夢のシネマパラダイス226番シアター:のだめカンタービレを探せPartⅡ
のだめカンタービレ最終楽章前編・後編
出演:上野樹里、玉木宏、瑛太、水川あさみ、ウエンツ瑛士、ベッキー、山田優、吉瀬美智子、竹中直人
監督:武内英樹(前編)・川村泰祐(後編)
(前編2009年・東宝・121分)(後編2010年・東宝・123分)CS
内容:プラティニ国際音楽コンクールで優勝した千秋は、かつてシュトレーゼマンも指揮を務めたことがあるルー・マルレ・オーケストラの指揮者となる。しかし、オケは資金難のために散々な有り様になっており、団員のヤル気もゼロ・・。オケに失望した千秋は、のだめに定期公演でのチェレスタの演奏を頼むが・・・。
評価★★★★/80点
マンガの方は読んでなくて、TVドラマから入ったのだけど、珍しくハマッてしまったドラマで、映画も大いに楽しみにしていたクチ。
変態キャラのだめと俺様キャラ千秋というトンでもキャラを主軸に据える中で、日本人が外人を演じるといったフザケたキャスティングや、ドラえもんのこんにゃく翻訳機といった小道具に、CGエフェクトやアニメを多用した大胆な映像描写など、お遊び感覚満載の演出は頭をやわらかくして見ないとダメなくらい幼稚さに溢れているのだけど、ここまで徹底的にマンガ的に描かれると逆に潔くてアッパレに思えてくる。
一方、このコミカルなベクトルと対になる音楽のベクトルはおフザケとは程遠いホンモノ感に彩られていて、この両極端のベクトルをブレない振れ幅で貫き通そうとする意志がつくり手から伝わってきて素直に見れてしまうのだ。
それが独特なのだめワールドを形作っていると思うのだけども、そのベクトルの振れ幅がTVドラマよりも大きくなっているのが映画版の特徴だろう。
コミカルなベクトルはウザイほどの過剰さで増幅されている一方、オケシーンは贅沢なまでの迫力でスケールアップしていて、特に後者においては映画化する意義は断然あったといっていい。
クラシック音楽に疎い自分が胸弾ませながら音を楽しむ=“音楽”を体感できた作品が他にあっただろうかと思うくらい見応えがあるし聴き入ってしまう。
また、TVドラマではドラマとオケの比率が7:3くらいだったのが、映画では半々くらいになっていて、しかも両方のベクトルの振れ幅は最大値にまで振り切れている。
特に前編はその点では完ぺきともいえる出来で、やや後編に関してはのだめの苦悩というシリアス度が増したせいか振れ幅は尻すぼみになっている感はあるものの、のだめファンとしては十分に満足できるものになっていたと思う。
とにかく楽しめたってことだけでこの映画版は大成功!
またいつか、のだめに会えることを願って・・・
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マエストロ!
出演:松坂桃李、miwa、西田敏行、古舘寛治、濱田マリ、斉藤暁、嶋田久作、松重豊
監督:小林聖太郎
(2015年・松竹・129分)WOWOW
内容:ヴァイオリニストの香坂は、若くして名門オーケストラのコンサートマスターを務めていたが、不況のあおりで解散してしまい、海外オケへの就活も上手くいかない。しかしそんなある日、オケ再結成の話が舞い込んでくるが、練習場はなぜか廃工場、集まった団員も再就職できない“負け組”連中たちとアマチュアフルート奏者の女のコだけだった。さらに、肝心の指揮者は経歴も素性も不明の老人で・・・。
評価★★★/60点
楽器演奏シーンのリアリティなど音楽に対する真摯な姿勢はよく伝わってくるけど、こちらの心の琴線を震わせるような喜怒哀楽が生み出す感動はなかったかなぁ。凡庸な設定が弾けることなく凡庸なまま終わっちゃったかんじ。。
要はキャラクターの内面や心情変化を音楽によって表現しきれていなくて、例えば、のだめカンタービレは“楽”なんだけど、どれかひとつが突出していれば感情移入できてまた違ったのかも。ただ、その点で最も良かったのはmiwaちゃんで初演技とは思えない余韻を残してくれた。
それでも、音楽による感情表現という点では、アマチュアだったら変化のしがいもあるんだろうに(その点miwaはアマチュア役だった)、落ちぶれ楽団員とはいってもあくまでプロオケだから音の良し悪しや違いが素人耳にはよく分からないんだよね
あと、一度解散した名門オケが再結成コンサートを行うという目的意識がやや弱かったのもパンチ力がなかった所以か・・・。
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スウィングガールズ
出演:上野樹里、貫地谷しほり、豊島由佳梨、本仮屋ユイカ、平岡祐太、白石美帆
監督・脚本:矢口史靖
(2004年・東宝・105分)2004/08/22・お台場映画王
評価★★★☆/70点
東北は山形県置賜地方のとある高校。友子(上野樹里)たちは補習をサボる目的で、野球部の試合会場に弁当を届けに行ったが、その食あたり弁当にあたってしまった吹奏楽部員たちが軒並みダウンしてしまう。仕方なく数合わせのためにブラスバンドの代役を務めることになったド素人の友子たちだったが、次第にジャズの虜になっていき・・・。楽器の猛特訓を積んで撮影に臨んだガールズ(&ボーイ)が演じる笑いあり涙ありの青春グラフィティ。上野樹里や本仮屋ユイカを開眼させた出世作。
“平岡祐太がアンガールズの田中に見えて仕方なかったスレ。ジャンガジャンガ♪”
うーん、迷ったあげくにこの点数。ま、楽しいっちゃ楽しいし、飽きることなく観れるのだけど。
しかしまぁ、「ウォーターボーイズ」では海で練習しているのが高校生が海で溺れているというニュースになり、今回は集団食あたりでニュースになりと、もろもろの細部にわたって展開が同じ。しかも「ウォーターボーイズ」のときと同じニュース番組だろあれって(笑)。
拓雄(平岡祐太)が、中古品は前に使ってた人の癖がついてしまい扱いづらくて大変だべした、と友子たちに忠告していたんだけど、この映画はまさにそんな中古品すれすれの作品ww
しかし矢口監督の癖があからさまにすっごく軽くて手の平で転がせるような扱いやすさになっているのが、ある意味で矢口映画の特徴というか強みなのかもしれないし、評価すべきところなのかも。
が、しかしである。
映画は監督であったりとか役者、または映像、シナリオといった作り手の癖を見るのもひとつの楽しみだということは百も承知なのだけど、個人的に矢口史靖の癖はもうそろそろ自分の中で許容量を越えてついに倦怠期に足を一歩踏み入れてしまった感がこの作品を観て強くあったというのはまぎれもない事実で。
例えば友子たちが、復帰してきた吹奏楽部員に半ば追い出される格好になって、最初は強がりを言ってたのに全員泣き出しちゃうシーン。あれ全然感情移入できないんだよね。なんで皆そろいに揃って泣くんだよ。本仮屋ユイカだけ泣けよみたいなww
また、一回脱退していた軍団が自分たちの持ってるブランド品を売ったお金で中古の楽器買って戻ってくるところも、練習もしないでなんでそげなに上手くなってんの?というのも引っかかって引っかかって仕方なかった・・。
今まで効いていたはずの矢口マジックがどうやらもう効かなくなってきたみたい。
そんなぁ、悲しいっちゃ。どうしてくれんだべぇこれから・・・(笑)。
でも「ウォーターボーイズ」より良かったとこを強いて挙げれば、妻夫木が最後の見せ場で人前に出るのを躊躇しちゃうあの映画唯一のわけ分かんねシーンがあったのだけども、この映画では田舎の線路をルーズソックス履いた女子高生軍団が練り歩くシーンに象徴されるように、友子を筆頭にとにかくストレートに突き進んでいく姿、とにかくスウィングしだくでたまんね!っていう一直線な姿が伝わってきたことかな。
なんだべ、やっぱこれ好きでねえのかおメエww
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くちびるに歌を(2014年・日本・132分)NHK-BS
監督:三木孝浩
出演:新垣結衣、木村文乃、桐谷健太、眞島秀和、石田ひかり、木村多江、井川比佐志
内容:長崎の五島列島にある中学校。産休に入る幼なじみの音楽教師ハルコの代理として、東京からやって来た柏木ユリ。美人のピアニストがやって来たと学校中は大騒ぎだが、当の本人は全くやる気なし。ハルコに頼まれイヤイヤ合唱部の顧問を引き受けたが、ピアノは決して弾こうとしなかった。そんな中、合唱コンクールの県大会が近づいていた・・・。
評価★★★/60点
同じ島つながりで「二十四の瞳」みたいにもっと明朗な映画かと思いきや、2時間10分のうち1時間半にわたって仏頂面を通す柏木先生(新垣結衣)同様に映画もいまいちハジケない。
って考えると、そもそもガッキー視点で作ったことがビミョーなズレを生んだ感があって、どうみても中心軸にあるのは家庭の問題を抱えるナズナと自閉症の兄に寄り添うサトルのはずなので、先生は脇に置いといて生徒視点で描く「スウィングガールズ」方式で作るべきだったのではと思ってしまう。
そっちの方が成長度合いも明確に描けたと思うし、だって指導らしいことほとんどしてないじゃん、この先生(笑)。しかもガッキーが乗ってる車のオンボロ度はどう考えてもコメディっしょ。「北の国から」の田中邦衛でさえもっとマシな車に乗ってたよww
なんかそういう点でも必要以上に温度差を感じちゃう映画だったなと。
いや、今振り返ればスゴイいい話であることはたしかなんだけどね。。
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オーケストラ!(2009年・フランス・124分)WOWOW
監督:ラデュ・ミヘイレアニュ
出演:アレクセイ・グシュコフ、メラニー・ロラン、フランソワ・ベルレアン、ミュウ=ミュウ、ドミトリー・ナザロフ
内容: 旧ソ連時代、ボリショイ交響楽団で指揮者を務め、巨匠と呼ばれていたアンドレイ。しかし、共産党政権に楯突いたことからその座を追われ、30年経った今では劇場清掃員になっていた。そんなある日、支配人室の清掃中にパリからの出演依頼のFAXを見たアンドレイは、突拍子もない作戦を思いつく・・・。
評価★★★/65点
耳に騒音としか認識できないドタバタコメディと心に切なくしみるドラマとのギャップがどうも肌に合わなくてイマイチだったけど、クライマックスの演奏シーンに全部持ってかれたかんじ。
とはいえ、こういう楽団ものって、「スウィングガールズ」しかり「ブラス!」しかり音符が踊って音が響いてなんぼだと思うんだけど、そういうシーンがあまりにも少なく、かわってメインとなる楽団員集めもサクサク進みすぎて味わいがない。まさかかわりに銃弾が飛び交うとは思いもよらなかったけど・・w
なんだかこのいい加減さについて行けないんだよね・・・。
背景にある黒い歴史の悲劇についてもっと知ってればまた違う感触を抱いたのかも。。
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