夢のシネマパラダイス55番シアター:松ヶ根乱射事件
松ヶ根乱射事件
出演:新井浩文、山中崇、川越美和、木村祐一、三浦友和、キムラ緑子
監督:山下敦弘
(2006年・日本・112分)2007/06/04・仙台セントラル
評価★★★☆/70点
内容:90年代初頭の雪に閉ざされた田舎町、松ヶ根町。鈴木光太郎(新井浩文)は派出所勤務の警察官。一方、双子の兄・光(山中崇)は、姉夫婦が切り盛りする畜産業を手伝っているが、全くやる気なし。また、父親(三浦友和)は近所の床屋の女(烏丸せつこ)の店に行ったまま帰って来ないが、それに対し母親(キムラ緑子)の方も全く無関心。そんなある日、町でひき逃げ事件が発生する。検死に回された被害者の女性・池内みゆき(川越美和)は、しかし意識を取り戻し、西岡佑二(木村祐一)という怪しげな男と犯人捜しを始めるが・・・。ちなみに、、実話だそうです・・・。
“平成版「楢山節考」”
「リンダリンダリンダ」「天然コケッコー」と同じ監督が撮ったとは思えない辛くて苦い映画だけど、いっとき日本のアキ・カウリスマキと呼ばれていたこともあったが、これ完全に今村昌平じゃないか(笑)。。
何なんだこの器用さは。しかも器用貧乏になってないところがスゴイんだよな、この監督。
オイラより3つくらい上で年代としてはあまり変わらないんだけど、何なんでしょうホント。この人のルーツを小一時間くらい問いつめて知りたい気分。
同じ信州長野が舞台ということで、なんかホント今村昌平の「楢山節考」(1983)を真っ先に思い浮かべちゃったんだけど、かの作品がドロドロとまとわりついてくるような生と性、そして閉鎖的ゆえにそこに蓄積し沈殿していく欲望と土着のエネルギーを執拗に描いたといえるならば、今作で描かれる90年代にはもはやそういう土着性は皆目なくなっており、まとわりつくべき対象すら見出せない中で、ただドロドロとしたような空気感だけが宙を漂っている。
そういう時代性を敏感に感じ取った上で、ラスト、新井浩文が拳銃を宙空のあらぬ方向に向けて撃ちまくるというのは、もの凄く的を射ている象徴的なシーンだったと思う。映画史に残る銃撃シーン、、なんつって。。
そう考えても、やっぱこの監督さんはスゴイと思う。
あと、出色だったのが木村祐一。あの無表情のしゃべりが淡々としていて余計に恐いんだよね。
でも、「ファーゴ」と似たような光景から始まったかと思いきや、いきなり小学生の男の子が女の下半身まさぐっちゃったり、木村祐一のSEXも吐き気をもよおすくらい下手クソだし、車の中で運転しながらゲロ吐く新井浩文といい、まぁたぶんもう二度と観ることはないと思うけど・・・(笑)。でも、この監督の次作は待ちきれない。
そういえば、思わず脱力しちゃうようなポヨヨンみたいな音楽って、「男はつらいよ」の寅さんが腑抜けキャラになる時に使われてたのと同じだったけど、そっからヒントを得たのかな。
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(おまけ)
リアリズムの宿(2003年・日本・83分)
監督:山下敦弘
出演:長塚圭史、山本浩司、尾野真千子、多賀勝一、山本剛史
内容:冬のある日、若手の映画監督・木下(山本浩司)と脚本家・坪井(長塚圭史)は、共通の友人である俳優の船木に誘われて旅に出るが、肝心の船木が来ない。顔見知り程度の関係でしかない2人は、ビミョーな雰囲気の中、鳥取のとある温泉街の駅で途方にくれていた。そして、日本海をボーッと眺めていた2人は、海で泳いでいたら荷物を波にさらわれたという裸同然の女性・敦子(尾野真千子)と出会う・・・。原作は、つげ義春の漫画。
評価★★★☆/70点
“リアリズムのコント”
日常の取るに足らないムダ話に照準を合わせて思いっきり引き伸ばしていき、絶妙な間による展開と笑いをすくい取っていくというのは、基本的にコントの作りと同じだと思うのだけど、よくぞここまでマッタリとした世界観で一貫して作り上げたなと関心してしまった。
よほどリハーサルを重ねて作り込んでいかないと、こういう微妙かつ絶妙な間というのは出てこないと思うのだけど、なんかダウンタウンの松ちゃんが映画で1本立ちしたらこういう映画になるんじゃないかなという気がする。
映画界の松本人志たる地位に上りつめていくのか、、、山下敦弘、要注目です。
(初記)2004/06/27 シネマ・ソサイエティ
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ファーゴ(1996年・アメリカ・98分)仙台セントラル
監督・脚本:ジョエル・コーエン
出演:フランシス・マクドーマンド、スティーブ・ブシェーミ、ウィリアム・H・メーシー
内容:1987年冬、ミネソタ州。自動車ディーラーのジェリーは、多額の借金を背負い、妻を偽装誘拐して養父から多額の身代金を引き出そうと考えた。ジェリーは整備工場で働く元囚人の2人組を紹介してもらい、ノースダコタ州ファーゴへ向かう。2人組は誘拐を決行するが、逃走中にパトロール中の警官と目撃者を殺してしまった。翌朝、出産を控えた女性警察署長マージが殺人事件の捜査に乗り出す・・・。
評価★★★★/75点
耳に残るは「ヤー」の掛け声・・。
「ヤー」「ヤー」「オー、ヤー」の連発が妙に印象に残ってたりする。
でも、1番の見所はなんといっても死体の前で熱いコーヒーを幸せそうにすすり、大量のミミズが入った袋の前で「美味しそうね」と言いながらハンバーガーをたらふく食べる身重のマージの食いっぷりと食欲だろう。。
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