20年ぶりに甦った、はだしのゲンの記憶
はだしのゲン。
オイラがマンガというものに触れた初めての作品がこの「はだしのゲン」だったかもしれない。小学校に入学した頃くらいだろうか。今から20年も前の話である。
とにかくうちのオカンが昔から持っていたマンガ本がオイラにとってのマンガだったわけで。
白土三平の「カムイ伝」とか手塚治虫の「火の鳥」、そして宮崎駿の「風の谷のナウシカ」。小学生の頃、よく読んだマンガだ。
「はだしのゲン」も家に手垢の付いたしなびたマンガ本があり、全巻ではなく1~5巻くらいまでだったと思うが、友だちがウチに来るとみんなで回し読みして読み漁った覚えがある。
今はこのマンガ本も見当たらなくなってしまい、小学生の頃に読んで以来見ていなかった。
しかし、この「はだしのゲン」。オイラにとってはトラウマになってこびりついて離れない嫌な記憶がある。
小学校1年生の時に、親父に連れられて「はだしのゲン」のアニメ映画を観たことがあるのだが、そのあまりの地獄絵図とゾンビのような生々しい恐怖にスクリーンを凝視できずに、後ろを振り返って映写室から出てくる青白い光の帯をじっと見ていたことは今でも忘れられない。
皮膚がベロンと焼けただれてズル剥けたヒトの群れ。防火水槽に頭から突っ込んでそのまま息絶える者たち。川を流れてくるおびただしい数のガスで腹が膨れ上がった死体。
黒い雨。
父ちゃん、姉弟が家の下敷きになって後ろから火の手が迫るのに助け出せないやるせなさ。
愛しい人々をどこかに連れ去っていくこの世のものとは思われない無間地獄が迫ってくるかんじは、うまく言葉では言い表せないけれど、オイラはその後中学生くらいまで風邪を引いて熱を出す前の晩に必ずこの感覚に襲われる悪夢に悩まされることになった。
高校3年のときの阪神大震災でまたその感覚が甦った覚えがあるけど、今はもうないな。
それほどのインパクトとトラウマを植えつけてしまった大元がたぶん「はだしのゲン」だったのではないかと今では思う。
その数年後には高畑勲の「火垂るの墓」(原爆とは関係なく、兵庫の西宮が舞台。しかし戦争孤児というテーマは似通っている。ちなみに「となりのトトロ」と同時上映だったのは意外に知られていない)だとか、原作も有名な「白い町ヒロシマ」、今村昌平監督の「黒い雨」などなど親に劇場で見せられ、たぶんそのせいもあって戦争=悪夢、地獄として忌み嫌うべきものという感覚が当然のように養われたのだと思う。
ただもちろんその当時は靖国なんて知らなかったし、朝鮮人差別や日本軍による重慶無差別爆撃、731部隊などの加害の歴史なんて知るよしもなかったけど・・・。
だからはだしのゲンに出てくる朴さんの境遇なんて大人がみれば普通に分かることなのだろうけども、非国民として差別され迫害を受ける中岡一家の唯一の味方としか理解してなかったからね。
でも今見ると、この朴さんの境遇というのは結局日本の加害の歴史の実相なわけだからね。
そして、鬼畜米英に邁進し、戦争反対など一語も語れなかった当時の世相の中で自分の信念を曲げない頑固一徹の父ちゃん・中岡大吉はやっぱりスゴイ人だと思う。
正直オイラにはああはなれないと思う。
今の日本って世相が右にいけばワッとそっちに流れ、逆に流れれば一気に逆流するみたいなかんじがあるんだけど、どちらかといえばオイラも流れに任せられちゃうタイプだからな・・・。
そういえば「はだしのゲン」で鬼畜米英のルーズベルト(米)チャーチル(英)の似顔絵を踏み絵みたいにして、それをおもいっきり踏まないと非国民だ!というシーンがあったっけ。
非国民呼ばわりが横行する恐ろしい世の中にだけはなってもらいたくないね。
ミスチルの“タガタメ”という歌にこういう歌詞がある。
左の人 右の人 ふとした場所できっと繋がってるから♪
片一方を裁けないよな♪
僕らは連鎖する生き物だよ♪
クサイ言葉と言われたらそれまでだけど、でも、宗教とか思想の違いとかで憎しみ合い断絶し、果ては殺し合いなんてするのはバカバカしいということなんだよね。
世界は果てしなく近くなって簡単に行き来できる時代になったのに・・・。一向に憎しみ合いはなくならない。
そんなこんなで戦後62年。
長崎に原爆が落とされた翌日の昨夜、「はだしのゲン」の初のドラマ化作品がお目見えとなった。
昨日の夜8時からは日テレの「太田光の私が総理大臣になったら...」で原爆被害をアメリカに賠償請求するというマニフェストについて討論があって、白熱した議論になってて、そこで原爆について考えさせられた後の9時から「はだしのゲン」。原爆デーだなこりゃ。。
さて、初テレビドラマ化となった「はだしのゲン」ですが、、、涙を抑えることができなかったです。
ほぼマンガのストーリーをそのまま踏襲していて、20年前の記憶がありありと甦ってきた。
また役者がいいんだわ。
父ちゃん役の中井貴一は、2年前にTBSで山田太一脚本の「終りに見た街」で戦時中に一家もろともタイムスリップしてしまうという役をやっていたけど、今回の中岡大吉役もホントに良かった。
そしてなんといってもゲンと進次だね。なんとまあこれほどのハマリ役をよう見つけてきたもんだ。マンガのキャラそのものだったし、このキャスティングだけで勝負あったな。
「さとうきび畑の唄」以来の心に残る素晴らしい作品に仕上がっていたと思います。
今日は後編。
けっこう原爆投下まで(君江が原爆惨禍の中で友子を産むまで)の物語はよく覚えているんだけど、その後がうろ覚えになっちゃってるんだよなぁ。
進次と瓜二つの少年や、あと画家の政二だっけ?成宮寛貴が演じるらしいけど、うじ虫にたかられながら寝たきりでなんとか生きているっていうの。あと、友子が亡くなって火葬するところはなんとなく覚えているけど。
とにかく今日9時から見ます。
P.S.
そういえば最近マンガ本で「夕凪の街 桜の国」というのを読んだ。
原爆という悲劇が今もなお連綿として生き続いているということに静かな衝撃を受ける凄いマンガです。
おススメです。
今月下旬だったかに映画も公開されるということで、これも見よう。田中麗奈主演らしい。
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