夢のシネマパラダイス570番シアター:日本のいちばん長い日
出演:三船敏郎、山村聰、志村喬、笠智衆、宮口精二、戸浦六宏、高橋悦史、黒沢年男、加藤武、加東大介、天本英世、小林桂樹、加山雄三、松本幸四郎
監督:岡本喜八
(1967年・東宝・157分)NHK-BS
評価★★★★/80点
内容:大宅壮一が終戦当時の政治家、宮内省関係者、元軍人、民間人を取材してまとめたルポルタージュを原作とする、東宝創立35周年記念の戦争超大作。昭和20年8月14日の宮城内地下防空壕の御前会議に始まり、ポツダム宣言受諾をめぐる陸軍省や総理官邸の動き、自刃を覚悟した阿南陸相の心境、玉音放送の準備に大わらわの宮内省とNHK、受諾反対の青年将校の玉音奪還作戦など、玉音放送がなされた翌15日までの24時間を、緊迫感あふれる描写で見せていく。
“黒沢年男のエネルギーで爆弾1個作れそう。。”
あのハイテンションはどう見てもキチガイにしか見えないのだけど、それは戦後60数年経った今だから言えるのであって、あの当時はそれが真っ当な青年将校のあるべき姿だったのだろう、、か。いや、バラエティ番組で見る黒沢年男のキャラとたいして変わらないのにもビックリしたんだけど・・・(笑)。
それはともかく祖国を思う純粋な心と信念をあそこまで狂信的に駆り立てたものは何だったのか。
日本人の男子の半分2000万を特攻に出し続ければ必ず勝てます!と言わせしめるまで守り抜こうとしたものとは何だったのか。
祖国、国体護持、神国、天皇、、、すべてが戦後数十年経ってこの国に生まれた自分には現実離れしたものとして映ってしまう。
戦争は始めるのは恐ろしいくらいに簡単だが、やめるのは恐ろしいくらいに難しいというのは、今のアメリカに至るまで連綿として続く常識だが、教科書に載らない歴史の秘話を明かすこの映画を見せられると、このときの日本ほど愚かで無責任な事態はなかったのではないかとさえ思えてくる。
空虚な理念に支配された密室、しかも天皇=神を戴く祭殿の中でその理念は浮世離れしたもののように誇大妄想と化していく。
なによりタチが悪いのは、その理念が全くブレない強固なものであり、それを純粋に真摯に遂行し守ろうとするところにある。
日本教原理主義とでもいうべき宗教的な崇拝の鬼と化した戦争指導者たちの姿は狂気そのもの。
その中で粛々としてあらゆる手続きのもとで進む儀式(日本帝国のお葬式)がまた空しく目に映るわけだが、東京の焼け野原も一般市民の視点も欠如しているこの映画において、密室にこもった戦争指導者の思考停止状態と無知蒙昧ぶりが際立っていく作劇にはかろうじて岡本喜八のシニカルな視点を垣間見ることができる。
とはいえ、題名が出てくるまで20分もかかったこの作品、2時間40分ハイテンションな緊迫感が途切れることなく持続するアツイ映画であったこともたしかで、岡本喜八のテンポ良いリズム感あふれる演出技法が重厚な作品にあっても冴えに冴えわたっている。
そしてなんといってもアクの強い個性派俳優の恐ろしいほどの屹立した存在感のしのぎ合いに目をそらすことができない。
横浜警備隊長役の天本英世や児玉基地飛行団長野中大佐役の伊藤雄之助など、今の役者では到底お目にかかることのできない怪演ぶり。そして壮絶な割腹自殺シーンに息を呑んでしまう阿南陸相・三船敏郎の鬼気迫る力演。
これほど役者というものの力を認識させられる映画もそうはない。
日本の中枢の断末魔しかと見届けたり!
とはいえ、死屍累々たる末端の人々の断末魔に比べればちゃちいものだが。。
でもさ、腹かき切るだけじゃやっぱすぐには死ねないもんなんだねぇ・・
。くわばらくわばら。。


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