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2011年9月29日 (木)

夢のシネマパラダイス189番シアター:インビクタス/負けざる者たち

インビクタス 負けざる者たち

126195579986116303341 出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン、トニー・キゴロギ、パトリック・モフォケン、マット・スターン

監督:クリント・イーストウッド

(2009年・アメリカ・134分)WOWOW

内容:1994年、27年間投獄されていたネルソン・マンデラが南アフリカ初の黒人大統領に就任する。しかし、アパルトヘイト撤廃後も人種対立は解消されず国はいまだ分断状態にあった。そこでマンデラは、翌95年に自国で開催されるラグビーW杯での代表チームの活躍が国をひとつにする絶好のプランと考える。が、チームは国際舞台から締め出されていたため弱小の一途をたどっていた・・・。

評価★★★★/75点

前々作「チェンジリング」、前作「グラン・トリノ」からイーストウッド演出は確実に余分なものを削ぎ落とす傾向にあり、朴訥な語り口の中で簡潔で的確な表現をポツポツと積み重ねていくことで内面的な躍動感をストレートに伝えていく。

さらにいうならば、削ぎ落としていった結果、最終的にたどり着くのは表現者たるイーストウッド自身であり、しかしあくまでも自己完結することなく彼は映画の中に存在しつづける。

老いからくる衰えが決してマイナス要素になることなく、より純化していく。

これが近年のイーストウッド演出の極みといっていい。

そしてそれは、映画表現という地平の上で映画を撮る術、その形を極めた達人にしかできない芸当であると思うわけで、例えていうなら剣の達人が禅の境地に達したというべきか、そういう地平の彼方にイーストウッドはたどり着いてしまったのだと思う。

そしてその思いはこの映画を見て確信に変わった。

なんとも飾りっ気のないフツーの映画という形容がピッタリくる印象なのだけど、と同時に自然に心を揺さぶるような清々しい映画的感動を呼び覚ましてしまうのだから恐れ入る。

多分に政治的、社会的なテーマを抱え込みながら、決して嘘くさくならずにストレートにメッセージが伝わってくるのだ。

オイラの大好きなサッカーをはじめスポーツというものがナショナリズムを喚起する一方で、国境やイデオロギーを軽々と飛び越えてしまう特別な力を持っていることも大きいのだろうけど、映画の持つ真実の力を信じ続けるイーストウッドの勝利といっていいだろう。

ケチをつけるとすれば、ラグビーシーンかなぁ。スクラムを下から撮るなんてのは、おそらくラグビーをそんなに知らないと思われるからこそ生まれた発想でそれはそれで良いんだけど、フツーにTVで見るような俯瞰的なアングルのショットをもうちょっと見たかった気も・・。

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アメリカン・ヒストリーX

19750 出演:エドワード・ノートン、エドワード・ファーロング、ビバリー・ダンジェロ、ジェニファー・リーン

監督:トニー・ケイ

(1998年・アメリカ・120分)DVD

評価★★★★/80点

内容:アメリカを蝕むヘイト・クライムの現状を描き、全米を騒然とさせた衝撃作。ネオナチグループのリーダー的存在で、白人至上主義活動にのめり込むデレクは、家に盗みに入った黒人を殺して刑務所に収監される。その間、デレクを尊敬する弟ダニーもまた活動に加わっていた。が、3年の刑期を終えて出所したデレクのあまりの変貌ぶりにダニーは戸惑う。一体デレクに何があったのか・・・。

“この映画から習ったのは空虚と狂気と怒りと理解だ。”

今までアメリカの人種問題をどうしても対岸の火事として見てしまっていた自分。

しかし、そう思っていた自分を撃ち殺してしまうほどこの映画は強烈なインパクトがある。

そう、自分はこの映画に撃ち殺された。

自分は必死に理解しようとした。この映画を。デレクを。ダニーを。

そして必死こいて何とか対岸に上陸しようと頑張った。対岸で燃えさかる炎の火の粉が降りかかってくる中を。

その降りかかってくる火の粉の痛みを伴なう熱さが強烈に突き刺さってくるので、何度も対岸に向かうことをためらい躊躇した。

それでもまた思いとどまってなんとか進んだ、、、、そしてオレは撃ち殺された。

自分の思考はそこで停止した。そして思考が停止した途端急に楽になったような気がした。

結局自分は対岸にたどり着くことはできなかった。

しかしオレは見た。

対岸の燃えさかる炎の切れ目に星条旗が悠然となびいているのを。

自由の国というキャッチフレーズがこれ見よがしに謳われている国、アメリカ。その翻る星条旗に人種問題という汚水が染み付いているのはさすがのオレでも分かってる。

だってヒップホップアーティストの2パックとかランDMCのジャム・マスター・ジェイがいとも簡単に射殺されてしまう国なのだから。この映画の中でも黒人ラップに白人が汚染されているとか吠えてたっけ。

しかし、それでも自分の中で人種問題が問題意識として鮮明に浮かび上がってこないのは、やはり自分の置かれている環境とあまりにもかけ離れた世界、あまりにもかけ離れた出来事だと感じていたからだと思う。

そんな時に、この映画ときたもんだ。。

ますますもってあまりにもかけ離れた世界でのあまりにもかけ離れた出来事なのだという思いを強くせずにいられない。はっきりいって考えること自体無意味に思えてくるくらいに。

しかし、一方ではこう思っている自分もいる。

結局は挫折してしまったものの懸命に自分の思考をめぐらして観させたこの映画の意義は大きいと。

自分の思考を停止させたのもたしかに逃避ではあるかもしれないが、プラスと捉えたい。これからの自分に対して。

デレクがラストの惨劇にあい、どういう思考をあれからめぐらしていくのか・・・。プラスに捉えることを信じるしかあるまい。

自分と対岸に広がっていた広漠たる空白は確実に少しではあるが埋められた。

しかしまだ空白は広い・・・。

自分の思考は再び動き出した。

人種間のミッシング・リングが見つかることを願って。

〔追記〕1).人種問題はアメリカに限ったことではないけどね。ヨーロッパ、そして日本にだって在日などに対する差別はあります。

サッカー好きゆえ、欧州サッカーは日々観てるけど、黒人選手に対する観客の誹謗中傷は今でも公然と行われているし。

2).この映画のスゴイ点は、1人の聡明な男がいかにして狂気に走るのかを描くのではなく、狂気に走った後を中心に据えて描いている点にあると思う。

いかにして人種差別(白人至上主義)、そして狂気へと突っ走っていくのかということが、すでにアメリカ人の中で既成概念としてベースにあるのだとするならば、マジで自分にとってはかけ離れすぎている世界に思えてしまう。。

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招かれざる客(1967年・アメリカ・108分)NHK-BS

 監督:スタンリー・クレイマー

 出演:スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン、シドニー・ポワチエ

 内容:アメリカ社会に根強く残る人種差別問題を正攻法で描いた人間ドラマ。世界的に有名な黒人医師のジョンは、ハワイで知り合ったジョーイと愛し合うようになり、結婚を誓う。2人は互いの両親の許可をもらうためにサンフランシスコへ戻って来たが、ジョーイの両親は娘の恋人が黒人だと知って驚愕。一方、ジョンの両親も息子の嫁が白人だと知って愕然とする・・・。

評価★★★☆/70点

たかが肌の違いで映画1本撮れちゃうというのも考えてみれば悲しいことだね。

たかが肌、されど肌の違いなのかぁ・・・。

2011年9月28日 (水)

夢のシネマパラダイス216番シアター:パブリック・エネミーズ

パブリック・エネミーズ(2009年・アメリカ・141分)CS

 監督:マイケル・マン

 出演:ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル、マリオン・コティヤール、ビリー・クラダップ、スティーヴン・ラング

 内容:1930年代の大恐慌時代に銀行強盗を繰り返しながらも義賊として民衆に支持されたギャング、ジョン・デリンジャー。FBIは彼を“社会の敵No.1”として逮捕に全力を挙げていく・・・。

評価★★☆/50点

生きざまというよりは死にざまを描いた映画だけど、ジョン・デリンジャーの人となりがほとんど分からないまま何の感情もなく銀行強盗してドンパチやってるようにしか見えないので、印象としてはホントにラストの死に際しか残らない。

おそらくアメリカ人にはデリンジャーはものすごくメジャーな人で、そこらへんは描かなくても分かるってことなのかもしれないけど、何も知らないオイラにはこの描き方はキビシイものがあった。

パイレーツ俳優になったとはいえw、ハリウッドのアウトロー的存在感をいまだに有しているジョニデのキャラと乾いた映像美だけで引っ張っている映画といえばいいだろうか。

ジョニデファンにはたまらないんだろうけど、銀行強盗、ドンパチ、刑務所、脱獄のリフレインは退屈きわまりないものがあり・・・。

聞くところによるとデリンジャーは義賊だったみたいだけど、そこもあまり伝わってこなかったし。。

ただ、エンドロールまで監督がマイケル・マンだとは気付かず、、なるほどスタイリッシュな映像やクラシカルな男の世界観など合点がいくといえばいくんだけども、男しか描けないはずの監督がマリオン・コティヤールをこれだけ美しく撮れて刹那的なロマンチシズムを主軸に据えちゃうなんて思いもよらず。

その点ではマイケル・マンの新たな一面を見れたことだけは収穫だったかも。

でもそれが分かった上で見れば、やはり構成のぎこちなさというかドラマの単調さは気になるところで、ジョニデvsクリスチャン・ベイルのバシッとした男の対峙をこそ見たかった気も・・。

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ロード・トゥ・パーディション(2002年・アメリカ・117分)MOVIX仙台

 監督:サム・メンデス

 出演:トム・ハンクス、ポール・ニューマン、タイラー・ホークリン、ジュード・ロウ、ジェニファー・ジェイソン・リー、ダニエル・クレイグ

 評価★★★☆/70点

 内容:1931年のシカゴ。アイルランド系マフィアの幹部であるサリヴァンは、長男のマイケルに殺しの現場を目撃されてしまう。さらに、もともと彼が邪魔だったボスの息子コナーが、サリヴァンの妻と次男を殺害。サリヴァンは復讐を胸に、マイケルとともに逃避行に旅立つ。。

“題名に隠されたもうひとつの意味「地獄への道」、、、<聞いて地獄、見て地獄>なら文句なしに★5つ付けられただろうが、なぜかこの作品は地獄の一丁目で立ち止まったまま前に進もうとしない。”

<聞いて極楽、見て地獄>ならまだしも、この作品は<聞いて地獄、見てお上品>というこちらの燻りはじめた不満をうまくはぐらかされ、かわされながら結局その燻りは赤々とした炎になることなくラストまで観せられちゃったかんじ。

サム・メンデスにしてやられたな、と。。

素晴らしい映像に表向きは映画観たなぁという気にさせられるが、どこかで釈然としないわだかまりが胸の中にずっと燻り続けている。

それはつまるところ、ことごとく二項対立で配置された人物たちが、観ている自分の中で勝手にひとり歩きしないというところに行き着いてしまう。

まるでサム・メンデスの掌の上に乗るただの駒のような印象を抱いてしまうのだ。マイクはここ、ルーニーはここ、マイケルはここ、コナーはここ、と。

しかもその事前に割り当てられたマス目からはみ出ちゃダメだというような立ち位置で。そしてそこにサム・メンデスの圧倒的映像美のカーテンが覆いかぶさる。

それも映画のひとつの醍醐味ではあるのだけど、、しかし。。

物語の内容がベタであることは全くかまわない。

良くも悪くもほとんどの映画は基本的にベタなのだから。

問題は映画の中で息を吹きかけられた登場人物たちに味わいを感じなかった、もっと言えば高まる生の鼓動を感じなかった、そこにわだかまりが残ってしまうのだ。

とはいえ、ジュード・ロウ演じる見ていて虫酸が走る殺し屋になぜか味わいを感じてしまったのは何とも皮肉。

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グッドフェローズ

1900_0043  出演:レイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ぺシ、ロレイン・ブラッコ、ポール・ソルヴィノ

監督・脚本:マーティン・スコセッシ

(1990年・アメリカ・145分)NHK-BS

内容:ヘンリーは幼い頃から“グッドフェローズ”と呼ばれるマフィアの世界に憧れ、12歳にして地元のボス、ポールの舎弟となる。兄貴分のジミーや、気はいいがキレやすいトミーと友情で結ばれる。やがて結婚し子供にも恵まれるのだが、ジミーの指揮した600万ドルの強奪事件が起こり、ヘンリーはFBIに内部告発を強要される。。名匠スコセッシが挑んだ本格的ギャングムービー。抗争や犯罪描写よりも、マフィアに憧れた1人の男の苦く空しい一生を軸に、組織内での生活、友情、そして裏切りを正攻法の人間ドラマとして描いているのが特色。

評価★★★/65点

中学生のときにビデオで観て、アメリカ人はとにかく「Fucking!」という言葉を使うのが好きなのだということが分かった。

しかし、なぜか学校の英語のテストには1回も出てこなかった・・・。

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フェイク(1997年・アメリカ・126分)仙台第1東宝

 監督:マイク・ニューウェル

 出演:ジョニー・デップ、アル・パチーノ、マイケル・マドセン、アン・ヘッチ

 評価★★★★/75点

 内容:FBI捜査官ピストーネは、おとり捜査のためにマフィア組織に潜入することを命ぜられる。ドニー・ブラスコという名で接触を図った彼に最初に近づいたのは組織の末端の気さくな男レフティだった。レフティは聡明で行動力あふれるドニーとの出会いに、あきらめていた出世への夢を再び抱くようになるが・・・。

“あれだけ命張って、得たものが雀の涙ほどって一体・・・。”

ようするにメダルとたった500ドルで友情を裏切ってしまったという何とも哀しいお話。

話の展開としては、実話ゆえの難しさか、フィクションならばもっと盛り上げたりスリリングにできる展開にできるネタなのだけども、なんか淡々と進んでいくかんじで少し惜しい気もする。

例えば、兄貴分に付いたレフティは、俺たちは組織の小さな歯車の1コに過ぎないと半ばあきらめてるけど、このレフティがもしも上昇志向のある若手組員だったならばもっと違う展開にすることだってできたはずだ。

まぁレフティの人物造形がリストラされていく中年オヤジの悲哀たっぷりなので致し方ないか。。

ホント、あの哀愁を帯びた表情が頭にこびりついて離れないもん。

だから、スリルよりも人物同士の友情に重きを置いた点は当然の帰結ともいえるし、やっぱりこの点は買いたい。

ただ、どうしてもマフィアものでアル・パチーノとくると「ゴッドファーザー」のマイケルを思い浮かべてしまうんだよね。

マイケルをほとんど感じさせないキャラとアル・パチーノの巧い演技でその点は消されてるけど、ニューヨークとマイアミといったら「ゴッドファーザーPart2」そのまんまじゃんみたいな(笑)。

ソニーソニーソニーっていったらゴッドファーザーの長男ジェームズ・カーン扮するソニーじゃんみたいな・・・。ちょっとかぶりすぎ。

夢のシネマパラダイス207番シアター:震える魂、男の使命!

沈まぬ太陽

O0668096310289902547 出演:渡辺謙、三浦友和、松雪泰子、鈴木京香、石坂浩二、香川照之、柏原崇、戸田恵梨香、草笛光子

監督:若松節郎

(2009年・東宝・202分)WOWOW

内容:1962年。国民航空の労働組合委員長を務めていた恩地(渡辺謙)に対し、経営側は10年近い海外僻地勤務というあからさまな懲罰人事を強いる。一方、恩地の片腕として共に闘っていた同期の行天(三浦友和)は、重要ポストと引き換えに会社側へ取り込まれてしまう。時は流れ1985年、500人以上もの死者を出すジャンボ機墜落事故が起こり・・・。

評価★★★★/80点

3時間を超える超大作を見るというのはかなりの覚悟が必要で、ハズレだと食べても食べても減らない不味いラーメンのごとく無間地獄を味わってしまうリスクがつきまとう。

しかし、それ以上に素晴らしい映画体験を味わわせてくれる確率もかなり高く、映画の醍醐味がつまったこのパンドラの箱を開けるのは実は好きで好きでたまらなかったりする。

「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」「タイタニック」、、etc..自分にとってパンドラの箱がかけがえのない宝石箱になった例は数多く、そのどれもが自分の記憶に強烈に刻みつけられている。

それはやはり長尺ゆえのスケールの大きさとドラマの奥行きの深さによって登場人物の人生を追体験したような感覚を味わえるからだろう。

その意味でいえば今回の映画も自分の記憶にしっかと刻み込まれた映画になった。

公開初日の舞台あいさつで渡辺謙が号泣していたのが印象的だったけど、なるほど映画のすみずみから作り手の映画にかける熱意、ヤル気、魂のほとばしりがギュンギュン感じられて非常に見応えがあった。

見終わった後に、なんか一冊の小説を読み終えたような心地良い疲労感を覚えて、映画見たゾーッていう気になったw

また、仕事を2回変えている自分にとって、ひとつの会社に骨を埋めるのが当然とばかりに仕事に人生を捧げる恩地の姿はギラギラと輝く太陽のように見えて眩しかった。

それは恩地と対になっている行天も同じで、ああこれが昭和を支えたニッポンのサラリーマン、お父さんたちの生き様だったんだなと、今の自分には持ちえない男の矜持というものを感じ取ることができて、なんだか見ていてすごいカッコ良かったし憧れてしまった。

まぁ、、とはいえ、オイラはもはやこういう仕事人間にはなりようもないけど、もうちょっと人生頑張ってみようという気にはさせられたな。

もうちょっと恩地の思想的バックボーンを掘り下げてくれたら満点入れてもよかったかも。。

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クライマーズ・ハイ

Climbershigh_1_1b 出演:堤真一、堺雅人、尾野真千子、高嶋政宏、山崎努、西田尚美、小澤征悦

監督:原田眞人

(2008年・東映・145分)CS

内容:1985年8月12日。乗員乗客524名を乗せた羽田発大阪行き日航機123便が墜落する。現場となった群馬県の地元有力紙・北関東新聞の編集局は騒然となるが、一匹狼として動いていた遊軍記者・悠木(堤真一)が全権デスクを命じられ、怒涛の1週間が幕を開けた・・・。

評価★★★☆/70点

今の日本映画界にあってクセのある濃密な社会派群像劇を描くことのできる数少ない映画監督だと思う原田眞人の作品は、観る側にとっては吹きこぼれてくるアクの強さを自力ですくい取らなければならない度量の大きさと忍耐力が必要で、途中でそれに挫折しようものなら一気に置いてけぼりをくらってしまう小難しさを持っている。

なのだけど、なにより映画を見たゾ!という気にさせられるし、個性派ぞろいのアンサンブルキャストとスタイリッシュな映像で畳み掛けてくる演出と作風は、今まで見たこともないような舞台劇に引きずり込む力強さも持っていて、けっこう好きで。

それに加えて熱いオトコ臭空間を仕立てることにも長けている和製マイケル・マンの今回の作品は、地方新聞社の編集局が舞台。

事件そのものよりも、新聞社という巨大組織の中でうごめく男たちの嫉妬と野心渦巻く喧噪劇に視点が置かれたところは、まるで銀行を舞台にした「金融腐蝕列島・呪縛」(1999)を焼き直ししたような構成になっていて、遊軍記者・悠木とナベツネを想起させる社長(山崎努)との関係は同作における役所広司と仲代達矢の関係と瓜二つ。

とはいうものの、さすがは原田眞人。

「金融~」よりもさらにまとまりのない混沌とした作劇になっている(笑)。

現場とデスク、現在と過去、父と子、組織と個、世代間対立といった二項対立のエピソードが空回りに空回りしまくっていて、それぞれのつながりが弱くてまとまりに欠けるのが最大の難点なのだけども、リズムのある臨場感で頂上まで一気に踏破し満腹感一杯に映画を見た気にさせる見せ切り方はなんだかんだいってやはりスゴイと思う。

NHKの土曜ドラマ版(主演は佐藤浩市)の方が個人的には好きだけど、ホンモノの“クライマーズ・ハイ”を味わえるという点では映画の方が的を射ているのかもしれない。

しかし、よくぞここまでクセのある役者さんを集めたもんだわ。感心しちゃいます。

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突入せよ!「あさま山荘」事件

Image197 出演:役所広司、宇崎竜童、伊武雅刀、天海祐希、椎名桔平、篠原涼子、武田真治、八嶋智人、藤田まこと

監督:原田眞人

(2002年・東映・133分)DVD

評価★★★★/75点

内容:1972年2月、連合赤軍のメンバー5人がひとりの女性を人質に、雪に閉ざされた軽井沢のあさま山荘に立てこもる事件が発生。10日間におよぶ攻防の末、警察が強行突入。運良く人質を無事救出、犯人全員の逮捕に成功するが、2人の殉職者と民間人1人が死亡、多数の負傷者を出す悲劇となった。この日本犯罪史上に残る大事件を、当時指揮官の一人だった佐々淳行氏の原作を基に映画化。

“青島刑事も和久さんも恩田刑事も出てこないどころか、犯人たちもただの謎の凶悪犯としか描かれていない完全特化フィクション映画。ドキュメンタリーXにもYにもZにもならない、劇映画としての立場をわきまえているトンだ代物。”

佐々氏の原作を読んだことがないばかりか、肝心のあさま山荘事件のことさえよく分かっていない自分。

以前NHKのプロジェクトXで事件について2夜連続だったかで取り上げていたが、それを見て初めて人質がいたことなどを知ったくらいだ。なにせ事件から約10年後に生まれてるんだから・・・。

連合赤軍はどんな輩なのか、どういうことをしていたのか今でもよく分からんし。ただ当時の人々がテレビの前にくぎ付けになったということだけは知っていた。

そして、、、この映画である。

映画の冒頭でこの映画は事件を基にしたフィクションであると前置きされていたとおり完全に原田眞人の作品世界やテーマに舵を取っていっているなというのが、事件のことをよく知らない自分でもさすがによく分かるつくりになっている。

どの程度事実と符合しているのかしていないのか分からないし、佐々氏から一方的に見た事の本質なのかどうかも分からないが、ただ1つ確かなのは、脚本も手がけている原田眞人の作品世界に実際にあったあさま山荘事件そのものが完全に組み込まれてしまっていることである。

それについての是非については個人的には完全に肯定する。あくまでも劇映画として撮っているわけだから、作り手の主観が入るのは当然だし、自分が撮りたいことのみを撮るというのも一向に構わないはずである。

そういう作り手の姿勢(主観が入ること、撮りたいことのみを撮ることetc.ようするに作り手が自由であること)について真っ先にとやかく言うつもりはない。

そのかわり、まずとやかく言うべきなのは、作り手の主観や主義主張そのものであり、またそれらをベースにして出来上がった作品や作品世界についてであろう。

つまり、作り手がやりたいように好きなように作るということに関してはどうぞご勝手にやって下さいなというわけだが、それで出来上がった作品についてはとやかく言わさせてもらいます、というのが自分のスタンスである。

よって前提としてはやりたいように映画は作るべきだと言っておきながら、出来上がった作品を見ると、やりたいようにやったからこんな体たらくな作品になっちゃってるんだとも言えちゃうわけで。なんかスゴイずるくて矛盾しているような映画批評スタンスかもしれないけども・・・。

ただ、やりたいようにやるというのは、決して作り手の無責任などではなく、必ず作り手の意志や主観が入っているはずだから重い責任が課されている(自由であることは実は重い責任を負うことでもある)のは当然なわけで、だから作り手の意志や主観をまずは第1に見ていこう、それを踏まえてから作り手の制作姿勢について思うことがあれば言おうと考えているのですが。。。

要は順序を間違えちゃうと、こちらもただ一方的になっちゃってるということになってしまう。難しいところです。

まぁ自分の中では納得しているので。といいつつ納得してるわりに全然うまく表現できないんだけど・・・。

さてさて、余談はさておき出来上がった今回の作品について言わせてもらうと、まあ自分好みの映画かなという印象はもったかな。

警察組織の呪縛と矛盾という観点から撮ったのであろうこの映画は、前々作の「金融腐蝕列島・呪縛」と同様の観点でもあるし、中央と所轄という視点でみれば、踊る大捜査線の逆バージョンの構図ともいえるわけで、個人的には非常に興味深いコンテンツであった。

しかしそのコンテンツのみに特化して描くための道具立て、題材が実際にあった浅間山荘事件というのはやはり少しばかり腑に落ちないところもある。

武田真治と篠原涼子なんてどこに出てたんだ??とエンドロールを見てビックリしたように、犯人と人質の描写はほとんど皆無といってよいし、長野県警もただの低脳集団としか描かれていない、いささか一方的な描き方なのはやはり気になった。

青島刑事が現場にいたらあの台詞が聞こえてきただろう。

「事件は会議室で起きてるんじゃない。現場で起きてるんだ!」

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