夢のシネマパラダイス379番シアター:パンズ・ラビリンス
パンズ・ラビリンス
出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、ダグ・ジョーンズ
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
(2006年・メキシコ/スペイン・米・119分)2007/10/23・盛岡フォーラム
評価★★★★/80点
内容:1944年のスペイン。スペイン内戦終結後もフランコ政権に反発する人々がゲリラ闘争を繰り広げる山間部。内戦で父親を亡くした少女オフェリアは身重の母親カルメンと共にこの山奥へやって来る。ゲリラ鎮圧にあたるビダル将軍と再婚したカルメンは、自らの手元で子供を産ませようとするビダルに強引にこの地に呼び寄せられたのだ。冷酷で残忍な義父に恐怖と憎しみをつのらせるオフェリア。そんな夜、彼女は昆虫の姿をした妖精に導かれ、謎めいた迷宮へと足を踏み入れ、そこで迷宮の守護神パン<牧神>と出会う・・・。
“ファンタジーの本質をこれほど的確についた作品はいまだかつてない。”
いまだかつてこれほど残酷で暗く悲しいファンタジー映画というのを見たことがない。
それくらい心にズシリと重くのしかかってくるような作品だった。
スペイン内戦についてその歴史的背景など、もっとちゃんとした知識があればと観る方としては反省しちゃったけども。。
戦争、仕立て屋だった父の死、日に日に衰弱していく身重の母、残忍な義父と、オフェリアを取り巻く過酷な現実は小さな少女ひとりの力ではどうにも抗しがたいものがある中で、おとぎ話の童話好きな彼女が生み出したもう一つの空想世界、それが地底の魔法の国。
ファンタジーとは逃避の文学であるとはよくいわれるが、それは一見たしかにそうなのだが、しかし、別な視点でみれば、ファンタジーというものがツライ現実を回避し、なおかつ生きるための勇気を呼び起こすための最適な糧であるということは、「ハリー・ポッター」や「ピーターパン」「オズの魔法使い」など古今東西のファンタジー作に共通するものであることは捉えておかなければならない。
その点でみれば本作はまさにファンタジーというものの本質を突いているといっていい。
しかも、その中で本作は、振り子でいうところの最果ての地に位置する作品であり、多くのファンタジーが生きるための勇気を異世界での冒険を通して獲得し成長して現実世界に帰って来るというパターンを踏襲しているのに対し、今回のお話はそんな生易しいものではなく、現実の困難にひとり孤独に直面し直視しつづける中で、強い自己犠牲精神のもとその魂が異世界(または死後の世界)へと永遠に旅立つ、つまり魂の解放の物語になっているのだ。
しかしこれ、数あるファンタジーの中でもかなり稀有なタイプのお話で、今思いつくところでは宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」だとか、ナルニア、あとはギリで「フランダースの犬」くらいしかないだろう。
しかし、その中でも今回の作品ほど端的かつ強烈な形でなおかつどこまでも遠慮のないファンタジーを見せられるというのは今だかつてなかった気がする。
戦争という死の恐怖と痛みを伴なう過酷な現実のかたわらにポッカリと空いた薄暗い穴から続いていく異世界。
孤独な少女の、身重の母をなんとか助けたい、そして生まれたばかりの弟を助けたいという切なる願い。
その思いを結実させるためにやって来た妖精と与えられた三つの試練・・。
「銀河鉄道の夜」におけるカムパネルラとジョバンニの旅が単なる夢だったのかもしれないということと同様、地底の魔法の国は少女の頭が作り出した単なる空想世界だったのかもしれない。
しかし、戦争という逃げ場のない圧倒的な現実と義父という極悪非道な怪物に囚われたダークな世界、そして魔法の国のファンタジーという無限の創造の物語とプリンセスというヒロインに夢と希望が託されるイノセントな世界、この2つの世界が対峙しなおかつ絡み合いながら確固として存在していたのもまたたしかなのだ。
そしてその2つの世界が影響し合い、ダークなこちら側の世界があちら側の世界を侵食していき、隔てていた一枚の壁が取り払われたとき、現実が幻想を一気に喰いやぶり呑み込んで覆いつくしてしまう。
そのグロテスクで悪夢のような光景はなんとも恐ろしく見るに堪えないほど残酷なものなのだが、しかしそれを描くことで、物語性を超越したところにある人間本来のもつ本質をえぐり出していくのだ。
そしてその極めつけとなるラストの悲劇は、「フランダースの犬」と思えば涙なしでは見られないシーンなのだけど、ネロとパトラッシュが天使に連れられ天に上っていくように、オフェリアの魂も解放され、母親の王妃が待つ魔法の国へと旅立っていったのだろう。
何度でも言おう。ファンタジーの本質というものをこれほど的確に突いた作品はいまだかつてない。
スゴイの一言に尽きる。
ただ、、、グロいシーンがホンマにグロかったのでw、弱冠差し引いてこの点数・・・。
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エアベンダー(2010年・アメリカ・103分)WOWOW
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
出演:ノア・リンガー、デヴ・パテル、ニコラ・ペルツ、ジャクソン・ラスボーン、ショーン・トーブ
内容:気・水・土・火の4つのエレメントによって均衡が保たれていた世界。しかし火の国が武力にものをいわせ気の国に侵略、世界の秩序は崩壊する。そんな中、水の国のベンダー(エレメントを操ることができる者)であるカタラ兄妹はアンという少年と出会う。実はその少年こそ4つのエレメントを習得し世界を平和に導く唯一の存在アバターだった。一方、火の国の王子ズーコが彼らを捕らえることを命じられ探索に乗り出し・・・。
評価★★★/60点
現実世界を舞台に壮大なホラ話を吹いてきたシャマランだが、今回はクソ真面目におとぎの国のお話だけで勝負してきた、、、
、、のだが、シャマランといわれなければ全く分からないほど没個性化してしまい、フタを開けてみればただのボンクラファンタジーw
とはいえ、今までの作品をみてもストーリーテリングは幼稚そのものだったのでボンクラになることは容易に想像できたものの、ここまで世界観が空疎だとお話になりません・・・。
まぁ、マンガチックな映像は嫌いではなかったのでこの点数付けたけど、これで3部作は厳しいんじゃないすかね。。
なんか「ライラの冒険」とダブったし・・。
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ライラの冒険/黄金の羅針盤
出演:ニコール・キッドマン、ダコタ・ブルー・リチャーズ、サム・エリオット、エヴァ・グリーン、クリストファー・リー、ダニエル・クレイグ、イアン・マッケラン(声)、フレディ・ハイモア(声)、クリスティン・スコット・トーマス(声)、キャシー・ベイツ(声)
監督・脚本:クリス・ワイツ
(2007年・アメリカ・112分)DVD
内容:英国オックスフォード。現実世界とは似て非なるパラレルワールドであるこの世界では、人々はダイモンと呼ばれる守護精霊とともに生きている。幼い頃に両親を亡くした12歳の少女ライラもパンタライモンというダイモンと常に一心同体。そんな彼女の周囲で子供たちが行方不明になる事件が相次ぎ、ついに親友ロジャーまでもが姿を消してしまった。持ち前の好奇心を活かして捜索に乗り出した彼女は、北の地へ子供たちが連れ去られていることを突き止め、黄金に輝く羅針盤を手に北の地を目指すが・・・。
評価★★☆/50点
LOTRを世に送り出したニューラインシネマだけに、次なるファンタジー3部作として送り出された今回のライラの冒険には期待してたのだけど、ものの見事に肩透かしを食らっちゃったかんじ。
とにかく拙速にもほどがある展開で、現実世界とは似て非なるパラレルワールドというせっかくのユニークな世界観の設定がしっかりとかみ砕かれないまま矢継ぎ早に進んでいくので、なかなかスリリングな冒険の中に入っていくことができない・・。
なんか、ジェットコースターに乗ろうとしたら、身長が低くて乗れなくて下で見ているようなかんじといえばいいだろうか、、、このウズウズをどうにかしておくれ(笑)。
どうせだったらLOTRみたいに3時間くらいにすればよかったのに。。
かなりヒステリックで反抗的なライラや、体感温度を一気に下げるコールター夫人(N・キッドマン)の意味深な行動など、一筋縄ではいかなそうなキャラ設定は魅力的だっただけに、かえって後味の悪い消化不良な印象を抱いてしまった。
しかもこれだけ豪華なメンツを揃えておきながら・・・。
画面から伝わってくる冷気以上に寒さを感じたお寒い内容の映画でございました。
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ベオウルフ(2007年・アメリカ・114分)WOWOW
監督:ロバート・ゼメキス
出演:レイ・ウィンストン、アンソニー・ホプキンス、ジョン・マルコヴィッチ、ロビン・ライト・ペン、アンジェリーナ・ジョリー
内容:古代デンマーク。戦士ベオウルフは、人々を苦しめる呪われし巨人グレンデルの討伐に成功する。が、グレンデルの妖艶な母親の魔の手がベオウルフに降りかかろうとしていた・・・。
評価★★/40点
“アンジーのフルコーティングヌードに5万点!”
あれって、オッパイの型とったのかなぁ、、ってお前はいったい何を見とるんじゃいっ(笑)!でも、はっきりいってそれしか印象に残らなかったんですけど。。
「ゲド戦記」(2006)に匹敵するどっちらけ映画だった。
パフォーマンス・キャプチャーを駆使したアクションもカックンカックンしてて薄っぺらいし、化け物には己の肉体のみで立ち向かうしかないとか言って素っ裸になるバカ男、しかもアソコをうまく隠し通す手練手管はまるで「オースティン・パワーズ」そのもの(笑)。
何なんだこりゃ。。センスないよこの映画・・・。
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ピノッキオ(2002年・イタリア・111分)NHK-BS
監督・脚本:ロベルト・ベニーニ
出演:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、カルロ・ジュフレ、キム・ロッシ・スチュアート
内容:ジェペット爺さんが丸太から作った人形、ピノッキオ。言葉を話して動き回り、お爺さんの心配やコオロギの忠告も聞かずに、やすやすと世間の誘惑に負けてしまうのだが・・・。嬉々として飛び跳ねる50歳のベニーニをキモイと見るかカワイイと見るかはあなたの自由です!?
評価★☆/25点
“子供には見せられません・・・”
というのが真っ正直な感想・・・。
だって、横山ノックかアホの坂田がピノキオをやってるんでっせ。映画じゃなくて演芸場の世界やろ(笑)。
ジェペット爺さんを演じるならまだしも、なぜにハゲッピオになる必要がある。口のまわりは青ヒゲだし・・。夢もなにもあったもんじゃない。
子供には見せられん!
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