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2008年11月 5日 (水)

夢のシネマパラダイス550番シアター:この愚かな憎しみ合う世界・・・

ミュンヘン

060818_munich_dvd 出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ジェフリー・ラッシュ

監督:スティーブン・スピルバーグ

(2005年・アメリカ・164分)2006/02/05・MOVIX仙台

評価★★★★/75点

内容:ミュンヘン五輪開催中の1972年。武装したパレスチナゲリラがイスラエルの選手村を襲撃、11名が犠牲となる事件が起こる。これを受けてイスラエル政府は、犠牲者数と同じ11名のパレスチナ幹部の暗殺を決定、諜報機関モサドの精鋭5人による暗殺チームが組織される。そしてリーダーのアヴナーに率いられた彼らは、ヨーロッパ中に点在するターゲットを確実に仕留めるべく冷酷な任務の遂行にあたっていくのだが・・・。

“祖国愛と家族愛のはざまで”

1972年、平和の祭典であるオリンピック会場で起こったパレスチナゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件に対する終わりのない報復劇を描いたこの映画のキモは、何と言ってもラストだろう。

妊娠7ヶ月の妻を残して暗殺チームのリーダーとなり暗殺を実行していったアヴナーと、モサドの連絡員兼幹部エフライムのNYでの訣別シーン。

このシーンは、祖国という“家=HOME”を捨てて家族という“家=HOME”を選んだ男と、祖国という“家”に殉ずる忠誠をかたくなに誓い続ける男の対峙である。

祖国イスラエルを滅せんと欲する者たちから祖国を守るため、家族を守るためにパレスチナ幹部11名の暗殺指令を受けたアヴナーは、イスラエル人としての身分や国籍といった一国民としての存在を当局に抹消された上で闇の任務に身を没頭させていく。

しかし、身を粉にした暗殺任務と繰り返される報復の連鎖、裏の裏でうごめいていたCIA、KGB、、、そしてひょんなことから出くわしたパレスチナゲリラの若者が心の底から叫ぶ彼らの大義「自分たちの祖国=HOMEが欲しい。」という言葉、、、次第に自分たちの目的意識の向かう先がぼやけてくるアヴナー。自分たちのしていることはテロリストといったい何が違うのか・・・。

そして報復の連鎖が自分に、さらには守るべき家族に向けられる恐怖に駆られていく。

自分の“HOME”を守るために請け負った行動が“HOME”という本来安息すべき場所を逆に危険にさらしていくことに気付いたアヴナーは、妻と子供をニューヨークへ移住させることを決意する。そして彼自身も。。

アヴナーの父親は祖国の英雄だったと示唆されていたが、彼の宿命なのか、任務を終えてイスラエルに戻ったアヴナーもまた英雄として迎えられる。

しかし彼は愛する祖国を離れて、愛する家族のもとへと帰っていく。

アヴナーは愛国心を捨てたのか・・・?

いや、そうではない、と思う。彼はこれ以上英雄で居続けることを、そして彼につづく第2、第3の英雄をつくることを拒否したのだ。

報復の連鎖によって生み出された英雄は憎しみの中から生まれ、その倍の憎しみを練成しつづけていくのだから・・・。

最強のハンターとして名高いホオジロザメの鋭い凶器の刃のような歯は、奥に次の歯が何列にも並んでいて、抜けても抜けても24時間以内に生えてくるという。

憎しみと暴力による報復の連鎖はこれと同じではないのか、代えのきく刃=憎しみに燃えたぎる人間が次から次へと生み出されていく・・・。

「こんなことの先に平和なんてあるわけがない!」ことに気付いたアヴナー。

そんな彼に、国に戻って来いと促すエフライム。アヴナーは断りを告げた上で「今夜はそういうわだかまりは抜きにして、一緒に夕食を家で食べよう。」と招待するのだが、、エフライムの祖国愛という鎧をまとった鋭利な視線が心に突き刺さる。

そして後ろにそびえる在りし日の世界貿易センタービルが、憎しみの連鎖の行き着く先をありありと映し出す。

しかも、この連鎖は今現在も脈々と続いていることに気付かされるのだ。

暗殺メンバーの、ターゲットのパレスチナ男性の、情報屋ルイのファミリーの、なんてことはないありふれた食事風景が幾度となく映し出されるが、その空間は幸せな微笑で満たされていた。

HOME=帰るべき場所とは食卓を囲む家族のいる風景なのだと示しているように思えてならない。

そこには暴力や憎しみなど存在しないのだから・・・。

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キングダム/見えざる敵

Kingdom_1_1a 出演:ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アシュラフ・バルフム

監督:ピーター・バーグ

(2007年・アメリカ・110分)WOWOW

評価★★★/65点

内容:サウジアラビアにあるアメリカのメジャー石油会社の外国人居留区で自爆テロ事件が発生。死傷者は300人以上にのぼり、犠牲者の中にはFBI捜査官も2名含まれていた。その首謀者がアルカイダと関係のあるアブ・ハムザと推察したFBI捜査官フルーリーは現地捜査を志願。駐米サウジ大使との裏取引でなんとか条件付き許可を得たフルーリーは、法医学調査官のジャネット、爆発物専門家のサイクス、情報分析官のアダムとともにサウジに降り立つ。そこで彼らはサウジ警察のガージー大佐と合流するのだが・・・。

“憎しみは憎しみしか生まない・・・”

アメリカと中東のただならぬ関係をテロップでバッバッとスタイリッシュに見せていくオープニングから、これはかなり挑戦的な映画なのかと思ったのだが、フタを開けてみれば安全パイを狙って置きにきただけのような中途半端で単調な映画になってしまった感が否めない。

それゆえ、テロとテロリストという鬼を生む土壌とは何なのか、その生の現場でえぐり出され見えてくるものとは何なのかがほとんど表面的なものしか見えてこず、逆に当局の制止を振り切り勝手ともとれる見込み捜査で敵地に乗り込み介入していくアメリカ人の安直な発想力だけが浮き彫りになってしまったような・・・。

例えば、北朝鮮の拉致問題、あるいは中国の毒入りギョーザ問題で日本の警察が乗り込めるのかっつうことだよね。

ちょっとそういうところは違和感あったし、その違和感を払拭させるだけのリアリティをともなった問題提起がなされたのかというと、そういう使命感があるようにも見受けられず、やはり中途半端な印象が。。

それでいて、ラストに「奴らを皆殺しにする!」という双方から発せられた憎悪の言葉により、非人間的な暴力の連鎖を生むのは十分な展望もなく土足で踏み込んでいくアメリカであり、その反作用として生まれたイスラム過激派であるというマトモなところに結果的には着地しているのがなんとも巧くずる賢くあざとい・・・。

まぁ、社会派とエンタメとの間でどうバランスをとるかという立ち位置はあるのだろうけど、危険な現場でのドンパチは圧巻だっただけに、見えざる敵の真実に鋭い光を当ててもっと克明に迫っていってほしかった。

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