夢のシネマパラダイス69番シアター:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明
出演:ジェット・リー(リー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、ユン・ピョウ、ジャッキー・チュン、ケント・チェン
監督・脚本:ツイ・ハーク
(1991年・香港・100分)NHK-BS
評価★★★★/75点
内容:清朝末期、英米列強の進出で動乱吹き荒れる中国。祖国の将来を憂える黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)は、治外法権をかさに着て中国人を奴隷として連れ去ろうとするアメリカ商人に立ち向かう!19世紀半ばに実在した、医師にして武道家という希代の英雄・黄飛鴻の活躍を描く。
“拳は銃より強し!”
個人的にジェット・リーの香港時代はデビュー作「少林寺」(1982)くらいしか知らなくて、「リーサル・ウェポン4」(1998)以降、ハリウッドに渡ってから自分の中でようやくメジャーになっていった役者さんだ。
それは逆にいえば自分にとっての香港カンフー映画とはほぼジャッキー・チェンの映画だったわけで、だからこの映画の主人公である黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)にしても真っ先に思い浮かぶのはジャッキー・チェンの「酔拳」(1978)の方。
そしてこの「酔拳」を見れば端的に分かるように、バスター・キートンばりのコメディ要素がふんだんに盛り込まれているコミカルカンフー映画=ジャッキー・チェンが好きで好きでたまらなかった。それは今もそうで、俳優で誰が1番好き?と訊かれたら、イの1番にジャッキー・チェンと答えるであろう。
いわばジャッキーの影に隠れるように自分の中で鳴りを潜めていたジェット・リーだが、コミカルなジャッキーに比べると硬派で取っ付きにくい印象があったことも否めない。
それはハリウッドに渡ってからもそうだったのだが、しかし「HERO」(2002)や「SPIRIT」(2006)での、真の強さの本質を見抜く力を持った真っ直ぐで真摯な人間像に共感し感化されてから、ようやく見直そうと思い立った次第。。
と思い立ったが吉日、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は見たことはあってもチャイナの方は見たことがなかったので、さっそく初観賞。
ということで、、「酔拳」でのコミカルぶりなど微塵もない真面目なウォン・フェイフォンに少々面食らいはしたが、歌舞伎ばりの見得を切るキメポーズにはもうシビレまくり
純粋にカッコ良い。
ところどころに挿入されるコミカル要素が中途半端で、グダグダなノリのストーリーだったが、ジェット・リーが出てくるとピシッと画面が締まるのはさすがだった。
また映画終盤に繰り広げられる鋼の身体をもった武道家イェンとのアクションバトルは圧巻そのもので見応えは十二分!そして拳と拳、肉体と肉体をぶつけ合った壮絶な闘いの後に、西洋人に銃であっけなく蜂の巣にされるイェンの最期にも唖然。。
「SPIRIT」で描かれたように、拳を交わし合って友となる精神世界など銃には皆無なわけで。
この東洋武術を駆逐していく西洋合理主義に対するジェット・リーのたどり着いた究極の答えはジェット・リー最後の武術映画と銘打った「SPIRIT」で明示されているので、ここではあえて言わないが、しかし、今回の「ワンス・アポン~」では銃を向ける西洋人をバッタバッタとなぎ倒していくラストは爽快そのもので、観終わるやすぐに続編を観たい欲求にかられてしまった。
拳は銃より強しの世界を孤高の存在感でキメたジェット・リーと質実剛健かつ華やかな東洋武術の意地に拍手。
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱(1992年・香港・108分)NHK-BS
監督・脚本:ツイ・ハーク
出演:ジェット・リー(リー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、マク・シウチン、ジャン・ティエリン、ドニー・イェン
内容:広州を訪れた黄飛鴻は革命運動家の孫文らと出会い意気投合する。しかし、この地では諸外国の排除をうたう白蓮教なる秘密結社が猛威を振るっていて・・・。
評価★★★☆/70点
“「神ではない。ウォン・フェイフォンだ!!」クゥ~~ッシビれる~!”
今回の決め台詞はこれだね。カッコ良すぎ。
ややストーリーが入り組んでいるのが観ていて面倒くさくなってくるが(笑)、華麗に飛び跳ねるアクションシーンだけでも十分もとは取れるのでOKっしょ。
そして今回白装束のカルト教団の雑魚どもをなぎ倒した後に待っていたのは、「HERO」(2002)で美しすぎるバトルをみせたジェット・リーvsドニー・イェンの黄金カード。ワクワクワク一騎撃ち!
前作、天地黎明での梯子バトルも凄かったけど、今回のドニー・イェンが繰り出す布を使ったトンでもな武器も圧巻!どっからこういうのを思いつくんやろ・・。
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇(1993年・香港・112分)NHK-BS
監督・脚本:ツイ・ハーク
出演:ジェット・リー(リー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、マク・シウチン、ラウ・シュン、ション・シンシン
内容:北京で、時の権力者・西太后が大武術大会を開催しようとしていた。黄飛鴻は、ロシアスパイによる西太后の側近暗殺計画が進行しているのを知り、大会に参加することにするが・・・。
評価★★★/65点
“自分が見たかったのと微妙にズレが・・・”
まず、ジェット・リーの初っ端の姿からしてズッコケ・・・。
だって、長衣服をまとってるのにシルクハットかぶってグラサン姿って、、、不恰好というか不釣り合いというか思わずコメディかと笑っちゃったで。
と思ってたら、この最初に感じたズレがそのまんま続いていくから参った参った。ラブコメかよこれ(笑)。
周りが香港映画にありがちな安っぽいギャグ滑りでズッコケても、ジェット・リーだけはビシッと決めて雰囲気を引き締めていたのに、今回は便乗しちまったよお師匠さん・・・。
実家に婚約したイーさんを連れて帰ったフェイフォンの恥ずかしげな姿はともかく、イーさんが他の男といるのを見て嫉妬にかられて物に八つ当たりして破壊する大人げない姿や、イチャイチャするオノロケ姿を見せられるとオイラ的にはちょっと引くんだよね。ジェット・リー、いや、リー・リンチェイに幼稚な姿は似合わないから。
色恋沙汰が悪いとはいわないけど、それも度を過ぎるとだいぶズレが出てくる。でもって、このズレがアクションにまで波及していて、功夫アクションが大幅に減り、代わりに獅子舞のお祭り乱舞状態になってしまった。
そういう意味でも前2作とは毛色の変わった作品といっていいと思う。少なくとも自分が見たかったものとは微妙にズレていたのはたしかだ。
「HERO」や「SPIRIT」へと受け継がれていく平和主義を声高らかに宣言する見応えのある場面もあっただけにちょっと残念。
ただその中で、唯一気を吐いたのが今回初登場の鬼脚で、必死の形相で闘う姿と気迫はフェイフォン以上のものがあり、心に響くものがあった。鬼脚を主人公にした外伝が作られたのもなんか分かる気がしたが、それもこれもフェイフォンが不甲斐ないからでっせ。
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(おまけ)
チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987年・香港・93分)NHK-BS
監督:チン・シウトン
出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ウー・マ、ラム・ウェイ
内容:中国に古来から伝わる幽霊物語を、現代のSFXを駆使してよみがえらせたホラー・アクション。賞金稼ぎが横行する時代、旅人のツァイサンは寂れた寺を訪れるが、そこは道士や魔物が闘いを繰り広げる奇怪な土地だった。そこで彼は美しい娘スーシンと出会い恋に落ちるが、彼女は人間の生気を吸い取るために吸血鬼に利用されている妖怪だった。ツァイサンは彼女を助けて本来の人間の姿に戻すため、道士の力を借りて、彼女の墓から骨壷を掘り出すが・・・。
評価★★★/60点
アクション、ホラー、恋愛、お色気、コメディ、何でもござれの香港映画の髄を極めたようなものスゴイ作品、、、といえば聞こえはいいが、正直途中からついて行くのをやめたくなる・・・。
風の吹かせ方だけは随一と認めやしょう。。
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チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2(1990年・香港・103分)NHK-BS
監督:チン・シウトン
出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ミシェル・リー、ジャッキー・チュン
内容:ツァイサンは、忘れえぬスーシンそっくりの娘チーフォンと出会い惹かれていく。そして無実の罪で投獄されている彼女の父親を救うべく立ち上がるが、その裏には妖怪の存在が蠢いていた・・・。
評価★★★/60点
エロ要素が減退したかわりにハリボテ感が大幅UP、しかも最後はドドンと金ピカの大仏さん、、、シュールという言葉で形容するのもおこがましいほどの中身の無さにもうついてけません。。
まぁ、それが香港映画の香港映画たるゆえんなのだろうけども。
ていうか、もはやゴーストじゃなくなってると思うんだけど・・・。
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