夢のシネマパラダイス334番シアター:韓流人間ドラマ選
ペパーミント・キャンディ
出演:ソル・ギョング、キム・ヨジン、ムン・ソリ、パク・セボム、ソ・ジョン
監督:イ・チャンドン
(1999年・韓国・129分)2000/11/01・テアトル池袋
評価★★★/60点
内容:ある工場の労働組合の集まりで、20年ぶりに集まり旧交を温める仲間たち。が、宴もたけなわ、長い間消息不明となっていた男キム・ヨンホがふらりと現れ、鉄道の高架橋に登って近づく列車の前に立ちはだかるなどして場は白けムードに。「昔に帰りたい!」と叫ぶ彼は過去の半生を振り返り始めるのだった・・・。1999年春に始まり、3日前、94年、87年、84年、80年そして79年まで、1人の男の人生を時間をさかのぼりながら描く人間ドラマ。
“強烈なエッセンスのみを抽出しフィルムに焼き付けていく。それはまるで写ルンですで撮った写真のフィルムをビーーッとのばして光りにかざして見ているようなかんじ。”
そのフィルムを回り灯籠にペタッと貼り付ければホンマもんの走馬灯になるんだけど・・・。
ま、どうなんだろう、個人的にはこの映画にはフィルムとフィルムとのあいだの行間を読み取るようなゆとりに欠ける、いわば間がないと感じました。
しかも抽出されたエッセンスはどれもこれも一様にキレキレの刃のごとく鋭利かつ暴力的。
それをパッパッとスライドで映していかれても、そこに含まれるコノテーションを感じるにはあまりにもエッセンスが濃すぎる。
それが監督の狙いだとしたら、たぶん自分とは性が合わないということなんだろうけどね。だってあまりにも突き放したような容赦のなさなんだもん。
話のつくりとしては奇をてらっていて面白いのだけど、描こうとしている中身のバランスが非常に偏りすぎてて、次第に話のつくりそれ自体が浮いてきてしまうと感じました。
惜しいというか、、まぁ単純に自分とは合わないってことなんだろうなぁ・・・。
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八月のクリスマス
出演:ハン・ソッキュ、シム・ウナ、シン・グ、イン・ハンウェイ
監督・脚本:ホ・ジノ
(1998年・韓国・99分)NHK-BS
評価★★★/65点
内容:ソウルの街角で写真館を経営する青年ジョンウォンは、店に訪れる美しい女性タリムに惹かれ、2人は恋に落ちるが・・・。韓国で大ヒットした感動のラブストーリー。
“冷静と情熱のあいだで笑うことしかしないジョンウォンにやはり映画として物足りなさを感じてしまう。”
死と向き合うことはしても結局彼女と向き合うことはしなかった彼。
挙句の果てに愛を胸に秘めたまま旅立たせてくれた彼女にありがとうと言いたいときたもんだ。ものスゴっ自己満足の世界やんけ。しかも究極の自己完結でもある。
へたすりゃとんでもない自慰映画になるところなのだが、感傷を極力排しているのがなんとか救いとなってはいる。
その点でいえば小津映画に通ずるところでもあるのだが、小津映画にはあの淡々とした中にも人間の本性がときおり無言の圧力となって画面に表れることがある。原節子の鋭い眼光とかね。
しかしこの映画は、そういう人間の抑えきれない本性みたいなものまで排されてしまっている気がしてならない。
ロボットじゃないんだからさ。それとも敬虔な儒教の国ではありなのか・・・。
絶対的な死というのを前にするともう笑っちゃうしかないのかな。
でもやっぱ笑ってごまかすなよな、という気持ちがどうしても強くなってしまうオイラなのでありました。。。
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イルマーレ
監督:イ・ヒョンスン
(1997年・韓国・97分)WOWOW
評価★★★/60点
内容:’97年、海辺の一軒家「イル・マーレ」に引っ越してきたハンは、見知らぬ女性キムから奇妙な手紙を受け取る。2年後の日付が記されたその手紙には半信半疑だったハンだったが、ある出来事をきっかけに手紙の内容を信じるようになり・・・。
“ムダ描写 塵も積もれば 山となる”
すごい繊細な映画だと思うのだけど、微妙に余計な描写が多い。
具体的にどこがといわれるとちょっと困るんだけど、例えていうならばコンマ数秒のフライングをしまくっているといったところか。
さらにそれを直球ベタベタ音楽が強調してしまい、それが積もり積もっちゃって映画の評価がどうしても低下してしまう・・・。
この監督さんって新人かあるいは相当に若い人だと思うな。バカ正直というかね。
余計なタイムパラドックスもなくストーリーは必要最低限に抑えていて好感がもてる内容だっただけにちょっと残念。演出の方でムダな贅肉をつけてしまったなという印象を持ちました。
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友へ チング
出演:ユ・オソン、チャン・ドンゴン、ソ・テファ、チョン・ウンテク
監督・脚本:クァク・キョンテク
(2001年・韓国・118分)DVD
評価★★★/65点
内容:1976年韓国の釜山。家庭環境は異なるが大の仲良しの幼なじみの4人組、優等生のサンテク・ヤクザの親分の息子ジュンソク・葬儀屋の息子ドンス・お調子者のジュンホは同じ高校に進むが、そこから4人の人生模様は大きく変わることになる。歳月が流れ、街に戻ってきたサンテクが目の当たりにしたのは、高校で番長と右腕として君臨していたはずのジュンソクとドンスが2つの組織に分かれて対立している姿だった・・・。
“韓国のTVメロドラマにハマッているおかんと妹と家で見た。口をあんぐり開けながら、これは韓国じゃないとつぶやく2人の姿が最も印象的だった。。”
冬ソナなどのコテコテのTVドラマによってつくられたものだけが韓国のすべてじゃないだろうに・・・(笑)。
まぁそれを入り口として韓国の文化なり歴史なりを知ろうとするのは大変よろしいことなのだろうけども。世のオバさん方はそこらへんちゃんと分かっているんだろうか・・・?
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二重スパイ
出演:ハン・ソッキュ、コ・ソヨン、チョン・ホジン、ソン・ジェホ
監督:キム・ヒョンジョン
(2003年・韓国・123分)DVD
評価★★★★/75点
内容:北朝鮮スパイのビョンホは、亡命を装い、韓国国家安全保障局内にある韓国分析センターに潜入。次第に信頼を勝ち取り、2年後には正式な要員となったが、そこに北朝鮮からの指令が下った。連絡員はラジオDJのユン・スミ。しかし2人は恋に落ちてしまい・・・。
“何を勘違いしたのか38度線にいきなりシティ・オブ・ゴッドが割り込んできやがった・・・。”
北の人間を主人公にした意欲と問題意識は十分理解できるし、同じ民族が共有する哀しみをより際立たせることに繋がっていることは確かだ。
しかし、それオンリーであって一人の人間イム・ビョンホを描くまでにはついに至らなかった。スパイ、イム・ビョンホのままで終わってしまった。
そこにやはり物語の進め方として限界を露呈してしまっていることもまた確かなのだ。
南の人間を主人公にして主観的に介在させ、心の葛藤や情、憎しみや哀しみを具体的に突っ込んで描いた方がよかったのではないかとも勘ぐってみたくなるが、、それだとシュリになっちゃうか・・・。
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おばあちゃんの家
出演:キム・ウルブン、ユ・スンホ、ミン・ギョンフン、イム・ウンギョン
監督:イ・ジョンヒャン
(2002年・韓国・87分)NHK-BS
評価★★★/65点
内容:サンウは母親と2人でソウルに暮らす7歳の少年。夏のある日、サンウは失業中の母が新しい仕事を見つけるまでの間、今まで会ったこともない田舎のおばあちゃんの家へ預けられることになる。だが都会暮らしに慣れてしまっているサンウにとって、ド田舎の生活はあまりにも退屈だった。その上、おばあちゃんは話すことも読み書きもできないため、サンウはバカにして何かと不満をブチまける始末。しかし、腰の曲がったおばあちゃんは、孫の言うことを聞いてやろうと心を砕くのだった。。
“87分間クソガキを観続けなければならない労苦。”
あの村にはガキ大将はいないのか。いっぺんガツンとやっちゃれ、、、と思ってたら暴れ牛か。行け行け突っ込めとついアツくなってしまいました。。
でもあのおばあちゃん無言で包丁研いでたら怖そう(笑)。
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春香伝(2000年・韓国・120分)NHK-BS
監督:イム・グォンテク
出演:チョ・スンウ、イ・ヒョジョン、イ・ジョンホン
内容:李朝時代の朝鮮。地方長官の息子李夢龍は、芸妓の娘、春香と恋に落ちる。2人は結婚の約束をするが、当時の身分制度では許されぬことだった。やがて、夢龍が都へ転勤で行っている間に新長官が春香に言い寄るが、夢龍を信じる春香はそれを拒んだため、投獄され死刑を宣告されてしまう・・・。韓国で最もポピュラーな古典物語を韓国の伝統芸能であるパンソリの歌声をフィーチャーして映画化した作品。
評価★★★/65点
こういう映画がちゃんと観られてこそ真の韓流と呼べるのではないかな。
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