夢のシネマパラダイス351番シアター:座頭市
座頭市 THE LAST
出演:香取慎吾、石原さとみ、反町隆史、工藤夕貴、寺島進、原田芳雄、倍賞千恵子、仲代達矢
監督:阪本順治
(2010年・東宝・132分)CS
内容:最愛の妻との平穏な暮らしを求め、ヤクザ稼業から足を洗うため最後の死闘に臨んだ市。しかしその戦いの最中、追手の刀によって妻が命を落としてしまう。悲しみと絶望に打ちひしがれた市は、故郷の村へ流れ着き、旧友・柳司の家に身を寄せ、百姓として静かな暮らしを送ることに。しかし、村は極悪非道な天道一家に支配されており、その傍若無人ぶりに村人たちはもがき苦しんでいた・・・。
評価★★☆/50点
自分は座頭市がどうも苦手だ。
今まで座頭市映画をそんなに見ているわけじゃないけど、どれもイマイチ好きになることができない。
それはつまるところ座頭市とは何者でどこへ向かうのか、その内面、キャラクターが見えてこないことにあるのだと思う。
その点でいえば、天性の明るさを兼ね備えた香取慎吾が市にどういう息吹を吹き込むのか楽しみではあったのだけど、、、その期待はもろくも崩れ去った・・。
市を所帯持ちにしたり、百姓暮らしして田植えまでさせて生活感を出そうとしているものの、妻(石原さとみ)は瞬殺されちゃうしw、なにより天性の資質を封印された香取くんもなにか窮屈そうにしか見えなかったし・・・。
他の登場人物の背景もほとんど見えてこず、役者の存在感だけを頼りに見せきったかんじ。
ロシアと貿易しようとしてるらしい天道(仲代達矢)のスケール感なんかは設定としてかなり魅力的なんだけど、、盛り上がってこないんだよねぇ。
なのに映像だけはやけにキレイでもったいないったらありゃしない。ドボンです。。
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ICHI
出演:綾瀬はるか、中村獅童、窪塚洋介、柄本明、竹内力、大沢たかお
監督:曽利文彦
(2008年・日本・120分)CS
内容:市は瞽女(こぜ)と呼ばれる盲目の女芸人として旅を続ける身。ある日、チンピラに絡まれた彼女を旅の浪人・藤平十馬が助けに入るが、刀を抜けない十馬を尻目に市はやすやすと5人を斬り捨ててみせる。やがて、2人は美藤の宿場町にたどり着くが、そこは野盗の頭目・万鬼がのさばる町だった・・・。
評価★★☆/50点
天然おトボケ役が板についてきた綾瀬はるかだけど、能面のようなサイボーグ役なり今回の心を閉ざした盲目の女性といった役だと無駄な動きが省かれて、彼女の本来持つ美しさが際立って見えて逆にイイかんじ。
あっ、綾瀬はるかってめっちゃ美人だったんだ・・・って当たり前や!
でも今回はマジにカッコ良かったし、逆手居合い斬りでズバッと斬られたいとさえ思ったわなww。。
けど、見所はそこだけで、肝心のドラマが文字通り盲目の薄っぺらなのがなんとも・・。
例えば、かつて剣術指南役をつとめるほどの才量の持ち主だったのに、顔にひどい火傷を負ったがために化け物扱いされてしまった万鬼(中村獅童)が、市を見て自分と同じ決して癒されない悲しみを抱えた者の暗い闇を感じ取るわけだけど、そこを言葉だけで匂わせるだけで形としてそれを表わすことをしない点などは、なんでこんなオイシイところに目をつぶるんだ、、、とガッカリしちゃった。
それでいて「砂の器」のようなお涙頂戴の描写を上っ面に挿し込んでくる始末。
まぁ、このてのアイドルアクションとしては正しいひな形なんだろうけど、人間ドラマとしてはかなり中途半端だったなと。殺陣は良かっただけにねぇ。。
市が女性というせっかくの設定がドラマに昇華されていかないもどかしさばかりが気になる残念な映画でございますた。。
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座頭市
出演:ビートたけし、浅野忠信、夏川結衣、大楠道代、橘大五郎、大家由祐子、岸部一徳
監督:北野武
(2003年・松竹・115分)2003/09/22・シネパレス
評価★★★/65点
内容:ヤクザの親分・銀蔵と大店の主人・扇屋が牛耳るとある宿場町にやってきた一人の男。金髪で朱塗りの杖を持った盲目の居合いの達人、座頭市だ。また、ちょうど時を同じくして浪人の服部源之助とその妻おしのもその町にやって来る。元藩付きの師範代という身分を捨てた服部は、病気を患う妻のために銀蔵・扇屋の用心棒の職にありつくことに。銀蔵たちを仇と狙う旅芸者のおきぬとおせい姉妹と関わり合いになった座頭市は、やがて因縁や怨恨の入り交じる壮絶な闘いへと突入していく・・・。
“どうしても心の中で引っ掛かるあるセリフ”
大楠道代演じるおうめがラスト近くでこんなセリフを言う。
「悪い奴はみんな死んじまったねえ・・・。」
ホント片っ端から座頭市に斬り殺されていくわけだけど、チンチロリンの長か半かというふうに単純に善か悪かでいえばたしかに銀蔵・扇屋は悪だろう。
しかし、服部と妻おしのはどうか。
長か半かというような単純な割り切り方はできないはずだ。
もちろんおうめのセリフは銀蔵一家を指して言ったもので、服部とおしのを指してはいないのかもしれないが、しかし一応用心棒として雇われた身ではあるわけだし、そういう意味ではおうめの言う悪い奴に服部も入ってしまうことになる。
そこがやはり自分の中で納得できないというか消化不良なところではあるわけで。
なにより、妻おしのの自害シーンの唐突さといったらない。あの処理の仕方はいくらなんでも可哀想すぎはしないか。
肺病という決して癒やされない悲しみを背負いながら夫に添い遂げつづける妻。脱藩し他に仕官を探しながらも食いぶちを稼ぐため用心棒をも請け負う夫。
これは多少の違いはあれど「雨あがる」の夫婦そのものではないか。
それを思うと、いやはや今回の映画は描き方が浅すぎる・・・。
おきぬとおせいが扇屋で絶体絶命のピンチに陥ったときに座頭市が刀で開き戸をこじ開けるシーンが最も典型的だが、座頭市がまるでジュラシック・パークに出てくる肉食竜ラプトルのような非人間的存在であったがゆえ、なおさら服部・おしの夫婦の絆は重要だったはずで、普通ならこっちが主にならなければならないだろう。おきぬ・おせい姉妹パートは従の関係でいいのだ。
しかしどういうわけかこの映画ではそれが完全に逆転してしまっているのだ。
映画を観終わった後にさっぱりと何にも残らないのはこのためだと思う。
はっきりいって人間というものを描けていない。
斬りまくる者の血が通っていないのはラプトルだから仕方がないと割り切っても、斬られる方の血まで通っていないように見せられるのはいかんともしがたい・・・。もしかして緑色の血なのか(笑)?
あと、新吉の剣術の稽古のシーンも正直笑えない。全体的にカット割りがとにかく目まぐるしすぎるんだよね。新吉のあの稽古のシーンは2,3カットだったと思うけど、それまでのテンポの速さと全然合ってないの。間がねぇ、、、単なる間延びになっちゃってんのよ。
まぁ黒澤天皇と比べるのはあまりにも酷だが。
とにかく話を詰め込みすぎですね。おきぬ・おせいのとこはほんとバッサリ居合い抜きしちゃいたい気分。
ただ、映画を観ていて北野武という監督は時代劇の方が資質的に合っているのではないかと感じたのもまた事実。
いっつも個人的な期待値だけは高いんだけどねぇ・・・
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座頭市物語(1962年・日本・96分)WOWOW
監督:三隅研次
出演:勝新太郎、万里昌代、島田竜三、天知茂、柳永二郎
内容:下総飯岡の首領・助五郎親分のところへ坊主頭の盲目の按摩でなおかつ居合いの達人、座頭市がやって来る。ある日、市は釣り場で出会った病身の浪人・平手造酒と知り合い、なぜか気を通わせるが実はこの浪人、最近勢力を広げつつある助五郎親分のライバル笹川親分の剣客だった。激化する両親分の勢力争いは市をも容赦なく巻き込んでいく・・・。
評価★★★/60点
“勝新版座頭市初体験。北野版を観た後だったので、ちょっと狐につままれた気分・・・。”
いつブチ切れんねんこのオッサン、いつやねんいつやねんと思いながら終わっちゃったかんじ。
ジェットコースターに乗ってるとき、いつ大物に突入するのかと緊張感は高まっているのに、小物だけで終了みたいな・・・。そういう意味ではちょっと地味だったな。
でも特に勝新と天知茂が2人で釣りをするシーンの絶妙な間など、全編に漂う緊張感はさすが。そのわりに殺陣がショボイんだけどねぇ・・・。
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