夢のシネマパラダイス497番シアター:海を飛ぶ夢
出演:ハビエル・バルデム、べレン・ルエダ、ロラ・ドゥエニャス、クララ・セグラ
監督・脚本:アレハンドロ・アメナバール
(2004年・スペイン・125分)2005/04/22・シャンテシネ
評価★★★/60点
内容:事故で首から下の全身の自由を奪われ、28年間、寝たきりの生活を送るラモン・サンペドロ。彼は自分らしく生きるために尊厳死という選択をするのだが・・・。アカデミー賞外国語映画賞ほか、数々の賞を受賞した人間ドラマ。
“それでもオイラは言う”
「生きろ!」と。
だってそうだろラモンさん。
首から上は自由があるんだろって話よ。死んだら大好きな映画が金輪際観られなくなっちまうじゃないか!世界一スペクタクルなリーガ・エスパニョーラに心躍らせることがもう二度と出来なくなっちゃうじゃないか!我が愛しのレアル・マドリー、バルサにバレンシアにデポルに、、アンタ俺から言わせりゃ夢のような所に住んでんねんで。
それを心を解き放つ手段が死しかないとか御託を並べやがって、何を贅沢言ってやがんだい。映画観て、サッカー観て心を解放せい。アータ、甥っ子がTVでデポルの試合見たいと言っても興味がないからあっち行けみたいに言ってたけどね、アンタだめだよそれじゃ。
海まで飛んでいくのもいいがリアソールスタジアムまで一度ブッ飛んでこいや。いいもん見れるから。
フ~~、言ってやった。。。
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例えばラモンさんとは状況が違うかもしれないけど、半身不随でも世の中には凄い人がたくさんいるわけだよね。
サッカー解説で名を馳せてる羽中田昌氏なんかはホント尊敬しちゃうくらい。
中田ヒデの母校で名FWとして活躍して将来は日本代表入りかとも言われていた氏は、高校卒業後に交通事故に遭って下半身不随になってしまうんです。しかし、車いす生活になってもサッカーへの熱い思いを捨て去ることができずにサッカー留学のためにスペインへ渡ることを決意。
そしてサッカーコーチングを5年間学び、現在はJリーグ入りを目指している四国のサッカークラブの監督になるまでに至っているのです。サッカー史上初の車いす監督になるという氏の夢は叶えられたけど、ゆくゆくは海外で監督をしたいのだとか。スゴイ。
夢っていうのは未来なんだよね。想像の翼ってのは希望なんだよ。
それを死というものでシャットアウトしようとするなんて、ド不幸せなオイラでさえも理解の範疇を軽々飛び越えてしまって、頭が麻痺&フリーズ状態。
28年間寝たきりのあなたの心の地図には10年後、20年後の自分を思い描くことができなかったのかもしれない。
それは分からないではない。自分だってあなたのような状態になったら死を望むかもしれない。
でも、今の自分はこう言うことしかできないんだ。「今」を生きろよと。
五体満足の何も分かってない者の戯言と思ってもらって結構。それでもオイラは言いたい・・・。
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ところで、小学生くらいの時に読んだことがあるヒロシマを描いた漫画「はだしのゲン」が今でも強烈に、というかトラウマ的に脳裏に甦ってくることがあるのだが、今回の映画を観て思い出したくもないようなものがブワァッと来てしまった。
それは、被爆して全身ウジ虫がたかっているようなケロイド状態の画家志望の青年のことだ・・。
家族からは疎まれ隔離され、それでも少年ゲンと心を通わせていきながら生きようとする。そして、被爆地の惨状を写生しようとリヤカーに乗せられて街へ繰り出していく・・・。
生きるというのはかくも辛く苦しいことなのか、とただただ呆然と立ちつくすしかない。
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しかし、生きるという意志はすなわち自らをさらけ出すという意志でもあるわけで、その点でみればラモンは“死”を社会に宣言することで自らをさらけ出し“生きた”、正確に言えば生きた“証”を残したと言えるのかもしれない。
深い映画だとは思う。
しかし、自分はその波間に漂っていることしかできなかった。今の自分にはそれで精一杯だった。一応観た、ということだけにはしておいてほしい。今は。
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(追記):日本ではいまだに安楽死、尊厳死に関する法整備やルール作りが全くない状態だが、そんな状況の中、病院で末期患者の人工呼吸器を医師が外して患者が死亡するという事件が多発しているという現実もある。
また、04年8月には神奈川で筋萎縮性側索硬化症という全身の筋力がなくなっていく難病で自宅療養中の長男の人口呼吸器をを母親が止め、その男性が死亡するというケースがあった。
そして05年2月には、この母親が横浜地裁で殺人罪より法定刑の軽い嘱託殺人罪で執行猶予付きの有罪判決を受けた。
判決では「長男が死にたいと懇願しており、病状悪化で意思疎通も困難になり、母親が懇願を受け入れた」とある。また、呼吸器を止める際も、長男は文字盤を目で追って「おふくろ、ごめん。ありがとう」と伝えたという。
苦渋の選択を迫られた母親の孤立感と絶望、悲しみは察してあまりある。
実は自分の祖父がこの病気になって数年前に亡くなったのだが、数年かけて段々筋力がなくなっていき、最後は完全な寝たきり状態で、自発呼吸さえできず喉から管を通して呼吸し、胃に直接栄養を送り込むというような状況だった。
病気の大変さとともに、何年にも渡って看護し続けた家族の大変さにも物凄いものがある。
そのような状況を社会的に支えてくれる公的支援がもっと充実していれば、先のケースのようなことは起こらなかったかもしれないとも思ってしまう。
一方では、いかに残された人生を豊かにするかが第一の目的でなければならないはずで、単にいかに長く生きてもらうかということをのみ目的とすることが、はたしてその患者にとって幸せなのかという問題もふと考えてしまう。そこに大変重い判断がつきまとうことは確かなのだけども。
自分自身そう簡単に結論は下せない。
しかし、28年間考え続けたラモンは結論を出した。
その下した結論をやはり尊重しなければならないのだろうか・・・。尊重しなければならないのかもしれない。難しいよ・・・。
うーん、そうやってまずは考えることが大切なのかな。。
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潜水服は蝶の夢を見る
出演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリ=ジョゼ・クローズ、アンヌ・コンシニ
監督:ジュリアン・シュナーベル
(2007年・仏/米・112分)WOWOW
内容:ファッション雑誌エルの編集長ジャン=ドミニクは42歳の時、ドライブ中に脳梗塞で倒れてしまう。一命を取りとめ病室で目覚めた彼は、左目以外の自由を奪われたことを知り絶望に打ちひしがれる。しかし、やがて言語療法士アンリエットや理学療法士マリーらの協力で、左目の瞬きでコミュニケーションをとる方法を会得していく・・・。彼が20万回の瞬きで書き上げた自伝ベストセラーの映画化。
評価★★★☆/70点
円周率3.14159・・・と同じように、ウー・エス・アー・エーフ・イー・エンヌ・テ・ユ・エル・・・と耳について離れなくなっちゃったんだけど(笑)。と同時に、ジャンが瞬きするまで観てるこっちも瞬きしちゃいけないような気になってきて大変だった・・。
要は、左目のみの主人公視点に同化させられ、まるで悪夢のような疑似体験をさせられたわけで、その点ではヤヌス・カミンスキーのカメラワークは近年でもピカ一の斬新な映像表現だったと思う。
詩的かつ残酷、流麗かつユーモアあふれる映像が、ジャンのモノローグに生のリズムを加え、こう言ってはなんだけど大変にオシャレな映画になっていたと思う。
難病ものって特に日本映画だと安易な泣かせネタに使われちゃうことが多くて食傷気味なのだけど、ヨーロッパ映画だと生々しい人間であることを強調したひと癖もふた癖もある人間ドラマとして描かれているので印象的なんだよね。
しかも、このジャンの奴、モテまくりだし(笑)。
妻にしろ愛人にしろ言語療法士にしろ、みんな投げ出さないでひっついて離れないでやんの。こんなに愛されてる男、、、羨ましいゾ、おい!
妄想力オンリーで生き抜くオイラも、あんなちょいワル親父になったらモテんのかなぁ・・・。ガクッ・・
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