夢のシネマパラダイス501番シアター:戦争ほど酷いものはない・・・
禁じられた遊び
出演:ブリジット・フォッセー、ジョルジュ・プージュリ、リュシアン・ユベール
監督:ルネ・クレマン
(1952年・フランス・87分)NHK-BS
評価★★★★/80点
内容:1940年6月のフランス。ドイツ軍の手に落ちたパリを追われ、田舎道を急ぐ難民の群れにナチス戦闘機が襲い掛かってきた。5歳の少女ポーレットは、機銃掃射で両親を殺され、死んだ小犬を抱いたまま一人ぼっちになってしまう。彼女は難民の列から離れてさまよううちに、牛を追ってきた農家の少年ミシェルに出会った。11歳になる彼はポーレットの不幸に同情して彼女を家に連れ帰る。。ヴェネチア国際映画祭作品賞。
“はっきりいってこれはコメディだ!”
シュールなコメディ。
橋の上でドイツ軍機の機銃掃射をくらってポーレットの両親があっけなく亡くなる場面しかり、ポーレットの愛犬を川に無造作に投げ捨てるバァさんしかり、牛に蹴られて負傷し容態が悪化したミシェルの兄にひまし油を無理やり飲ませる場面しかり、そこで兄のために祈りながら頭の中は“墓地”のことで一杯のミシェルが新たな獲物を見つける場面しかり、隣家どうしの取っ組み合いの大乱闘しかり、嘘をつくとき鼻がヒクつくポーレットしかり・・。
そういう一見シュールなコメディタッチで彩られた本作だが、しかしそれを包み隠すように鳴り響くアコースティックギターの旋律があまりにも印象的。
そしてラスト、、、この作品唯一にして戦争がもたらす残酷な惨禍を非情なリアルさで映し出したラストが“FIN”という字幕とともに全てを飲み込んでいく。
あとに残るのは、痛くて痛くてどうしようもない自分の心と戦争がもたらす悲しみの深さだけだ。
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コーカサスの虜(1996年・カザフスタン/ロシア・95分)NHK-BS
監督:セルゲイ・ボドロフ
出演:オレグ・メンシコフ、セルゲイ・ボドロフJr.、スサンナ・マフラリエヴァ
内容:ロシア軍兵士のワーニャとサーシャは、チェチェンの戦場で捕われてしまった。2人を金で買ったアブドゥルは、2人をロシア軍に捕まった彼の息子と交換しようとするのだが、交渉はうまくまとまらず、やがて些細な事から悲劇へと変わってしまう・・・。トルストイの短編小説を、チェチェン紛争に置き換えて映画化。
評価★★★★/80点
おそらくこれから先も人間は憎しみ合い殺し合うことを止められないのだろう。
しかし、とともに語り合い許し合うことも止められないはずなのだ。
そんな十字架のごとき性を背負った人間というものを見事に描ききった佳品。
それにしても、、、主人公が痩せてる時のロナウドに似ている。。てのはどうでもええ。
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ライフ・イズ・ビューティフル
出演:ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジオ・カンタリーニ、マリサ・パレデス
監督・脚本:ロベルト・ベニーニ
(1996年・イタリア・117分)仙台セントラル劇場
評価★★★★★/90点
内容:1939年。書店を開業しようとトスカーナ地方の町アレッツォにやって来たユダヤ系イタリア人グイドは、そこで小学校教師ドーラと恋に落ち結婚。幸福な家庭を築いたグイドとドーラだったが、町はナチス・ドイツに占領されていった。グイドは息子ジョズエとともに強制収容所に送られ、ドーラも夫と息子の後を追う。その日からグイドは、命をかけて息子を守ろうと、必死に知恵を絞る。。。カンヌ国際映画祭審査員グランプリやアカデミー賞外国語映画賞、主演男優賞などを受賞。
“人の不幸は面白い、というスタンスをホロコーストを題材にとりながら徹底的に深化・デフォルメしていく道化師ベニーニの才能と、喜劇人・映画人としての覚悟と魂にただただ感服。”
人間の愚かさ、悲惨さ、残虐かつ無惨な歴史、怒り、憎しみ、不幸。
それらを理屈抜きの笑顔と無心な表情だけで映し出していく凄さ。
オイラはその中にたしかにリアリズムは生み出されていたと思う。
人の不幸は面白い、というスタンスをホロコーストを題材にとりながら徹底的に深化しデフォルメしていくベニーニの才能と喜劇人・映画人としての覚悟にはただただ驚くばかりだ。
そして、その中から見えてくる人生の素晴らしさと生きる喜びと幸せ、そしてそれが壊されていくことへの怒りという真実は果てしなく重い。
リリー・フランキーは、その著作の中で、「人間の能力には果てしない可能性があるにしても、人間の“感情”はすでに、大昔から限界が見えている。感情の受け皿には、もう可能性はない。」と述べている。
人間を選別する能力、人間を貶める能力、人間を管理する能力、人間を焼却する能力・・・・恐ろしく愚かなくらい果てしない人間の能力。
しかし一方では、なぞなぞをスラスラと解く能力、陽気におどけてみせる能力、家族を守るために全能力の中から数パーセントを弾き出して嘘をつく能力、人を愛する能力、人を信じる能力、残虐な能力からかけ離れた簡単で滑稽ともいえるような能力をも人間は有している。
それもまた人間の果てしない可能性の中のひとつなのだ。そしてそれこそが最も人間らしい能力なのだとベニーニは言っているような気がする。
この映画は、人間賛歌の映画だったのだ。
憎しみや怒りよりも、滑稽であろうとまずは笑顔と喜びなのだと。
それを映画という“嘘”な世界で“完璧な嘘”を貫き通して表現したベニーニにオイラは感嘆を禁じえない。
そして我々の感情の受け皿には深い悲しみと静かな怒り、そして優しい勇気と嬉しさが残る。
凄い映画だ。
ジョズエにウィンクして見せるグイドの姿が忘れられない。
最後に、ユーモアの大切さについて、アウシュビッツ強制収容所で妻と二人の子供を殺され、苛酷な体験をした心理学者V・E・フランクルの言葉を借りよう。
“ユーモアは自分を見失わないための魂の武器だ。ユーモアとは、ほんの数秒間でも、周囲から距離をとり、状況に打ちひしがれないために、人間という存在に打ちひしがれないために、人間という存在に備わっている何かなのだ”(その著書「夜と霧」より)
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ビルマの竪琴(1985年・東宝・133分)NHK-BS
監督:市川崑
出演:中井貴一、石坂浩二、北林谷栄、川谷拓三、渡辺篤史、小林稔侍、菅原文太
内容:1956年に自ら映画化した竹山道雄の反戦小説を、同じ市川崑が前作と同様に和田夏十の脚本をもとに、念願のカラーで再映画化。1945年夏、ビルマ戦線で敗退する日本軍の井上小隊は、タイ国境近くまで苦難の退却を続けていた。やがて戦争が終わり、収容所に入れられた井上隊は、そこでオウムを肩に乗せた1人のビルマ僧と出会う。ところが、その僧侶は敗戦を信じず降伏しない小部隊を説得に行ったまま戻らなかった水島上等兵にそっくりだった・・・。
評価★★★★★/90点
残酷な大人のメルヘンと、戦争というリアリズムの極致の絶妙な共存。
映画という表現方法の奥深さと無限の可能性をまざまざと見せつけられた気がする。
傑作です。
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イノセント・ボイス-12歳の戦場-(2004年・メキシコ・112分)WOWOW
監督:ルイス・マンドーキ
出演:カルロス・パディジャ、レオノラ・バレラ、ホセ・マリア・ヤスビク
内容:1980年代、わずか12歳の少年が徴兵される激しい内戦下の中米エルサルバドルを舞台に、徴兵におびえながらも懸命に日々を生きるひとりの少年の姿を力強く描いた衝撃のドラマ。実際に内戦下のエルサルバドルで少年時代を過ごし、14歳でアメリカに亡命したオスカー・トレスの自伝的脚本を、メキシコ出身のルイス・マンドーキ監督が映画化。
評価★★★★/75点
あんな地獄のような環境においても恋をして笑ってはしゃいで、ついでにオナラまでして、しっかり愛に包まれながら生きているんだ。人間のあるべき営みの姿が力強く描かれているのがささやかな救いか。
あの状況で外に遊びに行かせるのもこれまたスゴイことなのだけども。。
川向こうに住むおばあちゃんがお金を手渡して、少しだけどこれで何かおいしい物でも買って、、と言うかと思いきや、これで何か武器を買ってと言うんだもんなぁ・・。
言葉に詰まってしまうよ・・・。
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