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2009年1月 3日 (土)

夢のシネマパラダイス489番シアター:かもめ食堂

200605042 出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、ヤルッコ・ニエミ、マルック・ペルトラ

監督・脚本:荻上直子

(2005年・日本・102分)DVD

評価★★★★/80点

 

内容:フィンランドのヘルシンキの街角にかもめ食堂という小さな食堂をオープンした日本人女性サチエ。看板メニューはズバリ、おにぎり!が、開店1ヶ月でやって来たお客は、ガッチャマンの歌詞を訊きに来た日本のアニメ好きのオタク青年だけ。そんなある日、サチエは訳ありな2人の日本人女性と出会う・・・。

“大人にとってある種理想的なファンタジーを提供してくれる空間。それがかもめ食堂。”

カメラと人物、人物と人物との遠すぎず近すぎずの適度な距離感が心地良い不思議な空間、かもめ食堂。

それは例えばサチエさんがなぜフィンランドで食堂を開くまでになったのか、サチエさんの目的は何なのかが一切明かされないことからも分かるとおり、他人のテリトリーにズケズケと入っていかない、あるいは入っていく必要がない距離感であり、ある種のファンタジー空間ともいうべき世界観を創出している。

しかし、それを実体として表現するには日本が舞台ではあまりにも現実離れしている。

そういう点でもフィンランドという日本から遙かかけ離れた異国を舞台にしていることによって物語に説得力をもたせているといえよう。

また、サチエさんの世間とのしがらみから隔絶されたような人生に対する達観も普通に考えたら森の奥深くに住む仙人みたいなものであり、しかし森の中ではこれまた現実離れしているので、その点でもフィンランドという異国設定は絶妙だったといえる。

さらに、機能性とシンプルさを重視し、余計なものをそぎ落としていくところに独特な美を生み出していく北欧のインテリアデザインが、サチエさんの生き方とダブって見えるのも巧い。そこに小林聡美の肩の張らない演技が加わり、まさに穴のない完璧な世界観を生み出していたと思う。

巧い映画です。

考えてみたら、目をつぶって世界地図を指差したらたまたまフィンランドだったからやって来たというミドリ(片桐はいり)も、両親の介護から解放され、フィンランド人に憧れていたからとりあえずやって来たマサコ(もたいまさこ)も確固とした目的意識を持ってフィンランドに来たわけではなく、他人とのしがらみ、社会とのしがらみ、日常とのしがらみから逃れるために流されるようにたどり着いた場所がフィンランドのヘルシンキにあるかもめ食堂だったのだろう。

しかし、しがらみという毒がなければ生きていけないのもまた人間。

毒をデトックスして自然体を取り戻したミドリとマサコは、いずれかもめ食堂から旅立っていくのだろう。

それでも途切れることなくやって来るであろう訳ありなお客さんたちを、かもめ食堂はこれからも優しく包み込んでいってくれるでしょう。

サチエさんの「いらっしゃい」とおにぎりの温かさで。。

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(おまけ)

白い花びら(1998年・フィンランド・78分)NHK-BS

 監督:アキ・カウリスマキ

 出演:サカリ・クオスマネン、カティ・オウティネン、アンドレ・ウィルム

 内容:フィンランドの片田舎。自分たちの作ったキャベツを町外れの市場に売りに行き、生計を立てている夫婦ユハとマルヤ。キャベツは飛ぶように売れ、幸せな日々を送っていた。そんな2人のもとに光り輝くオープンカーに乗って、カサノバ風の男が現れ、マルヤを誘惑する・・・。

評価★★★/65点

映画自体は別段どうでもいい内容だけど、音楽は一考の価値がある作品。

どう聴いても映画と音楽のミスマッチが最初の方は気になっていたが、なんか観ているうちにこの音楽が気に入ってしまった。

しかし映画と音楽の距離が一向に縮まらないのね、これ(笑)。それがちょっと惜しいな。

音楽の方にもっと映画の内容が近寄っていくようなかんじだったら、もっとオイシイ異色作になってたんだろうなと思うけど。

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めがね(2007年・日活・106分)WOWOW

 監督・脚本:荻上直子

 出演:小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ、薬師丸ひろ子

 内容:透き通る海に面した南の島。そこに何かを求めて旅しにやって来たタエコは、地図を片手にハマダという小さな宿にたどり着く。そして宿の主人ユージや常連客のサクラにおもてなしを受けるが、彼らのマイペースさに耐えきれなくなり、別な宿に移ることにするのだが・・・。

評価★★★/60点

北国育ちの自分にとって、ある種特有のゆったりとした時間が流れているイメージがある南の島には憧れを抱いてしまうのだけど、この映画見るとそこに身をゆだねるのも2時間が限界のようだ

カキ氷とかBBQは食べたいしメルシー体操も楽しそうだけど、不思議とここに行きたいと別段思わなかったのはなぜだろうww

思うにそれはこの映画がマッタリとした世界観だけで成り立っていて、人間関係がことのほか稀薄だったからではないか。それは例えば宿泊客が一緒に農業体験をする薬師丸ひろ子が主人の宿を胡散臭いものとして描いていることからも分かる通り、よけいな干渉はこの映画では煩わしいものなのだ。“たそがれ”には無用の長物だということらしい。

しかし、映画としてはそれだとやはり押しが弱くて、見終わったあとの印象は薄い。

何もしないことが最高の贅沢とはいうけど、旅行となると他人より大きなトランクを抱えて行ってしまう自分にはまだまだそういう断捨離の境地には達しえていないということらしい・・w

でも、たま~にこういうのほほんとした雰囲気の映画見るのも一服の清涼剤としてはいいのかもね。

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