった・・。
圧倒的な暴力描写によりながら、あまりにも情緒的な精神世界のよどみに誘われ、魂を揺さぶられる思いに駆られてしまった今回の作品。
まるで傷物に触れないように息をひそめて見入ってしまうような中、ほとんど何もシンクロするところがない彼らの生きざまを目の前にして、しかしそれでもこの不条理ともいえる振り幅に強引に心を持っていかれてしまったのは、この映画に嘘が微塵も感じられないからだろう。
歯止めのない暴力に嘘がない、それはつまり人の言葉を持たぬ感情-人の魂-の発露として暴力が描かれているからで、ハリウッド映画はもとより例えば北野映画のそれをもさらに純化したような魂の震え=暴力がこの映画にはある。
そんな中、魂の震えが暴力ではなく、涙として表現された唯一のシーン、漢江のほとりでのサンフンとヨニの嗚咽シーンは非常に際立った名シーンになっていたと思う。
また、「自分が30年間書き溜めた日記にちょっとだけフィクションを加味した」というヤン・イクチュン監督が私財を投げ打ってまで作った凄まじい執念にも圧倒されてしまうが、作り手の魂の叫びが伝わってくる映画というのも稀だ。
嘘のない映画を見るというのはかなりの体力を要するものであるけれども、映画が映画であることをしっかり自覚した映画-容易に理解を深めるためだけに用いられる過剰な説明はしていない映画-というものを久々に見て逆に心地良い徒労感を味わえた気がする。
、、が、それ以上に映画のラストのやるせなさにドッと疲れたというのが正直なところだけども・・・
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オールド・ボーイ
出演:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・へジョン、チ・デハン
監督:パク・チャヌク
(2003年・韓国・120分)2004/11/15・仙台フォーラム
評価★★★☆/70点
内容:土屋ガロンの原作コミックをもとに「JSA」のパク・チャヌク監督が映画化したバイオレンス・アクション。平凡なサラリーマンのオ・デスは、誘拐され15年間の理不尽な監禁生活の後、解放される。デスは監禁の理由を知ろうと奔走するのだが・・・。カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞。
“「時計じかけのオレンジ」で主人公が椅子に縛り付けられ、まぶたにクリップを付けられて目をつぶることができないような、そんな状態で自分は放置された・・・。”
復讐劇画の巻末袋とじの縫い目を、まるで監獄の鋼鉄をジャッキとハンマーでこじ開けるかのごとき力強さと執念で切り開いていくオ・デス。
特にヤリイカの踊り食いや、横スクロールバトル、また平坦な道を走るシーンでカメラアングルを大胆に変えて坂道を駆け上がるように見せるところなど、非常にツボを押さえている。なにか「血と骨」の金俊平を彷彿とさせるような。。
と思いきや、万力とピストルを持ったイ・ウジンの手のひらのマトリックス世界の中で弄ばれ締め付けられているだけだったというオチと見開かれた袋とじの真実には、予想外という唖然と、実は想定内という納得の入り混じった複雑な気持ちでいっぱいになった。
ラストもどう解釈すればいいのか、というよりもその前に観てる自分の思考を意図的に停止させたといった方がいいのかもしれない。ただスクリーンを見つめるだけで、ここはニュージーランドかなと思った以外は何も感じなかった。
感じられなかった、、感じようとしなかった。
役者陣はチェ・ミンシクにしろユ・ジテにしろカン・へジョンにしろ、みんな怪物だったが、登場人物オ・デスが、またイ・ウジンが怪物だったかというとクエスチョンマークがついてしまう。
ま、着ぐるみのアリになったミドはある意味怪物だと思ったけど。。
P.S.自分にとっての巻末袋とじは舌切りスズメならぬ舌切りオ・デスだよ・・・。グハッ。
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オアシス(2002年・韓国・132分)Bunkamura
監督・脚本:イ・チャンドン
出演:ソル・ギョング、ムン・ソリ、アン・ネサン、チュ・グィジョン
内容:ひき逃げ事件で服役していた青年ジョンドゥは、刑務所を出所してすぐに訪れた被害者宅で重度脳性麻痺の女性コンジュと出会う。最初は同情から近づいたジョンドゥだが、2人は徐々に心を通わせていく。冷淡な社会から疎外された2人の純愛の行方は・・・。
評価★★★★/80点
“哀れみという名の偽善と異質という名の偏見、自分の中にあるこのドス黒い不気味な影が白いスクリーンに写されガタガタと揺れ続ける・・・。”
特に途中までコンジュは言葉を話すことができない、意志の疎通さえすることができないと思っていたオイラにとっては、コンジュが兄夫婦と言葉を交わした場面、またコンジュが健常者の姿で現れる場面で自分の中にあるドス黒い影がくっきりと露わになった。しかもその影は相当に大きい。
見てはいけないものを見ているような、、、そんな自分が恐くなった。結局消えることがなかった自分の中の影が恐かった。そしていろんな意味で胸が痛くなった。
誰か、オレの中にある黒い影の枝を切り落としてくれ。。
コンジュの障害を利用して身障者アパートに自分たちだけ住んでいるコンジュの兄の一言が痛烈に心に突き刺さって頭にこびりついて離れない。
「妹のあのザマを見ろ!」
しかし、コンジュを物としか見ていないこんな兄夫婦を糾弾できる資格が果たして自分にあるのだろうか・・・。
そういえば「血と骨」で金俊平(ビートたけし)が、脳腫瘍で倒れて変わり果てて誰も寄り付かなくなった愛人を看護するシーンがあったっけ。。
はぁぁ、、、重症みたい、オレ
。。
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大統領の理髪師
出演:ソン・ガンホ、ムン・ソリ、リュ・スンス、イ・ジェウン、ソン・ビョンホ
監督・脚本:イム・チャンサン
(2004年・韓国・116分)DVD
評価★★★★★/95点
内容:1960年代の韓国。平凡な庶民だったハンモは、ひょんなことから大統領の理髪師に。何も分からないまま権力争いや激動の時代に巻き込まれていくが、やがて本当に大事なものに気付き・・・。東京国際映画祭で監督賞、観客賞を受賞。
“四捨五入は日本で出来たものだったのか。そうなのかぁ。。それならば四捨五入してやろうじゃないの、、、★5っつ
”
もう完全に韓国のマッサージ店に入っちゃった気分。
しかもどこのツボを刺激されたかと思ったら、笑いのツボとは恐れ入る。しかも終始ドツボにハマる箇所が次から次へと襲ってくる。いやはや参った参った・・・もっとお堅い映画かなと思ってたのに。
韓国の歴史の中にシリアスに刻み込まれた恐怖と悲劇を笑いで包んでしまうとは、韓国映画の余裕というか裾野の広さと成熟を間近に感じてしまったかんじ。
喜劇と悲劇は表裏一体とはよく言われるけど、この映画はまさにそう。なんか「ライフ・イズ・ビューティフル」に通じるものを感じたね。
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甘い人生(2005年・韓国・118分)WOWOW
監督・脚本:キム・ジウン
出演:イ・ビョンホン、キム・ヨンチョル、シン・ミナ、キム・レハ
内容:組織のボスに才腕を見込まれ、出世の道を突き進んできたソヌ。だが、ボスの愛人の調査を始めたとき、彼は思わぬ落とし穴にハマっていく・・・。
評価★★★/60点
“ビョン様ワンマンショー”
変態ロリ社長とムッツリスケビョンホンのプッツン格付け決定戦といったかんじで、はっきりいってストーリーなどあって無きようなもの。
ビョン様の甘っまい血をとにかく堪能すべし、、、ってそんなん興味ねぇよ(笑)。。
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マラソン
出演:チョ・スンウ、キム・ミスク、イ・ギヨン、ぺク・ソンヒョン、アン・ネサン
監督:チョン・ユンチョル
(2005年・韓国・117分)WOWOW
評価★★★★/80点
内容:自閉症の障害を抱え、5歳児なみの知能しかない20歳の青年チョウォンが、走ることに興味を覚え、母の大きな愛情に支えられながら遂には過酷なフルマラソンに挑戦する姿を感動的に綴った実話がベースのヒューマンドラマ。
“アメニモマケズ、カゼニモマケズ・・・”
雨にも負けず、風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持ち
決して怒らず、いつも静かに笑っている
一日に一個のチョコパイとジャージャー麺と少しのカクテキを食べ
あらゆることを自分を勘定に入れずに、よく見聞きし分かり
漢江沿いの松の林をぬけた学校の中にいて
東に音楽を聴く者あれば、行って一緒に踊ってやり
西に疲れた母あれば、行って抱きしめてやり
南に飲んだくれの人あれば、一緒に走って笑顔を甦らせ
北にシマウマ柄のスカートを履いた人あれば、行って撫でてあげ
日照りのときは大粒の汗を流し、寒き冬は100万ドルの脚でスタスタ走り
みんなに自閉症と呼ばれ、涙も見せず純粋無垢な心で
アフリカの草原を駆け抜けるような爽やかで幸せな風を運んでくる
そういう者を、私は見た
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