夢のシネマパラダイス236番シアター:激動「中国」
さらば、わが愛/覇王別姫
監督:チェン・カイコー
(1993年・香港・172分)DVD
評価★★★★★/95点
内容:京劇の古典「覇王別姫」を演じる2人の役者の愛憎を、50年に及ぶ中国の激動の時代を背景に描いた大河ドラマ。幼い頃から兄弟のように育った段小と程蝶衣は、京劇「覇王別姫」のコンビとして人気を博していた。段小はある日、しつこい客に絡まれていた娼婦の菊仙を助けたことがきっかけで、彼女と結婚する。少年時代から段小にほのかな恋心を抱いていた程蝶衣は、二度と共演はしないと捨て台詞を吐いて彼の前を去るが・・・。
“恥も外聞もかなぐり捨てた人間の愛憎劇と、中国の恥部を赤裸々に描き出した歴史描写。恥の上塗りがこの映画を貶めてしまうのかと思いきや、全く別次元のレベルにまで映画を押し上げている。”
この映画を観てから知ったんだけど、京劇の歴史ってまだ200年くらいなもんだと知ってちょっと驚いた。中国5千年の歴史からすれば200年って、、、ね。
しかも「覇王別姫」の初演は1921,2年だという。
つまりこの映画はそのまま京劇、そして「覇王別姫」のたどった運命を描いているともいえるわけだ。
ときには時代の中でもてはやされ、ときには売国奴として、ときには旧体制の遺物として糾弾、迫害を受けるティエイーの姿は、そのまま京劇そのものの姿に置き換えることもできよう。
そして嵐のような時代の流れに呑み込まれていった京劇の歴史を考えたとき、京劇役者のティエイー、シャオロウ、そしてシェンが繰り広げた愛憎劇、そして彼らの悲劇はまさに運命としかいいようのないものであったといえる。
中国をたゆたう悠久の大河のごとく流れる歴史の中に呑み込まれていった京劇と京劇役者の人間たち。
映画を観終わって無常観を感じずにはいられなかった。
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長江哀歌
出演:チャオ・タオ、ハン・サンミン、ワン・ホンウェイ、リー・チュウビン
監督・脚本:ジャ・ジャンクー
(2006年・中国・113分)DVD
内容:中国悲願の一大国家事業、三峡ダム建設により水没することが決まっている古都・奉節。山西省の炭鉱夫サンミンは、16年前に別れた妻子を捜してこの街にやって来る。一方、2年前に三峡の工場に働きに出たっきり音信不通の夫グォ・ビンを捜しにシェン・ホンも山西省からやって来た・・・。愛する人を捜してこの街にやって来た男女の物語を軸に、ダム建設により移住を強いられ困難に直面してもなお懸命に生きる市井の人々の暮らしを描く。ヴェネチア国際映画祭グランプリ。
評価★★★★☆/85点
映画というものが持つ側面に、世界の現在ともいうべきものが色濃く影を落としているとするならば、今回の映画ほどリアルタイムの“今”を写し取った作品はないだろう。
北京オリンピックに湧いた華やかな中国は記憶に新しい。
しかし、この映画で描かれる中国は、開発独裁のもと急速な経済発展を遂げている中国の別の現実、悠久のロマンあふれる景色の裏側に横たわる厳しい現実を突きつける。
三国志の舞台にもなった長大な歴史の積み重ねを一瞬でジャラジャラポンにしてしまうくらいの奔流押し寄せる現代中国の不調和な光景が目の前に展開され、思わず息をのんでしまう。
しかも、その不調和でシュールな光景はなんとも映画的すぎるほどに映画的で、ラスト近くのビルの崩壊シーンなんかは、デヴィッド・フィンチャーの「ファイト・クラブ」(1999)がいとも容易く霞んでしまうほどの強烈な情景で、ただただ圧倒されてしまう。
もし、携帯電話が出てこなかったら、昭和3,40年代の頃の風景ととられてもおかしくないような情景なのだが、しかし、今の中国はまさにそういうアンバランスさの上に成り立っている状態なのかもしれない。
その点でいえば、ラストに出てくる綱渡りのロングショットはなんとも意味深げだ。
でも、ロケットビル??(建設途中で事業中止になり、未完成のまま実際に放置されていたらしい)とか、UFOには何の意味があったのだろう・・。
あとは、次々と船室の2階に上がってきた半裸の男たちが無言で大盛りの麺を一本ずつすするシーンだとか、京劇の衣装を着ながらポータブルゲームしてたりだとか、寂寥感漂う映画かと思いきや、どこかしこに変テコなユーモアが差し挟まれていて、いろんな意味で心に残る作品になってしまった。
いやぁ、、映画ってホントにいいもんですねぇ。。
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