夢のシネマパラダイス566番シアター:ゆれる
出演:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、木村祐一、蟹江敬三
監督・脚本:西川美和
(2006年・日本・119分)2007/04/11・盛岡フォーラム
評価★★★★/80点
内容:東京で写真家として忙しい日々を送る弟・猛(オダジョー)は、母の葬式に出られず、一周忌になってようやく帰郷してきた。が、父親(伊武雅刀)とは事あるごとに折り合いが悪く、ガソリンスタンドを経営する温厚な兄・稔(香川照之)がいつも間に入って2人の仲をとりもっていた。そんなある日、兄弟はガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子(真木よう子)と3人で近くの渓谷に出かける。ところが、川にかかる吊り橋で稔と一緒に歩いていた智恵子が下の渓流に転落死してしまう。当初は事故と思われたが、稔の突然の自供により裁判が始まることに。猛は弁護士である伯父(蟹江敬三)を立てて、兄の無実を晴らそうと努めるが、兄は猛にこれまでとは別人のような一面を見せ始め・・・。
“偏差値は異常に高くて上手すぎるくらいに上手い映画だが、あまりにも西川美和の作り上げた世界観が理路整然としていて、その計算高さが垣間見えてしまうのが逆に鼻についてしまう、、とイジワルな見方をしちゃいたいくらい完璧な作品。”
荒戸源次郎の「赤目四十八瀧心中未遂」(2003)のような人間の心のひだを深くえぐるような映画に1年に1本は出会いたい者としては、オリジナル脚本でなおかつ完成度が非常に高い非の打ちどころのない出来栄えの映画を見ることができたのは素直にうれしい。
登場人物の心のゆれが、映画を観る側にまで伝播してくるプロセスには舌を巻くばかりだ。
脚本を書き下ろして小説にまでしてしまう西川美和監督の底知れぬ才能は、SEXシーンの撮り方ひとつとっても推して知るべしだが、彼女の構築した完璧な世界観にものの見事に応えた香川照之&オダギリジョーのセンスにも脱帽する以外にない。
最初は兄弟に見えないほど背格好はもちろん性格も対照的な誠実な兄・稔と自由人の弟・猛の人物造型。
その陰と陽の関係性が次第に合わせ鏡のように反転していくのを見せられるのは弟をもつ自分にとっては何か兄弟関係を見透かされているようで、うすら寒い思いもしてしまったが、ラストで「兄ちゃん!一緒に家に帰ろう!」と叫ぶに至る弟・猛の心のゆれ、そして兄・稔のラストの微笑によって、ああやっぱり正真正銘の兄弟なんだと心震わせながら納得させられてしまい、余韻がいつまでも尾を引く。
なんともスゴイ映画だと思う。
が、そこであえて物足りないところを言わさせてもらえば、全く穴のないシナリオ、全くブレることのない演出がそれこそ神の意図でつくられた試行錯誤の一切ない設計図のように見え、その図面上で現実が理路整然と組み立てられていくさまは、恐ろしいくらいに“ゆれる”ことがない。
観る側の心をゆれさせると書いておいて何か矛盾しているようだが、これだけ“ゆれる”ことがない映画も珍しいのではないか。
ここでいう“ゆれる”とは、監督のこの映画に向かう姿勢の軸とでもいえばいいだろうか。まったくブレがなくて、あれこれ悩むことなくパズルを一片一片手際よくはめこんでいくのだ。
しかも、そこにあるのはきちっとした“理”であり、“情”はほとんど感じられない。
この映画は“情”を排した“理”で作られた映画だと思う。
パーフェクトたる所以はそこにあると思うのだが、どうもそれが垣間見えてつまらなさを感じてしまうというか・・。すごいイジワルな見方なのだけど。。
ただ例えば西川美和自身のオリジナル脚本じゃなくて、出来合いの原作やシナリオをもとに撮った彼女の映画というのもいったいどういう風になるのか見てみたい気がする。
高く重ねられた積み木を引っこ抜いていって上に再構築していき、崩れたら負けというバランスゲーム“ジェンガ”のごとく、出来合いの世界観を自分色に染めていく過程で様々な取捨選択に直面するはずで、そこで“ゆれ”が生じてくるはずなのだが、、、それでもなお“理”で映画を作れるのだとしたらこの人は正真正銘のバケモノだな。
いずれにせよ、オイラは完全にこの人のとりこになってます。。


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投稿: えいじ | 2008年11月22日 (土) 17時52分
はじめまして!
わたしも遅ればせながら観ました。
すごくきちんと観ていらっしゃいますね!
「理」で積み上げられたジェンガのような映画
という観点がすごく面白いし
納得もしました。
すべてのシーンが無駄がなく
考えられているんですよね。
わたしもこの監督気になります。
次回作楽しみですね。
わたしも感想をUPしているのでよかったら
遊びに来てくださいね。
投稿: 永岡瑞季 | 2008年12月10日 (水) 08時36分