夢のシネマパラダイス281番シアター:攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL
監督:押井守
(1995年・松竹・80分)
評価★★/40点
内容:2029年の企業集合体国家に、謎の天才ハッカー“人形使い”が出現。精鋭サイボーグによる特殊部隊・攻殻機動隊がその捜査にあたった。隊長の草薙素子は、電脳に侵入し人格まで操作してしまう人形使いの能力を知って、自らの存在意義に疑念を抱き始める・・・。近未来の超高度ネットワーク社会を舞台に、公安警察の特殊部隊の活躍を描いたサイバーパンクアニメ。アメリカでビデオチャートの1位を記録したことでも有名。
“自分の知識欲を刺激し、煽る映画は好きだが、知識欲を麻痺させる映画を観るのははっきりいって嫌い。”
この作品を始めて観たのは公開数年後、大学に入ってからだったと思う。
原作マンガを読んでいなかったとはいえ、おバカなオイラなんかは「ろっか」というところだけですでにな、何?みたいな・・・。
ロッカなのか六家なのか六課なのか、、、と思ったら「きゅうか」という言葉が。。
旧家?九課?
もうよほどレベルが低かったんだね、、、我ながら。。
まぁそんなところで立ち止まってしまうぐらいだから、内容にもほとんどついていけず、デジタル技術の海の中で創造されたアニメ、そのデジタル情報の渦の中でただただ溺れているだけだったのです。
でもまぁやっぱり原作マンガを読んでから見るべきものだったのかなという感じはする。
なんてったって士郎正宗だからなぁ。
押井守には悪いけど、この映画もまた士郎正宗の“攻殻機動隊”の1つのパーツとしてみるべきものなのかな、とは感じた。
1個の独立した作品としてはなんだか見れへんなあと。
自分がおバカなのを加味してもちょっとこの映画は情報量が少なすぎる。
だからまぁ何回か観ないと分からないのかもとは思うのだけど、これって士郎正宗のマンガの読み方とは全く逆じゃないだろうか。
後に攻殻を読んだりしても思うけど、士郎正宗の印象はとにかく情報量が多い。欄外に注釈がわんさか書かれてるし、絵の情報量もあふれていて1ページ読むのにけっこう時間がいるんだよね。読めば読むほど理解が深まるというかんじで。
情報量が多いから何回も読む、しかし映画の方は情報量が少ないから何回も見るというそういう違いがあると感じたかな。
あと士郎正宗マンガの楽しみ方って「アップルシード」なんかだとデータブックとかイラスト集などの副読本も出てて、それらを見ることによってさらにそのマンガの世界を楽しめてしまうといういわば副教材になってるわけで。
だからそういう副教材を含めて1つの作品世界として楽しむ、それが士郎正宗マンガの独特の面白さだと思うのですが。
なんかこの映画を観ると、これも士郎正宗攻殻の副教材の1つなんじゃないかなと、逆にいえば副教材にしか見えないということをすごく感じてしまったのだった。
それがいいのか悪いのかといえば★2つ付けてるくらいだから言わずもがなだけど。
ただどうなんだろう。押井守の側からすると、この作品は単なる実験的な作品だったのかもしれない。押井守自身はまだ過渡的な段階にいるのかなぁなんてことを当時はふと思っていた・・・。
ま、「イノセンス」観てその思いは見事に裏切られたけどね(笑)。
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イノセンス
声の出演:大塚明夫、田中敦子、山寺宏一、竹中直人
監督:押井守
(2004年・東宝・99分)2004/03/16・MOVIX仙台
評価★★☆/45点
内容:2032年の日本。世の中は、人とサイボーグ、そしてロボット(人形)の共存が進んでいた。と同時にテロも各地で続発。そんな犯罪を取り締まる政府直属の機関・公安九課の刑事バトー。彼は、身体全体がサイボーグで、純粋な部分はわずかな脳だけ。そして彼を人間たらしめているのは、かつて想いを寄せていた草薙素子の記憶と、愛犬バセットハウンドへの無償の愛情だけだった。そんなある日、暴走した少女型のロクス・ソルス社製の愛玩用ロボットが所有者を惨殺する事件が発生。さっそく相棒トグサとともに捜査に乗り出すバトーだったが、その過程で彼の脳を攻撃する謎のハッカーの妨害に見舞われていく・・・。
“この映画からは魂(ゴースト)を感じない。それゆえこの作品を観る意味という根源的なところで何も見出すことができない。”
「マトリックス・リローデッド」でも感じたことだけど、娯楽としての映画に、より強いエンタメ性を付加しなおかつ補強していくものが、作り手と観客の相互理解の強化のためのストーリーと映像のバランス取りと補完性ではなく、徹底した圧倒的映像体験の強化なのだとすれば、それは自分の感性とは本質的に合わない。
というかもともと自分の好みではなくて、あまりやってもらいたくない手法だということは前もって言っておく。
観てる時は面白いが、それは決まって一過性で、結局心の中に何も残していかないのだから。
そして、攻殻もそうだし、本作イノセンスもまたしかり。と個人的には感じてしまったのだった。
まずもってこのシリーズからは“情”を感じることができない。
人間と機械の境界が曖昧になっている世界観とそこから来る自分という存在定義への言い知れぬ不安を描こうとしているのは、特に前作よりも顕著で、そのため“情”が定まらないというのも無理やり理屈づけて考えれば分からないでもない。。
そうでなくとも本作では、ゴーストを持たないロボットの暴走事件を扱っているわけで、その愛玩ロボット「ハダリー」に“情”がないのは言うまでもない。
そして、そこから我々が認識し得るものは、ただ恐怖それのみである。
だが、この映画のある意味信じがたい点は、「ハダリー」が我々の内に呼び覚ます恐怖というただ一面でのみ完全に立ち止まっているところで、この愛玩ロボット「ハダリー」を作ったヤツも出てこなければ、所有するヤツも出てこないという欠陥を平然とやってのけている。
魂(ゴースト)がないのではなく、魂(ゴースト)を描いていないのだ、と自分勝手に解釈させてもらった。
では、“情”の対極にある“理”はどうかといえば、これがまた悲惨そのもの。
孔子やら何やらいろいろご立派な比喩やら理屈やらの数々を次々にひけらかしてくるが、それらが自分の中に残すものは空虚と倦怠だけ。
この映画はあれなのか?人間と機械の境界線というよりか、理屈と屁理屈の境界線を彷徨う映画を目指しているのか?
しかもこの決められたような通り一遍の“理”が、不器用なバトーやトグサの微かな“情”の灯を消してしまいもはや風前の灯だし、1つの型に嵌めてしまい自分の中で何も震えず。
オイラは映像よりもまずストーリーとキャラクター重視、“情”と“理”の融合と“魂”を見たいタチなので、この点は看過できない。
しかし、ただひとつ、映像だけはスゴイことは認めよう。
映画のオープニングでヴィリエ・ド・リラダンの「未来のイヴ」の一説が引用されているが、この「未来のイヴ」に出てくる人造人間ハダリーの、まだ髪の毛や人工肉、皮膚が付着される前の内部系統。また、その製作者であるエディソンのハダリー内部の身体組織の詳細な驚くべき解説などから想起される造型描写を見事に再現してくれた。
とはいっても、1880年代にこの「未来のイヴ」を書き上げてしまったリラダンの魔術師ぶりには到底かなわない。
ちなみに前作で、ネットの海に消えた草薙素子の本作における守護天使ぶりも、「未来のイヴ」でものの見事に表現されている。
さすがにネットという概念は出てこないけど、それに似たものとして、神経流体や流体電導網といった言葉でソワナ(本作にも名前だけ出てくる)の魂と意志が距離を無視して飛んでいくといった驚きの描写がなされている。
押井はリラダンになれるのか。。
概念や世界観は今までの作品で飽きるほど見てきた。
今度はこちらが身震いするほどの“魂”をもしっかり描いてみせてもらいたい。
一応は期待しとるのよ・・・。
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アップルシード
監督:荒牧伸志
(2004年・東宝・103分)DVD
評価★★☆/45点
内容:西暦2131年、世界中を巻き込んだ非核大戦は人類に大きな爪あとを残して集結した。そんな荒廃した世界の中で、人々に唯一の希望を与えたのは、最後の理想郷“オリュンポス”。だが、その人口の50%は、ヒト社会の安定を目的に造られたクローン人間“バイオロイド”が占めていた。そのオリュンポスに大戦を生き抜いた若き女性兵士デュナン・ナッツが連行されてくる。そして彼女の前には大戦で死んだはずの恋人ブリアレオスが現れる。しかし、彼は戦争で重傷を負った体の大半を機械化されており、かつての面影をなくしていた・・・。「攻殻機動隊」の原作者としても知られる士郎正宗の「アップルシード」を3Dライブアニメという世界初の手法で映像化した近未来SFアクション。
“最初は新鮮な映像に引き込まれるが、所詮はゲームショウの特設ブースで初体験映像として流してた方がまだマシなレベル。”
手塚治虫の「火の鳥 未来編」に出てくる電子頭脳ハレルヤを想起してしまったけど、その点においても本作は描写が致命的に浅い。
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べクシル2077 日本鎖国(2007年・松竹・109分)WOWOW
監督:曽利文彦
声の出演:黒木メイサ、谷原章介、松雪泰子、朴路美、大塚明夫
内容:バイオ&ロボット技術で市場を独占していた日本は、国際協定に反発し国際連合を脱退、ハイテク技術を駆使した完全なる鎖国を開始する。それから10年後の2077年、日本を牛耳る企業・大和重鋼の暗躍を危惧した米国特殊部隊SWORDは潜入作戦を決行する。そして女性兵士べクシルが潜入に成功し、レジスタンスを率いるマリアと行動を共にするが・・・。
評価★★☆/50点
1ヌキ2スジ3ドウサ(映像・シナリオ・演技)という映画の評定マニュアルに照らしてみると、、、映像、スゴイ。シナリオ、薄っぺら。演技、大根・・・。
プレステ3でメタルギアソリッドやってる方が断然面白いっちゅうレベルです。。
なんつーか、作り手の技術屋として志向するベクトルと、観る側が求めるベクトルというのがかなりかけ離れちゃってるなと。「ファイナル・ファンタジー」もそうだったけど。
3DCGなどの専門的なことがホメられて、それがいい映画とか完成度の高い映画なんだというベクトルじゃなくて、自分にとって、また誰かにとって好きな映画、愛すべき映画というのを作ってもらいたいんだわなぁ。。
クールじゃなく子供っぽくていいから、そんな映画を観たいんだよオイラは。
ま、だから、ピクサー映画は大好きなんだけどさ。そんなオイラがこの“大人な”映画を語る資格なんてないのかもしれないけど、大丈夫かなと思っちゃうよジャパニメーションの将来・・・。
しかし、、「砂の惑星」のサンドワームをここで見ることになるとはね(笑)。
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