夢のシネマパラダイス147番シアター:愛すべきアラフォー、、以上の恋。。
グッバイガール
出演:リチャード・ドレイファス、マーシャ・メイソン、クイン・カミングス
監督:ハーバート・ロス
(1977年・アメリカ・110分)NHK-BS
評価★★★★☆/85点
内容:いつも男性からグッバイされてばかりいる中年女ポーラ(マーシャ・メイソン)は、俳優のトニーと同棲していたが、彼はハリウッド映画への出演をきっかけにポーラを残し去ってしまった。。10歳になる娘のルーシーはまたかぁという顔。そんな時、トニーの知人のエリオット(リチャード・ドレイファス)がトニーから部屋を借りたと言って訪ねてくる。話し合いの末、ポーラは部屋を分けてエリオットと同居することにするのだが、、、。リチャード・ドレイファスがアカデミー主演男優賞受賞。
“「アカデミー受賞を願ってるわ!」、、、ってホントに獲っちゃったんかい。。”
映画に出演できることになったエリオットにポーラが言う言葉。
と思ったら実際にアカデミー主演男優賞獲っちゃいました。。
紫の服とピンクの爪のリチャード3世を演じてこき下ろされた売れない役者の彼が・・・。まさにドラマティックですな。
でもこの映画自体はというと別段ドラマティックであるわけでもなく。
いくら恋愛映画とはいえ肝心の男女は美男美女とはかけ離れたオッサンオバさん、しかもませた女の子付きだし、恋愛のプロットも至極古典的なものだし。
しかもこのエリオットという男のキャラってどちらかといえば女性に嫌われるタイプのキャラでしょ。
ひげ面にさえないメガネ、部屋では全裸、早朝には延々とお経読み、物言いもなんか高みから見下したような口調とくればもう言わずもがなのキャラクターじゃん。
こんなん恋愛できんの?と思っちゃう。
ところが、シナリオが良っく出来てるんだよねこれが。
見知らぬ男女の奇妙な同居生活という設定のユニークさと、中年にさしかかる男女というのを逆手にとった笑いのエスプリに富んだ丁々発止の会話劇によってグングン映画の中に引き寄せられていく。
ポーラの娘ルーシーがいることによって擬似家族の様相を呈していく過程が全くあざとくなく自然な流れとしてうまく描かれているし、ポーラもどんどんチャーミングに見えてくるし。
うむむむ。上手いですね。いい仕事してますねぇと感心しちゃいました。
夢をあきらめないで追い続ける。そして幸せをつかむ!
人生讃歌としても見れるところが良いね。
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いつか読書する日
監督:緒方明
(2004年・日本・127分)NHK-BS
評価★★★★/75点
内容:50歳の独身女性、大場美奈子(田中裕子)は、朝は牛乳配達、昼はスーパーのレジ打ちをして生まれ育った町で暮らしていた。そんな彼女が高校時代から30年以上想いを寄せてきた男、高梨槐多(岸辺一徳)。彼は末期ガンの妻・容子(仁科亜希子)を自宅で看病する日々を送っていて、美奈子は槐多の家にも毎朝牛乳を届けていた。が、そんなある日、容子は牛乳を飲まない夫が配達を頼んでいる理由を知ってしまう・・・。
“恋愛映画を観て怖いと思ったのは、これが初めてかもしれない。”
「50から85までって長いですか。」「長っげぇよ・・・。」
50歳の高梨槐多(岸辺一徳)が職場である市役所で85歳のジイさまに尋ねると、そのジイさまがうんざりするようにボヤいたのが妙に印象に残った。
でも、50まであと20数年あるオイラにとっては、あまり実感が湧くことではなく、ましてや30年以上同じ人に秘めた想いを寄せて生きているなんて想像の範疇を超えていることであり・・。
この映画を観ることは、まるで行間と行間のあいだを想像力をたくましくして読み取らなければならない読書に似ている。
しかし、この“読書”が普通じゃないのは、トレンディドラマではまずお目にかかれないであろうやけに既視感漂う町の風景(特に美奈子が勤める地方の中小スーパーなんて自分んちの近所によくある)と、やけに現実感漂う生活風景が確かな感触のあるものとして伝わってくることであり、その生々しい現実感覚の中で紡がれるまさに現実離れした中年の恋愛奇譚は、時に妙に末恐ろしく目に写ってしまう。
特に、大場美奈子(田中裕子)は別世界の住人のように見えることもあり、あのラストの微笑もある種の戦慄さえ覚えてしまった。
それは、自分がこの女性の生きざまを理解できているようで全く分かっていないことの表れでもあるのかもしれないが。。
まるで大友克洋の「MEMORIES」(1995)の第1話“彼女の想いで”に出てくる、宇宙空間を漂うある女性の想いと怨念によって作り上げられたバラの形をした浮遊物体のごとく、大場美奈子も30数年の時をたゆたってきたのだろう。
そして積年の想いと怨念に高梨槐多はかすめ取られてしまうのだ・・・。
「今まで思ってきたこと、したい。」
「全部して!!」
ゾワゾワゾワゾワ・・・
いや、こういう見方をしてしまうオイラの方が断然オカシイのだろうけど(笑)。50歳になったらもう1回観てみよう、ウン。
でもさ、、、すでに家庭を持っている好きな人の家に毎朝牛乳配達に行くっていうのは、自分だったら耐えられないだろうな。ある種のバツゲームやろ。
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恋愛小説家
出演:ジャック・ニコルソン、ヘレン・ハント、グレッグ・キニア
監督・脚本:ジェームズ・L・ブルックス
(1997年・アメリカ・138分)仙台セントラル劇場
評価★★★★★/100点
内容:マンハッタンに住む病的なまでの潔癖症で毒舌&人間嫌いの人気恋愛小説家のメルヴィンは、ある日、隣人のゲイの画家サイモンの愛犬を預かることになったが、自室に他人さえ入れたことがないメルヴィンにとっては命に関わる大事態。そんな彼は、行きつけのレストランのウェイトレスであるシングルマザーのキャロルと話を交わす時だけはなぜか素直になれてしまうのだった・・・。アカデミー賞では主演男女優賞をダブル受賞。
“言うことをきかないタチの悪いクソガキがちゃんとしつけをしてくれる家政婦に出会ったというお話・・・”
、、、ではあまりにもありきたりなので、クソガキをクソジジイに変えてみたら、もの凄いもんが出来上がっちゃったで、、というお話。
末恐ろしいほどのメルヴィンの生態が次第に愛おしくなっていくのだから、別な意味で末恐ろしい。
おかげで終始顔の筋肉は緩みっぱなし。どんな恋愛小説を読んだときよりも幸せな気分で満たされましたとさ。
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恋愛適齢期(2003年・アメリカ・129分)WOWOW
監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ
出演:ジャック・ニコルソン、ダイアン・キートン、キアヌ・リーブス、フランシス・マクドーマンド
内容:63歳の富豪ハリーは、若い恋人の別荘で倒れ、恋人の母親エリカの世話になることに。二人は次第に惹かれあっていくが、ある日、ハリーの担当医となったジュリアンが、20歳も年上のエリカに一目ぼれしてしまい・・・。
評価★★★☆/70点
共演してそうで共演してなかった2頭の怪物。ハッスルしまくるのも当然か(笑)。
「ゴッドファーザーPARTⅡ」(1974)で悪魔の子を堕胎したダイアン・キートンと、「シャイニング」(1980)で斧を振り回しながら子供を追っかけまわしたジャック・ニコルソン。
昔だったらホラーにもなり得たはずが、2,30年経つとこうなっちゃうんだ。
ま、でも老人の愛は慈愛が定番ということからすると、この映画は全くかけ離れていて、そういうキワドイ描写がいとも簡単に表現できるというのは、さすがニコルソンとキートンのタッグコンビといったところ。
しかし、ベッドでハサミを持ち出したり、「避妊はどうすりゃいい?」「あたし更年期だから大っ丈夫なのよ~ん」といったかなり引いてしまう会話の数々は昔の遺伝子の名残りですかな。
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あ・うん(1989年・東宝・114分)NHK-BS
監督:降旗康男
出演:高倉健、富司純子、板東英二、富田靖子、宮本信子、山口美江、真木蔵人、三木のり平、大滝秀治
内容:昭和12年、東京。軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長・門倉(高倉健)は、地方に転勤していた軍隊時代の親友・水田(板東英二)が3年ぶりに戻ってきたのを出迎える。昔と同じように家族ぐるみの付き合いが始まったが、実は門倉は水田の妻・たみ(富司純子)を密かに想っていて・・・。
評価★★★☆/70点
昔からこの映画の題名ってどういう意味があるのだろうと思ってたんだけど、そっかぁ、神社の狛犬の“阿・吽”から来てたのか。
長年の不思議が解けて見た甲斐があったというものだけど、肝心の映画の方は、硬派なイメージとは異なるコミカルで不器用ではない高倉健を拝めるという点で文字通り不思議な味わいのする映画だったと思う。
それは板東英二や山口美江という思わず目を疑ってしまう大根キャスティングwも大いに影響していると思うんだけど、会社勤めのサラリーマンと美人の奥さんと男前社長の高倉健の奇妙な三角関係をプラトニックなかんじのまま成立させるには、健さんの対極にいる親指顔の板東英二しかいないだろっていうのはたしかによく分かる(笑)。
また、1970年前後に緋牡丹博徒シリーズで古き良き任侠道を共に歩んだ富司純子もどこか気の抜けたような天然っぽさがあり、健さんと互いにホの字でもあまり深刻に見えない微笑ましさ、つまり一線を越えない清々しさと安心感があって、これも適役だったというしかない。
でも、この三角関係って考えてみると、西田敏行&三國連太郎&浅田美代子の釣りバカにも通じるものがあるんだよね。
釣りバカの何作目だったかな、みち子さんがまだ石田えりの頃だったか、スーさん男前だから若い頃はモテモテだったんだろうなぁと言ってハマちゃんが嫉妬するシーンがあったけど、スーさんとみち子さんがもし佐藤浩市と石田えりだったら途端に雲行きが怪しくなってくるぞwwとなるわけで。
その点でいえば、今回の映画で親指顔の旦那がインドネシアのジャワに栄転になったのに対し、門倉さんの行く場所がなくなっちゃうから私はジャワには行かないわと奥さんがボヤくラストは、セリフ自体かなりキワドい線をいっているにもかかわらず、何か気持ちをホッコリさせるんだよね。
それは当の男2人が酔いつぶれて寝ているそばで胸に仕舞っておいた割り切れない思いをポツリと吐露する女心の切なさと、まるでおとぎ話のように見えるほどの節度が温かみとなって心に染みてきたのかもしれない。
また、もっといえば、ジャワに行くも東京に残るも、戦争の戦禍が夢のような均衡を崩壊させるに至るであろう悲劇的未来を予感してしまう(山田洋次の「小さいおうち」の東京大空襲が及ぼす顛末を想起してしまう)、その直前の最も幸せな瞬間を切り取ったラストだったのだと思う。
でもあれだね、高倉健といえば別れのシーンと切っても切れないイメージがあるけど、その点でも一風変わった不思議な味わいのする映画だったね。
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