夢のシネマパラダイス430番シアター:追悼ヒース・レジャー
ブロークバック・マウンテン
出演:ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール、ミシェル・ウィリアムズ、アン・ハサウェイ、ランディ・クエイド
監督:アン・リー
(2005年・アメリカ・134分)DVD
内容:1963年、ワイオミング。ブロークバック・マウンテンの農牧場に季節労働者として雇われ、運命の出会いを果たした2人の青年、イニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)。彼らは山でキャンプをしながら羊の放牧の管理を任される。やがて2人は大自然の中で一緒の時間を過ごすうちに、深い愛に目覚めてしまう。山を下りてそれぞれに結婚相手を見つけたものの、あの夏のブロークバック・マウンテンでの思い出から逃れることができず・・・。アン・リーが雄大な風景をバックに綴る、2人のカウボーイの20年に渡る秘められた禁断の愛の物語。
評価★★★★☆/85点
はっきりいって今の今までこの映画を観るのは避けてきた。
数々の賞を総ナメにし、アカデミー賞で監督賞を獲ってもオイラはこの映画を観ることを躊躇した。
それはつまるところ自分の中にいわゆる同性愛者に対する偏見や好奇のまなざしがあることと無関係ではないし、ぶっちゃけ「マルホランド・ドライブ」や「バウンド」のような女同士のディープな絡み合いは見れても、男同士のディープなそれは正直見たくないというのが本音としてあったからだ。
しかもアメリカ西部の伝統的かつ保守的な極めてアメリカ的なランドスケープの中でカウボーイ姿の男2人が愛し合うという“ウエスタン”と“ゲイ”の合わせ技は、いかにも濃ゆいものを連想させ、観る勇気をなかなか振り絞ることができずにいた。
なんというかゲイに対しては、例えばおネエマンズのようなオネエ言葉を連発するオネエ&オカマキャラだったら笑いの対象として、作られたキャラあるいはタレントとして見ることができるのだけど、、、それは映画でも同じで「バードケージ」「プリシラ」「真夜中の野次喜多」などのデリケートさを一切排除したキャラと化したオカマが出てくる映画なら何の躊躇もなく見られてしまうのだ。
それは自分にとってようするにスクリーンやブラウン管の中=非日常の中だけで知っている“オカマ”であり、“キャラ”なのだとして認識してしまっているからなのだと思う。
しかし、この“キャラ”が一人の人間として日常の中に地に足を立てた生々しい存在としてスクリーンの中に現れたとき、“キャラ”は一転して“異人=ストレンジャー”へと姿を変えてしまう。
そう、触れたくない者へと・・・。
「Hush!」や「メゾン・ド・ヒミコ」といった映画になかなか馴染めない理由はそこにある。
さて、そんな中でついに観る機会を得てしまった「ブロークバック・マウンテン」だったが、、、フタを開けてみたら、、、まっさか心を揺り動かされるほどの感動に打ち震えることになろうとは思いもよらなかった。。。
しかもその感動はただの感動ではなく、罪、絶望、後悔、救済、哀切、痛みの入り混じった人間の情念が深く心に突き刺さりしみわたってくるものであり、観終わった後もしばらく余韻がさめることはなかった。
かといって決して彼らに同情したわけではない。感情移入さえできたかどうかすら怪しい。
ただ、暗い情念を背負った彼らの佇まいにただただ見入って圧倒されてしまったのだ。
また、アメリカの原風景と同性愛への耽溺が生々しく対峙するのかと思いきや、どこまでも青い空のもとに広がる風景が、それをすっかり浄化し包み込み、彼らのキャラクターの一部にまで昇華させている点も見逃せない。
アジア人のアン・リーがこれを撮ったというのも驚くべきことだけど、、、はっきり言っていいっスか。
オイラはこれほどまでに純粋でせつない普遍的な「純愛映画」というものを見たことがない!
そう、どっからどう見ても純愛だ。男性性とかそういうものを超越した純愛、、、そして愛の悲劇。
なにか京劇と西部劇という違いはあれど、「さらば、わが愛、覇王別姫」に通じるものがあると感じた。
そしてこれは言わずにおけないのが、エモーショナルに訴えかけてくるヒース・レジャーの表現力だ。
ジャックへの真摯な愛と悲痛な慟哭、自分を押し殺そうとしながら揺れ動く心理演技、その佇まいが深く胸をうつ。
ラスト、寂寞とした風景の中にひっそりとたたずむトレーラーハウスの中で永遠の愛を誓うイニス。
記憶に刻まれる名演でした。
しかし、DVDでこの映画を観た数日後、映画の残り香がまだ濃厚に残っている中、ヒース・レジャーの死という報せが届き、思わず自分でもビックリするほど叫んでしまいました。
ジャックに会いに天国に行っちまったのかよっ・・。
とにかく惜しい俳優さんを亡くしてしまったものです。合掌。
Posted at 2008/1/27
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Dr.パルナサスの鏡(2009年・英/カナダ・124分)WOWOW
監督:テリー・ギリアム
出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル、リリー・コール、トム・ウェイツ
内容:2007年ロンドン。移動見世物小屋イマジナリウムを率いてやって来たパルナサス博士には悩みがあった。彼はかつて悪魔ニックと契約を交わし、不老不死を得る代わりに娘ヴァレンティナが16歳になったら悪魔に差し出すと約束していたのだ。一方、何も知らないヴァレンティナは、偶然救い出した記憶喪失の青年トニーと出会い、トニーは一座に加わることになるのだが・・・。映画撮影途中にヒースが急死し、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルがバトンタッチで主人公を演じ分け完成にこぎつけた。
評価★★★☆/70点
理解できたかどうかでいえば理解できない・・・。けど面白かったかどうかでいえば面白い。
ようするに何と言えばいいのか分からない映画なんだけど、一人で見るぶんには楽しめる映画w
現代ロンドンに現れた19世紀的見世物小屋、童顔なのにグラマーなリリー・コール、物語なくして世界はないとのたまっているくせに起承転結などお構いなしの構成、、、これらアンバランスさが映画の魅力になっていて個人的には楽しめた。
しかし、物語というよりは歪んだアートを見ているような感覚に近いので他人と面白さを共有するというのは難儀じゃなかろうかと思うわけで・・。ひとり部屋に閉じこもってギリアム流幻想世界に浸ってみようってかんじかな。。
でも何の前知識もなしで見たものだから、ジョニデが出てきた時は、2シーンくらいそれでも気付かなくて、あれっ!?これってもしかしてジョニデ!?とビックリしちゃったんだけど、、そっかぁヒースの遺作だったんだよね・・・。
ジョニデ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの順番だったけど、ジョニデを一番手に持ってきたのは正解だったな。
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ロック・ユー!
出演:ヒース・レジャー、ルーファス・シーウェル、シャニン・ソサモン、ポール・ベタニー、ローラ・フレイザー
監督・脚本:ブライアン・ヘルゲランド
(2001年・アメリカ・132分)2001/10/18・MOVIX仙台
評価★★★★/80点
内容:舞台は14世紀。ウィリアムは馬上槍試合のトーナメントに出場するエクター卿に随行していた。しかし試合中、主人が息を引き取ってしまい、彼は主人になりすまして出場。ウィリアムは強敵を相手に優勝を決め、その後の大会でも次々と勝利を収めていくのだが・・・。
“苦悩も苦しみも皆無の史劇を初めて見た気がする。”
お話自体は単純すぎるくらい単純だが、苦悩の代わりにラブコメ、苦しみの代わりにロックときたか。カレーにチーズとケチャップってかんじ!?
しかしこれがすこぶる美味で驚いた。こんなにしっくり来るものなのか。見かけによらないもんだねぇ。
でも本来ロックというのは、既成の価値観に真っ向から挑んでいく批評性にあふれるものなわけだから、ジャンルを飛び越えたこういう映画における使い方にはもの凄く共鳴してしまう。
だからこそクイーンやデビッド・ボウイ以外にもまだまだガンガン使ってもらいたい曲があったんだけどな。
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サハラに舞う羽根(2002年・英/米・133分)WOWOW
監督:シェカール・カブール
出演:ヒース・レジャー、ウェス・ベントリー、ケイト・ハドソン、ジャイモン・フンスー
内容:19世紀末のサハラ砂漠を舞台に、イギリスの植民地政策と戦争に疑問を持った青年が、親友や恋人との確執を通して自分自身を模索するさまを壮大に描きあげる。
評価★★★/60点
“腰抜け呼ばわりを撤回させる方法”
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマーティのごとく“腰抜け”とバカにされた相手に立ち向かっていく信念と勇気と、この映画の主人公のごとく他の国の人間を2,30人殺害してみる信念(しかもうやむやな)と勇気とではその意味合いは全く違うゾ。
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ブラザーズ・グリム
出演:マット・デイモン、ヒース・レジャー、モニカ・ベルッチ、ジョナサン・プライス
監督:テリー・ギリアム
(2005年・米/チェコ・117分)2005/11/18・MOVIX仙台
評価★★★☆/70点
内容:19世紀のドイツ。世渡り上手の兄ウィルと夢想家の弟ジェイコブのグリム兄弟は、各地の村を旅して、その地に伝わる古い物語を集め回っていた。が、その一方で、行く先々の村々で魔物退治と称して荒稼ぎする詐欺師稼業も働いていたのだが、それがバレてしまい、フランス軍の将軍に捕まってしまう。そして将軍から、ある村で起きている少女連続失踪事件の解明を命じられるのだが・・・。
“「ゴーストバスターズ」と「スリーピー・ホロウ」を程よくブレンドしたかんじで取っ付きやすく安心して見られる。”
ギリアム映画で安心して見られちゃうというのも珍しいけど、幻想的かつグロテスクなギリアム色がしっかり素地としてこの作品を支えているのもヨロシイ。
また、ジェイコブ(ヒース・レジャー)とウィル(マット・デイモン)の兄弟コンビもキャラ立ちがしっかりしていて2人のやり取りもなかなか面白い。
特にヒース・レジャーは新境地開拓といったかんじ。マット・デイモンは何を演ってもマット・デイモンなんだけどね(笑)。
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