夢のシネマパラダイス545番シアター:光が消える、、あなたを感じる
タイヨウのうた
監督:小泉徳宏
(2006年・松竹・119分)2006/06/26・仙台フォーラム
評価★★★★/75点
内容:海辺の街に暮らす16歳の少女、雨音薫は、太陽の光に当たれないXP(色素性乾皮症)という難病のため、昼間は外に出られない。しかし彼女は、夜に駅前でギターの路上ライブをするのを日課としながら日々を明るく生きていた。そんなある日、彼女は初めての恋をした・・・。
“YUI=雨音薫という奇跡”
いい加減ウンザリしてきた難病もの、なおかつシンガーソングライターを主演に起用ということで、これはYUIのPVになっちゃうのかぁ!?と高をくくっていたが、フタを開けてみたらそれは全くの杞憂に終わった。
難病ものにありがちな安易なお涙頂戴を狙った演出とは一線を画しており、なにより主人公・雨音薫の生きることに対する真摯かつ前向きな姿勢に共感と好感が持てることが大きい。
そしてなんといってもYUIの存在感だろう。
彼女の拙くも懸命な演技が、窓ガラスからしか太陽の出ている外界を感じ取ることができない薫の人物造型をかえって浮き立たせていてプラスに作用しているし、なおかつ歌の世界に入り込んだときの生きることへの情熱だとか哀しみといった感情の発露を身体全体のエネルギーで表現しきってしまうYUIの圧倒的存在感が、そのまま雨音薫へと完璧に投影されていて、YUI=雨音薫という図式に観る側が何のためらいもなく入り込んでいけることも大きく、そういう意味ではありきたりな言葉になってしまうけども、奇跡のような作品になっていると思う。
“生きることは書くこと”とは作家・柳美里の代名詞的なフレーズだが、“生きることは歌うこと”というフレーズこそYUI=雨音薫にあてはまるのではなかろうか。
その点でいえば、ラストの方のセリフで父親に対し、「死ぬまで生きるって決めた!」と薫に言わせしめたのはこの映画にとって非常に大きい意味のあることで。
“死にたくない”とか“死ぬのはイヤ”ではなくて、“死ぬまで生きる”。
この両者の違いは本当に大きいと思うし、生きることに前向きな言葉を薫に言わせたことでこの映画の色は決定付けられたといっていいと思う。
今までややクセのあった塚本高史も真っ直ぐな好青年役をさわやかに演じているし、期待以上の佳品になっていたと思う。
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大停電の夜に
出演:豊川悦司、田口トモロヲ、原田知世、吉川晃司、寺島しのぶ、井川遥
監督:源孝志
(2005年・日本・132分)WOWOW
評価★★★/60点
内容:クリスマス・イブの夜を迎えたばかりの東京の街が、首都圏を襲った大停電により暗闇に包まれた。かつての恋を待ち続けるジャズ・バーのマスターと向かいのキャンドル・ショップの女のコ。妻と愛人の間で揺れる会社員。秘めた想いに迷っていた老夫人。エレベーターに閉じ込められた中国人のベルボーイとOL。病院の屋上にたたずむ少女、、、12人の男女の秘めた想いが、静かに動き出す・・・。
“大停電とかけて、映画の出来と解く。そのココロは・・・”
パッとしない。。ウガ×ッ・・・。
人工照明の機能的な明かりではなくキャンドルの光と星空に包まれたほんわかな映像は良かったけど、12人の男女が織り成す群像劇としては人物それぞれに力がないというか、素直すぎるんだよね人物像がみんな。
だからこの映画で重要な要素を占める会話劇にも味がないというか、表面的なちょっとイイ話というところで立ち止まっちゃってる気がする。
例えば、「ラブ・アクチュアリー」なんかと決定的に異なるのはユーモアセンスの有無だと思うのだけど、それが人物像にどう関わってくるのかといえば、その人物の見た目からだけでは分からない内面に抱える触れられたくない変な欠点や、普通の人間の型枠からはみ出している部分、またネガティブな側面だったりをさらけ出す、つまり端的にいえばその人物をカッコ悪く描けるかどうかだと思うんだよね。
それが結局、人物像にユーモアと親しみやすさを付加させることにつながるわけで、そのキャラクターがどんどん膨らんできて最終的にはそれがカッコ良く見えちゃうんだわ。
だから今回の映画の人物像のように、キレイキレイしてるだけじゃ全然深みも広がりもなくて上っ面だけのものにしか見えないってこと。そこがスゴイ残念な映画だったなぁ。
と、この監督、黒木瞳&岡田准一の「東京タワー」の監督さんだと知ってものすごく合点がいった。この映画も映像だけだったもん良かったのって・・・。
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