夢のシネマパラダイス392番シアター:ただ、君を愛してる
監督:新城毅彦
(2006年・東映・116分)DVD
評価★★★★/75点
内容:大学の入学式を自分の発する匂いが気になって欠席した瀬川誠人は、萌え萌えなメガネっ娘の里中静流と出会う。写真が趣味の誠人は、なかなか大学生活になじめない中、静流とは自然と打ち解けることができた。そして2人はキャンパス裏の秘密の森に写真撮影に出かける日々を送る。が、誠人は同じクラスのみゆきに片思いをし、子どもっぽい静流のことは恋愛対象として見れなかった。そんな誠人に「自分が好きな人が好きになった人を好きになりたい。」と言って、みゆきと友情を結んでしまう静流は、誠人が振り向いてくれるようなイイ女になると決意するが・・・。堤幸彦監督の「恋愛寫眞」をもとに、『いま、会いにゆきます』の作家・市川拓司が新たに書き下ろしたアナザーストーリー『恋愛寫眞もうひとつの物語』を映画化。
“宮崎あおいを、あおいタンと呼びたくなる映画”
宮崎あおいという人は唯一無二の特質を兼ね備えた稀有な存在の女優さんだと思う。
では、同年代の女優が持ちえない、いや全ての女優が持ちえないと言っても過言ではない唯一無二の特質とは何か。
それは、少女と大人の間の境界線に映画デビュー以来ずっと立ち続けていることだと思う。
しかも少女の中には、多分に少年性も含まれていて中性的な面をも持ち合わせているところも天性の素質といえるだろう。
多感な10代から20代に差し掛かる年代にとって、この変わらない素質を持ち続けることは実はスゴイことだと思うのだが、少女の肩で支えるにはあまりにも重いものを背負わされてきた薄幸の役柄を演じ続けてきたことと無関係ではなかろう。
しかもその薄幸に屈するようないたいけさよりは、その運命を静かな深い眼差しでまっすぐに見つめて受け止めていくだけの芯の強さを持っているところが宮崎あおいの宮崎あおいたるゆえんなのだ。
映画デビュー作「あの夏の日~とんでろじいちゃん」(1999)の肺病に侵された少女からはじまり、つづく「ユリイカ」(2000)でのバスジャック事件から生還したものの言葉を失ってしまった少女、「害虫」(2002)での窒息しそうなほど残酷な日常の中で少女であることをやめた中学生、「初恋」(2006)での親に捨てられた孤独な世界で“大人になんかなりたくないっ!”と叫ぶ女子高生、また極めつけなのはNHKの朝ドラ「純情きらり」(2006)で朝ドラ史上前代未聞の最終回で結核に侵されて亡くなってしまう主人公・桜子が記憶に新しい。
とにもかくにも苛酷な現実に否応なくさらされる中で自らの意志と足ですっくと立ち上がり前に歩いていく姿は、単なる少女の枠を越えていて、女性の強さというものを真に感じさせる。
かといって大人になりきれているわけではなく、その中身はまだ未熟で傷つきやすい少女という一面も有している。
その意味で宮崎あおいは少女と大人の境界線に立ち続けている女優さんだといえるのだ。
さて、そこで本作「ただ、君を愛してる」に話をうつすと、宮崎あおいの立ち位置である少女と大人の境界線から内側(少女)と外側(大人)に一歩足を踏み込み、両者を分離させた別個のものとしてヒロイン・静流を描き分けているのがミソで、宮崎あおいにとっては、少女から大人に脱皮するターニングポイントともいえるキャラクターに挑戦している。
が、しかし、境界線を内側に踏み込んだキャラクターというのがこれまた凄くて、一歩踏み外しただけでこうなっちゃうのかよというくらいに不思議系なメガネっ娘でまるでマンガのキャラクターとでもいわんばかりのウザキャラなのだが、さらにそこに大人に成長したら死んでしまうというおとぎ話のような枷をかけるという、これはもう完全に非現実のブッ飛びキャラである。
が、これをなんなくモノにしてしまうのが宮崎あおいのスゴイところで、大人というタガが外れたためか、こんな天真爛漫な彼女は見たことないというほどに生き生きとしているのだ。
そして、精一杯の恋をしてある決意を胸に大人になる静流。
NYの個展で展示されていた大人になった彼女の写真たった1枚だけでそれを表現し、物語に説得力をもたせた宮崎あおいの存在感にただただ圧倒されてしまう。
まぁ、メガネっ娘キャラの方が突出していたのはたしかだが、兎にも角にもあおいタンなしでは絶対に成り立たなかった映画だったといえよう。
今年度2008年大河ドラマ「篤姫」で1年かけてどのような成長を見せて“大人”になっていくのか非常に楽しみである。
宮崎あおい、、、今後2,3年片時も目が離せない女優である。
--------------------------
恋愛寫眞
出演:広末涼子、松田龍平、小池栄子、ドミニク・マーカス、山崎樹範
監督:堤幸彦
(2003年・松竹・111分)WOWOW
評価★★★/60点
内容:ある日カメラマンの誠人は、3年前の大学時代に知り合った恋人・静流が死んだという噂を耳にする。だが、時を同じくして彼女からの手紙が彼のもとに届く。消印はニューヨークで、自分の個展に招待する旨の内容だった。誠人はまだ忘れることのできない静流を探すため、彼女が同封してきた写真に写っている風景だけを頼りに真冬のNYへ旅立つ・・・。
“何にwonderって・・・”
松田龍平の高校教科書ボー読み英語にwonder.
静流の手の甲に書かれた落書きが消えない=数年間フロに入ってない!?疑惑にwonder.
マヨヌードル、、、オェッ、激マズにワワワwonder...
そしてなにより、堤幸彦が監督にwonder.
以前は強烈な自己チューオレ流映像を観てる最中にあ、これは堤幸彦が監督だなとすぐに分かったものだが、最近はエンドクレジット見て初めて気付いて驚くことが多いような。。いつから色めきだしたんだ?
--------------------------
(おまけ)
初恋(2006年・日本・114分)WOWOW
監督:塙幸成
出演:宮崎あおい、小出恵介、宮崎将、小嶺麗奈、柄本佑
内容:学生運動が活発だった1960年代後半。高校生のみすずは小さい頃、母親に捨てられ、叔母家族に引き取られて育ったが、冷淡な扱いを受けていて自分の居場所がない。そんなみすずは新宿のジャズ喫茶「B」の常連となっていく。そして、そこで出会った東大生の岸に特別な感情を抱き始めるのだが・・・。1968年に起きた三億円事件をモチーフに描く、18歳の女子高生の切ない初恋の物語。
評価★★/40点
“ジャズ喫茶Bのシーン、全カットでお願いいたします・・。”
いらないやろ本気で。
3億円事件の犯人は女子高生だったというプロット、ジャズ喫茶Bに集う若者たちの群像劇、主人公みすずの恋愛劇。この3つのプロットが全くかみ合っていないという恐ろしくつまらない作品になってしまった。
宮崎あおいの眼の強さだけを頼りになんとか最後まで見たけど、ホント、何を描きたいのかさっぱり分からない本末転倒な映画だもんこれ・・・。
物語を語り紡いでいく力がこの監督にはないね。
だから、いっそのこと「B」のシーンを全カットしちゃって、6~70分の小品にすればすんなり見られる作品になるのでは。ノスタルジーを重視すればそれこそ岩井俊二の「四月物語」の1968年版に、痛すぎる現実感を伴なう時代性を重視すれば宮崎あおいが女子中学生を演じた「害虫」の女子高生バージョンくらいにはなりえたのではなかろうか。
ただ、もしこの映画の描いた時代性が「B」のシーンそのものに象徴されてあり、絶対に外せないのだとしたら、オイラはもはやお手上げです。。ジェネレーションギャップの極みってやつ?
« 夢のシネマパラダイス391番シアター:誰も知らない | トップページ | 夢のシネマパラダイス394番シアター:ハチミツとクローバー »
« 夢のシネマパラダイス391番シアター:誰も知らない | トップページ | 夢のシネマパラダイス394番シアター:ハチミツとクローバー »
コメント