夢のシネマパラダイス368番シアター:My Favorite Director 張芸謀
活きる
監督:チャン・イーモウ
(1994年・中国・131分)NHK-BS
内容:1940年代の中国。資産家の息子だったフークイは、博打にのめり込むあまり家屋敷など全財産を失う。身重の妻チアチェンはそんな夫に愛想を尽かし実家へ帰ってしまうが、半年後、長男が誕生したのを機にフークイのもとへ戻ってくるのだった。心機一転、困窮する一家の家計を支えようとフークイは得意の影絵の巡業を始める。が、その矢先フークイは国共内戦に巻き込まれてしまい、共産党軍の捕虜になってしまう・・・。内戦や文革といった激動の中国に生きた一家の30年にわたる物語を描いた大河ドラマ。カンヌで審査員特別賞などを受賞しながらも、中国当局により本国では上映禁止処分に。日本でも初公開は2002年まで下らなければならない。
評価★★★★/75点
“自分の抱えてる悩みなんて、ちっぽけなもんだよなぁ・・・。”
親が子供を失うことの絶望、それでも生きていかなければならない苦しみは想像以上のものがあると思う。
例えば、オイラの伯母さんだ。
うちのオカンの姉にあたる人で、今まで子供を3人生んで育ててきた伯母さん。
オイラにとってはその子供たちは従兄弟にあたるわけだけど、しかし長男は赤ん坊の時に不慮の事故で亡くなり、次男は障害をもったまま生まれて20年間ほぼ寝たきりのままで亡くなった。三男はオイラと同い年で子供のときからよく一緒に遊んでいるが、彼もまた癲癇という病気を患っている。
子供を2人亡くすなんて、こんな不幸があっていいものなのだろうか・・・。
しかし、この伯母さん、いっつも笑顔が絶えなくてケラケラ笑い、伯母さんがその場にいるだけでそりゃもう楽しいのである。笑いが尽きない幸せな場となるのだ。
ある時、ふとウチの親父がこんなことを言っていた。
伯母さんはいっつも笑顔が絶えなくて明るくて話し上手で面白いけど、2人の子供を亡くした悲しみは想像を絶するものがあっただろうに。伯母さんの強さは自分には真似できないよホント、、、と。
それを聞いたときにオイラは初めてハッと気付いた。
それまで伯母さんの笑顔の裏にあるはずの悲しみなどこれっぽっちも考えたことなどなかった。
生きるということ。つらさを強さに変えていく過程における苦しみ。それを乗りこえて生きていく。
生きるって、スゴイことだな。
伯母さんには2人の分も長生きしてもらわないとね。
この映画を見てそんなことをふと考えてしまいました。
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至福のとき(2002年・中国・97分)2003/01/12・新文芸坐
監督:チャン・イーモウ
出演:チャオ・ベンシャン、ドン・ジェ、フー・ピアオ
内容:中国の近代都市・大連。工場をリストラされて失業している男チャオは、“至福旅館”の経営者の名を騙ってある女性とお見合いをするが、その女性の連れ子である盲目の少女ウー・インを預かるはめに。。しかし、継母であるその女性につらく冷遇されていることに同情したチャオは、廃工場に按摩室を造って、仲間に客のフリをするなどの芝居を打ってもらいウー・インを稼がせる。そして彼女も次第に生きる希望を取り戻していき、チャオとも親子のような間柄になっていくのだが・・・。
評価★★★★/80点
“ジャイアン一家に拉致されたしずかちゃんを救出したのは、鼠が好物そうなまぎれもないドラえもんだった!!”
また先に忠告しときますが、しずかちゃんの入浴シーンはございません(笑)。。
という冗談はさておき、ラスト、1人であんなん放り出されて、入浴シーンどころかフロに沈められるような境遇になりはしないか、それだけが心配心配。
どうか良い人に出会えますように。みんなも願い!
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あの子を探して
出演:ウェイ・ミンジ、チャン・ホエクー、チャン・ジェンダ、カオ・エンマン
監督:チャン・イーモウ
(1999年・中国・106分)2000/08/09・Bunkamuraル・シネマ
評価★★★★/75点
内容:舞台は中国の田舎の小学校。1ヶ月間学校を離れることになったカオ先生のかわりに、村長から代用教員に指名された13歳の少女ウェイ。28人の生徒が一人もやめなかったら褒賞金をあげるというカオ先生の言葉を信じて、子供たちを懸命に看るのだが、ある日、1番やんちゃな少年ホエクーが家の事情で都会へ出稼ぎに出てしまい・・・。ベネチア国際映画祭で金獅子賞。
“中学時代、すぐチョークを投げつける先公がいて何度もぶつけられた。そいつにこの映画を首根っこひっ捕まえて無理やり見せてやりたい。”
痛ってーんだよっマジで(笑)。
今は懐かしい思い出だけどさ。。
と、肝心の映画の方はすごく良かった。
お金じゃ買えないもの。
彼女の瞳から流れ落ちるひとしずくの涙。人々の良心。子供たちの笑顔。
都会の街に行って1番良かったことはと訊かれたホエクーが、食べ物をもらったことと答えたのが印象的だった。
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LOVERS
出演:金城武、チャン・ツィイー、アンディ・ラウ、ソン・タンタン
監督・脚本:チャン・イーモウ
(2004年・中国・120分)2004/09/11・MOVIX仙台
評価★★★★/80点
内容:唐の時代。反乱軍“飛刀門”の壊滅を朝廷から命じられた2人の官吏、リウとジン。ジンは反乱戦士を装い、目の不自由な飛刀門の娘シャオメイに近づくが、2人はいつしか惹かれあう・・・。
“「HERO英雄」から登場人物を2人削って、さらに尺を30分増やせばこのくらいできて当たり前。。。”
形式や様式にとらわれてがんじがらめになっていた「HERO」から一転、その制約の鎖を解き放った今作。
その結果リスクチャレンジと引き換えに自由を獲得するとともに人間の情と生気のほとばしりをも画面に切り取り、かたちの先にあるものをしっかり描ききることに成功している。快作。
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単騎、千里を走る
出演:高倉健、寺島しのぶ、リー・ジャーミン、チュー・リン、中井貴一(声のみ)
監督:チャン・イーモウ、降旗康雄(日本編監督)
(2005年・中/日・108分)2006/02/07・盛岡中劇
評価★★★★/75点
内容:静かな漁村に暮らす高田剛一のもとにある日、東京にいる息子の健一がガンに侵され余命僅かだとの報せが届く。しかし、父と子の間には長年に渡る確執が存在し、面会すらできない状態になっていた。息子ともう一度向き合うことを決意した高田は、嫁の理恵から民俗学者の健一が、中国の有名な俳優リー・ジャーミンと交わした約束を果たすことができず悔やんでいることを知らされる。そこで高田は、健一の代わりに彼がやり残した仕事―中国奥地に伝わる仮面劇「単騎千里を走る」の演目をビデオに収めようと、無謀にもたった一人で中国の麗江市へと旅立つのだった・・・。
“中国の中国による高倉健のための映画”
携帯電話、デジカメ、デジタルビデオを自由自在に操る高倉健の姿というのも何か奇異に映ったが、異国の地である中国を文字通り“単騎、千里を走る”姿が、男鹿半島で仁王立ちしている姿よりも自然となじんでいてしっくりきているというのが面白い。
高倉健の一途さと無器用だけど素朴な人情というのは、悲しいことにもはや人と人との交流が希薄になっている日本では前時代的な忘れ去られていく遺産、あるいはファンタジーとなってしまっているのかもしれないな、なんてことをふと考えてしまった。。
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秋菊の物語(1992年・中国/香港・101分)NHK-BS
監督:チャン・イーモウ
出演:コン・リー、レイ・ラオション、コオ・チーチュン
内容:秋菊の夫が些細なトラブルから村長に股間を蹴られて怪我をしてしまった。反省しない村長の態度に納得できない秋菊は、身重の身体で郡の役場へ行き訴えるが、それでも村長の態度は変わらない。ブチ切れた秋菊は今度は県の役所へ向かうのだった。。。ヴェネチア国際映画祭で作品賞受賞。
評価★★★/60点
“この映画を観てから、これからは何でもいいからまずは謝っておこうっと思うようになった・・・。”
それにしてもあの映像は素晴らしいものがある。
紅色がかった映像。寂寥たる村の風景と切るような冬景色の中で落ち着きと暖かさを与えてくれる。
と思ったらいきなり都会の絵が出てきたのでビックリ。なんつーかふた昔前くらいのお話だと思ってたので。。
しかし、この話、最初はほほ笑ましく見てたけど、度を過ぎてくると急速に引けてきた。
あの奥さん、相当欲求不満だったらしい・・・。
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