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2008年8月26日 (火)

夢のシネマパラダイス96番シアター:DEATH NOTE デスノート前後編

S054027 出演:藤原竜也、松山ケンイチ、瀬戸朝香、香椎由宇、鹿賀丈史、中村獅童

監督:金子修介

(2006年・日本・126分)2006/07/04・MOVIX仙台

評価★★★/60点

内容:「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ!」死神界で退屈極まりない日々を送っていた死神が、退屈しのぎに人間界に落とした死のノート=デスノート。そのノートを拾ったのは、誰にも負けない頭脳を誇る天才エリート学生・夜神月(やがみライト)。彼は、犯罪のない理想の世界を築くため、自らの手で世界中の犯罪者を裁き始める。しかし、ライトの前に名探偵Lが立ちはだかる。

“所詮お子ちゃまレベルと言ってしまえばそれまでだが、例えば戦争の抑止力が核(世間ではそう言われているらしい・・・)なら、犯罪の抑止力がデスノートなのか、、、とかそういう考えをめぐらすこと自体全く意味をなさないほど単純エンタメとして楽しむための作品。そう、死神界で過ごすのが退屈でたまらなくなって、面白そうだからという単純な理由で人間界にデスノートをわざと落とした死神のように。”

“このビデオを見たら1週間後に死ぬ”という誰にでも分かる幼稚な発想を見事ホラーに昇華・具現化したのが小説「リング」ならば、“このノートに名前を書かれたら死ぬ”という幼稚な発想を、マンガ媒体でありながら見事サスペンスミステリーに昇華・具現化したのがマンガ「デスノート」だといえる。

しかも、マンガ「デスノート」は過剰ともいえる状況説明や解説セリフとモノローグの駆使、ロジックとトリックを巧妙に組み合わせた頭脳戦、硬質な絵柄という特徴をもっていながら、それら要素とは似つかわしくない少年マンガ誌、しかも努力と根性が売りの週刊少年ジャンプに連載されるというまことに異質な作品だった。

しかし、にもかかわらず、そのギャップをこの作品は人間ドラマを徹底的に省いたスピード感あふれる頭脳バトルと、安易で説教的な思想論に落とし込まずにエンタメとして徹底的に単純化することによって埋め、ある種のゲーム感覚で見させている。

やはりなんだかんだ言ってこれはまさしく少年マンガの方法論なのだ。

かくいうオイラもこのマンガにハマッたくちなのだが、この内容で青年マンガ誌というのはちょっとムリだろうなぁとは感じていた。

やはり少年誌レベルでちょっと大人ごっこしてみました、でも実体は子供レベルですよ、というかんじだろう。

しかし、そこらへんのところを少年ジャンプを読む子供たちがどう捉えるか、“死を自由に操れる”という題材が題材なだけに、賛否両論物議を醸したというのは分かる気がする。

でも例えば自分が小学生だった頃は、ドラゴンボールやキン肉マンをこぞって見ていたが、両作で頻繁に描かれた“登場人物が1回死んだのにまた生き返ることができる”というプロットに対して、子供たちに悪影響を与えているとお堅い大人たちに言われたことを思い出すが、当の子供だったオイラは、いや他の子供たちだって現実の“死”は再生絶対不可能というのは理解していたはずだ。

例えばドラクエで生き返る呪文を唱えれば生き返ってやり直すことができるというTVゲーム感覚と同じなわけで、現実とファンタジーの境界線というのは、ファンタジー漬けの毎日を送っていた自分にもしっかり明確に引かれていたのだ。

まさか、今の子供たちにはそれが無いというわけでもなかろう。<注>

まあ、そういう点では、マンガ「デスノート」の終わり方は納得できるし、死んだキャラクターは決して生き返らなかった、ということもこの作品のけじめとして評価できると思う。

さて、そろそろ肝心の映画の話へ。

まず、率直な感想から言えば、マンガを読んでた時の自分のテンションを100とすると、映画を観てたときのそれはせいぜい60といったところ。。

それもそのはず、少年マンガのつくりの方法論で徹底的に単純化、幼稚化されたマンガ原作をさらに単純化してスリム化していったのが今回の映画なのだから・・・。

もともと、このマンガ原作を映画化する際のキーポイントとなるのは、先に指摘した人間ドラマの欠如という面をどう補っていくのか。

また、どのマンガにも増してセリフや、キャラクターの心情をナレーションで説明するモノローグが多用されているマンガであるという特徴がある中で、しかし映画手法においてモノローグというのは禁じ手であるという相反する要素をどのように映画として表現していくのか。

この2点がもっとも大きなポイントだと思っていたが、、、フタを開けてみたら、セリフの取捨選択で単純にスリム化を図っていき、モノローグを心情描写ではなく説明セリフとして特化させることで上手くまとめているというのがこの映画の特徴だろう。

これだけとってもマンガ原作よりレベルが数段落ちるのは確実なのだが、単純にスリム化していくことによって落ちていくレベルを強化、維持するために映画版オリジナルキャラ秋野詩織、しかも夜神月の恋人という設定で出してきたのにもかかわらず、全く人間ドラマが描かれていない(のか描こうとして描けていないのか)のは正直イタイ。

また、その影響を(あるいは被害といってもいい)最も受けたのが夜神月のキャラ作りであることは明白だろう。

マンガ原作より明らかに人間味が付け加えられていて、それはそれで全然かまわないのだけど、しかし大学生の夜神月が犯罪のない世界を作るという理想に燃える良心者から一転して罪深き悪魔へ変貌していく様、いわばダークサイドに堕ちていく過程が全く描かれていないことがより明確に露わになってしまっていることが、悲しいことにこの映画のレベルをますますもって貶めさせているのだ。。

やはり、映画になっても所詮はゲーム感覚の粋を超えられず、か・・・。

マンガでは完全無欠の優等生かつナルシストで自己陶酔に浸り、バカ女には興味なし、苦悩や恐怖に無縁の天才夜神月がダークサイドに落ちてもまだどこかで応援してしまうような悪魔的カリスマ的魅力があっただけに、藤原竜也で大丈夫かな、と思っていたが、そもそも映画でのライトのキャラの性格付けが異なっていたことからすると、まあまあ無難にこなしていたのではないかと思う。

ここまでさんざんけなしてきた感があるが(笑)、しかし原作のスリム化という点ではよく出来てたんじゃないスか。

司法試験に合格したライトが法制度の理不尽な欠陥に憤り失望し、それを法曹界のバイブル六法全書を捨てた後にデスノートを拾うという分かりやすい形で映像化した表現方法なんかは単純に上手いと思う。

やはり、わけが分からない映画になるのが1番失望は大きいので、それを考えるとシンプルかつ分かりやすくまとめられていたので、それはそれで良かったのかな。。

(初記)2006/07/07

追記:<注>しかし、後に知ったが、ある調査では小学生の6割が、死んだらまた生き返ることができると思っているらしい。。

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DEATH NOTE デスノートthe Last name

20061105164437 出演:藤原竜也、松山ケンイチ、戸田恵梨香、片瀬那奈、池畑慎之介、津川雅彦、鹿賀丈史、中村獅童

監督:金子修介

(2006年・日本・140分)DVD

評価★★★/55点

内容:死神リュークが落としたデスノートを拾い、凶悪犯を次々と粛清していく天才大学生、夜神月。巷では犯罪者の連続不審死が救世主“キラ”の出現と賞賛され始めていた。そんな中、彼はキラ逮捕に協力すると称し、前作で失態を演じた警視総監の父、そして宿敵Lのいる捜査本部に自ら潜入する。そんなある夜、売れっ子アイドルの弥海砂ことミサミサは、暴漢に襲われそうになったところを死神レムによるデスノートにより助けられる。。

“この監督にカメラで覗かれた女性は、太股を必要以上にさらけ出してしまう・・・。”

金子修介の極度の足フェチが1番印象に残った映画だった、、、というのが率直な感想なんだけど。。

映画としては、、う~ん、、、まぁ前編のレビューで、マンガを読んでたときの自分のテンションを100とすると、映画を観てたときのそれはせいぜい60といったところ、、、と書いたのだけど、今回はもっと低くてせいぜい55といったところ・・。

まず、原作との相違点としては、ミサミサが第二のキラ容疑で逮捕され、ライト自らへの疑いを晴らすため、「最低13日以内に人の名前を書きつづけなければ自分が死ぬ」という嘘ルールを追加した上でデスノートの所有権を捨てて、それまでのデスノートの記憶を失うというライトの行動までは同じ。

違うのはここからで、ヨツバキラ事件とメロ&ニアvs夜神月という第2部をまるまる省略している。

そして、第2部に出てくるNHNアナウンサー高田清美をさくらTVのアナウンサーという設定にし、原作に出てくるヨツバキラ火口の役回り、すなわち第3のキラとしての役回りを演じさせ、原作におけるヨツバキラの捕獲作戦で高田清美の正体が暴露されてしまうというショートカット戦法でストーリーを転がし、原作第1部の大団円へとうまくはめ込んでいる。

また、例えば顔がバレないように(顔と名前が一致しなければ殺せないので)ヘルメットを装着して突入するプロットなんかは、原作第2部におけるメロがいるマフィアアジトへの突入作戦から持ってきているように、ポイントポイントで原作第2部をうまく取り込んでいる。

そしてその中で最大の相違点は、いわずもがなラストの大団円なのだが、これも第2部でニアが実行したノートすり替え作戦というプロットを持ってきて第1部と第2部の結末を融合させた形にしている。

このように、まぁつくりとしては要するに第2部のニア&メロvsライトの大団円に至るまでをうまくショートカットして第1部と第2部の結末を合体させたという形にしていて、上手くまとめられているとは思うんだよね。

ただ、それが観る側のテンションにつながっていかないのがイマイチというか。

はっきりいってこの映画のオチは完全に想定内なんだよな。予定調和というか。

原作第2部のラスト、ニアとライトの対峙でのライトの本性剥き出しの鬼気迫る壮絶なあがきは、芸達者藤原竜也の絶対にハズせない見せ場であることは最初から分かっていたわけで、それをLvsライトという映画の主軸のストーリーの中でどう絡ませて決着をつけるのかというのが最大のポイントだと思っていたのだけれど。

それを今回の映画では、ノートすり替え作戦を超えるLの究極の選択と覚悟でもって、原作でのLの無念の死に全く別な意味をもたせてうっちゃりを決めたのはつくりとしては完璧に近いとは思う。

けど、落としどころとしてはまぁこんなもんだろうな、、、という安っぽさが透けて見えるのがなんともツライところで、それは死、そして殺人までもが記号的にしか見えないという現実感覚の麻痺した、およそゲーム感覚の枠を超えられない世界観しか提示できなかったことに起因するように思われる。

それでいて「仕方がないので、私は自分の命をあきらめることにしました」とLにとどめを刺されちゃあ、こりゃ完全に命の値段をゲーム脳が上回ったなと脱力しちゃうわなぁ。。。

ノートに名前を書かれた者は死ぬという非現実的かつヴァーチャルな世界観は十分マンガチックではあるのだけれど、それをマンガ原作では徹底的にダークな世界観でもって醸成し上塗りすることで今までのマンガでは考えられないほどリアルでテンションの高いサスペンスを盛り上げることに成功していたが、そのような世界観を提示できなかった映画の方が逆にマンガチックに見えてしまったような気もする。

映像はマンガとは違って良くも悪くも虚構的現実をリアルに目の前にさらけ出す力を持っているが、そこに単純におんぶに抱っこしてしまい、それがかえってマンガチックな世界観とキャラクターを強調させてしまい、ヴァーチャルな世界観から抜け出すことができないという結果をもたらしたのはなんとも皮肉だ。

まぁ、結局最後までお子ちゃまランチの域を出ない作品だったが、コミックのスリム化で小奇麗にまとめた点は買うとしても、映像化するにあたっては原作とは異なるアプローチで記号ではなくあくまでもリアルな触感を求めていってもらいたかったな。

だからって太股を極端に露出しろとは言ってないゾ(笑)。

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L change the WorLd(2008年・日本・128分)WOWOW

 監督:中田秀夫

 出演:松山ケンイチ、工藤夕貴、福田麻由子、南原清隆、石橋蓮司、瀬戸朝香、藤村俊二

 内容:デスノートを使い新世界の神になろうと目論む夜神月との最終決戦に臨んだLは、自分の命とワタリの死という代償を払ってキラ事件に終止符を打った。そんな中、タイでひとつの村が焼き尽くされ消滅。それは世界の崩壊にもつながる新種のウイルスによるバイオテロ事件の予兆だった・・・。

評価★★/40点

“南ちゃんがいつセリフを噛むかが1番の恐怖!”

そもそものところで、Lというキャラを掘り下げること自体にオイラの需要がないんだけど・・・(笑)。

それを言っちゃあオシマイよってなわけだけど、それにしたって背筋をピンと伸ばすアクティブなLなんざ、こちとら見たくないわけよ。

デスノートのスピンオフ企画とはいえ、中田秀夫のグログロ演出もイマイチな世界観だったし。鶴見辰吾の死にざまホラーショウなんてやりすぎ。

名前を書かれたら死ぬというデスノートが、感染したら死ぬというウイルスに変わっただけで、こんなにありきたりなご都合主義映画に成り下がっちゃうとは興ざめだな。

とはいえ、デスノートの映画の方もお子ちゃまランチレベルだったけども・・・w

やっぱLは引きこもりだからこそLなんだよ。よう反省しいや。

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