夢のシネマパラダイス18番シアター:学校シリーズ
学校
監督・脚本:山田洋次
(1993年・松竹・128分)DVD
内容:東京下町にある夜間中学。卒業式を控え、教師の黒井が生徒たちとの思い出を振り返る。不良少女、登校拒否児、在日韓国人女性、労働者、移住してきた中国人など多種多様な生徒たち。その時、級友イノさんの突然の訃報が届く・・・。
評価★★★★/80点
ものスゴッ青臭いセリフとシーンのオンパレードに普通なら辟易してしまうのだけど、山田洋次と思って見ればなんてこたぁない。役者陣の奮闘と熱意に心に染み入ってくる名作ドラマに仕上がっている。
ま、あんな先公いるわけないんだけどさ・・・。
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学校Ⅱ(1996年・松竹・122分)NHK-BS
監督・脚本:山田洋次
出演:西田敏行、吉岡秀隆、神戸浩、いしだあゆみ、永瀬正敏
内容:北海道の高等養護学校に舞台を移し、学校に集う人々の心の交流を綴ったシリーズ第2作。竜別高等養護学校に通う知恵遅れで心を閉ざす高志と、障害の重い佑矢が安室奈美恵のコンサートに出かけたまま失踪してしまった。リュー先生と新任の小林先生は慌てて捜しに出るが・・・。
評価★★★★/75点
あの頃はアムラー現象が吹き荒れてたんだなぁ、、、そして浜崎あゆみの貴重なショットも。。
ってことはどうでもいいとして、養護学校という知っているようで全くといっていいほど知らない教育現場が舞台になっていて、興味深く見たけど、おもわずドン引きしてしまう一歩手前で映画の世界にとどまらせてくれる演出術にはうならされた。
特に、養護学校に赴任することは本意ではなかった新人教師・永瀬正敏の成長ぶりがしっかりと観る側にリンクしてくるし、彼をさんざん手こずらせる佑矢役の神戸浩がこれまた素晴らしく、観る側がおもわず抱いてしまう壁みたいなものを完全に取っ払ってくれたと思う。
地方を味わい深く描くことにかけては天下一品の山田洋次の安定感、そしてその中で北海道のだだっ広い風景の中を「風になりたい」をみんなで歌いながらワゴン車で疾走するシーンや、熱気球が雪原を空高く舞い上がるシーンなど印象的なシーンも多く、心に残る作品になっていたと思う。
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学校Ⅲ(1998年・松竹・133分)NHK-BS
監督・脚本:山田洋次
出演:大竹しのぶ、小林稔侍、黒田勇樹
内容:実話をもとにしたエピソードを織り込み、下町の技術専門校に集まった中高年の生徒たちの姿を描くシリーズ第3作。自閉症の息子を持つ紗和子は、リストラで解雇され、再就職に必要な資格を得るため職業訓練校に入校した。失業したオッサンたちに混じって学ぶ彼女は、やがてクラスの異端児・高野と心を通わせるようになる。。
評価★★★★/80点
「失楽園」なんかよりもよっぽどこっちの方が生々しい・・(笑)。
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十五才 学校Ⅳ(2000年・松竹・120分)NHK-BS
監督・脚本:山田洋次
出演:金井勇太、麻実れい、赤井英和、秋野暢子、笹野高史、小林稔侍、丹波哲郎
内容:中3の川島大介はいわゆる登校拒否状態。そんな彼がある日、屋久島にある縄文杉を見に行こうと、両親に内緒で初めての一人旅に出る。。
評価★★★★☆/85点
草原にまっすぐ伸びる道/
みな馬を駆って先を急いでゆくが/浪人はゆっくりと歩いていく/
早く着くことが目的じゃない/雲より遅くていいんだ/
それよりもこの地球が人間にくれたものを見落としたくない/
葉に光る朝露/草原の緑/鳥や虫の呟き/
それを見るたび浪人は立ち止まり/そしてまた歩き始める
なんていい詩なんだ。
そしてこの詩のメッセージがロードムービーの形をかりてしっかりと観る側に伝わってくる。
なんていい映画なんだ。
ロードムービーには人間の成長というテーマが根底にあるわけだけど、十五才という最も多感な青春まっさかりの中学生の一人旅ということもあって、そのお手本みたいな映画になっていたと思う。
大阪弁が印象的なトラックの運ちゃん、女手ひとつで家族を支える母親、先の戦争でシベリア抑留から生きて帰ってきたことを意気盛んに語るものの老いには勝てず介護が必要な老人、そんな彼らから生きるエネルギー、一人前の人間になるためのエネルギーを充電された十五才の少年は、7千年ただそこに立ち続ける縄文杉と対峙する。
しかし、この映画のスゴイところは、十五才の少年がエネルギーをただ譲り受けるのではなく、彼らにもエネルギーを分け与えてあげる力を持った存在として描かれていることで、これは「学校Ⅱ」でリュー先生(西田敏行)が、「子供たちから学んでそれを返してやる。それが教師の仕事なんだ。」と言っていることにも繋がっていくのだと思う。
ただ、今回はそれを学校ではなく社会の日常の現実の中で描いていくわけだが、それが意図したものかどうかは分からないけど、ラストに出てきた学校の教室の風景が逆に異様なものに見えてしまった。
画一化された学校というものがいかに非日常的な空間なのか、そこに閉じ込められ柔軟な心や感性を押し込められた世間的には不器用に映る子供が、そこに拒否反応を示すのももしかして自然なことなのかもしれないな、なんてことを考えてしまった。
ラストで一段成長して帰ってきた少年は学校に戻っていくわけだが、ヒッチハイクの旅を通して、今の自分を好きになること、今の自分を受け入れることを自覚したことで成長し、現実を受けとめるだけの力が備わったのだと思いたい。
いい映画でした。
それにしても、屋久島の縄文杉を見るには、往復10時間というかなり本格的な登山をしなきゃならないなんて初めて知ったな・・・。
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