夢のシネマパラダイス311番シアター:シュリ
出演:ハン・ソッキュ、キム・ユンジン、ソン・ガンホ、チェ・ミンシク
監督・脚本:カン・ジェギュ
(1999年・韓国・124分)2000/01/28・丸の内ルーブル
評価★★★★/75点
内容:韓国の情報部員ジュンウォンは、最近多発する暗殺事件の裏に、以前から追っている謎の女スナイパーの影を感じていた。そしてついに自分の命が狙われ、婚約者イ・ミョンヒョンの身を案じた彼は彼女をホテルにかくまう。そんな中、驚異的な破壊力を誇る液体爆弾CTXが北朝鮮のテロリスト集団に強奪されてしまう。同じ頃、ソウルでは韓国と北朝鮮両首脳が列席するサッカー南北交流試合の華やかな舞台の準備が進んでいた・・・。
“真にこの映画を過去形で語ることができる日はやって来るのだろうか。”
この映画のスゴイところは、なんといっても国際情勢における現在進行形の素材をまるで事もなげにエンターテイメントと結びつけてしまった点にある。
これは一歩間違えるととんでもない愚挙に陥る可能性を多分に孕んでいるし、実際問題とても危険なやり方、作り方だと個人的には思う。
なぜならこの現在進行形の素材というものは、南北分断という今の半島情勢はともかくとして政治、思想、社会といったシステムまでもが必然的かつ現実的に含まれてしまうからだ。
そしてなにより、朝鮮戦争はいまだにもって休戦状態に過ぎないということを忘れるべきではない。国際法上まだ戦争は終結していないのだ。
そういう点でも例えば冷戦を扱ったそこいらのアメリカ映画とは一線を画する性格の映画だと考えた方がよい。
米ソを対立軸とする冷戦は基本的には見えざる敵が相手であり、ゆえに冷戦が現在進行形であったときでさえも空想の入る余地が許されたわけだが、この映画が描く今の情勢というのは、なんといっても敵が見える(しかも同一民族である)という大きな違いがあるわけで、非常に現実的かつしかも悲劇的な様相を呈してしまう。
しかもそれは過去形などでは全くなく、今もって現在進行形のままなのだ。
そして、これは実際エンターテイメントたる娯楽映画が嫌うタイプ、ほとんど相容れないタイプの要素である、、はずだった。
そのはずだったことを、当時はっきりいえば何も失うものがなかった韓国映画が事もなげにやってのけてしまったのだ。
おそらく世界中どこを見渡してもこのような映画を作れてしまう国はなかっただろうと思う。
平和ボケ(とも言われている)日本はともかくアメリカ映画でも無理だっただろう。(麻薬、人種といった国内問題を扱った映画はまた別として)
それくらいデカイことを成し遂げた映画であることには違いない。
もう一つ、事もなげにやってのけたと述べたが、それは結果的にそう見えたということであり、そこまでに至る道程はかなりの労苦を強いられたであろうことは想像に難くない。
そして今の情勢が過去形となった時になってはじめてこの映画を真正面から語ることができる、あるいは評価できるのではないだろうか。
この映画は、まだ終わっていない。
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