夢のシネマパラダイス564番シアター:ベンジャミン・バトン数奇な人生
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、ジェイソン・フレミング、ジュリア・オーモンド、タラジ・P・ヘンソン
監督:デヴィッド・フィンチャー
(2008年・アメリカ・167分)WOWOW
内容:1918年。第一次世界大戦の勝利に沸くニューオーリンズで、ある一人の男の子が生まれる。しかし、その赤ん坊は80歳の老人のような容貌をしていたため、ショックを受けた父親はその子を老人ホームの前に置き去りにしてしまう・・。施設を営む黒人女性に拾われた彼はベンジャミンと名付けられ大切に育てられる。そして、成長するにつれて若返っていく彼はある日、施設に慰問に来た少女デイジーと出会う・・・。
評価★★★☆/70点
思わずトリップ感に陥ってしまうほどの仕掛けとオチをエッジの利いた映像感覚で狂おしいほど見せつけてきたデヴィッド・フィンチャー。
しかし、監督の名前を伏せて今回の映画を見たら、デヴィッド・フィンチャーが監督したなどとは誰も見破れないのではなかろうか。
「こんな世界に生を受けた子供が幸せであるはずがない」「こんな街で子供なんて育てられない」(「セブン」1995より)というくらい不安定で不確実な世界観の上に立脚してきたフィンチャーワールド。
しかし、今回の映画、80歳で生まれてきた主人公が年を経るごとに若返っていくという奇抜な設定以外は、登場人物全てが善人という深い愛情に包まれた人間讃歌と、一生をかけた純愛物語が時をたゆたうような流麗な世界観の上に紡がれていく。
それはまるで「フォレスト・ガンプ一期一会」(1994)や、ブラピが主演した「ジョー・ブラックをよろしく」(1998)でも見ているかのような保守的かつバカ丁寧なつくりであり、いや、それは全然悪くないどころか往年のハリウッド映画を思わせる素晴らしい出来なのだけど、しかし一体全体デヴィッド・フィンチャーはどうしちゃったんだという・・・ww。
最も危険な動物は人間であると豪語してきたようなトゲのあるヤツがいきなり誠実になっちゃって、そりゃ面食らっちゃうだろ。
いや、それ以上にそんなヤツ信じられるかって話なんだけど、、、、、
それが信じられるんだわさ、これ見せられると(笑)。
“数奇な人生”とは名ばかりのオーソドックスでかなりあっさりテイストな回想ドラマにすぎないともいえるけど、様々な死が常に横溢している中で、それらの死が導き出すものが絶望などでは決してなく、哀しくも優しく、そして苦しくも愛おしい生なのだと語りかけてくる素直な映画を誰が貶められようか。
しかも2時間50分見せきる演出力はハンパないものがあり、決して飽きることなく先を見たいと思わせてくれる。
映像面でも特筆すべきものがあり、若返ったブラピなんてまるで「リバー・ランズ・スルー・イット」(1992)の頃の清新な顔立ちを彷彿とさせ、なんか逆に気持ち悪く見えちゃったんだけど(笑)、CGってここまで出来ちゃうんだと今更ながらに驚いてしまった。
しかし、CG以上に凄かったのがケイト・ブランシェット。
若々しい20代から、肌にハリがなくなり弛みが気になってきたオバサンを経て寝たきりの老女までを演じきったケイトは、CGコーティングされたブラピがかすんでしまうほどの存在感を見せつけてくれた。この映画に説得力をもたせた最大の功労者といってもいいだろう。
欲を言えばもうちょっと登場人物の内面に深く入り込んでいってほしかったかなと。
でも、それにしたってデヴィッド・フィンチャーの今後の行く先が気になっちゃうわなぁ。
鬼才から巨匠への転身を見せるのか。。今回の見るとアカデミー監督賞も近いような気がするんだけど。
いやいや、この監督の問題作、まだまだ見たいぞよ。
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