夢のシネマパラダイス41番シアター:往年名作劇場12番館
明日に向かって撃て!
出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
(1969年・アメリカ・112分)DVD
評価★★★★/80点
内容:アウトロー集団を率いるブッチ・キャシディ(P・ニューマン)とその相棒サンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)は、同じ列車を往復で襲うという、列車強盗史上画期的な計画を成功させるが、鉄道会社の執拗な追っ手から逃げ切れず、ついに国外脱出を決意する。キッドの恋人エッタ・プレイス(K・ロス)を伴ないボリビアへやって来た3人は、なんとか強盗で生計を立てようとするが、とうとう軍隊に取り囲まれてしまう。。。「俺たちに明日はない」や「イージー・ライダー」に続くアメリカン・ニュー・シネマ台頭の中から生まれた傑作西部劇。アカデミー賞では、脚本賞、撮影賞、作曲および主題歌賞を受賞。
“ドデカイくそガキ2人組とかわいいオネエさんの大ざっぱでちょっとカッコいいお話。”
この映画は冒頭のセピア調の画に入っていけるかどうかでこの映画が好きになれるかどうかが決まっちゃうんじゃないかなと思う。
ここで、あっ、この映画好きだなーと一気に思えるか、感じられるかどうか。この冒頭でダメだなとなるとこの映画に入っていくのはまず無理っしょ。
なぜならこの映画は冒頭のセピア調の空気や薫り、雰囲気、ムードといったものが全編を通して漂っているからで、いや漂っているというのははっきりいって言葉としては弱くて、この映画を根底から支えている、映画として不可分なものといった方が正しいか。
「タイタニック」の冒頭もセピア調だったけど、この映画におけるその意味合いと重要性は全く異なる次元にあるといっていい。
例えばコーヒー店に入ったらコーヒー豆の薫りがする、花屋に入ったら花の香りがする、ワインを飲む時に香りを楽しむといったことと同じだと思うんです、この映画って。
ようするに薫りと切っても切り離せない関係にあるのではないかなと。ま、この映画では雰囲気といった方がいいけど、薫りを切り離しちゃったらすっごい陳腐な映画になっちゃうんじゃないかなあと見てて思ったんだけど。
はっきりいってストーリー展開は大雑把だしすごく単純で、特にエピソードとエピソードの間がすっごく雑なのね。なんか1つ1つの使えそうな持ちネタをただ繋げてみましたというかんじに見えちゃう。
しかもキャラクターの説明がほとんどない。ブッチとサンダンスは、ハイ、俺たち強盗ですってだけで背景なんてないし、エッタなんてほんと映画の後半になってからやっとで26歳の独身教師ということが分かる。
それなのに何とも不思議なことに見入っちゃうわけで。
それはなぜかと考えてみると、やはり冒頭のセピア調の画面に行き着いちゃうわけで。
トーキーっぽい画面からセピア調に変わってすぐのカット、銀行を下見しようとしてドアの外から中をのぞくブッチ=ポール・ニューマンの顔がクローズアップされるところでもうすでにビビビッときたからね。あっ、これ好きだわと、自分好みの映画だなと。
ちょっと言葉で言い表すのは難しいけど、とにかくこの1カットがすごく好きなのです。画面の雰囲気とポール・ニューマンのピシッとした表情が見事にマッチ。マジでカッコいいっス。そして珍しいヒゲ面レッドフォードの賭けトランプシーンへとつづいていく。このシーンも「スティング」を彷彿とさせていて好き。
と、やはりこの映画はオープニングに尽きるのかなと思ってしまうわけで。
ほとんどこのプロローグっぽい冒頭で2人のキャラ設定が簡単に終わっちゃってるし。
この2人はこういうかんじのこういう雰囲気の男たちです、ハイ、というわけであとは観てけば分かるからみたいな。
よく考えるとすごい無責任なやり方なんだけど、いったんこの映画の雰囲気、薫りに衝かれちゃうと全く気にならないんだよねぇ。不思議。
ま、冒頭カッコよかったお二人さんも話が進むにつれて化けの皮がはがれてきて、もうホント少年の心を持った悪ガキ2人組てかんじに見えちゃうわけだけど。カッコいいというよりなんかカワイイというか・・・。
一方、エッタはサンダンスに「泣き言を言ったらその場で捨てるぞ。」とか言われたりしてるけど、どうみても1番の大人はエッタ。2人に弄ばれてるかというと全く逆で、エッタの方が手玉に取ってるかんじだし、ボリビアに一緒に行きはしたものの結局は、「家に帰るわ」と捨て台詞を残してとっととアメリカに帰っちゃうし。もうガキの相手はしてらんないってかんじでしょたぶん。
泳げない、撃てない、話せない、しかもバカな言い争いばかりしてるんだもんw
ほんとガキそのもの(笑)。
基本的にガキってのは、今1番興味があること以外は興味が失せちゃうから、エッタが「家に帰る。」と言っても「お好きにどうぞ。」と簡単に言えちゃうわけだ。
でも、はたから見てると憎めない奴らなんだけどね。
そしてこの映画自体も憎めないんですよ、ええw
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卒業
出演:ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト
監督:マイク・ニコルズ
(1967年・アメリカ・107分)NHK-BS
評価★★★☆/70点
内容:学問にスポーツに、賞と名のつくものは全て取って東部の大学を卒業したベンは、そういう評価自体に疑問を覚え、説明のできない焦燥感を抱いていた。嫌がる彼を無視して両親が開いたパーティで、ベンは年上のロビンソン夫人と知り合う。ベンは、成り行きで彼女と情事を重ねるが、大学の休みで帰ってきた彼女の娘エレーヌと出会ったことで、真実の愛に目覚めていく。。。同年製作の「俺たちに明日はない」とともにアメリカン・ニューシネマの到来を告げる作品となったことでも有名。
“ユーモアかつ皮肉たっぷりに描かれるベンのハメはずし青春冒険譚。しかし、ラストのラストで一気に冷める作り手の視線が、コメディから現実へと引き戻す。”
そもそもこの映画をコメディとして見てしまう自分の感覚もどうなんでしょう、、ってところなのだろうけども。
ただベンとロビンソンの関係ややり取りはもちろんのこと、今見ても妙に斬新なモンタージュが多用されている点などコメディ要素は十分あると思う。
さらに自分の場合、映画見る前から有名なラストのことは知ってたから、、その辺のことも関係しているのかも。。
さて、ということで冒頭で述べた、映画のラストで冷める作り手の視線について。。
これもまた自分が抱いた一方的な印象ということであればそれまでなのだけど、ラストでバスに乗り込んだ後のベンとエレーヌの表情をカメラは意外に長く観察しているわけ。しかも何か一歩退いたかんじになっているばかりか、はしゃいで乗り込んできた2人も熱いキスとか抱擁でもするのかと思いきや次第に笑顔も消えて、アツさのほとぼりが冷めていく様子が見て取れる。
この直前シーンでバスの最後尾に座った2人をバスの乗客が皆振り向いて凝視しているわけだけど、このときのカメラの視線は乗客たちの視線と重なっているともいえる。さらにいえば、ベンとエレーヌを取り巻く社会の視線ともいえる気がするわけで。
そんなに人生甘くないぞ!お二人さんというような何か社会の冷徹な視線が、あの時2人に注がれていたかんじがした。
しかし、それでも2人を乗せたバスは走っていくというところでこの映画は幕を閉じる。
とにかく新たな2人の人生はスタートを切った。
本当にハッピーエンドといえるかどうかは、あの後に待っている様々なデコボコ道を2人が一緒にどう乗り越えていくかにかかっているのではないだろうか。
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情婦(1957年・アメリカ・117分)DVD
監督・脚本:ビリー・ワイルダー
出演:タイロン・パワー、マレーネ・ディートリッヒ、チャールズ・ロートン
評価★★★★/80点
内容:ロンドン郊外に住む金持ちの老未亡人が殺害された。容疑者として逮捕されたレナードは、法曹界の長老ロバーツ卿に弁護を依頼。ロバーツ卿はレナードが無実であると確信して裁判に臨むが、検察側の証人として現れたレナードの妻クリスティーネが、夫が未亡人殺しを告白したと法廷で証言する、、、。アガサ・クリスティの短編「検察側の証人」の映画化。
“とにかくこのジジイはムカツク。。”
メガネのレンズとか筆箱に太陽光を反射させて他人の顔に向けてくる奴って1番ムカツクんだけどさ、、アンタだよ!ロバーツ卿
なんだかこのジイさんって嫌いなタイプなんだよなぁ(笑)。
最初の50分、このいけ好かないジイさんの家が舞台となるわけだけど、ジイさんの性格の好き嫌いは別としても、導入部としてはちょっとキビしいものがある。冗長だし、ジイさんの人物描写がクドイ。
そこは良くも悪くもワイルダーらしいのかもしれないけども、ひとつ所が舞台ゆえ求心力に欠けるのだ。
時速10kmで50分走り続けるといったかんじか。
しかし、それとは打って変わって後半の1時間はテンポ良く法廷劇が進み、残り10分は雪崩なみの展開をみせる。
だからこそ前半部分の冗長さが引っかかってしまうのだ。
前半と後半との差が激しいというべきか、つながりに欠け前半が活きてこないと感じたわけで、要は前半に関しては余分な贅肉が多いかなと。
う~ん、、ヒッチコックだったらなぁと思うと・・・。
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アルカトラズからの脱出(1979年・アメリカ・112分)NHK-BS
監督:ドン・シーゲル
出演:クリント・イーストウッド、パトリック・マッグーハン、ブルース・M・フィッシャー
評価★★★★/80点
内容:1963年に閉鎖されるまで、脱出不可能といわれていたアルカトラズ刑務所からの脱出を試みた男たちの実話をサスペンスタッチで描く。サンフランシスコ湾内のアルカトラズ島へ、囚人フランク・モリスが送り込まれた。今まで各刑務所で脱獄を繰り返してきた彼は、アルカトラズでもある兄弟と協力して周到な脱獄計画を進めていく・・・。
“しまりのない裸をさらけ出すオヤジ臭団に女っ気ゼロ、セリフ極少、音楽控え目、山場特に無しのあっという間の120分!”
とにかく地味~な映画。派手さは皆無。
ところが、なぜかこの映画は自分を惹きつけてしまう。なぜなのか。。
それは一言でいえば、職人技ということに尽きるのではないかな、と。家のリフォーム番組に出てくる職人、匠を見ているようなかんじ。
脱走の名人モリスは脱走の職人であり、言い換えればそれは仕事なのだ。脱走という職人のお仕事を120分間観客は見せられるのだ。
そして脱走という先にある目的は、自由を勝ち取るということ。
この映画で描かれるのは、脱走という職人技と自由を勝ち取るという執念ただそれだけだといえる。そこに下手なドラマチックさはないし、必要もない。
この映画は実話らしいが、映画を作る際に、実話から何を取捨選択して描いていくかということに関してドン・シーゲル監督は、何を描き何を描かないかをきっちりと区別して作ることに徹しているといえる。
この監督もまさに職人技を披露してみせたのだ。
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