夢のシネマパラダイス235番シアター:松本清張サスペンス
ゼロの焦点(1961年・日本・96分)WOWOW
監督:野村芳太郎
出演:久我美子、高千穂ひづる、有馬稲子、南原宏治、西村晃、加藤嘉
内容:お見合い結婚した禎子と憲一。が、新婚7日目で憲一が出張先の金沢で行方不明になってしまう。夫の行方を追って金沢へ向かった禎子は、得意先の室田社長のもとを訪ねる。そこで禎子は、若い社長夫人・室田佐知子と受付嬢の田沼久子と出会うが・・・。
評価★★★/55点
能登の断崖から見下ろす深い深い海の寄せては返す厳しい荒波のごとき激しい情念が、終盤のダラダラと続くネタバレ告白シーンでかえって雲散霧消してしまった感が・・。
なんというか、律儀に作りすぎているというか、お行儀が良すぎるんだよね。
野村芳太郎―橋本忍―川又昴―芥川也寸志という黄金スタッフの初顔合わせともいえる作品だけど、この後「砂の器」や「鬼畜」が作られることを考えれば今回の映画の見る価値はあるのかも。山田洋次も脚本に加わってるし、そういう点でも貴重ではある。
しかし、なんだろ、、エロスが足りなかったのかな。映画化するのが10年早かったか・・。
P.S.
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霧の旗(1965年・日本・112分)WOWOW
監督:山田洋次
出演:倍賞千恵子、滝沢修、露口茂、新珠三千代
内容:殺人罪で投獄された兄の弁護を頼もうと東京の高名な弁護士のもとを訪れた熊本の女性。しかし、弁護士は多忙と高い弁護料を払えないであろうことを理由に依頼を断る。やがて、死刑判決を受けた彼女の兄は獄中死してしまい・・・。
評価★★★☆/70点
処女膜を破ってまで遂行される女の復讐、そのブレのない毅然とした意志は、見終わった後に何の余韻も残さないほど寒々とした感情を抱かせる。
しかもそれを演じているのが倍賞千恵子というのが意外で、お兄ちゃんといえば寅さんという印象しかないから、まさか兄貴が殺人犯だなんてビックリしたんだけど、あのキリッとした目が曲げない意志を貫いていて見応えがある。
また、これを撮ったのが山田洋次というのもこれまた意外で、こういうサスペンスもやってたんだとビックリしてしまった。
監督としては初期の頃の作品だけど、目を見張るようなカットもあれば、凡庸な演出も散見され、まだ若き頃の初々しさを見ることができるのもそれはそれで見所のひとつだろう。
そしてその初々しさを倍賞千恵子はもとより、重鎮・滝沢修の名演がしっかり補っていて映画としての完成度はかなり高い。
ただ、老婆殺しの真犯人はサウスポーの元野球選手の男で、そいつが杉田殺しもやったのか!?という真相には目もくれず復讐に身を焦がす女というのはある意味スゴイと思うんだけど、その動機付けが頼みにしていた弁護士が兄の弁護を断ったからというのはあまりにも直情的でどうも腑に落ちないというか感情移入しづらいというか・・・。
九州から上京してきて高名な弁護士のもとに押しかける冒頭からかなり一方的で意固地な女性像が提示されているけど、貧乏人の金持ちに対する復讐というには痛快さが全くないし、そもそも無理からぬ理由で依頼を断った弁護士の方としてはたまったもんじゃないと思うんだけどw
そこらへん、もっと突っ込んで、例えば桐子と兄の間には実は兄と妹以上のただならぬ関係にあったとか描いてくれればwwなんて・・。
結局、強い女に弱い男が飲み込まれちゃった恐~いお話てことで。。
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影の車(1970年・松竹・98分)WOWOW
監督:野村芳太郎
出演:加藤剛、岩下志麻、岡本久人、小川真由美、芦田伸介
内容:旅行代理店に勤める浜島幸雄は、家庭を持ちながら泰子という未亡人を愛するようになった。彼女には前夫との間に生まれた息子がいたが、なかなか幸雄になついてくれない。そして次第に幸雄は、いつかこの子に殺されてしまうのではないかという恐怖に取り憑かれるようになる・・・。
評価★★★☆/70点
「疑惑」(1982)が桃井かおりの桃井かおりによる桃井かおりのための映画だとしたら、これは紛うことなく岩下志麻の映画だろう。
クールで清楚、なおかつ上品な佇まいの昼の顔と、白い柔肌をさらけ出し、淫靡なあえぎ声をあげる夜の顔、そして母と女という、世の一般女性が持つ表と裏の顔を艶っぽく演じた岩下志麻が絶品!
エロティシズムでは「心中天網島」(1969)も印象的だったけど、この作品の岩下志麻はピカ一
きりりとした端正な顔立ちゆえ、より二面性が露わになってエロさが際立つんだよね。当分頭から離れそうにありません・・
そんなエロ満開の夜の秘め事を透明なガラス戸越しに垣間見なければならないなんて、映画見てるオイラの方が悶々としてるっちゅうのに、6歳の子供にとってはショック以外の何ものでもなかろう。しかも相手は見知らぬオッサンでっせ。
そして、そこからにわかにサスペンスが湧き立ってくるわけだけど、個人的にはもっとサスペンス的な恐さでゾクゾクさせてほしかったような・・。
毒団子や包丁などガジェットとしてはありきたりなかんじで、ナタとガスは恐かったけど、もっと精神的に加藤剛が追いつめられていく様が見たかったかな。音楽が非常に良かっただけに惜しかったなぁと。
ま、しかし、とにもかくにも岩下志麻につきるわな、この映画は。子供が見たらいろんな意味でトラウマ間違いなし!
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砂の器
出演:丹波哲郎、森田健作、加藤剛、島田陽子、加藤嘉、緒形拳、山口果林、佐分利信
監督:野村芳太郎
(1974年・松竹・143分)DVD
内容:東京・蒲田の国電操車場で50代の男性の絞殺死体が発見された。捜査は難航するが、警視庁のベテラン刑事・今西と蒲田署の若い刑事・吉村は、遺体発見前夜に駅前のバーで被害者と飲んでいた男がいたことを突き止める。2人は東北訛りで話し、「カメダ」という言葉が繰り返し出てきたという。やがて捜査線上に天才音楽家・和賀英良の名が浮かび上がった。。松本清張のベストセラーを原作に、殺人事件の真相を執念で追い続ける刑事の姿と、暗い過去を背負った犯人の悲劇を描くヒューマン・サスペンス。
評価★★★★/80点
“かくも美しく哀しく厳しく胸がしめつけられる情感豊かな春夏秋冬を持った日本に生まれて本当に良かったと思う。”
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鬼畜(1978年・松竹・110分)WOWOW
監督:野村芳太郎
出演:緒形拳、岩下志麻、小川真由美、蟹江敬三、大竹しのぶ
内容:小さな印刷屋を営む宗吉は、妻との間に子供ができないこともあって、料理屋の女中・菊代と恋仲になり、3人の子供をもうけた。しかし、煮え切らない宗吉に愛想をつかした菊代は、子供を置いて姿を消し、宗吉はしぶしぶ子供を引き取る。しかし、冷たい妻の仕打ちは容赦なく子供たちに降りかかり、末っ子の次男が衰弱死してしまう。そして、それを機に宗吉も鬼畜の道を進み始めるのだった・・・。
評価★★★★★/100点
岩下志麻&小川真由美の咆哮合戦の狭間であたふたするばかりのダメ男を演じた緒形拳が出色の出来で、世の男性諸氏はこれを見ていたたまれなくなってくるはず(笑)!?
あとはなんといっても岩下志麻だよなぁ。凄絶ここに極まれりというかんじで、演技の域を超えた鬼っぷりには思わず唖然。
1歳くらいの末っ子の口にご飯を押し込むシーンなんかは見てるこっちが苦しくなってくるかんじで、これまた頭から離れそうにない。。
そしてその妻の圧力に屈する形で罪悪感を感じながら我が子を捨て去っていくダメ夫の焦燥感には息を飲むし、それ以上に、親の原理に依存し愛されることを待つ以外にない子供たちの姿は見ていてやりきれないばかり。
さらに、ひどい仕打ちを受けても無条件で親を愛する彼らの眼差しに、もう最後はボロ泣きしてしまいますた。
また、監督の野村芳太郎の演出が上手いんだ。
東京タワーに娘を置き去りにするシーンとか、末っ子の顔にシートが覆いかぶさり足だけが出ているシーンとか、どのシーンも映画の教科書にできるものばかり。そこに役者陣の熱演が融合して片時も目を離せない、それでいて心震わせる作品になっているのだと思う。
とにかく凄い映画を見てしまった、という一言しか思いつきませんわ・・。
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わるいやつら(1980年・松竹・129分)WOWOW
監督:野村芳太郎
出演:片岡孝夫、松坂慶子、神崎愛、藤真利子、梶芽衣子、宮下順子
内容:総合病院の院長・戸谷信一は妻子持ちながら3人の愛人を囲っていた。それでも貪欲な彼は新たに新進デザイナーの槙村隆子に目をつける。が、その矢先、愛人2人の夫が立て続けに死亡する。そしてこの時から彼の人生の歯車に狂いが生じ始めることに・・・。
評価★★★/60点
藤真利子の喘ぎ声、梶芽衣子のスレッからしの艶姿、宮下順子のエロフェロモン!
ときて、松坂慶子の美乳といきたいところだったんだけど、脱がねぇし(笑)。前者3人に比べると槙村隆子(松坂慶子)のキャラがイマイチ弱かったような・・。
でも、自分の名前と女ったらしの主人公の名前が同じ「しんいち」だったもんだから、しんいちさんしんいちさんと言いながら白衣を脱いで迫ってくる婦長さんには悶々とせざるを得ませんですた・・。
音楽を含め80年代の安っぽい要素がふんだんに取り込まれていて、今見るとかなりイタイんだけど、土曜ワイド劇場が好きな人ならおススメできるかなww
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疑惑
出演:桃井かおり、岩下志麻、小沢栄太郎、山田五十鈴、三木のり平、仲谷昇、柄本明
監督:野村芳太郎
(1982年・松竹・127分)CS
内容:北陸のとある埠頭で車が海に転落し、乗っていた夫が死亡、妻の球磨子だけが助かった。夫には3億円の生命保険がかけられていたため、警察は後妻の球磨子を、保険金目当ての殺人犯として逮捕する。マスコミも彼女が犯人と決めつける中、国選弁護人の律子は事件の謎を根底から見つめ直す。。
評価★★★★☆/85点
“本当の桃井かおりを初めて目撃してしまった気がする。”
今まで見てきた桃井かおりは本当の桃井かおりではなかった。
「自分にとって演じるとは、毒を吐くことだ」という桃井かおりの桃井かおりたるゆえんを、この映画を見て初めて理解した、、そんな衝撃を味わってしまった。。
四方八方に毒を撒き散らす史上最凶の性悪女・鬼塚球磨子、通称オニクマ(これまたスゴイ名前!)。
今まで見た映画の中で1番タチの悪い悪女といっても過言ではない!もちろんオニクマよりもっと残忍な女はいれどオニクマのふてぶてしさには敵うまい。
それはもしかしてご近所にこういう女いるかもしれないという生々しさを感じさせる桃井かおりのハマリっぷりによるところが大きいと思うんだけど、ホント圧倒されてしまいますた。
また、決断力のないナヨ男を演じた仲谷昇や、貫禄たっぷりの存在感をみせつけた山田五十鈴、うっさんくさいチンピラ役が板についていた鹿賀丈史、そしてラストの姐御ブチキレ対決が目に焼きついて離れない岩下志麻と、役者の凄みだけでも見る価値は十二分!
これら登場人物がみせる強烈な“情”に対し、検察と弁護側にオニクマが絡む丁々発止のせめぎ合いの中で、限りなくクロに近い状況証拠を“理”で崩していく法廷劇からも目が離せない。
一度見たら絶対に忘れられない映画。必見です!
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天城越え(1983年・松竹・99分)NHK-BS
監督・脚本:三村晴彦
出演:田中裕子、渡瀬恒彦、平幹二朗、伊藤洋一、吉行和子
内容:老刑事の田島は30年前に担当した殺人事件に疑問を持ち、事件の目撃者・小野寺のもとを訪れる。当時14歳だった小野寺少年は、下田から天城峠を越えて静岡の兄を訪ねようとする道中に娼婦のハナと出会うのだが・・・。
評価★★☆/50点
天城越えというと石川さゆりの演歌を真っ先に思い浮かべちゃうんだけど、映画は“隠しきれない移り香”さえ染み渡ってこない凡作だったというオチ・・。
今村昌平ばりの生々しい濡れ場をあからさまに焼き付けるのはいいとしても、それに匹敵するあからさまな人間ドラマを描けなければ何の意味もない。
特に初老になった主人公(平幹二朗)の現代劇と彼が回想する天城峠を舞台にした少年時代の“性春劇”のトーンがあまりにも乖離しすぎていて、全く自分の情緒に響いてこないのだ。渡瀬恒彦の老け役ぶり、、あれはないだろ(笑)。
松本清張といえば野村芳太郎監督という印象が強いせいもあるけど、監督が変わるとこんなにも違うのかとビックリしてしまった。
田中裕子でなんとかもっている映画だけど、ちょっとこれはガッカリしたな。。
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