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2008年10月17日 (金)

夢のシネマパラダイス97番シアター:父親たちの星条旗

Main_1 出演:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード、アダム・ビーチ、バリー・ペッパー、ジェイミー・ベル、ポール・ウォーカー、ロバート・パトリック

監督:クリント・イーストウッド

(2006年・アメリカ・132分)2006/11/5・盛岡名劇2

評価★★★★/80点

内容:1945年2月23日、硫黄島の摺鉢山山頂に星条旗を打ち立てた6人の兵士の写真の真実と、戦場から生き残りアメリカ本土に帰還した3人が英雄に祭り上げられ、戦時国債調達のキャンペーンに利用されてしまう様とその後の人生を描いた作品。太平洋戦争で最激戦となった「硫黄島の戦い」を日米双方の視点から描いた2部作の1作目で、アメリカ側の視点で描かれている。

“ようするに人の尊い生命の灯火をたくさん消すには天文学的なお金が必要だってこと、心がすさまない戦争なんてないんだということ、戦争を美談のように能弁と語り、「英雄」を作り出すのは決して戦場に行くことのない者たちだということ。そして傷つくのはいつも無名の若者であり、彼らの生命の灯火をこの世に送り出した母親だということ・・・”

ピュリツァー賞が創設されたのは1917年だが、そこに写真部門が新設されたのは1942年だった。

時はまさに第二次大戦の真っ只中、フォトジャーナリズムが戦争とともに歩んできたことを考えればきわめて自然な成り行きだったのだろう。

それから60年あまり、ピュリツァー賞の写真は悲劇的な事故や事件の決定的瞬間、歴史的瞬間の証言者となってきた。

そこに写されているのは、ベーブ・ルースの引退、人種差別、公民権運動、学園紛争、処刑、殺戮、戦禍、反乱、リンチ、粛清、死のダイブ、暗殺(旧社会党委員長浅沼稲次郎暗殺の決定的瞬間、ケネディ暗殺の容疑者オズワルドの暗殺、レーガン大統領暗殺未遂事件)、内戦、飢餓、東欧民主化、ソ連崩壊、、、とまさにその時代時代を象徴する歴史を克明にとらえてきた。

それはすなわち人間の狂気と業の叫び、そして残酷で無惨かつ容赦のない死をとらえてきたことに他ならない。

そう、フォトジャーナリズムとはかくも残酷な一面を内包しているのだ。

話はそれるが、例えば1994年受賞作「スーダンの飢えた少女」は、飢えのために道でうずくまっている少女の傍らでハゲワシが虎視眈々と少女の死を待っている場面を写した衝撃的な1枚だが、のちに撮影するよりも先に少女を助けるべきだったという批判が湧き起こり、これを撮ったカメラマンが自殺するという悲しい顛末を向かえている。

しかし、一方で、あの写真の誰が見ても一目で分かる強烈なインパクトは、内戦や干ばつで疲弊しきっていたスーダンの危機的状況を世界に知らしめる決定的かつ象徴的な1枚になったことも確かなのだ。

フォトジャーナリズムは、すぐそばにある“死”とともに歩んできた、いや、そこから逃れられない、逃れることができない宿命を背負っている。

そして、その最も象徴的なものが戦争だった。

20世紀、戦争の世紀、、、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム、世界各地で絶えることのない内戦、紛争、、そしてアフガニスタン、イラク・・・。

その全てに関わってきたアメリカは、しかしベトナム以降はほぼ全ての戦争で手痛い傷を負ってきたといってよい。

数々のベトナム戦争映画で描かれてきた疲弊しきり、孤独と荒廃に苛まれる兵士たちの姿(ベトナムを題材にしたピュリツァー賞受賞回数は今までで最多の計9回となっている)、リドリー・スコットが映画化した「ブラックホーク・ダウン」の舞台となったソマリア内戦では、ボロ雑巾のように群衆に引きずられるアメリカ兵の死体、その軍服を剥ぎ取られた無惨な肢体(1994年受賞写真)があまりにも象徴的だ。

しかし、こと第二次大戦に関しては、アメリカは、悪の枢軸から自由と正義を守るために闘ったのだとする自分たちの正当性を今でも決して曲げようとはしないし、これから先もその態度を変えることはしないだろう。

その象徴となった決定的1枚が1945年2月23日にAP通信社のジョー・ローゼンソールによって撮影されピュリツァー賞を受賞した“摺鉢山に掲げられる星条旗”なのだ。

戦略的要衝硫黄島をめぐって1ヶ月続いた激戦で日本軍守備隊2万3千余が全滅、しかし、アメリカ軍も死者7千、負傷者2万6千という太平洋戦争最大の人的損害を被ったというまさに死闘となった硫黄島の戦い。

そのような中で、自由の象徴である星条旗が硫黄島のてっぺんに掲げられるというこの写真が、結果的に第二次大戦の終結とアメリカの勝利を象徴する歴史的な1枚となったわけだ。

しかし、今回のクリント・イーストウッド監督作で描かれたこの写真の真実には思わずこれってヤラセじゃん!?と冷笑してしまうようなシニカルな驚きがあった。

歴史ってやっぱり面白い、と思うと同時に、無力な若者たち、ひいては国民までもが政治権力とときの体制に簡単に利用され操作されてしまう恐さ、そしてメディアそれ自体が持つ力の恐さをまざまざと見せつけられた。

メディア力で世論を操作した人物といえばすぐさまヒトラーを思い浮かべるが、アメリカほど作り話をつくるのに長けたお国もない(笑)。。

1991年の湾岸戦争時にイラク軍が油田を破壊したために原油が海に流出し、海鳥が油まみれになってしまったという誰もが覚えているであろう有名なニュース映像は、まったくのヤラセだったことは周知の事実だし、そういう例には枚挙にいとまがない。。

そこにまたひとつ、第二次世界大戦で最も有名なもののひとつであるあの写真が加わった、、、ということか。。

だが、しかし監督イーストウッドの語り口はヤラセを暴露してやるというような高圧的かつ挑戦的な態度では決してなく、「許されざる者」「マディソン郡の橋」「ミリオンダラー・ベイビー」と同じような控え目で静かな旋律であり、どこまでも淡々としたリズムを刻んでいく。

しかし、そのリズムが戦争の虚しさをいやが上にも引き出していくところはさすがイーストウッドだなと唸らずにはいられない。

雄大な美しい自然と、その中で卑小な人間たちが繰り広げる殺し合いを残酷なまでに対峙させることによって戦争の虚しさを静かに描き出したテレンス・マリックの「シン・レッド・ライン」も今までにない戦争映画だったが、今回のイーストウッド作品には美しい自然は皆無。

どこまでも黒々とした死の大地と、荒涼としたアメリカ中西部の平原と、アスファルトとコンクリートで固められた大都会がフラッシュバックで繰り返されるのみだ。

黒々とした砂の大地と、戦場には決して行かず戦争を裏で操る黒々とした無神経な大人たち、その中で戦争の表舞台である戦場という最前線で地獄と砂と血にまみれる無名の若者たちは、戦争の裏舞台へ引きずり出され、そこでまたさらなる傷を受けていく。

そして利用されるだけ利用された後は好き勝手にポイ捨てされる。そこには救済などない容赦のない現実が大口を開けて待っている。

彼らは「英雄」でもなければ「加害者」でもない。ただの無名の「若者」であり「被害者」なのだ。

戦争映画は大抵の場合、俯瞰的パノラマ的な視点に拠っていく手法が多いが、この作品はよりパーソナルな視点に拠っているところが大きいし、しかも3人の個に複数の時間軸が絡まり、なかなか観る側の視点が定まりづらいというところが難点ではある。

自分としては時間軸を現在と過去というせめて2つにして(今回の作品で製作を務めるスピルバーグの「プライベート・ライアン」のように、、)、もっとオーソドックスにしてもと思ったりもしたが、戦争の表と裏の両方から挟み込まれていく3人の若者を追うにはイーストウッドの手法は的を射ていたのかもしれない。

まあ、なんてったって脚本がポール・ハギスだもんな。。

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(おまけ)

ウインドトーカーズ(2002年・アメリカ・134分)2002/09/01・MOVIX仙台

 監督:ジョン・ウー

 出演:ニコラス・ケイジ、アダム・ビーチ、クリスチャン・スレーター

 内容:1943年、第二次大戦中のガダルカナル島。エンダーズ伍長の任務は、“ウインドトーカーズ”と呼ばれるナバホ族の通信兵を護衛すること。2人の間には次第に信頼関係が生まれていくが、任務の真の目的は暗号の秘密を守ることで、彼が捕虜になることがあるようなら、彼を抹殺することも指令に含まれていた・・・。

評価★★/40点

アクション映画と同じ軽さでしか命を扱うことができないジョン・ウーを監督に持ってきたのは人選ミスとしか言いようがない、、そんな出来。。命の重さと尊さが全く伝わってこなかった・・・。

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