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2008年11月27日 (木)

夢のシネマパラダイス69番シアター:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明

4_40377 出演:ジェット・リー(リー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、ユン・ピョウ、ジャッキー・チュン、ケント・チェン

監督・脚本:ツイ・ハーク

(1991年・香港・100分)NHK-BS

評価★★★★/75点

内容:清朝末期、英米列強の進出で動乱吹き荒れる中国。祖国の将来を憂える黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)は、治外法権をかさに着て中国人を奴隷として連れ去ろうとするアメリカ商人に立ち向かう!19世紀半ばに実在した、医師にして武道家という希代の英雄・黄飛鴻の活躍を描く。

“拳は銃より強し!”

個人的にジェット・リーの香港時代はデビュー作「少林寺」(1982)くらいしか知らなくて、「リーサル・ウェポン4」(1998)以降、ハリウッドに渡ってから自分の中でようやくメジャーになっていった役者さんだ。

それは逆にいえば自分にとっての香港カンフー映画とはほぼジャッキー・チェンの映画だったわけで、だからこの映画の主人公である黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)にしても真っ先に思い浮かぶのはジャッキー・チェンの「酔拳」(1978)の方。

そしてこの「酔拳」を見れば端的に分かるように、バスター・キートンばりのコメディ要素がふんだんに盛り込まれているコミカルカンフー映画=ジャッキー・チェンが好きで好きでたまらなかった。それは今もそうで、俳優で誰が1番好き?と訊かれたら、イの1番にジャッキー・チェンと答えるであろう。

いわばジャッキーの影に隠れるように自分の中で鳴りを潜めていたジェット・リーだが、コミカルなジャッキーに比べると硬派で取っ付きにくい印象があったことも否めない。

それはハリウッドに渡ってからもそうだったのだが、しかし「HERO」(2002)や「SPIRIT」(2006)での、真の強さの本質を見抜く力を持った真っ直ぐで真摯な人間像に共感し感化されてから、ようやく見直そうと思い立った次第。。

と思い立ったが吉日、「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」は見たことはあってもチャイナの方は見たことがなかったので、さっそく初観賞。

ということで、、「酔拳」でのコミカルぶりなど微塵もない真面目なウォン・フェイフォンに少々面食らいはしたが、歌舞伎ばりの見得を切るキメポーズにはもうシビレまくり

純粋にカッコ良い。

ところどころに挿入されるコミカル要素が中途半端で、グダグダなノリのストーリーだったが、ジェット・リーが出てくるとピシッと画面が締まるのはさすがだった。

また映画終盤に繰り広げられる鋼の身体をもった武道家イェンとのアクションバトルは圧巻そのもので見応えは十二分!そして拳と拳、肉体と肉体をぶつけ合った壮絶な闘いの後に、西洋人に銃であっけなく蜂の巣にされるイェンの最期にも唖然。。

「SPIRIT」で描かれたように、拳を交わし合って友となる精神世界など銃には皆無なわけで。

この東洋武術を駆逐していく西洋合理主義に対するジェット・リーのたどり着いた究極の答えはジェット・リー最後の武術映画と銘打った「SPIRIT」で明示されているので、ここではあえて言わないが、しかし、今回の「ワンス・アポン~」では銃を向ける西洋人をバッタバッタとなぎ倒していくラストは爽快そのもので、観終わるやすぐに続編を観たい欲求にかられてしまった。

拳は銃より強しの世界を孤高の存在感でキメたジェット・リーと質実剛健かつ華やかな東洋武術の意地に拍手。

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱(1992年・香港・108分)NHK-BS

 監督・脚本:ツイ・ハーク

 出演:ジェット・リー(リー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、マク・シウチン、ジャン・ティエリン、ドニー・イェン

 内容:広州を訪れた黄飛鴻は革命運動家の孫文らと出会い意気投合する。しかし、この地では諸外国の排除をうたう白蓮教なる秘密結社が猛威を振るっていて・・・。

評価★★★☆/70点

“「神ではない。ウォン・フェイフォンだ!!」クゥ~~ッシビれる~!”

今回の決め台詞はこれだね。カッコ良すぎ。

ややストーリーが入り組んでいるのが観ていて面倒くさくなってくるが(笑)、華麗に飛び跳ねるアクションシーンだけでも十分もとは取れるのでOKっしょ。

そして今回白装束のカルト教団の雑魚どもをなぎ倒した後に待っていたのは、「HERO」(2002)で美しすぎるバトルをみせたジェット・リーvsドニー・イェンの黄金カード。ワクワクワク一騎撃ち!

前作、天地黎明での梯子バトルも凄かったけど、今回のドニー・イェンが繰り出す布を使ったトンでもな武器も圧巻!どっからこういうのを思いつくんやろ・・。

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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地争覇(1993年・香港・112分)NHK-BS

 監督・脚本:ツイ・ハーク

 出演:ジェット・リー(リー・リンチェイ)、ロザムンド・クワン、マク・シウチン、ラウ・シュン、ション・シンシン

 内容:北京で、時の権力者・西太后が大武術大会を開催しようとしていた。黄飛鴻は、ロシアスパイによる西太后の側近暗殺計画が進行しているのを知り、大会に参加することにするが・・・。

評価★★★/65点

“自分が見たかったのと微妙にズレが・・・”

まず、ジェット・リーの初っ端の姿からしてズッコケ・・・。

だって、長衣服をまとってるのにシルクハットかぶってグラサン姿って、、、不恰好というか不釣り合いというか思わずコメディかと笑っちゃったで。

と思ってたら、この最初に感じたズレがそのまんま続いていくから参った参った。ラブコメかよこれ(笑)。

周りが香港映画にありがちな安っぽいギャグ滑りでズッコケても、ジェット・リーだけはビシッと決めて雰囲気を引き締めていたのに、今回は便乗しちまったよお師匠さん・・・。

実家に婚約したイーさんを連れて帰ったフェイフォンの恥ずかしげな姿はともかく、イーさんが他の男といるのを見て嫉妬にかられて物に八つ当たりして破壊する大人げない姿や、イチャイチャするオノロケ姿を見せられるとオイラ的にはちょっと引くんだよね。ジェット・リー、いや、リー・リンチェイに幼稚な姿は似合わないから。

色恋沙汰が悪いとはいわないけど、それも度を過ぎるとだいぶズレが出てくる。でもって、このズレがアクションにまで波及していて、功夫アクションが大幅に減り、代わりに獅子舞のお祭り乱舞状態になってしまった。

そういう意味でも前2作とは毛色の変わった作品といっていいと思う。少なくとも自分が見たかったものとは微妙にズレていたのはたしかだ。

「HERO」や「SPIRIT」へと受け継がれていく平和主義を声高らかに宣言する見応えのある場面もあっただけにちょっと残念。

ただその中で、唯一気を吐いたのが今回初登場の鬼脚で、必死の形相で闘う姿と気迫はフェイフォン以上のものがあり、心に響くものがあった。鬼脚を主人公にした外伝が作られたのもなんか分かる気がしたが、それもこれもフェイフォンが不甲斐ないからでっせ。

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(おまけ)

チャイニーズ・ゴースト・ストーリー(1987年・香港・93分)NHK-BS

 監督:チン・シウトン

 出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ウー・マ、ラム・ウェイ

 内容:中国に古来から伝わる幽霊物語を、現代のSFXを駆使してよみがえらせたホラー・アクション。賞金稼ぎが横行する時代、旅人のツァイサンは寂れた寺を訪れるが、そこは道士や魔物が闘いを繰り広げる奇怪な土地だった。そこで彼は美しい娘スーシンと出会い恋に落ちるが、彼女は人間の生気を吸い取るために吸血鬼に利用されている妖怪だった。ツァイサンは彼女を助けて本来の人間の姿に戻すため、道士の力を借りて、彼女の墓から骨壷を掘り出すが・・・。

評価★★★/60点

アクション、ホラー、恋愛、お色気、コメディ、何でもござれの香港映画の髄を極めたようなものスゴイ作品、、、といえば聞こえはいいが、正直途中からついて行くのをやめたくなる・・・。

風の吹かせ方だけは随一と認めやしょう。。

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チャイニーズ・ゴースト・ストーリー2(1990年・香港・103分)NHK-BS

 監督:チン・シウトン

 出演:レスリー・チャン、ジョイ・ウォン、ミシェル・リー、ジャッキー・チュン

 内容:ツァイサンは、忘れえぬスーシンそっくりの娘チーフォンと出会い惹かれていく。そして無実の罪で投獄されている彼女の父親を救うべく立ち上がるが、その裏には妖怪の存在が蠢いていた・・・。

評価★★★/60点

エロ要素が減退したかわりにハリボテ感が大幅UP、しかも最後はドドンと金ピカの大仏さん、、、シュールという言葉で形容するのもおこがましいほどの中身の無さにもうついてけません。。

まぁ、それが香港映画の香港映画たるゆえんなのだろうけども。

ていうか、もはやゴーストじゃなくなってると思うんだけど・・・。

2008年11月26日 (水)

うたばん狂想曲第23番:サザンの思い出。。

コネタマ参加中: サザンの名曲、あなたの思い出の1曲は?

サザンオールスターズ安全地帯

齢30のオイラが音楽を聴くにあたっての嗜好性の素地・土台・ベースになっているといってもいい2組のバンド。それがサザンと安全地帯。

なぜこの2組なのか。

それは、オイラが生まれて物心ついた頃から小学校卒業くらいまで、1年365日毎日のように聴かされていたことが大きい。

要はウチのオカンがコアな大大大ファンだったんだわさ。んなもんだから、家の中はもとより車の中でもガンガン!!耳にタコができるくらい・・。

例えば風邪引いて寝込んでる時に、オカンはレコード(今から20数年前はまだLPレコードが家にあった)をいつもかけてくれたんだけど、フツーだったらNHKみんなのうたとか、日本昔話とかさ、そういうのをかけるだろうに、なぜかウチのオカンはサザン、安全地帯の他にも山下達郎、ビートルズだとかキャロル・キング、井上陽水なんかをかけるわけですよ(笑)。。

オカン曰く、子供用のレコードは数曲しか入ってないから、いちいち終わるごとにレコード換えるの面倒くさい、、と。おいおい、我が子が布団の中で苦しんでるんだぞ(笑)。

風邪引いたときに子供心に何歌ってんだか分からない歌聴かされることほどツライものはないわさ。井上陽水なんか、都会では自殺する若者が増えている~っつう歌まであるんだから(「傘がない」)・・(笑)。マジに泣いちゃいまっせ

もうホント、サザンなんて雑音としか聞こえなかったからね。あげくの果てに「いとしのエリー」はオッパイの歌だと思ってたし。

“笑ってもっとBabyむじゃきに On my mind♪”のOn my mindのフレーズがどう聴いてもオッパイパイにしか聴こえなくて、なんでオカンはオッパイの歌に聞き惚れているんだろうと不思議に思ったものだ。

そのせいで、今ではオッパイ大好き人間になってしまった、どうもボクです・・。サザンのせいなんだこれは(笑)。。スミマセン・・

でもまさか、それから十数年以上たってサザンのコンサートに乱舞することになろうとは思いもよらなかったけどね。

んで、サザンの曲が雑音に全く聞こえなくなって良さが分かるようになったのが、中2くらいじゃないかな。。しかもある日突然というかんじで。。あれ?サザンってええやんみたいな。

まぁそんなこんなで、子供の頃に聞かされた曲たちは確実にその後の自分に影響を与えてしまい(といっても井上陽水は除外w)、サザンからは昭和歌謡曲の系譜とR&Bの洋楽要素を、安全地帯からはバラード志向を受け継いだのだった。

だからなのかもしれないけど、唯一ハードロックだけは受け付けない体質になっちゃったなぁ。ガンズ・アンド・ローゼスとかキッスとかメタリカとか全くダメで、同じロックでもボン・ジョヴィとかボストンとか耳に馴染みのよいポップ色だったら逆に好きというかんじ。

昭和歌謡の流れでいえば、チャゲ&飛鳥とB’zが全盛だった高校時代に、友達に「最近何のCD買った?」と訊かれて、「山下達郎とか竹内まりやとか」と答えると、露骨にダッサイねお前みたいな顔をされたことがあったな

もちろんチャゲアスもB’zも聴いてたけど、あ、そうなんだ、山下達郎ってダサいんだ、とその時初めてオイラってちょっとハズレてるんだなと思った。でもチャゲアスってバリバリ昭和歌謡ちゃうん?と思ったけども(笑)。。

しかしすぐに、いや、山下達郎を聴かない方が可哀想だと思うようになり、こうなったらクラシックでもなんでもかんでも聴いてやる!と決意したのはよく覚えてる。1つのジャンルを狭く深くではなく、なんでも聴いてみるという浅く広くを目指すようになった瞬間。

様々なジャンルを兼ね備えるレパートリーの広いサザンを子供時分にさんざん聴かされたことは、結局自分にとってはスゴく良かったことだった、と今では感謝しております。

さあ、そこでやっとで本題。サザンの名曲と思い出の一曲。

まず、思い出の1曲は、なんといっても「慕情」です。

学生時代、仙台に住んでた時、金沢にいる遠恋してた彼女んちに電車で行って、その帰りに聴いた曲です。その風景が今でも忘れられない・・。その後別れたからなおさら。おいおい。。

2月だったと思うけど、真冬の北陸日本海を左手に走っていく特急列車の中で、この慕情♪を聴いてみぃ。心象風景を表わすにはドンピシャの曲でっせ(笑)。

イの1番に「慕情♪」だな。

そして、オイラ的名曲ベスト~!!ということで、、順位不同で10曲を、

真夏の果実」「慕情」「チャコの海岸物語

YaYa(あの時代を忘れない)」「OH,GIRL」「鎌倉物語

YOU」「夏をあきらめて」「あなただけを

逢いたくなった時に君はここにいない

な~んか、日本海側に旅行とかドライブで出向いたときの思い出とどうしても結びついちゃうんだよなぁ。サザンといえば太平洋岸の湘南と茅ヶ崎なのに。。

とにかく、あと30曲は軽く挙げられるけど、キリがないので締め。

夢のシネマパラダイス389番シアター:ゲド戦記

Talesfromearthsea 声の出演:岡田准一、手嶌葵、菅原文太、田中裕子、香川照之、風吹ジュン、小林薫

監督:宮崎吾朗

(2006年・東宝・115分)2006/08/21・MOVIX仙台

内容:多島海世界アースシー。人間世界とは別な海域に棲む竜が現れ共食いを始め、作物は枯れていき、世界の均衡が崩れつつあった。大賢人と呼ばれる偉大な魔法使いハイタカ(ゲド)は、その災いをもたらす源を探る旅の途中で、父王を殺した異国の王子アレンと出会う。心に闇を抱えるアレンを伴ない旅を続けるハイタカは、ホート・タウンという都市国家にたどり着く。そして、街外れにある幼なじみのテナーの家に身を寄せ、そこで親に捨てられた少女テルーに出会うのだが・・・。

評価★★/40点

作り手の説明不足と作り手の自己満足が結びついている映画ほどタチの悪いものはないが、この映画はその中でも最悪の部類に入る独りよがり映画。

トンビが鷹を生むという例えはあるが、鷹がトンビを生むというのもまた真だったんだね(笑)。あるいは、バカと天才は紙一重てか。

しっかし、絵が宮崎駿の絵柄そのまんまというのがまた失望を大きくするんだよねぇ。

ジブリアニメという看板の中で見られるのは当然としても、宮崎駿の息子が監督ということで、宮崎駿との比較というさらなる高みのレベルと期待感で見てしまう。さらに絵柄が同じだから、宮崎駿の息子が“宮崎アニメ”を作ったという認識の中で見てしまうんだよね。

つまり、はたして宮崎アニメは2代目に継承されていくのかという視点で見てしまうのだけど、、、今回の結果やはり宮崎アニメはあくまで宮崎駿の作ったアニメであり、宮崎駿という絶対的な個なくしては成り立たないものだということが如実にあらわになってしまったといえよう。

同じ絵柄と同じ文化・文脈で長く継承されてきたディズニーアニメやピクサーアニメとは土台からして違うといえるのかもしれない。

そもそもディズニーアニメやピクサーアニメというくくりの中で比べられるべきはジブリアニメであるはずで、がしかしあまりにも宮崎アニメというブランドが突出し確立されてしまったがゆえの弊害として、育つべき生え抜きのジブリアニメの裾野を広げることがついぞできないままでいるのは、ジブリの将来にとっては危うい以外の何ものでもないだろう。

黒澤明の映画、いわゆるクロサワ映画と全く同じものを作ることなどできないように、宮崎アニメもまたしかりなのはよくよく考えてみれば明らかなんだけどね。

第2のジブリアニメはありうるとしても、第2の宮崎アニメというのは作りえないのだということは観る方としても肝に銘じておかなければならないのだと思うし、政治の世界と同様、世襲というのはロクでもないってことなんだね(笑)。

ジブリという精神風土を共有した中で新たな才能や作品を生み出していき、それがジブリアニメという世界観とブランドになっていかなければならないはずなのだが、絶対専制君主が君臨するジブリ帝国はやはり一代限りで店じまいにならざるをえないのか。

唯一ジブリを継承していくと思われた「耳をすませば」の近藤喜文ももうすでにこの世にいないし・・・。

と、そんな悲観的なことを「ゲド戦記」を観て思ってしまったというか確信してしまったというべきか。。

作り手の説明不足と作り手の自己満足が結びついてしまった独りよがりな映画という意味では、宮崎駿の「紅の豚」以後の作品は全部そうだと思うんだけど(笑)、それでも“宮崎アニメ”という世界観の中で見せきってしまう、まるでブラックホールのごとく観る者を宮崎ワールドに吸い寄せてしまう圧倒的な魔力と魅力が宮崎駿にはある。まさに天才。

しかし、そんな魔力を持たない者が独りよがりな映画のみをマネして作っちゃうというのは単なるバカとしか言いようがないわけで、血のつながりを当てにしたのだとしたらこれはもうホントに救いようがない。

今回の「ゲド戦記」を観て、いの1番に出てくる感想は、「よく分からない」という一語につきると思うのだけど、なぜ畑違いの宮崎吾朗を監督に抜擢したのかというそもそものところからして「よく分からない」わけで、しかもジブリの看板を背負ったこんな大作で。。宮崎駿の息子という血統書のみを信じて期待感を抱いてしまったオイラも単なるバカとしか言いようがないけどさ(笑)。

しかし、ホントよく分からない、内容が飲み込めない映画だったな。

まるでホートタウン西3丁目の町内会の一角で繰り広げられているかのごとく作品世界が広がっていかないのも致命的だし、世界観や登場人物の設定・背景に対する説明がほとんどなされていない中で、登場人物のごもっともな御託をストレートにつらつらと並べ立てるだけで物語を描写していってしまう底の浅さも致命的。

現代の冷めたキレやすい子供たちの投影か、はたまた宮崎吾朗自身の投影なのかとも感じてしまうアレンの父親殺しとはいったい何だったのか・・・。アレンが抱える決して癒されない悲しみとは、そして「命を大切にしないヤツなんか嫌いだ!」とだけ唐突に吐き捨てるテルーの抱える決して癒されない悲しみとは・・・。

「クモ、再び過ちを犯すつもりか」とだけ説明されたハイタカとクモの因縁の過去・・・。「アチュアンの墓所の中からハイタカが光の中に連れ出してくれた」とボソッと漏らすテナーとハイタカの背景・・・。なぜハイタカはアレンに固執し、気にかけるのか・・・。

それらすべてに対する説明も描写もほとんどない・・・。

ゆえに作品世界を支えるべき背景がものの見事に抜き取られているので、深みも奥行きもあったもんじゃない。

その中で、永遠の命だとか世界の均衡が崩れている原因を探るための旅だとか大仰に風呂敷を広げられても、てんで実感がわかないわけで・・・。あげくのはてにクモの作画が媒図かずお、はたまた諸星大二郎に変容していくし。

あまりにも本作の世界観や内容が分かりづらかったので、DVDで出ているアメリカで2004年に製作された実写版TVムービー「ゲド/戦いのはじまり」を速攻で借りてきて見ちまったじゃないか。。全6巻あるゲド戦記の1・2巻を基にしていて、アニメの方は第3巻が主ということだから知識を深めるにはいいかなと。

んで見てみたらなるほど、アチュアンの墓所で巫女の一人として邪悪な“名無き者”を祈りで封印しているテナーと、割れた平和の腕環を1つにするべく予言に導かれてアチュアンの墓所へ向かう魔法使いハイタカの物語、そしてアチュアンの墓所の封印を解き放ち永遠の命を得ようとするカルガド王との対決が初心者にも分かりやすく噛み砕いて描かれている。

全体的な印象としては、ロード・オブ・ザ・リングとハリポタを足して2で割ったようなかんじだけど、なかなか楽しめるファンタジーものに仕上がっていたと思う。とはいえ、原作者のル・グウィンに無断で作ったらしく、さらに内容に対しても酷評してるらしいけど。

でも、宮崎吾朗のよく分からない作品世界の背景を知るにはもってこいの作品ではないだろうか。

ただ、原作はどうか知らないけど、影(ゲベス)の解釈というか設定が両者では異なっていて、実写版の方は心の闇として描かれていて、一方今回の映画の方は心の闇に喰われたアレンの身体から心の光が分離してそれが彷徨う影になった、すなわち心の光として描かれている。

この違いは、コミック版ナウシカでナウシカが「命は光だ。」という言葉を否定して、「命は闇の中にまたたく光だ。全ては闇から生まれ闇に帰る。」という言葉とつながっている気もしたり、闇に支配された恐ろしく暗い主人公が光を取り戻すという構図は現代の若者や社会に対する反映や主張なのかなとも思ったり。

また、クモの顛末なんかも同じくナウシカに出てくる不老不死に固執する皇弟の姿を連想してしまった。

まぁとにかくあれだな、もうちょっと整理してじっくり煮込んでもう1回出直してきなさいとは言いたいわな。

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(おまけ)

エラゴン/遺志を継ぐ者(2006年・アメリカ・104分)WOWOW

 監督:シュテフェン・ファンマイアー

 出演:エド・スペリーアス、ジェレミー・アイアンズ、シエンナ・ギロリー、ロバート・カーライル、ジョン・マルコヴィッチ

 内容:アラゲイシア帝国は、かつてドラゴンとそれを乗りこなすドラゴンライダーによって平和に統治されていた。が、ひとりのドラゴンライダー、ガルバトリックスの裏切りによって帝国は暗黒の時代を迎えていた。そんなある日、辺境の村で暮らしていた少年エラゴンは、森の中で青い球体を見つける。しかしそれは、ドラゴンの卵で、やがて中からメスのドラゴンが誕生する・・・。

評価★★/40点

“この映画を見て良かったことはたった1つ。ゲド戦記の実写化は可能だということ・・・それだけ。”

ドラゴンを飛ばして、剣を持たせて、青い目を光らせればファンタジーになると思ったら大間違いで、しっかりと世界観やキャラクターを描き込んでくれないとただのお遊戯にしか見えなくなる。

この映画は、そこらへんのことを全く認識していない人たちが作ったとしか思えないし、しかも大ベストセラーの原作ものをここまでスカスカに作ってしまうというのも普通ではありえない。原作に対する愛情というのが微塵も感じられない。

ファンタジーブームに便乗して金を稼ごうという映画会社の浅はかな考えにはホトホト呆れるわな。20世紀フォックス、、、メジャー会社のくせして。。

しかもこれ3部作ですか!?ムリだろもう・・・。

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ダンジョン&ドラゴン(2000年・アメリカ・107分)WOWOW

 監督:コートニー・ソロモン

 出演:ジェレミー・アイアンズ、ソーラ・バーチ、エドワード・ジューズベリー、ブルース・ペイン

 内容:魔法を操る貴族“メイジ”が支配するイズメール王国で、魔法を使うことのできない平民達は奴隷のように扱われていた。ドラゴンを自由に扱える杖を持つ若き女王は、常々そのことに心を痛めていて、改革に着手しようとするが、宰相プロフィオンの魔の手が伸びていた・・・。人気RPGゲームを原作にしたアクション・ファンタジー。

評価★☆/35点

いろいろな要素のゴッタ煮という印象が強い。魅力的な引き出しをいくつも持っているのだが、それらを全て小出しにしてきた感が・・・。

そして結果としてそれが全体として魅力的になるのかというと全くそうではないという悪い意味での好例。

2008年11月25日 (火)

夢のシネマパラダイス350番シアター:善き人のためのソナタ

10180 出演:ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ、ウルリッヒ・トゥクール

監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

(2006年・ドイツ・138分)2007/06/18・盛岡フォーラム

評価★★★☆/70点

内容:1984年。東ドイツでは、反国家的・反社会主義的な動きを許さないため、国民の全てを監視する体制を作り上げた。そんなある日、国家保安省(シュタージ)のエリート局員ヴィースラー大尉は、世界的に高名な劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視し、反体制の証拠をつかむよう命じられる。さっそくドライマンのアパートに盗聴器を仕掛け、徹底した監視を開始するヴィースラー。しかし、芸術を語り合い、深く愛し合う彼らの世界にヴィースラーは知らず知らずのうちに共鳴していくのだった・・・。

“邦題からイメージしていたのとはだいぶ異なる印象”

わずか20年ちょい前の話ということにまずは驚くが、いやちょっと待てよ。盗聴先進国アメリカに比べたらこんなのお子ちゃまレベルかもしれないな。

というのはさておき、東ドイツというとオイラがイメージするのは浦沢直樹のマンガ。例えば「MONSTER」に出てくる、子供の人格を改造する悪魔の実験場511キンダーハイムや、「MASTERキートン」に出てくる東ドイツの抵抗運動に身を投じた老貴婦人の「この国は間違った方向に向かっている。」という言葉などが思い出され、統制国家の恐怖政治という負のイメージを抱いてしまう。

その中枢ともいうべき機関であり、反体制分子を監視し粛清するシュタージの忠実な執行人ヴィースラーが主人公の今回の映画では、抱いたイメージに違わぬ陰鬱な重い雰囲気に支配された東ドイツ社会が描写されている。

そしてそれを象徴するような冷徹なキャラクター、ヴィースラーもまんま浦沢直樹のマンガに登場してくるようなかんじ。

その中で例えばドライマンとクリスタの激しい愛の交わりをヘッドホンで聴いた後、自宅に小デブwの娼婦を呼んで無味乾燥な肉欲にふけるキモさなど、ドライマンとは対照的な無機質な人間性が浮き彫りになっていたのも印象的だったが、本人の意志とは関係なく人間一個人として生きる歓びを次第に取り戻していってしまうという、まるで人間本来持っている本能のようなものが目覚めてしまうヴィースラーの変調が描かれていくのは面白かった。

とはいえ、その変調をきたす要因となった肝心の曲“善き人のためのソナタ♪”がかなり抽象的な旋律だったのはちょっと説得力に欠けたかなと。

しかしなんといっても、それを補ってあまりある説得力をもたらし、映画たらしめたといえる価値ある存在感を出したのがドライマンの恋人クリスタだろう。

はっきりいって「マレーナ」(2000)のモニカ・ベルッチよりもエロエロ感漂うフェロモンをスクリーン内にまき散らしていて、それはもう後ろからむしゃぶりつきたいようなかんじだったんだけど、そりゃ鉄の精神を持ったヴィースラーも折れるわなぁ(笑)。

なんか“善き人のためのソナタ”というよりは“クリスタの24Hナマ映像ネット無料公開”に矢も盾もたまらなくなる孤独な中年親父といったところが本質なのではなかろうか。それくらいクリスタという女性の存在は映画にとってもそしてヴィースラーにとっても大きかった。

原題はそのものずばり「他人の生活」だしね、他人の生活をのぞく快楽や欲望が嫉妬や同情・共感というような人間的感情を取り戻す入口になったとするならば、原題の方がこの映画を言い得て妙だろう。邦題からすると、なんかノスタルジックなかんじをイメージしてたのだけど。

でも、芸術や自由な表現をも抹消・抹殺しようとしたシュタージが、20年後に映画という芸術作品になり、その中で語られるのだから、「グッバイ、レーニン!」(2003)なんかもそうだけど、やはり映画の力、芸術の力というのはホントにスゴイんだなというのは実感したね。

よーし、これからもいろいろな映画を観ていくぞーっ、、、てこんなオチでええのんか・・・。

2008年11月21日 (金)

夢のシネマパラダイス100番シアター:オーシャンズシリーズ

オーシャンズ11(2001年・アメリカ・117分)2002/02/20・MOVIX仙台

 監督:スティーブン・ソダーバーグ

 出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、アンディ・ガルシア

 内容:出所した泥棒のオーシャンは、ホテルから1億6千万ドルの現金を盗むことを計画。彼のもとにスリの名人や爆弾の専門家ら11人のプロたちが集結する。フランク・シナトラ主演の「オーシャンと11人の仲間」のリメイク作。

評価★★★☆/70点

一陣の風が爽やかに吹き抜けていくと言えば聞こえはいいが、実際は右から左へ受け流してしまう軽さ、と言った方が的を射ていると思う。

まぁ、それでもソダーバーグの手慣れた演出と相まって非常に見やすく、ちょうど腹八分というかんじかな。

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オーシャンズ12

00000595912l 出演:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、マット・デイモン、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ヴァンサン・カッセル

監督:スティーブン・ソダーバーグ

(2004年・アメリカ・125分)DVD

評価★★★/60点

内容:3年前、“オーシャンズ”に大金を奪われたカジノ王ベネディクトが復讐に乗り出す。オーシャンらは利息を含めた1億9千万ドルを返済するため、アムステルダムに向かい再び大きなヤマに挑む!

“ハリウッド版ルパン3世の配役オーディションに10数人の有名役者たちが参戦!2時間に渡る熾烈な戦いをとくとご覧あれ”

としか見れない・・・。

めまぐるしく絡まってもつれた糸を鮮やかな手さばきで解きほぐしてくれるソダーバーグも、この映画ではやっつけ仕事に徹してしまっているかんじ。

めまぐるしいまま終わってしまった。。

ちなみに、オーディションの中間審査によりますと、峰不二子はキャサリン・ゼタ、次元はブルース・ウィリス、銭形警部はジョージ・クルーニー、石川五右衛門はヴァンサン・カッセル、肝心のルパンはドン・チードルに絞られた模様です・・・。

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オーシャンズ13

Bfgwnnryid 出演:ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、ドン・チードル、エレン・バーキン、アル・パチーノ、ヴァンサン・カッセル

監督:スティーブン・ソダーバーグ

(2007年・アメリカ・122分)2007/08/20・盛岡フォーラム

評価★★★☆/70点

内容:オーシャンズの古参メンバーであるルーベンは、バンク(アル・パチーノ)とラスベガスに建つ巨大ホテルの共同経営事業に乗り出すはずだったが、バンクに裏切られ、そのショックで心筋梗塞に倒れ危篤状態になってしまう。その報せを受けたオーシャンたちはバンクに復讐を誓う。彼らの戦略は、ホテルの最高格付け“5つダイヤ賞”獲得を狙うバンクのホテルの評判をズタズタにし、ホテルのカジノを大損させ破綻させることだった。。

“媚薬ギルロイ、オイラに下さい!!!”

熟しきったキャメロン・ディアス、、もといエレン・バーキンを一瞬で虜にしてしまったギルロイ、、、のどから手が出るほど欲しいです。。

、、という印象しか残らないんだけど、毎回言ってるけど、よくぞまぁこれだけのメンツを揃えておきながら、これだけ軽っりぃ映画を作れるもんだと逆に感心してしまう。のどごしスッキリどころの軽さじゃないもんな(笑)。

黒澤明がのたまうところの、カツ丼の上にエビ天乗せてハンバーグ乗せてカレーをぶっかけたような胸焼け起こしそうな映画の方が好きなオイラとしては物足りなさも感じてしまうのだけど、一方ではオーシャンズシリーズって“旨味”を提供するというよりは、“お上品な場”を提供する作品といえるのもたしかで、その点ではかなりセンスの良い上質な場の雰囲気を醸成できていたと思う。

導入部をわずか数分で終わらせ、何がなんだか分からないうちにミッションの真っ只中に突入している不親切さはかなり気になるところだし、豪壮ホテルのカジノを舞台にした復讐劇なのに全くもってハラハラドキドキするところがないのもイマイチだし、、、なのだけど、全体としてみればこの軽いノリと人が誰も死なない品の良さが嫌いになれないんだよね。

しかも、ハリウッドの4番バッターをズラリと並べた中で、怪気炎をあげるアル・パチーノを向こうにまわして、巨人打線のようなホームランをドッカンドッカン打ってくるのではなくて、セーフティバントや流し打ちといった小技をサラリとこなしてしまう巧さには見ているこちらも逆に気持ちが良くなってくる。

なんかパーティとかで誰も見てないんだけどBGMがわりにこの映画流すというのも有りみたいな、そんな映画なのかも。

アル・パチーノとアンディ・ガルシアのゴッドファーザーつながりも見られてよかったし。

なんか、、、14も見たくなってきたぞ。。

しかし、、一昔前はSONYだとか日本企業名が出てくるのが多かったけど、いまや韓国企業が会話の中に出てくるようになったのねぇ。サムスンってなにげにスゴイのか。

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(以下、個人的オーシャンズシリーズ公認作品ww)

地下室のメロディ(1963年・フランス・121分)NHK-BS

 監督:アンリ・ヴェルヌイユ

 出演:アラン・ドロン、ジャン・ギャバン、ヴィヴィアンヌ・ロマンス

 内容:ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの初顔合わせによるギャング映画。5年の刑期を終えて出所した老ギャングのシャルルは、恋女房のジネットが止めるのも聞かずに、刑務所で知り合った青年フランシスと組んでカジノの現金を奪うという新しい計画に着手した。2人は見事強奪に成功し、10億フランの札束を手にしたが、意外な成り行きから犯行が露呈してしまう・・・。

評価★★★★/80点

オーシャンズ2がここにあったどーー

というのはさておくとしても、この映画おもろかった。

このての映画でキーになるプロセスをまずは楽しめるのが高評価の前提。

さらに、ものの見事な破綻の妙によりそれまでのプロセスがパーになるのではなく、ますますもって活きてくるどころか、結果的に皮肉にもいっぱしのフィルム・ノワールにまで高めてしまっているのがなんとも心憎い一品。

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スコア(2001年・アメリカ・124分)WOWOW

 監督:フランク・オズ

 出演:ロバート・デ・ニーロ、エドワード・ノートン、マーロン・ブランド、アンジェラ・バセット

 内容:凄腕の泥棒ニックに、盗難ブローカーのマックスが不可能としか思えない盗み話を持ちかけてきた。引退を考えていたニックだったが、これが最後と思い引き受ける。若いジャックと協力し準備を進めるニックだったが・・・。

評価★★★/60点

オーシャンズ11,12,13ときて、、、オーシャンズ3もあったどー

しかし、、ハリウッドのキレたら凄い三羽がらすがスクリーン上で一同に会して繰り広げるナァナァ祭り。って、意味ねえじゃん!

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ホット・ロック(1972年・アメリカ・105分)NHK-BS

 監督:ピーター・イエーツ

 出演:ロバート・レッドフォード、ジョージ・シーガル、ゼロ・モステル、モーゼス・ガン

 内容:盗みで暮らしを立ててきたジョンは、刑期を終えて出所した途端、妹の夫で金庫破りを生業とするケルプから、博物館に展示される巨大ダイヤを盗み出す仕事を持ちかけられる。ジョンは仲間を集め、博物館にまんまと忍び込み、ダイヤを盗み出すことに成功するのだが・・・。宝石泥棒の男たちの姿をユーモアを交えて描いたサスペンス・アクション。

評価★★★★/75点

“ムショや警察署から脱走する話は五万とあるが、その逆はそうはお目にかかれないトンだシロモノ。”

ほーら、、オーシャンズ4を獲ったどー

よーし、こうなったらオーシャンズ1~10まで見つけてやる(笑)。まず4は確保。

でも、お金かけなくても、こういう粋な映画が作れた時代なんだね、70年代って。クインシー・ジョーンズの音楽もグッジョブですた。

それにしても、1番印象的だったのは、ヘリでNYを飛び回るシーンで在りし日の世界貿易センタービルを下からなめるように空撮したシーン。あんなに接近して撮られた映像は初めて見た気がする。

9.11であんなスペクタクルな超高層ビルが一気に倒壊しちゃったと考えると、ホント背筋が凍りついちゃうな・・・。

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スニーカーズ(1992年・アメリカ・126分)CS

 監督・脚本:フィル・アルデン・ロビンソン

 出演:ロバート・レッドフォード、ダン・エイクロイド、リバー・フェニックス、シドニー・ポワチエ

 内容:ビルの警備システムを調査するハイテク集団“スニーカーズ”。彼らは政府の依頼で暗号解読器“ブラック・ボックス”を盗み出すが、何者かに奪われてしまい・・・。

評価★★★/65点

オーシャンズ5を見っけたどーーッ

この映画ってストーリー展開の筋立てよりもキャラクターで見せていく映画だと思うんだけど、レッドフォードに合わせたスマートさに終始しちゃっていまいちハジけない。ダンディーでかっこ良すぎなんだよね(笑)。

ルパン3世のようなおノロケキャラの方が、とオイラなんかは思っちゃうんだけど。そうだなぁ、あの当時だと例えばビリー・クリスタルとかかなぁ。

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黄金を抱いて翔べ

Poster_3出演:妻夫木聡、浅野忠信、桐谷健太、溝端淳平、チャンミン、青木崇高、中村ゆり、田口トモロヲ、鶴見辰吾、西田敏行

監督:井筒和幸

(2012年・松竹・129分)WOWOW

内容:過激派や犯罪者相手に調達屋をしている幸田は、一攫千金を狙うトラック運転手の北川から大阪の大手銀行本店地下にある240億円の金塊強奪計画を持ちかけられ、メンバー集めを始める。そして、北朝鮮の元工作員、銀行担当のシステムエンジニア、エレベーター会社の整備技師、そしてギャンブル依存症の北川の弟と、総勢6名のチームが結成され、いよいよ計画が実行に移されるが・・・。

評価★★☆/50点

ついにオーシャンズ6獲ったどーー♪♪

が、、浪速のエンタメキング・井筒監督に魅力的な豪華キャスト陣にロマンティシズムあふれる題名にと、そこそこ期待して見たら全然翔べなかったというオチw

原作は読んだことないのでよく分からないけど、ウンザリするほど陰気かつ辛気臭い映画だとは思いもよらなかった・・。

そもそも骨太でビターなノワールは井筒監督の領分ではないだろっていう・・

しかも、犯罪計画の下ごしらえに時間かけるのはいいとしても、北朝鮮やら左翼やら暴力団やら何やら五色だんご状態で肝心の銀行強盗がおざなりになってしまった感が否めず。

こんなに爽快感のない大雑把な銀行強盗映画見たのは初めてかも・・

やっぱこれって井筒流じゃなくて、阪本順治向きってかんじなんだよねぇ。。

2008年11月19日 (水)

夢のシネマパラダイス243番シアター:神様いったい、何様のつもりですか!?

達磨よ、遊ぼう!

Darumaya_s 出演:パク・シニャン、チョン・ジニョン、イ・ウォンジョン、イ・ムンシク

監督:パク・チョルグァン

(2001年・韓国・95分)WOWOW

内容:ある日、敵対組織に奇襲を受けたヤクザのジェギュたちは命からがら山奥の寺に逃げ込む。しかし、突然の闖入者たちに日々の修行を邪魔された僧侶たちは、チョンミョンをリーダーに奇想天外な対決を挑んでくるのだった。そして、その決戦に負けたジェギュたちは、僧たちと修行の日々を送るハメに・・・。都会派ヤクザと田舎の寺の修行僧が、対立しながらも次第に心通わせていく姿を描いたヒューマンコメディ。

評価★★★★/75点

ヤクザvs僧侶という設定自体マンガっぽくて好きなんだけど、それを何の奇もてらわずにマンガのようなノリでフツーに描けちゃうというのはある意味スゴイ。

やっぱそういう点でも韓国映画の裾野の広さを感じちゃうし、日本映画にはないどちらかといえばハリウッド映画のテイストとメンタリティに近いものを備えている韓国映画に羨ましささえ感じてしまった。

ま、どうってことないコメディ映画なんだけど、でもこのどうってことないコメディ映画でちゃんと笑えるやつって、邦画では意外にないんだよね。

それにしてもヤクザと僧侶に接点をもたせるのが海兵隊つながりというのが韓国らしいね。日本だと何だろ。イジメっ子とイジメられっ子かな(笑)。

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達磨よ、ソウルに行こう!(2004年・韓国・95分)WOWOW

 監督:ユク・サンヒョ

 出演:シン・ヒョンジュン、ヤン・ジヌ、イ・ムンシク、チョン・ジニョン

 内容:僧侶のチョンミョンは黙言修行中のテボンらとソウルの無心寺を訪れるが、そこの住職は多額の借金を苦に寺を去っており、一人の僧と幼い小坊主だけが残っているだけだった。チョンミョンらはボムシク率いる地上げ屋たちから無心寺を守り再興するために寺に残ることに。そんなときテボンの買った宝くじが300億ウォンに当選!これで土地の権利を買い戻せると意気込むが、なんとそのアタリくじが入った賽銭箱はボムシク一党が奪い去っていて・・・。

評価★★★/65点

今回は僧侶軍団の完全アウェイ戦ということで、ソウルでのガチンコバトルはカラオケやフラフープなど大いに笑えるネタが満載、、、なのだが、大都会にやって来て完全に世俗化してしまった僧侶と、もともとから金銭欲にまみれているヤクザとの対比が一緒くたになっちゃってるという点で前作よりちょっと落ちるかな、と。

ま、最近のお坊さんは金にうるさいからな(笑)。

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憑神<つきがみ>

Idgvzpiqk 出演:妻夫木聡、夏木マリ、佐々木蔵之介、鈴木砂羽、赤井英和、香川照之、西田敏行、江口洋介

監督:降旗康男

(2007年・東映・107分)WOWOW

内容:時は幕末。代々将軍家の影武者を務めてきた由緒ある家柄の次男・別所彦四郎は、婿養子に行ったもののすぐに離縁され、兄夫婦のもとで肩身の狭い日々を送っていた。そんな彼はある日、軍艦頭取に出世した旧友の榎本武揚と再会する。聞けば、向島の三巡稲荷に参れば出世も思いのままだという。そこでさっそく三巡稲荷に向かった彦四朗は草原でボロッちい稲荷を見つけてお祈りする。が、そこは災いの神を呼び寄せる稲荷だった・・・。

評価★★★★/75点

クドカンあたりが関わってたらかなり毛並みの異なるコメディ映画になってたと思うけど、最近そういうのに食傷気味だったオイラにとっては(笑)、降旗康男&木村大作という奇をてらわない堅実路線で作られた今回の映画は、なにか古典落語を聞いているようで、逆に新鮮で面白かった。

なんでこんなので笑ってるんだオイラ、、、と自分にツッコミ入れつつ結局最後まで飽きずに見れちゃったからな。。祟り神に同情され、あげくの果てにホレられちゃう妻夫木もこういう役が合ってると思う。

時代劇とコミカルさのバランスがうまくとれた職人監督らしいお手並みでございました。

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ライアーライアー(1997年・アメリカ・87分)仙台セントラル劇場

 監督・トム・シャドヤック

 出演:ジム・キャリー、モーラ・タイニー、ジャスティン・クーパー

 内容:ウソのうまい弁護士が、一人息子の誕生日をすっぽかしてしまう。息子の願いでウソのつけない口になってしまった弁護士は人生最大の苦境に・・・。

評価★★★★★/100点

“ジム・キャリーの顔には保険をいくらかけても足りないくらいだ!”

映画館で周りを顧みず腹抱えて笑った初めての映画かもしれない。素晴らしい映画体験

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あなたに降る夢(1994年・アメリカ・101分)NHK-BS

 監督:アンドリュー・バーグマン

 出演:ニコラス・ケイジ、ブリジット・フォンダ、ロージー・ペレス

 内容:心優しき警官が、ウエイトレスへのチップを切らし、宝くじが当たったら半分払うと約束する。そして本当に大当たりした彼は、彼女に200万ドルを渡すのだが・・・。

評価★★★★/75点

えーーーっ?ウソっ?えっ?えっ?実話なのこれ?

どんでん返し食らった気分やわ。

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デッドゾーン

E38387e38383e38389e382bee383bce383b 出演:クリストファー・ウォーケン、ブルック・アダムス、マーティン・シーン

監督:デイヴィッド・クローネンバーグ

(1983年・アメリカ・103分)NHK-BS

内容:高校教師のジョニーは、交通事故で意識不明になり、5年後にようやく意識を取り戻した。ところが、彼は突然発作に襲われ、手を触れた相手の未来を予知することができるようになってしまう。不思議な超能力を身につけたジョニーは、大統領候補スティルソンと握手をした際、彼が近い将来に核戦争を起こすことを見抜いてしまい・・・。原作はスティーブン・キングの恐怖小説。

評価★★★★/80点

見えてしまう他人の運命にスポットを当てるのではなく、見えてしまうという苦しみをメインに描いているのが怖さに幅と深みをもたせ、映画に奥行きをもたらしている。最近このての映画は、この点が完全に死角になってしまっているのが残念でならない。

2008年11月18日 (火)

ウチのカレーの隠し味はこれだッ!!

コネタマ参加中: お宅の“カレーの隠し味”、教えて!

それはズバリ、、

★唐辛子

★バター

★ニンニク

★砂糖

これをカレーの隠し味四天王と謂ふ!

1番最初に唐辛子1、2本をニンニクと炒めて、それを下地にして玉ネギなんかを炒めていくの。

んで、最終工程で市販のカレールウを溶かすときに、バターと砂糖を入れるわけよ。

まぁ、、ていうか、これ某国営放送の「ためしてガッテン」で2年前くらいにやってたんだけど(笑)。

でも、カレーってもともと辛いのに、さらにそこに唐辛子を入れるという発想は全くなかったから、完全に目が点だったのだけど、これがイイんだ

お店に出してもいいくらいイイんだ。甘辛いという表現がいいのか、いや、辛いんだけど、甘いのよ(笑)。ハマッちゃいますた。

ウチではガッテンカレーと名付けております。試してみてください。

2008年11月14日 (金)

夢のシネマパラダイス559番シアター:ピンクパンサー

ピンクの豹

Pinkpanther2 出演:デイヴィッド・ニーヴン、クラウディア・カルディナーレ、ピーター・セラーズ

監督・脚本:ブレイク・エドワーズ

(1963年・アメリカ・125分)NHK-BS

内容:世界中の宝石泥棒が狙う天下の貴宝「ピンクの豹」を所有するプリンセスの周りには、上流階級の人々がどっと集まっていた。その中に紛れ込んだ宝石泥棒を追っているフランス警察のクルーゾーは、てんやわんやの騒動を巻き起こすのだった。。ドジな迷警部クルーゾーの活躍を描くコメディ“ピンク・パンサー”シリーズの第1作。当初は怪盗役のD・ニーヴンが主役で、クルーゾー警部は脇役にすぎなかったが、あまりの評判から2作目以降はクルーゾーが主役となった。

評価★★★/60点

冒頭で大風呂敷広げておいて、話のほとんどが寝室ってのもなんだかなぁ・・・。

途中までD・ニーヴンとP・セラーズの区別がつかなかったばかりか、出てくる女性みんなネコ目だなぁくらいしか気にも留めなかったオイラに、この映画を語る資格はございません・・。

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暗闇でドッキリ(1964年・アメリカ・108分)NHK-BS

 監督・脚本:ブレイク・エドワーズ

 出演:ピーター・セラーズ、エルケ・ソマー、ジョージ・サンダース、ハーバート・ロム

 内容:ピンク・パンサーシリーズの第2作。パリの大邸宅やヌーディスト・キャンプで次々と起こる連続殺人事件の捜査にあたったクルーゾー警部の前に、ひとりの容疑者が浮かび上がった。しかし、容疑者となった女性はかなりの美人で、署長の迷惑顔をよそにクルーゾー警部は真犯人は別にいると信じ込んでしまう・・・。

評価★★/40点

何にドッキリってアータ、笑えないことにドッキリだよ。。。

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ピンク・パンサー2(1975年・イギリス・113分)NHK-BS

 監督・脚本:ブレイク・エドワーズ

 出演:ピーター・セラーズ、クリストファー・プラマー、カトリーヌ・シェル、ハーバート・ロム

 内容:中近東ルガシュ国の博物館から世界最大のダイヤ“ピンク・パンサー”が盗まれる事件が発生。現場に残された手袋から、犯人は怪盗ファントムであることが判明した。ルガシュ警察はファントムとゆかりの深いクルーゾー警部の出馬を要請するが・・・。

評価★★/40点

コメディで笑えず冷静になってマジマジと見てることほど苦しいものはない。。全編アニメにして下さいませんか・・・。

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ピンクパンサー

Pinkpanthermovieposter_000 出演:スティーブ・マーティン、ケヴィン・クライン、ビヨンセ・ノウルズ、ジャン・レノ

監督:ショーン・レヴィ

(2006年・アメリカ・93分)WOWOW

評価★★★★/75点

内容:サッカーのフランス代表チームを率いるイヴ・グルアン監督が、中国代表戦に勝利した直後、何者かに殺される事件が起きる。しかもその混乱の中、彼が身につけていたダイヤの指輪「ピンクパンサー」が消えてしまう。捜査を指揮するドレイフェス警視は、ドジなクルーゾー警部をわざと捜査に抜擢して、クルーゾーの失敗をよそに手柄を独り占めしてやろうと画策するのだが・・・。

“オイラも「hamburger」って言えません・・・。”

学生時代、アメリカから来た留学生の友達とハリウッド版ゴジラを観に行こうという話になったのだけど、その時に日本語発音の“ゴジラ”が全然相手に伝わらなくてビックリしたことをふと思い出した。あっちの発音だと“ガッッズィラ”みたいなよく分からない発音なんだよね。

ハンバーガーの発音に苦しむクルーゾー警部の苦しみはよく理解できたぞ(笑)。

でもこの映画、ピーター・セラーズの本家はオイラ的にはそんな笑えなくて好きじゃないから、今回のリメイク作もそんな期待しないで見てしまったのだけど、、、フツーに笑えちゃいますた。面白かった。

なんてこたぁないおバカコメディなんだけど、クルーゾー=スティーブ・マーティンのフレンチ訛りの英語と表情ひとつ崩さない天然ボケっぷりに笑いが止まらない。彼の一挙手一投足から目が離せなかった。

なんだろ、晩年のチャップリンを彷彿とさせるオーラを醸し出していて、こんなスゴイ人だったっけスティーブ・マーティンって、と久しぶりに目にして驚いたな。久々のハマリ役じゃないだろうか。

そして、そのボケを受けるジャン・レノの生真面目っぷりもツボにはまっていてヨロシイ。

地球儀が階段を転げ落ちていくときの何も詰まってなさそうな音とか、新ジェームズ・ボンド候補に挙がっていたクライヴ・オーウェンが006役で出てきたり、細かいところでも妙にオカシくなっちゃう。

これは拾いもんだわ。続編、、イッちゃって!

夢のシネマパラダイス558番シアター:韓流、運命の出会い

デイジー

En_mov_ta17_003 出演:チョン・ジヒョン、チョン・ウソン、イ・ソンジェ、チョン・ホジン

監督:アンドリュー・ラウ

(2006年・韓国・125分)2006/06/16・MOVIX仙台

評価★★★★/80点

内容:オランダのアムステルダムで暮らす画家の卵、へヨンのもとにいつも届けられる差出人不明のデイジーの花。見知らぬ贈り主を白馬の王子様だと信じ込むへヨンだったが、ある日、広場で肖像画を描く彼女の前にジョンウという男が客として寄って来て、一目見た瞬間に、彼こそ探し続けてきた運命の相手だと確信する。しかし、実はジョンウはインターポールの刑事で、プロの殺し屋パクウィを追っていた。そして、パクウィこそ本当の贈り主だったのだが・・・。

“黒いチューリップがフツーに届けられてきそうな「猟奇的な彼女」だったチョン・ジヒョンが、清楚で可憐な花に生まれ変わったというインパクトだけで125分付き合う価値は十二分にある。”

舞台はオランダ、監督は「インファナル・アフェア」シリーズでお馴染みの香港のアンドリュー・ラウ、キャストは韓国、音楽は日本の梅林茂ということで、韓国映画の恋愛ものにありがちなコテコテ感が良い意味で薄められていたのは買いだった。

女1:男2の三角関係というのは、特に韓国ドラマ十八番の王道パターンだと思うのだけど、残酷な運命のすれ違いと暴力の悲劇という緊張感と、異国情緒あふれる穏やかな時間の流れという静謐さのバランスが、間を大切にした非常に丁寧なつくりの中で、全然無理なく自然に描き出されていて、韓国映画では考えられないほど色彩感覚豊かな繊細な味に仕上がっていたと思う。

脚本のクァク・ジェヨンは、「猟奇的な彼女」や「ラブストーリー」「僕の彼女を紹介します」を監督兼任で手がけており、ストーリーテリングの才は比類なきものがあるのだが、今回はシナリオのみに専念し、監督は外注するという形になっている。

韓国が舞台だったらそのままクァク・ジェヨンが監督も兼任してたのだろうけど、異国オランダが舞台ということでそういう形になったのかは分からないが、結果として今回、香港監督アンドリュー・ラウとのコラボレーションはものの見事にうまくハマッたといえるのではないだろうか。

なにより香港映画十八番のノワールテイストがうまくブレンドされたのがこの映画を味わい深いものにしていると思うし。

韓国十八番の甘ったるい王道ラブストーリーと香港十八番の香港ノワールがオランダ生地の中で見事に融合したというのは言いすぎだろうか。

とにかくオイラはすごく気に入ったな。

ラストの雨宿りのシーンが今も胸に残ります。

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私の頭の中の消しゴム

20051104_61736 出演:チョン・ウソン、ソン・イェジン、ぺク・チョンハク、パク・サンギュ

監督・脚本:イ・ジェハン

(2004年・韓国・117分)DVD

評価★★★/65点

内容:建設会社の社長令嬢スジンは不倫の恋に破れて傷心していたが、そんなある日、コンビニでチョルスという男性と出会う。やがて2人は恋に落ち、結婚、甘い新婚生活にひたる。が、いつの頃からかスジンの物忘れが度を越したものとなっていき、病院で若年性アルツハイマーと診断されてしまい・・・。

“オイラの頭の中のソン・イェジン”

まるで吉永小百合を思い起こさせるような古典的な純愛メロドラマで、文法としてははっきりいってあざとくて古臭いとしか言いようがない。

が、これがソン・イェジンの手にかかると一転して新鮮に映えて大きな強みになるのだから恐れいる。

現在と35年前の2つの淡い初恋を1人2役で演じ分けた「ラブストーリー」(2003)でも、35年前の主人公の母親役で清楚な花のごとく鮮烈な印象を与えたことは記憶に新しいが、物語がオーソドックスかつクラシカルであればあるほど本領を発揮するのがソン・イェジンの特質なのだろう。

そして観終わった後に残るのは彼女の頬をつたう涙と、はにかんだ可憐な笑顔のみという、、、これほど女優冥利に尽きることもない。

でもオープニングのケバケバ姿にはド肝を抜かれて思わず前のめりにブッ倒れちゃうところだったけど、え゛っ?これってソン・イェジン・・・??てかんじで。

ストーリー展開としては、同じアルツハイマーを扱っている「半落ち」「明日の記憶」などテーマの重さが前面に押し出されている映画に比べると、今回の映画はソン・イェジンとチョン・ウソンの出会いと恋愛への過程を前半のほとんどを割いてことのほか丁寧に描いているのが特徴的で、その点でもまさに純愛路線まっしぐらという言葉がピッタリな展開。

しかし、その前半部分がやや淡白な気もしないでもなく、彼女が若年性アルツハイマーに侵されていく後半部分は見応えがあっただけに、前半もうちょっと押しが強くてもよかったかも。

ま、なんだかんだいって今回もソン・イェジンの魅力に牽引されて映画に見入ってしまい、彼女の穏やかな表情がくっきりと脳裏に焼きついてしまったけど、逆に言えばただそれだけという感も否めずこの点数。

あと、そいえばBGMでNHK朝ドラ「あすか」のテーマ曲が流れてたんだけど、あれはいったい・・・。

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私たちの幸せな時間(2006年・韓国・124分)WOWOW

 監督:ソン・へソン

 出演:カン・ドンウォン、イ・ナヨン、カン・シニル、ユン・ヨジョン、キム・ジヨン

 内容:3度目の自殺を図って病院に運ばれた元歌手のユジョン。死刑囚との面会に赴き神の赦しを教える奉仕活動をしている修道女の叔母は、ユジョンを一緒に連れて行くことにする。そしてユジョンは、3人を殺した罪で死刑となった男・ユンスと出会い、毎週木曜日の10時から13時までの間、同じ時間を過ごすようになり、心を通わせていくのだが・・・。

評価★★★/60点

う~~ん、、もの凄い重いテーマを扱っているわりにはちょっと味が薄っすいかなぁ。。

良家の令嬢と親に捨てられたみなし子。この“天国と地獄”という対照的な構図の中で人生に対する絶望を共有するわけだけど、例えば時代背景とか社会のあり方みたいなものがもっと見えてくればよかったんだけど、そこまで掘り下げているようにも見えず。

となると、役者2人の演技によるところが大きくなってくると思うのだけども、これまた役不足な感が否めず。。

フツーに見られるのはたしかだけど、そこにプラスアルファされるものがほとんどなかったかな、と。韓国映画にしては意外に薄味だったような、、、もっと辛味を加えてもらいたかったな。

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ピアノを弾く大統領(2002年・韓国・93分)WOWOW

 監督・脚本:チョン・マンベ

 出演:チェ・ジウ、アン・ソンギ、イム・スジョン

 内容:女子高の女性教師ウンスは、問題児ヨンヒの目に余る態度を注意しようと、彼女の保護者宅に電話をする。が、どこでどう間違ったのか、電話は大統領の執務室につながってしまうのだが・・・。

評価★★★/60点

優香と志村けんのバカ殿様コントをマジ~メにやればこうなるってかんじ!?おいおい。。

まぁ、無難な映画で、肩の力を抜いて見られるラブコメ作品ではあるのだけど、韓国映画でこういうのを見せられるとちょっと肩透かしをくらっちゃうかなぁ。。

あるいはもっと権力や権威に対するシニカルな面を強調して描いてくれれば味わいも違ったんだろうけど、まぁ、チェ・ジウの映画にそこまで求めちゃうというのは畑違いか、ウン。。

2008年11月13日 (木)

一緒にデートしたいアニメキャラは??

コネタマ参加中: 一緒にデートしたいアニメキャラは??

んナミさ~~~~~ん!!!

ワンピースのんナミさ~~~~ん、、です。

身長169cm、バスト95cm、ウエスト55cm、ヒップ85cmの、、、、

んナミさ~~~~~ん!!!です。おいおい・・・

んナミさんのクリマ・タクト(天候棒)で雷に当てられて、文字通り骨抜きにされたい・・・。

ま、冗談はさておいて、、、ってえーーーーッいや、だって雷の本家といったら、うる星やつらのラムちゃんだし・・。

ていうか、実は、真っ先に思い浮かんだのが、風の谷のナウシカのクシャナ殿下なんです。。

トルメキアで最強を誇る第3軍団を束ねるカリスマ皇女。

アニメでは義手義足なんですけど、それが幼稚園時分だったオイラにはかなりの衝撃で、それから後にコミックの方を見てウッホー!カッケー!となってホレますた・・

毒見役でもいいからお側に近づきたいです(笑)。

でも、やっぱデートとなると、ナミさんかなぁ。財布スラれてハイ、さよならかもしれないけど・・・。

2008年11月10日 (月)

夢のシネマパラダイス556番シアター:力道山

200511_img_3 出演:ソル・ギョング、中谷美紀、萩原聖人、鈴木砂羽、山本太郎、藤竜也

監督:ソン・へソン

(2004年・韓/日・149分)WOWOW

評価★★★☆/70点

内容:1944年の東京。力士である力道山は、朝鮮出身という理由で先輩力士のいじめや差別に苦しんでいた。しかし、有力なタニマチの援助もあって相撲でも結果を残していき、さらに綾という芸者とも結婚。しかし、関脇まで昇り大関昇進というところで朝鮮人という出自がまたしても大きな障害となってしまう。そこで、意を決した力道山は相撲界に見切りをつけ、国籍や人種にとらわれない場として、西洋のスポーツ・プロレスに活路を見出すのだった・・・。戦後日本最大のヒーロー、力道山の半生を映画化。役作りのために28kg増量したソル・ギョングの熱演は必見。

“世界人と名乗らなければならない悲しみ”

なにせ自分の両親が生まれるかどうかの頃の話なので、オイラにとっては力道山といったら敗戦後日本を支えた伝説のレスラーとしか言えないのだけど、力道山が在日コリアン1世だったことはなぜだか知ってたんだよなぁ。。なんでだろ・・。

でも、大スター力道山の人生の裏にこれほどまでの辛苦があったとは正直目からウロコだった。

ものすごい韓流ブームに沸いていた1,2年くらい前、法事の席で韓国ドラマの話題で盛り上がっていた親戚の会話の中で、ふと「昔は朝鮮人といったら皆顔をそむけて差別してきたのに韓流ブームなんて到底考えられなかったわよねぇ・・」と叔母さんが言ったら皆一様にうなずいていたのが思い出されたけど、在日1世が日本社会で生きていくというのは言葉にならないほどの苦労を伴なっていたのだろうなぁというのがキム・シンラク=力道山の半生を通して痛いくらいに伝わってきた。

富も名誉も名声も手に入れてなお出自を隠さなければならない人生って、、、それは今でも往々にしてあることなのだろうけど、なんとも悲しいことだね。

今回の映画は韓国製作ということで、日本人が作ってたら戦後の復興と昭和というテーマの中で、ノスタルジックさが前面に出たおセンチ全快のヒーロー物語になってたと思うけど、韓国人視点の力道山は彼の孤独と苦悩がやけに胸にグサリと突き刺さるアンチヒーロー物語となってしまった・・・。

ヒーローの孤独としてはあまりにもツラすぎる現実に思わず考えさせられてしまった。

あ、でも、当時の日本を見事に再現した美術・セットには感心したな。 

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アリ(2001年・アメリカ・157分)DVD

 監督・脚本:マイケル・マン

 出演:ウィル・スミス、ジョン・ボイト、ジェイミー・フォックス

 内容:通算61戦56勝(37KO)5敗。1964~74年に活躍し、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と形容された軽やかなフットワークで世界ヘビー級チャンピオンンとして不動の地位を築いたモハメド・アリ。ベトナム戦争への徴兵拒否など、数多くの逸話を残す伝説のボクサーの半生を描いたドラマ。

評価★★★/65点

アリが凄いことも、マイケル・マンが凄いことも、ウィル・スミスが凄いことも大変よく分かった。

しかし、それらが三位一体となって迫って襲ってくるどころか、余裕で見切れてかわしまくれちゃうところがある意味不思議でならないし、なんか肩透かしをくらった気分でちと残念。

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ナチョ・リブレ覆面の神様

Rjxqgxieby 出演:ジャック・ブラック、エクトル・ヒメネス、アナ・デ・ラ・レゲラ、リチャード・モントーヤ

監督:ジャレッド・へス

(2006年・アメリカ・92分)WOWOW

評価★★★☆/70点

内容:メキシコの貧しい修道院で育てられ、大人となった今では料理番として孤児たちの面倒を見るイグナシオ(ナチョ)。彼はルチャ・リブレ(メキシカン・プロレス)のレスラーになってお金を稼ぎ、子供たちに満足な食事を与えようと決意。が、彼が一目ボレした新任の美しいシスター・エンカルナシオンはルチャ・リブレを毛嫌いしていた。そこで彼は、修道院には内緒で試合への出場を決め、奇妙なトレーニングを開始するのだが・・・。

“ジャック・ブラックの怒涛のプロレス一直線体当たり演技に相当救われている。”

ゆるゆるテイストのコント風演出、所狭しとわんさか湧き出してくる変テコキャラ、カラムーチョが合いそうなどこまでもカラッとしたメキシカンな風景、ジャック・ブラックの典型的バカ体当たり演技、妙に心躍るエスニックサウンド。

どれもがツボにハマっておもしろ楽しいのだが、映画としての体幹までもがホントにゆるくて、例えばナチョと修道院の孤児たちとの関係だとかベタでご都合主義的でもいいからもっとあからさまに描いた方がよかった気がする。

ガキの頃からレスラーに憧れていたという夢を抱えてそのまま大人になったようなナチョのキャラクターは少年そのものなんだけど、なぜレスラーとして戦うのかというところがだいぶ中途半端で、そこが映画としてちょっとハジききれていない感を演出しちゃってるんだよね。

子供としての夢と大人として守るべきものがあるという現実との狭間で、ジャック・ブラックのハイテンションだけが変に空回りしちゃってるのが、なんだか惜しい作品かなと。

まぁ、そこも含めて笑える映画ではあるし、裏を返せばそこが「バス男」(2004)で強烈な印象を残した監督ジャレッド・へスの真骨頂なのかもしれないけど。。

どっからどう見てもB級映画という点からすれば、ちょっとオイラの中のハードルが高すぎたかもな・・・。

2008年11月 9日 (日)

夢のシネマパラダイス555番シアター:さくらん

Sakuranmove 出演:土屋アンナ、椎名桔平、成宮寛貴、木村佳乃、菅野美穂、永瀬正敏、小泉今日子、安藤政信、石橋蓮司、夏木マリ

監督:蜷川実花

(2007年・日本・111分)WOWOW

評価★★/45点

内容:江戸の遊郭、吉原でも名高い玉菊屋に売られてきた8歳の少女は、きよ葉と名付けられる。何度も脱走を試みるもののいつも見つかって折檻を受けるきよ葉は、いつの日か吉原の桜の木に花が咲いたらここを出るという望みを胸に美しく成長していく。やがて日暮という名をもらったきよ葉は、花魁として瞬く間に江戸中の注目を集めていくのだが、惣次郎という男にホレてしまい・・・。人気漫画化・安野モヨコの同名コミックの映画化。

“これがホントの「千と千尋の神隠し」実写版!!”

だって千と千尋の舞台ってどう考えてもあれはソープランドだからね(笑)。

それはさておき、ガレッジセールのゴリが「オレだーー!」と顔のドアップで出てきた時点で、これはバラエティなんだ、と心に言いきかせて納得した上でなんとか観続けることができたけど、劇中に英語歌詞が流れちゃう椎名林檎の音楽といい、原色極彩色を鮮やかに使いまくりの画作りといい、独特なひとつの世界観を創り上げていたことは認めよう。

しかし、その世界観が一本の映画を形作っていく上で何の役にも立っていないというのが蜷川実花の限界を如実に示していると思う。もし、これがこの人のスタンスなのだとしたら、もう二度とこの人の映画作品を観ることはないだろう。

要は世界観を形成した上で、その先にある映画の中で何を描きたいのか、何を語りたいのか、何を主張したいのかということがあってはじめてそれは映画だ、と言えると思うのだけど、この映画からは世界観の先にあるものがほとんど見えてこないのだ。

それはつまりフォトグラファーという価値観と同じベクトルの上に映画監督というものがあるのだと誤認識しているからだと思うのだが、例えばエンディングロールで写し出される登場人物のフォトショットは一枚絵としてはまさにベストショットだ。

しかし、映画本編もファインダー越しにのぞいた視点で撮られた写真のベストショットをただ並べただけという印象が強く、その中で記号としての人物がパターン通りに動かされているにすぎない。

それは文法としては、より漫画に近いかんじもするけど、映画としては非常にレベルの低いものと言わざるをえない。監督としての力量は推して知るべし・・・。

2作目を作るのかどうかは知らんが、やはりフォトグラファーとしての価値観や文法から転換していかないとかなり厳しいと思う。そして語らなければならない題材をしっかりと見つけていくことだね。

まぁ、ファッションやアクセサリとしての映画があっちゃダメということはないから別にこれはこれでいいのかもしれないけど。こういうのって女のコにはウケがいいのかも。

まぁ、とにかくあれだな、、、菅野美穂の濡れ場はヨカッタうん・・。

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(おまけ)

海は見ていた(2002年・日本・119分)NHK-BS

 監督:熊井啓

 出演:清水美砂、遠野凪子、永瀬正敏、吉岡秀隆、石橋蓮司、奥田瑛二

 内容:江戸は深川の遊女宿“葦の屋”。遊女たちは、「客にホレちゃいけない!」という戒律をおかみさんや菊乃姐さん(清水美砂)から口酸っぱく諭されながら働いている。そんなある日、年若い遊女のお新(遠野凪子)は、刃傷沙汰を起こして追っ手から逃げてきた若侍・房之助(吉岡秀隆)をかくまってあげたことから、恋に落ちてしまう。さらに町人の良介(永瀬正敏)とも出会い、お新の心は揺り動かされていく・・・。黒澤明が自らの第31作目として書き上げていた遺稿脚本の映画化。

評価★★☆/50点

黒澤明の遺稿を熊井啓監督が引き継いで撮ったということらしいが、なんだろ、、、同じ人間ドラマを描くにしても、ヒューマニスト・黒澤と社会派・熊井の資質の違いなのか、畑違いの仕事と揶揄されても仕方ないような芯の通っていない凡作に仕上がっている。

でも、黒澤映画にしては珍しい岡場所を舞台にした女性視点の作品ということで、「サンダカン八番娼館・望郷」や「忍ぶ川」で女性を真正面から捉えてきた熊井啓にとってはお得意の分野だったのではないかとも思うのだけれども、フタを開けてみれば中途半端そのもの。

この前後半分断された中途半端きわまりない物語をラブ・ストーリーと呼んでいいのかどうかすらもはや分かりかねるが、お二人さんともメロドラマというジャンルには程遠いからねぇ・・・。やっぱ畑違いだったってことなのかしら。。

いや、でもヒューマニスト黒澤版てのも見てみたかったなぁ。

とにかく、巨匠から巨匠へのリレーのバトンタッチはうまくいかないということが図らずも証明された形にはなったな。

唯一の見所は菊乃姐さん役の清水美砂の演技くらいなもので、、、吉岡秀隆の前半部分のオチにはなんじゃこりゃ、、とマジに腰砕けで、なんかホント中途半端な映画だったな。。

夢のシネマパラダイス554番シアター:時をかける少女

Toki2 声の出演:仲里依紗、石田卓也、板倉光隆、原沙知絵、谷村美月

監督:細田守

(2006年・日本・100分)2007/01/05・盛岡フォーラム

評価★★★★/80点

内容:高校2年生の紺野真琴は、優等生の功介とちょいワルな千昭と3人でつるんで楽しい毎日を送っていた。そんなある日、真琴は、自転車で坂道を走行中にブレーキが壊れてそのまま踏み切りに突っ込んで電車に激突・・・とその瞬間、真琴は時を駆け戻った。その話を和子叔母さんにすると、彼女は意味ありげに、それは「タイムリープ」といって年頃の女のコにはよくあることだと説明するのだった。それを聞いた真琴は、最初は半信半疑だったが、これが実に便利な能力であることを知るとすっかり調子に乗りタイムリープを使いまくってしまう・・・。

“映画を観終えて連れの妹が吐き捨てたひと言・・・”

男子キャラが全然ダメ!だってさ・・・。

チャラリラリラリラリラララ~ゴッドファーザーのテーマがオイラの頭ん中で鳴り響いちまったよ・・・。

「俺、そんなに顔も悪くないだろ。」って千昭も豪語しとったやん。

いや、そういう問題じゃなくて、言うとった話とちゃうやんけ!

えーーっ、、、オイラなんも言ってないじゃん。

、、、と、彼女が今度短大に入学する妹に「この監督さんって宮崎駿の後継者なんだって。」と吹聴しまくってたらしく、、、そりゃ大地に根を張ってたくましく生きてて、あげくの果てに飛行機から逆さにぶら下がって女のコを空中で抱きかかえちゃう芸当まで披露するパズーやら、主食は美女の心臓という女殺しの美形の魔法使いで、タラリラランと空中散歩までできちゃうハウルやら、凛々しい顔立ちの色白の少年でなななんと背中に好きな人を乗せて飛ぶこともできるハクやら、飛べない豚は、、省くとしてもだな、それらと比べたら、そりゃ今回の飛べない男子高校生はモサッとしてるヘタレキャラなのかもしれないけど・・・。

でも、ちょっとよう考えてみいや。宮崎アニメの男キャラは基本的に“マザコン”、しかもロリコンもちょっと、、いや相当入っているのだっちゅうことを忘れちゃいけんよ(笑)。

あ、そっか、、、それが母性本能をくすぐるのかい?ってんなアフォな・・・。

まぁとにかく妹はんは宮崎駿の後継者と聞いて宮崎アニメそのものを期待しちゃったようで、それならゲドゲホッ戦記でも見てりゃええわけで、、、でも、その肝心のゲホッ戦記もツマラない言うとるんだから(笑)。。。

引退しないで下さい宮崎さん、、それしか方法はないよ。。

しかし、今回の「時をかける少女」は、絵柄的には背景美術が宮崎アニメと同じスタッフということで、細密な背景描写は宮崎アニメと通じるものがあったと思う。

簡単に骨折しちゃいそうなほど人物の線がゆるゆるだったのはちょっと違和感が無きにしもあらずだったのだけど、ほのかに陰影をぼかした暖色の背景画に彩られた世界観と、ポカリスエットのCMにそのまま転用できちゃいそうなくらい爽快で抜けるような夏の青空の下で躍動するストーリーと、ブッ飛び転げまくり駆け回りつづける真琴の姿に、自分の青春時代にタイムリープしちゃいそうな感覚をもって一気に映画の中に吸い込まれてしまった。

特に真琴の快活バカ娘っぷりは特筆もので、これを主人公にもってきたのがまたイイ。

千昭に「バカにチャージされてよかったよ。」と言われるくらいロクなことにしかタイムリープを使わない真琴。プリンや鉄板焼きを食べたいがために、はたまたカラオケ10時間ブッ通しで歌い続けるためだとか真琴の周囲5メートル圏内の身近な日常にもっぱらタイムリープが費やされていく。

坂本龍馬を暗殺したのは誰なのか!?とか邪馬台国はどこにあったのか!?とか知りたくないのかよっ、、と数学のテストで9点取っちゃう真琴に言うのは筋違いってもんか(笑)。

とにかく快活バカ娘の真琴に終始視点を寄り添わせて描き、フツーの女子高生にとっての日常の複雑な問題をきっちりと切り取っていく。それは微妙な三角関係であったり、恋を自覚する一歩手前であったり、将来の進路であったり、プリンを食べれるか否かであったり。

SFという破天荒な世界よりは女のコの青春という普遍的な内面世界を描き出しているのが個人的にはビビビッときたかんじだ。

しかも真琴に終始視点を寄り添わせて描いているわりに決して閉鎖的な物語になっていないのは、真琴が自らの意志で自分の人生をつかみ取ろうと突っ走りつづけるポジティブさにあるのではないかと思う。

20年前のヒロイン芳山和子はひたすら恋人を待つ女性だったが、真琴は魔女おばさんをして、待ってる人が来なかったら走って迎えに行く子でしょと言わせしめるような女のコなのだ。

それがまた時代の違いを反映しているというか今風でイイんだよね。

あみんの“待つわ”の時代じゃないんだもんな。倖田來未の“WIND”はたまた“Hot Stuff”の時代なんだ。「つかみ取るのは自分次第!」ってね。

ヨッシャ、いっつけぇええーーーツ!!!

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時をかける少女(1983年・東映・104分)NHK-BS

 監督:大林宣彦

 出演:原田知世、高柳良一、尾美としのり、津田ゆかり、岸辺一徳、根岸季衣、上原謙

 内容:ある日の放課後、理科室の掃除当番だった芳山和子は、実験室でラベンダーの香りに包まれて気を失った。それ以来、和子は時間を往き来するようになってしまう。不思議な体験を繰り返した和子は、それを同級生の深町に相談するが、彼は取り合ってくれない。納得のいかない和子だったが、深町の家の温室で再びラベンダーの香りをかぎ、気を失う・・・。筒井康隆の同名小説をもとにしたSFファンタジー。

評価★★/45点

細田守の傑作アニメの方を先に見ていたので、いわゆるオリジナルはどんなもんかと思ってたのだけど、なんてったって映画監督の中で最も性に合わないのが大林宣彦だからねぇ・・・

よくまぁカビの生えたような青臭っさい映画を恥ずかしげもなく撮れるもんだよと逆に感心しちゃうわ。ノスタルジーもヘッタクレもあったもんじゃない。

こういう映画は観たときの世代・年齢とかももろに関係してくると思うんだけど、当時幼稚園児だったオイラには原田知世など眼中にあるわけもなく・・(笑)。

今みればただの大根アイドルだし、、おいおい。。

岩井俊二あたりに撮らせてくれれば全っ然違くなると思うんだけどなぁ・・・。

レアル・マドリー狂想曲第50番:レアルvsマラガ激闘!

先週のコパデルレイから負け・ドロー・CLでユーべに負けと来て、さらにセルヒオ・ラモスのシュスター無能発言(右サイドは攻守に渡って事実上オレ一人でカバーしなくてはならず、昨シーズンもそうだったけど、今季も同じでさすがに大変!さすがにオレもほとほと疲れてくるよバカヤロー!etc...)がメディアに煽られ、叩かれまくっているレアル。

ファンデ・ラモスやライカールトという後任監督の名までちらほら聞かれる始末・・。

そんな中、ホームのサンチャゴ・ベルナベウでマラガを迎えたリーガ第10節。

布陣は、、、

                 イグアイン

    ドレンテ           ファンデルファールト

           スナイデル         グティ

                  ガゴ

  マルセロ                           Sラモス

            エインセ      カンナバーロ

                 カシージャス

ファンニステルローイ、ロッベンが長期離脱と攻撃の切り札が不在という緊急事態。。ラウルはターンオーバーでベンチ。

Photo しかし、、、試合は前半早々の6分に、左サイド深くからマルセロ、エインセと立て続けに抜き去られ、早くも失点・・。

しかしその2分後、マルセロのシュートをキーパーが弾いたところにイグアインが詰めて同点。

が、17分、カンナが相手選手にチェックにいくものの簡単にかわされて前を向けられ、そこからのゴロクロスを簡単に決められ1-2・・・。

なんという軽すぎる失点。ホントに今季のレアルは失点が多い。

特にSラモスが苦言を呈した右サイドの機能不全を相手も突いてきて、崩されるシーンが多いし、守備面で前線から追ってはいるものの、それがチームとして連動できてないシーンが多いため、チェイス&チェックが闇雲で、簡単にかわされてしまう。簡単に前を向かせてしまうシーンが多いのだ。今日もそう。

シュスターのレアル監督としての理念として掲げたスペクタクルな攻撃力はもちろん重要だけど、個で局面を打開できるロビーニョがいないわ、ロッベンがいつもの怪我だわ、ニステル&ラウルが老齢だわということで、今までのように個オンリーでの勝負はもうできないわけで。要は攻守にわたる組織力が重要になってくる戦い方をしなければならないのだけど、シュスターがヘタフェでやっていたような強固な守備力を100パー求めるものではないけど、もうちょっと守備面に気を割かないと。

これだけ失点多いとチャンピオンズリーグでも上は臨めない。

さて、試合の方は、前半36分に相手ハンドで得たPKをイグアインが決めて2-2

Photo_2 ←ガッチョーーン、、、前半終了間際にSラモスが相手を踏みつけて一発退場・・。故意じゃなかったとは思うけど、レッドは致し方なしか。

1人少なくなっちまったよ~~。。。不穏な空気が流れるベルナベウ。

後半は、スナイデル⇔サルガドで、4-3-2みたいな形にシフトチェンジ。

この時点でアップをしてるのはサビオラとディアッラ。

Photo_3 ドヨヨ~ン、、、後半23分。2列目のフリーランからスペースを突かれペナルティエリアを突破され、ガゴが後ろから倒してPK・・。これを決められ2-3。

これでジ・エンドか、とオイラは半ばあきらめかけてしまったのだけど、が、が、しかし、その直後のキックオフ、ブチ切れたガゴが敵陣に突進していき、そこから得たチャンスをイグアインがミドルをぶち込み3-3!!

Photo_4 まさに今日はイグアインDAY!結局4得点して試合を決めたわけだけど、もう完全にレアルのエースやね。

これからは火拳のエース”イグアインとお呼び(笑)!

まぁとにかく今、1番点取れるのはイグアインだからね。得点嗅覚をラウルから吸い取っちゃってw、必ずゴールチャンスに絡んでくるからね。ラウルもこれで安心して後任に託せるな。

イグアインのブレイクだけが今のところ最大の収穫かな。ラフィも頑張ってるけど、あとはサイドアタッカーがロッベン離脱でドレンテだけになってしまったので、ドレンテにも一皮剥けてもらいたいわなぁ。

さあこれで同点!何かが起こるベルナベウ劇場。

Photo_5 そして、それは起こった。後半33分、ラフィのアーリークロスに走りこんだイグアインが相手に倒されてPK!

これをイグアインが一度弾かれたものの、押し込んで4-3!!!

レアルの魂マドリディスモは死んでいなかった!

10人になった後半は臆することなく全員が自らのタスクをこなし、またそれ以上に走って全員で攻守に渡ってカバーし合い、意地の逆転勝利をもぎ取った。

いや、、マラガ相手にホームでこんな疲れる試合するのも問題だけどさ。

Photo_6 しかし、これでチームはまた一致団結!退場になったSラモスも救われたやろ。

バルサはカンプノウで6-0で大勝し、勝ち点2差は変わらず。とにかく勝ち続けるバルサになんとか引っ付いていくしかない・・。

アッラ・マドリーー!!!

2008年11月 8日 (土)

夢のシネマパラダイス553番シアター:麦の穂をゆらす風

Mugi 出演:キリアン・マーフィ、ポードリック・ディレーニー、リーアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド

監督:ケン・ローチ

(2006年・英/アイルランド/独/伊/スペイン・126分)2007/01/12・仙台フォーラム

評価★★★☆/70点

内容:1920年。アイルランドではイギリス支配からの脱却を目指して独立機運が高まっていたが、イギリス軍の弾圧は強まるばかり。そんな中、デミアンはロンドンの病院の医師職を捨てて、兄テディとともに独立運動に身を投じる。そして、イギリス軍との激しい戦いの末に、両国の間で講和条約締結が合意に至ったのだが、アイルランド内では条約締結賛成派と完全独立を求める反対派に二分され、ついには内戦へと発展してしまう。そして、デミアンも兄テディと敵味方に分かれて戦うことになる・・・。カンヌ国際映画祭パルムドール受賞。

“殺し合いを拒絶するようなのどかな風景が痛いくらい印象に残る。”

のどかで牧歌的な風景の中で繰り広げられる殺し合いと憎しみの連鎖は、ときに滑稽に見えてしまうほどユルユルで場違いなものだが、戦争の愚かさや空しさ、隣人同士・仲間同士が殺し合うことの悲しさを真正面からとらえることには成功している。

しかし、可もなく不可もなくというか、どこか物足りなさを感じてしまったのもたしかで、それはつまるところ戦争という悲劇に翻弄される姿は描けても、人間の狂気を描くまでには至らなかった。そして、兄テディと弟デミアンの相克に至る内面の変遷があまり読み取れなかったことが大きいのかな、と。

有罪になった高利貸しを勝手に連れ出し、判決の正当性よりも武器の調達ができなくなることを嘆く義勇軍のリーダーだったテディは、条約を締結してイギリス軍が去った途端戦うことをやめ体制派にすんなりとついてしまう。

一方、イギリス軍に幼なじみを目前でなぶり殺されたにもかかわらずロンドンで医師になり人の命を救う道を進もうとしていたデミアンは、しかし結局義勇軍に加わり、自ら手にした銃で幼なじみを撃ち殺してしまうまでに染まってしまい、そのまま強硬派の急先鋒へと変貌していく。

体裁よりも実利をとる兄と、妥協よりも理想をとる弟。

袂を分かつ兄弟はやがて最大の悲劇へとひた走ってしまうのだが、2人の見据えていたものはまぎれもない同じ“現実”だったことが2人の確執をなんともやるせないものにしている。

とまぁよく描かれてはいるのだけど、なんだろう、もう一歩兄弟の内面に踏み込んでほしかったような気がするんだよね。

ケン・ローチの骨太演出はいつものごとく見事なのだけど、終始抑制的な視線は変わることなく淡々としていて、どこかでギアが入って変わるのかなぁと思いながら見てたけどそのまんま終わっちゃったかんじで。。

まぁ「マイケル・コリンズ」と比べれば断然こっちの方が良かったけども。

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マイケル・コリンズ(1996年・アメリカ・133分)DVD

 監督・脚本:ニール・ジョーダン

 出演:リーアム・ニーソン、ジュリア・ロバーツ、エイダン・クイン、アラン・リックマン

 内容:1916年、12世紀以来イギリスに支配されてきたアイルランドで、コリンズは独立を求めてイースター蜂起と呼ばれる武装蜂起を決行するが失敗。釈放されたコリンズは、アイルランド義勇軍なる親衛部隊を率いて新たな独立運動を展開する。協力者となったブロイ警部の手引きでイギリス警察の諜報網をつかんだコリンズは、大胆な戦略で敵を翻弄していく。。ヴェネチア国際映画祭作品賞。

評価★★★/60点

なんかマフィアの抗争劇を見てるみたい・・・。

歴史ものとして何かが足りないんだよなぁ。ってまだ100年前にもなっていないことを「ブレイブハート」みたいにフィクション織り交ぜて描けるわけもなく、、、。

サッカーのアイルランド代表は大好きだけど、この映画はイマイチなじめなかったっス。。

2008年11月 7日 (金)

夢のシネマパラダイス552番シアター:エミリー・ローズ

Theexorcismofemilyrose 出演:ローラ・リニー、トム・ウィルキンソン、キャンベル・スコット、ジェニファー・カーペンター

監督:スコット・デリクソン

(2005年・アメリカ・120分)2006/03/26・仙台フォーラム

内容:19歳の女子大生エミリー・ローズが悪魔祓いによって死亡したとして、神父のムーアが過失致死罪で起訴された。エミリーは精神病で薬の服用をやめさせたことが原因だと主張する検察側に対し、敏腕女性弁護士のエリンは、ムーアの真摯な主張をもとに悪魔の存在を証明していく。はたしてエミリーの死は精神病による錯乱のせいなのか、それとも悪魔に取り憑かれたせいなのか・・・。1970年代に西ドイツで起こった事件をもとに描いたオカルト・ホラー。

評価★★★★/75点

この映画を観ていて、1999年に千葉県で起きたミイラ遺体事件をふと思い出してしまった。

この事件は、千葉県成田市のホテルで男性のミイラ化した遺体が発見された事件で、遺体のそばにはこの男性の妻子が普通に付き添っていたという、なんとも不可思議な事件だった。

が、実はこの男性、インドのサイババの生まれ変わりだとほざく元税理士が主宰する宗教団体「ライフスペース」に家族ともども参加していたのだ。

そしてこの男性が脳内出血で入院していたところを「ライフスペース」のメンバーや男性の家族が病院から連れ出し、成田市内のホテルで宗教的療法を行っていたが、後日死亡、、、したのだが、その後4ヶ月間遺体は放置され、ミイラ化していった。いや、彼らに言わせれば、まだ治療中だが順調に回復しており生きている、と信じ込んでいた・・・。

この事件で、「ライフスペース」主宰者や男性の妻子など計10人が逮捕。検察は現代医療を打ち切れば男性が死亡することは分かりきっていたはずで、容疑者らが重病人である男性に必要な保護をせずに死なせた疑いがあるとして殺人罪で起訴した。

2001年には男性の長男などに執行猶予つきの有罪が言い渡された。

翌年には、主宰者に懲役15年の実刑判決が下されたが、控訴し、結局2005年に最高裁は懲役7年に減刑して刑を確定させた。

なぜ減刑になったのかについて最高裁は、男性を病院から連れ出した時点での殺意は無かったとし、これは不作為による殺人であり悪質性は低いとした。

これが大まかな事件の経過だ。

ここで問題になるのは、男性の家族はあくまで治療と完全に信じ込んで、宗教的療法を受けさせるために病院から連れ出していることで、それで死亡したことではたして刑事責任が問えるのかということなのだが、検察は死亡が十分予見できるにもかかわらず病院から連れ出したのは社会通念上犯罪に当たるとしている。

世間一般から見ればこれは明らかにカルト教団によるマインドコントロールそのものとしか言いようがないと思うのだが、過去にはオウム事件という戦慄も記憶に新しいわけだし。。

さて、前置きが長々となってしまったが、どうもこの映画で描かれたエミリー・ローズの悪魔憑き事件と「ライフスペース」事件が似通っている気がして、例えばエミリー・ローズ事件が日本で起こっていたらどうなっていただろうかとか、これって邦画で描けるのか!?なんて考えちゃったけど。

まぁせいぜい横溝正史の金田一耕助シリーズのおどろおどろしい事件にはなり得るかもしれないけど、医学的治療を断って宗教的治療を行うなんて良心的な宗教団体のすることじゃないし、どう見たってカルト教団のアブナイ活動やん。

ところがこれが西欧社会の根底を支えるキリスト教、そして各地域のコミュニティに必ず1つはあり社会に根を張っている教会が関係してくるとなると話は違ってくる、、、らしい(笑)。。

そこらへんのところはよく分からないけど、でもキリスト教を信じ込んで戦争おっ始めるどこぞやの超大国もあるくらいだからなぁ、、、そっちの方がよっぽど恐ろしいと思うが。。

それはともかく、悪魔に取り憑かれた(!?)少女と、彼女に悪魔祓いを施す神父という構図は、リンダ・ブレアが首を1回転させる「エクソシスト」(1973)とほぼ同じなのだが、今回はそこから一歩進んで過失致死罪で神父が裁判にかけられてしまうという、ホラーが法廷劇に憑依され完全に乗り移られてしまうという前代未聞の作品に仕上がっている。

悪魔憑き、悪魔祓いというカルトホラー的で非論理かつ非現実的な説明のつかない現象と、説明のつくリアルな論理的事実の積み重ねで法の名の下に真相を明らかにしていく法廷とをクソ真面目に結びつけてしまおうということ自体、すでに非現実かつ非常識の世界だ。しかし、一歩間違うとエセ・まがい物・作り物・ヤラセ映画のそしりを免れない中で、非論理と論理のバランスを信仰的アプローチと科学的アプローチという形で絶妙よくブレンドさせた力はホンモノで、結果的にはまっとうな法廷劇としてまとめられている。

ある意味まがい物しか期待していなかったオイラにとっては正直驚く出来栄えだった。

なにより、ジェニファー・カーペンターのリンダ・ブレアを超えた!?悲愴感漂う迫真の演技に、一気に映画の中に引きずり込まれてしまったかんじで、特にあの泣き叫び方は尋常じゃなかった(笑)。「スクリーム」「ラストサマー」のようなアイドル絶叫系とは一線を画してたわな。

考古学やってるオイラとしては、神も悪魔も人間が作り出すものだと思っていて、まぁ実在するかどうかははっきりいって興味がないというか、実在うんぬんよりも信仰や宗教がその人間の行動にどういう影響を与えたり、どのような行動をするに至ったのかという歴史学の方に興味があるかな。

でもそれはあくまでオイラにとっての思考であり、真実であって、神や悪魔が実在すると信じている多くの人々にとってはそれが彼らにとっての真実なんだろうと思う。ましてやそれを科学で証明できるかどうかなんて意味のないバカバカしいことだと思う。信仰は科学が干渉できない領域だと思うし。

だから例えば平安時代なんかは怨霊とかタタリってそこら辺にざらに存在していたと思うのね。なぜなら当時の人々は貴族から農民にいたるまでその存在を100%信じていたのだから。これを例えば現代科学で実在するかどうか調べるなんてはっきりいって全く意味がないわけで、人々が“いる”と信じればそれは“いる”んだわさ。その中で当時の社会や政治は動いていたといっても過言ではないし。

それは科学の発達した現代も同じであって、逆に“いない”と信じていたらそれは“いない”ってだけのこと。そんなもんじゃない(笑)?

だから、信仰や信心それ自体を公の場で白か黒かと裁くというのはあってはならないというか、そもそものところで成り立たないと思うのだけど、信仰により引き起こされた行動、またその行動によりもたらされた結果が現代法治国家の中で裁かれるというのは当然有りなのは言うまでもない。

結局、この映画の中で神父を弁護する女弁護士エリンは、神父とエミリー・ローズの信心の結びつきの強さを立証することで無罪を主張するわけだけど、これは明らかに人々が裁けない、裁きが成り立たない領域に逃げ込んでおり、正直論理が破綻しているのは否めない。

陪審員の下した有罪という判決は至極まっとうなものだろう。というか有罪以外考えられない。

でも、そういう映画として最初から無理がある成り立たない論法をそれらしく見せているのがこの映画の強みなんだよね。

全部が全部true storyとは到底思えないけど、なんか科学と信仰のあり方だとかそういう難しいところまで考えさせられちゃったこのエセ映画、、、いやいやもとい、このまっとうな映画はやっぱり凄い、、かも!?

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(おまけ)

フューリー(1978年・アメリカ・119分)NHK-BS

 監督:ブライアン・デ・パルマ

 出演:カーク・ダグラス、アンドリュー・スティーブンス、エイミー・アーヴィング

 内容:元諜報員ピーターの息子で超能力者のロビンが誘拐された。その仕掛人はピーターのかつての同僚のチルドレスで、スパイ組織の絡んだ事件であるらしいことが分かる。一方、シカゴのハイスクールに通う少女ギリアンの身辺にテレキネシス現象が現れ、彼女が超能力を持っていることが明らかになる。一見、無関係なこの2つの事件が、やがて一本の糸で結ばれていく・・・。

評価★★★/65点

“最凶スローモーション”

なんとも後味の悪い映画だったけど、息子が連れ去られてしまったサスペンスと、超能力女子高生の血のりオカルトショーという、まるでなんの脈絡もない2本分の映画をツギハギしただけのような締まりの悪さの中で、しかしまだ洗練されていない初期デパルマ節が炸裂しまくっていて、引きずり込まれるように見入ってしまった。

ただ、締まりの悪さはどうしても気になるところで、例えば息子ロビンを誘拐した政府の研究機関の目的が何だったのかが全く描かれず、その中でロビンが庭で棒高跳びしてるところをただ映されても、なんやねんこれは、、という。。

しかし、兎にも角にもラストは最凶だね(笑)。。

2008年11月 5日 (水)

夢のシネマパラダイス550番シアター:この愚かな憎しみ合う世界・・・

ミュンヘン

060818_munich_dvd 出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、キアラン・ハインズ、マチュー・カソヴィッツ、ジェフリー・ラッシュ

監督:スティーブン・スピルバーグ

(2005年・アメリカ・164分)2006/02/05・MOVIX仙台

評価★★★★/75点

内容:ミュンヘン五輪開催中の1972年。武装したパレスチナゲリラがイスラエルの選手村を襲撃、11名が犠牲となる事件が起こる。これを受けてイスラエル政府は、犠牲者数と同じ11名のパレスチナ幹部の暗殺を決定、諜報機関モサドの精鋭5人による暗殺チームが組織される。そしてリーダーのアヴナーに率いられた彼らは、ヨーロッパ中に点在するターゲットを確実に仕留めるべく冷酷な任務の遂行にあたっていくのだが・・・。

“祖国愛と家族愛のはざまで”

1972年、平和の祭典であるオリンピック会場で起こったパレスチナゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件に対する終わりのない報復劇を描いたこの映画のキモは、何と言ってもラストだろう。

妊娠7ヶ月の妻を残して暗殺チームのリーダーとなり暗殺を実行していったアヴナーと、モサドの連絡員兼幹部エフライムのNYでの訣別シーン。

このシーンは、祖国という“家=HOME”を捨てて家族という“家=HOME”を選んだ男と、祖国という“家”に殉ずる忠誠をかたくなに誓い続ける男の対峙である。

祖国イスラエルを滅せんと欲する者たちから祖国を守るため、家族を守るためにパレスチナ幹部11名の暗殺指令を受けたアヴナーは、イスラエル人としての身分や国籍といった一国民としての存在を当局に抹消された上で闇の任務に身を没頭させていく。

しかし、身を粉にした暗殺任務と繰り返される報復の連鎖、裏の裏でうごめいていたCIA、KGB、、、そしてひょんなことから出くわしたパレスチナゲリラの若者が心の底から叫ぶ彼らの大義「自分たちの祖国=HOMEが欲しい。」という言葉、、、次第に自分たちの目的意識の向かう先がぼやけてくるアヴナー。自分たちのしていることはテロリストといったい何が違うのか・・・。

そして報復の連鎖が自分に、さらには守るべき家族に向けられる恐怖に駆られていく。

自分の“HOME”を守るために請け負った行動が“HOME”という本来安息すべき場所を逆に危険にさらしていくことに気付いたアヴナーは、妻と子供をニューヨークへ移住させることを決意する。そして彼自身も。。

アヴナーの父親は祖国の英雄だったと示唆されていたが、彼の宿命なのか、任務を終えてイスラエルに戻ったアヴナーもまた英雄として迎えられる。

しかし彼は愛する祖国を離れて、愛する家族のもとへと帰っていく。

アヴナーは愛国心を捨てたのか・・・?

いや、そうではない、と思う。彼はこれ以上英雄で居続けることを、そして彼につづく第2、第3の英雄をつくることを拒否したのだ。

報復の連鎖によって生み出された英雄は憎しみの中から生まれ、その倍の憎しみを練成しつづけていくのだから・・・。

最強のハンターとして名高いホオジロザメの鋭い凶器の刃のような歯は、奥に次の歯が何列にも並んでいて、抜けても抜けても24時間以内に生えてくるという。

憎しみと暴力による報復の連鎖はこれと同じではないのか、代えのきく刃=憎しみに燃えたぎる人間が次から次へと生み出されていく・・・。

「こんなことの先に平和なんてあるわけがない!」ことに気付いたアヴナー。

そんな彼に、国に戻って来いと促すエフライム。アヴナーは断りを告げた上で「今夜はそういうわだかまりは抜きにして、一緒に夕食を家で食べよう。」と招待するのだが、、エフライムの祖国愛という鎧をまとった鋭利な視線が心に突き刺さる。

そして後ろにそびえる在りし日の世界貿易センタービルが、憎しみの連鎖の行き着く先をありありと映し出す。

しかも、この連鎖は今現在も脈々と続いていることに気付かされるのだ。

暗殺メンバーの、ターゲットのパレスチナ男性の、情報屋ルイのファミリーの、なんてことはないありふれた食事風景が幾度となく映し出されるが、その空間は幸せな微笑で満たされていた。

HOME=帰るべき場所とは食卓を囲む家族のいる風景なのだと示しているように思えてならない。

そこには暴力や憎しみなど存在しないのだから・・・。

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キングダム/見えざる敵

Kingdom_1_1a 出演:ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン、アシュラフ・バルフム

監督:ピーター・バーグ

(2007年・アメリカ・110分)WOWOW

評価★★★/65点

内容:サウジアラビアにあるアメリカのメジャー石油会社の外国人居留区で自爆テロ事件が発生。死傷者は300人以上にのぼり、犠牲者の中にはFBI捜査官も2名含まれていた。その首謀者がアルカイダと関係のあるアブ・ハムザと推察したFBI捜査官フルーリーは現地捜査を志願。駐米サウジ大使との裏取引でなんとか条件付き許可を得たフルーリーは、法医学調査官のジャネット、爆発物専門家のサイクス、情報分析官のアダムとともにサウジに降り立つ。そこで彼らはサウジ警察のガージー大佐と合流するのだが・・・。

“憎しみは憎しみしか生まない・・・”

アメリカと中東のただならぬ関係をテロップでバッバッとスタイリッシュに見せていくオープニングから、これはかなり挑戦的な映画なのかと思ったのだが、フタを開けてみれば安全パイを狙って置きにきただけのような中途半端で単調な映画になってしまった感が否めない。

それゆえ、テロとテロリストという鬼を生む土壌とは何なのか、その生の現場でえぐり出され見えてくるものとは何なのかがほとんど表面的なものしか見えてこず、逆に当局の制止を振り切り勝手ともとれる見込み捜査で敵地に乗り込み介入していくアメリカ人の安直な発想力だけが浮き彫りになってしまったような・・・。

例えば、北朝鮮の拉致問題、あるいは中国の毒入りギョーザ問題で日本の警察が乗り込めるのかっつうことだよね。

ちょっとそういうところは違和感あったし、その違和感を払拭させるだけのリアリティをともなった問題提起がなされたのかというと、そういう使命感があるようにも見受けられず、やはり中途半端な印象が。。

それでいて、ラストに「奴らを皆殺しにする!」という双方から発せられた憎悪の言葉により、非人間的な暴力の連鎖を生むのは十分な展望もなく土足で踏み込んでいくアメリカであり、その反作用として生まれたイスラム過激派であるというマトモなところに結果的には着地しているのがなんとも巧くずる賢くあざとい・・・。

まぁ、社会派とエンタメとの間でどうバランスをとるかという立ち位置はあるのだろうけど、危険な現場でのドンパチは圧巻だっただけに、見えざる敵の真実に鋭い光を当ててもっと克明に迫っていってほしかった。

2008年11月 4日 (火)

夢のシネマパラダイス549番シアター:鉄道員&自転車泥棒

鉄道員

0615 出演:ピエトロ・ジェルミ、エドアルド・ネヴォラ、ルイザ・デラ・ノーチェ

監督:ピエトロ・ジェルミ

(1956年・イタリア・115分)NHK-BS

評価★★★★/80点

内容:50歳になる鉄道機関士アンドレアは、末っ子サンドロから英雄のように思われているが、長女や長男にとっては頑固親父でしかなかった。そんなある日、アンドレアは、衝突事故を起こしかけ、格下げになってしまう。しかし、彼の鉄道に対する想いは誰よりも強かった。その気持ちを長女と長男も察し、父親に尊敬のまなざしを向けるのだった・・・。

“イタリア版ひとつ屋根の下”

「ニュー・シネマ・パラダイス」や「ライフ・イズ・ビューティフル」はたまた「自転車泥棒」など心にいつまでも残る名子役を輩出するイタリア映画のこれは伝統なのか、いたいけな子供をダシにして周りの世界を瑞々しく詩情豊かに描く手法は昔から連綿として継承されている。

この映画のサンドロ少年も記憶に残る名子役といっていいだろう。だって、このサンドロがいなかったら、この家族って絶対崩壊してまっせ(笑)。

酒(ワイン)とギターをこよなく愛する頑固一徹親父はサンドロにとっては憧れのヒーローだし、その父親に反発しゴロツキ連中と関わりを持ってしまう長男と、親父の知らぬ間に妊娠してしまう長女はサンドロをいたく可愛がっているし、良い意味でサンドロ少年が家族の緩衝材としての役割を担っている。

最初のクリスマスの夜、長女ジュリアの流産という不幸から幕を開けた家族劇は、家族に降りかかる様々な問題から崩壊していく絆が1年後のクリスマスイヴの夜に父親マルコッチの安らかな眠りとともに平安を取り戻すに至るという、なんとも哀切きわまりない物語となっている。

しかし、ラスト、マルコッチがいなくなった一家のある朝、父親の遺志を継いで鉄道員になった長男マルチェロはしっかり出勤していき、サンドロもしっかりと前を向いて学校へ登校していく。

家族愛に包まれながら成長した彼らの人生が確固としてこれからも続いていくのだろう。

哀愁を誘う音楽がまたいい。

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自転車泥棒

Bicycle 出演:ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタヨーラ

監督:ヴィットリオ・デ・シーカ

(1948年・イタリア・88分)NHK-BS

内容:戦後間もないローマ。長い失業の後、ようやくポスター貼りの仕事を得たアントニオは、仕事に必要な自転車を盗まれてしまう。彼は息子とともに自転車を捜すが、犯人らしき男を見つけても自転車は取り戻せなかった。思いあまったアントニオは自転車を盗もうとし、捕らえられてしまう・・・。イタリアン・ネオ・リアリズムの代表作といわれており、アカデミー特別賞などを受賞。ちなみに泥棒役の役者以外は大半が演技素人の一般人である。

評価★★★☆/70点

泣けない笑えない怒れない弾めない情けない、、、映画としてはつまらない。

しかし息子の目線や、親父の悲哀や苦悩と絆などのエピソードに対する細やかな目配りが、さりげない。

ようするに、上手い。映画として、上手い。

2008年11月 3日 (月)

夢のシネマパラダイス546番シアター:トンマッコルへようこそ

Welcome_to_dongmakgol 出演:シン・ハギュン、チョン・ジェヨン、カン・へジョン、イム・ハリョン、ソ・ジェギョン

監督:パク・クァンヒョン

(2005年・韓国・132分)2006/12/06・仙台フォーラム

評価★★★★/80点

内容:朝鮮戦争がつづく1950年代。山の奥深くに、他の土地から隔絶し自給自足の生活を送る不思議な村トンマッコルがあった。そんな平和な村にある日、アメリカの連合軍スミス大尉の偵察機が不時着する。その後、韓国軍の脱走兵2人と、朝鮮人民軍の兵士3人も村に現れ、3組は武器を手に一触即発の事態に。しかし、武器さえ見たことのない村人たちはそんなこと気にする素振りも見せず、、、いつしか兵士たちも打ち解けていき、友情を育んでいくまでに至るのだが・・・。

“ファンタジーを描く土壌が今までなかったはずの韓国映画がリアリズムの極致にある戦争と武器を見たことがない人々が住むユートピアというファンタジーを何の違和感もなしに結び付けてしまった、、、恐るべし韓国映画。”

トンマッコル村の入り口の山道に置かれた石像なんかを見ると思わず宮崎駿の「千と千尋の神隠し」を思い浮かべてしまったり、しかも音楽が久石譲だし。

また、久石譲の音楽が近年ではベストの部類に入る良さなんだわこれがまた。

そういうジブリ臭がプンプンしたもんだから、緑あふれる中に白い蝶が飛び交っているという世界観はすんなり受け入れられた。ていうかフツーに好きだな、こういうの。

爆弾の雨あられがポップコーンの雪に、手榴弾の安全ピンが指輪に、ヘルメットが洗面器に、銃が木の棒に、そして彼ら村人が1番恐いのは戦争でもなければ人間でもない。畑を荒らすイノシシなのだ、、、そんな純真無垢な人々が暮らす村トンマッコルに迷い込んでしまった韓国軍2人、人民軍3人、連合軍1人の計6人の兵士たち。

トンマッコルという究極の第三者的空間に放り込まれた彼らの滑稽な姿が鮮やかすぎるほどにあぶり出されていく様は、はっきりいって痛快そのものだし、憎悪の対象者同士が次第に心を通わせていく過程は見ていて心地が良い。

平和な時でさえ仮想敵を作らなければならないような国家という名の下のイデオロギーを身にまとい、憎しみ合い争いつづけることのバカバカしさをこれほど愉快痛快に皮肉って描いた映画はそうはない。それぞれの軍服を脱ぎ捨て、トンマッコルの村の衣服を身にまとった彼らに武器は似合わない。

が、映画はここで終わらなかった。

普通ならここでハッピーエンドでもいいと思うのだが、そこは現在まで厳然として続く朝鮮半島の歴史のリアリズムに裏打ちされた韓国映画の成せるわざなのか、終盤に大きく現実ベクトルへ舵を切った。その点でいえば、この映画の結末には賛否分かれるかもしれない。

村の象徴ともいうべき少女ヨイルが撃ち殺され、トンマッコルを守るために武器をとってしまう、とらなければならない状況に追い込まれた6人の兵士たちは死地へと向かっていく。

結局、平和を守るために武器は必要なのだという結論とも解釈できるのだけど、ただ戦う相手が米軍というのがミソで、ここでもちゃっかりアイロニーを織り込んでいるのは巧いと思う。

う~~ん、、ファンタジーを描かせても韓国映画は凄かった。。

頑張れ日本映画(笑)!!

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(おまけ)

遠くの空に消えた

20070913225555 出演:神木隆之介、大後寿々花、ささの友間、小日向文世、鈴木砂羽、伊藤歩、チャン・チェン

監督・脚本:行定勲

(2007年・日本・144分)WOWOW

評価★★★/65点

内容:一面に麦畑が広がる田舎の馬酔村。都会から転校してきた楠木亮介は、転校早々クラスのガキ大将の公平に目をつけられるが、取っ組み合いのケンカをするうちに意気投合、たちまち親友になっていく。そんな2人は、父親をUFOにさらわれたと言う少女ヒハルと出会う。一方、亮介の父親は、村に持ち上がった空港建設計画の責任者として反空港運動を繰り広げる村人たちに強引な買収工作を仕掛けるが、それがかえって火に油を注ぐ結果となり・・・。

“ここにも居った20世紀少年。。。”

時代背景はおそらく浦沢直樹の漫画「20世紀少年」と同じく70年代くらいの日本だろうし、UFOと交信しようとするヒハル(大後寿々花)なんてサダキヨじゃん(笑)。ともだちマークみたいな旗も出てきよるし。

ま、それはさておき、オリジナル作品にこだわった姿勢は買いたいが、突拍子のないエピソードを別個に羅列していく構成からは本筋がなかなか見えてこず、少々とまどいながら見ざるをえなかった。

しかし、韓国映画の「トンマッコルへようこそ」に出てくる、ここではないどこかにある子供のように純粋な村を想起させるような雰囲気の空間を作り出すことには成功していたと思うし、観終わった後も映画を見たというよりはむしろ舞台劇を見た感覚に近いものを感じて、なんか不思議な感慨にひたれてしまう作品だった。

あえてストーリー性を無視して、夜空にきらめく星々のごとくエピソードを散りばめることで寓話的な要素を抽出しようとしたのかもしれないが、そういう観点から見れば一応やりたいことはやり切った映画にはなってるんじゃないかな。

まぁ、シナリオにもうちょっとメリハリがあったらもっと良かったんだろうけど、ビミョーなところだね。

そういえば、スチュワーデス役の女優さん、オイラ的にビンゴだったんだけど、どっかで見たような見てないような、、、名前が分からん。。誰か教せーて!

2008年11月 2日 (日)

夢のシネマパラダイス545番シアター:光が消える、、あなたを感じる

タイヨウのうた

Taiyonouta 出演:YUI、塚本高史、麻木久仁子、岸谷五朗

監督:小泉徳宏

(2006年・松竹・119分)2006/06/26・仙台フォーラム

評価★★★★/75点

内容:海辺の街に暮らす16歳の少女、雨音薫は、太陽の光に当たれないXP(色素性乾皮症)という難病のため、昼間は外に出られない。しかし彼女は、夜に駅前でギターの路上ライブをするのを日課としながら日々を明るく生きていた。そんなある日、彼女は初めての恋をした・・・。

“YUI=雨音薫という奇跡”

いい加減ウンザリしてきた難病もの、なおかつシンガーソングライターを主演に起用ということで、これはYUIのPVになっちゃうのかぁ!?と高をくくっていたが、フタを開けてみたらそれは全くの杞憂に終わった。

難病ものにありがちな安易なお涙頂戴を狙った演出とは一線を画しており、なにより主人公・雨音薫の生きることに対する真摯かつ前向きな姿勢に共感と好感が持てることが大きい。

そしてなんといってもYUIの存在感だろう。

彼女の拙くも懸命な演技が、窓ガラスからしか太陽の出ている外界を感じ取ることができない薫の人物造型をかえって浮き立たせていてプラスに作用しているし、なおかつ歌の世界に入り込んだときの生きることへの情熱だとか哀しみといった感情の発露を身体全体のエネルギーで表現しきってしまうYUIの圧倒的存在感が、そのまま雨音薫へと完璧に投影されていて、YUI=雨音薫という図式に観る側が何のためらいもなく入り込んでいけることも大きく、そういう意味ではありきたりな言葉になってしまうけども、奇跡のような作品になっていると思う。

“生きることは書くこと”とは作家・柳美里の代名詞的なフレーズだが、“生きることは歌うこと”というフレーズこそYUI=雨音薫にあてはまるのではなかろうか。

その点でいえば、ラストの方のセリフで父親に対し、「死ぬまで生きるって決めた!」と薫に言わせしめたのはこの映画にとって非常に大きい意味のあることで。

“死にたくない”とか“死ぬのはイヤ”ではなくて、“死ぬまで生きる”。

この両者の違いは本当に大きいと思うし、生きることに前向きな言葉を薫に言わせたことでこの映画の色は決定付けられたといっていいと思う。

今までややクセのあった塚本高史も真っ直ぐな好青年役をさわやかに演じているし、期待以上の佳品になっていたと思う。

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大停電の夜に

Daiteiden 出演:豊川悦司、田口トモロヲ、原田知世、吉川晃司、寺島しのぶ、井川遥

監督:源孝志

(2005年・日本・132分)WOWOW

評価★★★/60点

内容:クリスマス・イブの夜を迎えたばかりの東京の街が、首都圏を襲った大停電により暗闇に包まれた。かつての恋を待ち続けるジャズ・バーのマスターと向かいのキャンドル・ショップの女のコ。妻と愛人の間で揺れる会社員。秘めた想いに迷っていた老夫人。エレベーターに閉じ込められた中国人のベルボーイとOL。病院の屋上にたたずむ少女、、、12人の男女の秘めた想いが、静かに動き出す・・・。

“大停電とかけて、映画の出来と解く。そのココロは・・・”

パッとしない。。ウガ×ッ・・・。

人工照明の機能的な明かりではなくキャンドルの光と星空に包まれたほんわかな映像は良かったけど、12人の男女が織り成す群像劇としては人物それぞれに力がないというか、素直すぎるんだよね人物像がみんな。

だからこの映画で重要な要素を占める会話劇にも味がないというか、表面的なちょっとイイ話というところで立ち止まっちゃってる気がする。

例えば、「ラブ・アクチュアリー」なんかと決定的に異なるのはユーモアセンスの有無だと思うのだけど、それが人物像にどう関わってくるのかといえば、その人物の見た目からだけでは分からない内面に抱える触れられたくない変な欠点や、普通の人間の型枠からはみ出している部分、またネガティブな側面だったりをさらけ出す、つまり端的にいえばその人物をカッコ悪く描けるかどうかだと思うんだよね。

それが結局、人物像にユーモアと親しみやすさを付加させることにつながるわけで、そのキャラクターがどんどん膨らんできて最終的にはそれがカッコ良く見えちゃうんだわ。

だから今回の映画の人物像のように、キレイキレイしてるだけじゃ全然深みも広がりもなくて上っ面だけのものにしか見えないってこと。そこがスゴイ残念な映画だったなぁ。

と、この監督、黒木瞳&岡田准一の「東京タワー」の監督さんだと知ってものすごく合点がいった。この映画も映像だけだったもん良かったのって・・・。

夢のシネマパラダイス544番シアター:アフリカ、灼熱の愛

イングリッシュ・ペイシェント

Exntlucpl 出演:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォー、クリスティン・スコット=トーマス

監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ

(1996年・アメリカ・162分)仙台フォーラム

評価★★★★☆/85点

内容:1944年のイタリア。飛行機事故で全身にやけどを負い、生死の境をさまよう男アルマシーを、戦争で恋人も親友もなくした従軍看護婦のハナが、荒れ果てた修道院で献身的な看護を続ける。そして男は断片的によみがえる思い出をハナに聞かせる。消えゆく意識の中で男の脳裏に浮かぶのは、最愛の人キャサリンとのアフリカの砂漠での燃えるような恋の思い出だった・・・。アカデミー作品賞、監督賞など9部門を受賞。

“映画に酔う、至福の時”

今まで映画を数多く観てきて、時には感動し、時には涙を流し、時には腹を抱えて笑い、時には胸が躍るような興奮を味わい、時には納得のいく答えを求めて思考の迷路を彷徨い、時には記憶に焼き付けられるようなショックを受け、、、と様々に心を揺り動かされてきたのだが、“映画に酔う”という体験をしたのはこの映画が唯一無二かもしれない。

喉の渇きをかき立てるとともにロマンをもかき立ててくれる古から変わることのない北アフリカの乾いた大地の壮大なスケール感。

その中で渇きを満たすかのように繰り広げられる情熱の不倫ラブ・ロマンスという危険で甘い香りが、サハラの赤茶けた砂の中にしっとりと染み込んでゆく。

そして、水分を多分に含んだ筆が紙の上を滑らかな筆致で進むように、やがてスクリーンは豊潤な映画のイメージで包まれ、その濃密な浸透力は映画を観る我々の肌にもヒタヒタと押し寄せてくるかのように染み込んでいく。

映画に酔うというのはこういうことなのか・・・。

現在と過去が錯綜する時間軸、北アフリカとイタリア・トスカーナという2つの空間軸が絡み合い、時間の感覚が麻痺してとろけてしまうようなゆったりとした雰囲気を味わうことができる。160分弱という長尺も全く気になることがないままあっという間に時間は過ぎていった。

あと1時間だろうが2時間だろうが見続けていられるような、映画の世界にずっと身を委ねていたい、そんな気分にさせてくれる魅力的な映画だったと思う。

インド人のイギリス中尉キップがジュリエット・ビノシュ扮する従軍看護婦ハナをロープで吊り上げて浮遊させ、松明だけの明かりで壁画を見せるシーンは珠玉でした。

これぞ映画だ!というシーンが目白押しで往年のハリウッド映画を思い起こさせるような気品に満ちあふれた映画です。必見。

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ナイロビの蜂

Hachi 出演:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ユベール・クンデ、ダニー・ヒューストン、ビル・ナイ

監督:フェルナンド・メイレレス

(2005年・イギリス・128分)2006/05/19・盛岡フォーラム

評価★★★☆/70点

内容:ケニアのナイロビ。英国外交官のジャスティンは、アフリカで精力的に救援活動を続ける妻テッサとすれ違いの日々が続いていた。が、そんなある日、テッサが何者かに殺害されてしまう。事件に不審なものを感じたジャスティンは、自ら調査に乗り出すことに。やがて、事件には製薬会社と治験を請け負った会社、そして英国政府との間に国際的陰謀が絡んでいることを突き止める・・・。

“「イングリッシュ・ペイシェント」と比べれば、、、この点数。。”

巷では非常に高評価の本作品だが、個人的にはどうしてもレイフ・ファインズとアフリカでいうと、「イングリッシュ・ペイシェント」を思い浮かべてしまって。

情感と情緒が肌に染み込むような、ときに幻想的なアンソニー・ミンゲラの映像美と狂おしいほどの愛憎劇に圧倒されたクチのオイラは、どうしてもかの作品と見比べちゃうんだよねぇ・・・。

いや、悪くはないんだけどね全然。つくりとしては穴のない確かな手応えのある作品だし。「イングリッシュ・ペイシェント」と比べるとってだけの話で。

「イングリッシュ~」のロケ地はチュニジアということで、北アフリカ地中海世界に組み込まれることもあって、どこかロマンをかき立てられる印象をもってしまうのだが、本作は東アフリカのケニアをロケーションとしており、熱気や厳しい渇きといった、これぞ本場アフリカの空気をドキュメンタリータッチで力強く描写していく手法をとっている。

ハンディカメラを主に使っているのもフェルナンド・メイレレス監督の特徴だが、夫婦の愛情を、厳しい大自然を、そして悲惨な社会の現実とその裏でほくそ笑みながらうごめく“親切な”人々を赤裸々に容赦なく焼き付けていく。

「シティ・オブ・ゴッド」で見せた社会派エンターテイメントの極致ともいうべきメイレレスの才能に対する期待が確信に変わったといっても過言ではない新感覚の演出力には思わず驚嘆してしまうほどだ。

“庭”を軽々と越えて外の世界へ積極的に出ていくパッションのおもむくままに行動する妻テッサの姿を、自分の“庭”から出ることはしない堅実な夫ジャスティンは、窓ガラス越しにただ見つめるだけ。

しかし、妻の死を起点として、ジャスティンは恐る恐る“庭”から足を踏み出しテッサの見た世界を懸命になぞっていこうとする。

その道程で彼の眼前に突きつけられる人間たちのおぞましい欲望と陰謀の真相、と同時に妻テッサの言葉では言い表せない愛の深層に触れていく。

まるで歌舞伎や文楽で演じられる死の道行きのごとき旅路の果てにジャスティンがたどり着いたトゥルカナ湖の湖畔。彼岸の岸辺にたたずむジャスティンの横にはすでにテッサがあどけない笑顔で座っている。

まさにジャスティンのたどった道程は、此岸から彼岸に渡るための死に場所を求めての旅だったのだ。

それをこんな社会派の作品で描ききっちゃうフェルナンド・メイレレスの手腕にただただ脱帽。

自分でも制御できないほどの行動力と情熱を持ち合わせるテッサを演じたレイチェル・ワイズはもちろんだが、それとは正反対に変に慎み深く穏やかなジャスティンの、妻への疑念に揺れる心と真実をつかみ取った確かな表情をしっかり演じ分けたレイフ・ファインズの方が印象に残ったかも。

といいつつ、この点数・・・。

いや、何度も言うようだけど、「イングリッシュ・ペイシェント」と比べればってだけの話で。。ハイ。

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