夢のシネマパラダイス124番シアター:JSA
出演:イ・ビョンホン、ソン・ガンホ、イ・ヨンエ、キム・テウ、シン・ハギュン
監督・脚本:パク・チャヌク
(2000年・韓国・110分)DVD
評価★★★★☆/85点
内容:北緯38度線、韓国と北朝鮮の軍事境界線上にある共同警備区域=JSAで発砲事件が発生。中立国から派遣された女性将校が捜査にあたるが、北と南の兵士の意見は食い違い、やがて驚くべき真実が浮かび上がる・・・。南北分断の悲劇を描き、韓国で「シュリ」以上のヒットを記録したサスペンスドラマ。
“エンターテイメントとして描くにはあまりにも厳しすぎる50年の現実。”
いや、日本の植民地支配時代も含めれば100年以上か・・・。
決してハッピーエンドで終わらせることができないという作り手側の意志はそのまま現在の朝鮮半島の現実とも重なる。
イ・スヒョクの自殺というやり切れないラスト、これはイ・スヒョクの内面を考察してどうこうするというよりも、完全に作り手側の意志が介入したものとみるのが妥当である。
映画、そしてエンターテイメントというある意味逃避の世界と現実世界の折り合いという点であのようなラストを作り手側が選択せざるを得なかったということをこそ考察しなければならないのだと思う。
ジャッキー・チェンの映画に出てきそうなベタベタのスイス人だかスウェーデン人のボッタ将軍が1つだけいいことを言っている。
「調べるのは犯人ではなく、原因だ。重要なのは結果ではなく過程だ。」
全くその通りだと思う。
今のアメリカにこそ言ってやりたい言葉だが、なぜ同一民族で構成されている朝鮮半島が今のような状態になってしまったのか。。。
まったく救いようのないバカげた大国の論理で分断され、後始末もできなくなり、放置プレイとでもいうべき勝手気ままさで操作管理されて・・・。
50年も経てばそういうことさえ薄まり、過去のこととなり、北と南という既成事実だけが厳然として存在する、、、特に自分みたいな1980年代近くに生まれた日本人にとってはまさにそうだ。
考えてみりゃ戦争という惨禍の下で分断という悲劇を奇跡的に味わわなかったのは日本くらいのものだろう。冷戦の前哨戦としてドイツ、朝鮮半島、冷戦体制の中でのベトナム。
すべて大国の論理の下で分断され、果ては戦争へと同一民族が突っ走っていったのだ。
日本は非常に稀なケースといえるだろう。
アメリカは日本を占領統治するにあたって旧ソ連を締め出すことに成功し、アメリカただ1カ国による占領体制がとられた。悪く言えばただそれだけの理由で日本は分断を免れることができたといえる。逆に言えばただそれだけの違いでさらなる悲劇が生まれてしまう・・・。
大国の思惑と論理という置き土産だけを残していき、その土地の人々は放っておく。現在のイスラエル・パレスチナ問題も完全にそうなのだけど、自分たちの蒔いた種がもはや収拾のつかないところまで行き着いてしまうということが繰り返される歴史事実を見るにつけ、この映画のラストは強烈なカウンターパンチともいえるし、なおかつ北と南という大きすぎる既成事実を解消することのあまりにも絶望的な現実の象徴ともいえるのではないか。
悲劇的なラストでしか終わりようのないことにこそ、この映画にこめられた真のメッセージがあるのではないだろうか。
とはいえ、よくエンターテイメントとしても観れる作品に仕上げたものだと思う。感心してしまう。
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タイフーン
監督・脚本:クァク・キョンテク
(2005年・韓国・124分)DVD
評価★★/40点
内容:米軍の秘密兵器を密かに輸送中の貨物船が、台湾沖でシン率いる海賊団に襲撃され、積荷を強奪されてしまう。アメリカが介入に及び腰になる中、韓国政府は元米国海軍将校カン・セジョンにシンの追跡を命じる。さっそく調査を開始したセジョンは、シンが20年前、韓国に亡命を拒否された脱北者であることを突き止める・・・。
“自作自演の香港映画でも見せられているような安っぽさは最後までぬぐえず・・・。”
つーか、あの台風、日本も通るやんけ・・・(笑)。
しかし、南北分断という悲劇を終わらせることは絶望的な問題なのだ、というスタンスともとれる重くのしかかってくるような現実感覚は、「JSA」を見てもそうだったのだけど、平和平和な日本人の想像の域を絶しているんだろうな、と思ってしまう。
反北朝鮮感情や危機感をいたずらに煽るような報道が占めている中、なぜ南北分断という現在のような状況になってしまったのか、それをまず我々もしっかり知ることが大事なのではないだろうか。
日本も過去においてその一要因に加担していたはずなのだから・・・。
それを知ることからしないと、この問題は解決できないだろうと思う。韓国と北朝鮮だけの問題ではないのだということを理解しないと、そして知るということをしないと。。
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