夢のシネマパラダイス282番シアター:金田一耕助シリーズby横溝正史
犬神家の一族
出演:石坂浩二、高峰三枝子、島田陽子、あおい輝彦、草笛光子、小沢栄太郎、坂口良子
監督・脚本:市川崑
(1976年・東宝・146分)WOWOW
評価★★★/70点
内容:名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の原作を、巨匠・市川崑のメガホンで映画化。角川春樹が旗揚げした角川映画の第1作としても有名。製薬王といわれた信州の財閥・犬神佐兵衛が他界し、莫大な遺産の相続をめぐって一族に骨肉の争いが生じた。犬神家の顧問弁護士・古舘から助けを求められた金田一は、さっそく犬神家を訪れる。が、奇妙な内容の佐兵衛の遺言状が公開されるや、不気味な連続殺人事件の幕が切って落とされる・・・。
“ま、、僕みたいな貧乏人には一生ご縁のないお話だな。。”
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悪魔の手毬唄
出演:石坂浩二、岸恵子、若山富三郎、北公次、仁科明子、草笛光子
監督:市川崑
(1977年・東宝・144分)NHK-BS
評価★★★★/80点
内容:市川崑の金田一耕助シリーズ第2弾。20年前に起きた迷宮入りの殺人事件を捜査するため、金田一は人里離れた鬼首村へやって来た。この村では古くから由良家と仁礼家が対立していたが、20年前に起きた詐欺事件によって由良家が傾き、現在は仁礼家が有力となっていた。ところが、金田一の捜査も進まぬうちに、次々と新たな殺人事件が発生し、娘たちが村に伝わる手毬唄の歌詞通りに殺されていく・・・。
“宮城の鳴子温泉近くには実際に鬼首という所がある。鬼首スキー場は学生時代オイラの行きつけのスキー場だった。。”
古い因習が力を持つ鬱屈したように閉ざされた村社会に佇む旧家、血塗られた過去の因縁、黒く怪しい血のつながり。
それらおどろおどろしいホラー要素を独特な格調高い映像でコーティングし、キワモノではなく頭にこびりつくような唯一無二の金田一ワールドを作り上げてしまった市川崑の悪魔的才能。はっきりいって怖いです。。
しかし、この映画を真に傑作たらしめているのは、やはりなんといっても若山富三郎っしょ。
彼の人間味あふれるキャラクターが異様な怪奇譚をなじみ深く染み入るものにしている。
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獄門島
出演:石坂浩二、司葉子、大原麗子、草笛光子、東野英治郎、加藤武、大滝秀治
監督:市川崑
(1977年・東宝・141分)NHK-BS
評価★★★/65点
内容:終戦直後の引き上げ船で死んだ男、本鬼頭・千万太(ちまた)。彼は戦友に「オレが島に戻らなければ妹たちが殺される!」という臨終の言葉を残していた。彼の遺書を預かった金田一は、その戦友にかわって瀬戸内に浮かぶ獄門島と呼ばれる島を訪れるが、ちょうど同じ日に分鬼頭の一(ひとし)の復員の報せがもたらされる。そんな中、俳句の言葉に見立てた奇怪な殺人事件が起こってしまう・・・。
“マジウザバカ3姉妹を手にかけるのに手の込んだ見立て殺人までする必要があるのか・・・?という根本的疑問が・・(笑)”
まるで極楽島からやって来たのではないかと思われるほど“獄門島”からは場違いで浮いたアイドル的存在の大原麗子は金田一ワールドにはちょっと合わないかも。やっぱ寅さんじゃないと(笑)。
「私を島から連れ出して!」なんて言葉は金田一には似合わないもん。。
やっぱおどろおどろしい太地喜和子&ピーターコンビや、怪気炎をあげる草笛光子がもっとバンバン前面に出てこないと。
ただ、もの凄いキャストであることには違いなく、その上、市川崑の作り上げた金田一ワールドの様式美も十二分に生きており、それだけでも観る価値はある。
がしかし、原作を読んでいないのでなんとも言えないけど、やや表面的で筋を追うことに専念しすぎの感もあり、前作のように思うがままに物語が転がっていかないもどかしさも否めず・・・。及第点止まりかな。
いや、しかしあの3姉妹マジにウザかったな(笑)。
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女王蜂
出演:石坂浩二、中井貴恵、高峰三枝子、司葉子、岸恵子、仲代達矢、加藤武、伴淳三郎
監督:市川崑
(1978年・東宝・139分)NHK-BS
評価★★★★/75点
内容:伊豆は天城の旧家、大道寺家の美しい娘・智子に近づく男が次々と殺されるという事件が発生。金田一は、それとは別の19年前に起こった事件の解明を依頼されてやって来たのだが、今回の事件の真相を智子の出生の秘密が隠された19年前の事件に求めていく。。
“世にも奇妙な殺害動機、、、しかし市川&石坂金田一シリーズの中で1番すっきりとのみ込めた不思議な作品。。”
市川崑&石坂浩二の金田一シリーズの4作目ということもあってか、ややマンネリ感に陥っている感は否めず、1,2作目にあったような禍々しさやおどろおどろしさ、怪しさといった濃厚な毒気のあるオカルト風味がよりポピュラーな味にだいぶ薄まっているかんじはする。
市川崑が作り上げた金田一ワールドが大衆化したといえばいいだろうか。
しかし、逆にいえばよりとっつき易い感覚で見ることができるのも確かで、それまでの作品にあったような過剰さが削がれている分、一見複雑ともいえるシナリオにもすっきりと入り込めてしまう。
そのためかそれまでの作品では“犯人は誰か?”なんてあまり考えもしなかったし、そういう推理ものというよりは怪奇ものとして見ていた感覚の方がやや強かったので、犯人は誰かということにあまり興味が向かなかったのだけど、今回はシリーズの中で最も金田一の推理と犯人の攻防の先が読めない作品となり、犯人は?動機は?と最後まで引っ張られ続けてしまった。。
ただ、逆に今回は純粋に推理ものとして見てしまったがゆえ、犯人である大道寺銀造(仲代達矢)の動機が明かされた時には正直いって、はぁ・・・?みたいな。完全に拍子抜け・・・。
復讐を果たさんと東小路家の血を根絶やしにするという本来の目的が、その血を受け継ぐ唯一の娘、智子(中井貴恵)を義父として、そして琴絵の残像として愛してしまったがために誰にも渡したくないというものにいつの間にか変容していった、、どうもそこら辺が意味不明というか、そんなんで逆に殺人に走るか!?と思ってしまう。
しかもまるで続々と貴族に求婚を告げられるかぐや姫のような存在の女王蜂に、中井貴恵がそんな玉には到底見えないというところも加わるから、道理で先が読めないわけだ、、、とその真相にガックリきちゃった。
しかし、この世にも奇妙な物語が結果的にさほど後味悪く感じられなかったのは、やはり神尾秀子(岸恵子)がそれまでの場を一人ですべて背負ってかっさらっていったからで、そこに切々とした説得力を持たせた岸恵子の力によるところは大きいと思う。
さらには、金田一シリーズに出演してきた女優陣のオールスター戦のような豪華キャストも魅力で、例えば岸恵子は2作目「悪魔の手毬唄」では20年前に起きた因縁の事件に関わり、しかも若山富三郎演じる警部に20年間ずっと恋い慕われるという役どころだった。それが今回は19年前の事件に関わり、その後ずっと銀造を愛し続けるという役どころで、「悪魔の手毬唄」とは真逆の設定となっており、そういう配役の妙も面白かった。
脇役も、すっかり板についた等々力警部(加藤武)、そして何よりも伴淳ね(笑)。いいよねえ、あの間が。
しかし、、、肝心の智子役がなぁ。。。
個人的には「獄門島」の大原麗子をこっちで使って、中井貴恵を「獄門島」で起用すればよかったのに、と思っちゃったけど・・・。
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病院坂の首縊りの家
出演:石坂浩二、佐久間良子、桜田淳子、あおい輝彦、入江たか子、草刈正雄、加藤武、横溝正史
監督:市川崑
(1979年・日本・139分)NHK-BS
評価★★★/60点
内容:シリーズ第5弾で、石坂金田一の最終作。昭和26年、吉野。渡米の挨拶に老推理作家のもとを訪れた金田一は、パスポート用にと紹介された写真館で奇妙な写真を見せられる。熊のようなデカイ男と若い女性の婚礼写真なのだが、どこかがおかしい!?そこに、また写真を撮ってほしいと依頼の電話がかかり、金田一は写真館の館主らと廃屋となった“病院坂の首縊りの家”に行くのだが・・・。
“何がナンだか分からない、、、”
というのが正直なところで、系図を片手に持たないとあまりにも人物関係が込み入っていてついていけない・・・。
ので、感想っつう感想も思い浮かばない状態なのだけども、ただ脳裏に焼きつくような印象的な場面もあるにはあったかな。
ピーターの生首とか(笑)。
あとは、ラストの病院坂、人力車の中で最期を迎える弥生(佐久間良子)を見下ろすように坂の上に寂しげに佇む金田一の姿。
そしてオープニングとラストの締めくくりに出てくる横溝正史本人とご夫人のほのぼの素人演技かな。
はっ、いやいやもっと凄いド素人がいたな。中井貴恵(笑)。
あの棒読み演技は国宝ものだよ。。それに比べると当時アイドルだったらしい桜田淳子の演技は意外に良かったな。
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八つ墓村
出演:萩原健一、小川真由美、渥美清、市原悦子、山崎努、山本陽子、加藤嘉、夏八木勲
監督:野村芳太郎
(1977年・松竹・151分)WOWOW
評価★★★/65点
内容:1976年の「犬神家の一族」で火のついた横溝正史ブームに乗って、ミステリー映画の巨匠・野村芳太郎が手がけた名探偵金田一耕助が挑む推理ドラマ。自分の名を新聞の尋ね人欄に見つけた辰弥は、母方の祖父と名乗る丑松を訪ねるが、丑松はその場で何者かに毒殺された。迎えに来た美也子の案内で八つ墓村に着いた辰弥は、自分が土地の旧家である多治見家の跡取りだと知らされる。ところが、辰弥がこの村に来てからというもの、彼の周りで次々と殺人事件が起き始めた。
“寅さんのオープニングの夢にしてはちと長いな・・・。”
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犬神家の一族(2006年・東宝・135分)WOWOW
監督:市川崑
出演:石坂浩二、松嶋菜々子、尾上菊之助、富司純子、松坂慶子、萬田久子、仲代達矢
内容:信州の犬神財閥の創始者・犬神佐兵衛が死去した。佐兵衛には腹違いの3人の娘、松子・竹子・梅子がおり、それぞれに佐清・佐武・佐智という息子がいた。また、屋敷には佐兵衛の恩人の孫娘である野々宮珠世も住んでいた。しかし、全員が固唾を飲んで見守る中、公開された遺言状の内容は驚くべきものだった。そして、それがもとで一族の間で血なまぐさい惨劇が繰り広げられていくのだが、事件の調査に名探偵・金田一耕助がやって来て・・・。1976年に製作された横溝正史原作ミステリーを、市川崑監督自らが完全リメイク。
評価★★★/60点
オープニングタイトルのロゴから石坂金田一のフケの量にいたるまで、思わず吹き出してしまうくらいオリジナルを忠実にトレースしていて驚いてしまったが、精度と感度、そしてなによりオリジナルにあったおどろおどろしい匂いがすっかりなくなっていて、30年ぶりの同窓会レベルでしかこのセルフリメイク作を見れないのはイタイ。
そういう意味でもなぜ今この映画をリメイクする必要があったのか非常に疑問が残るところ・・・。
まぁ、富司純子・尾上菊之助母子の共演や、加藤武演じる等々力署長のお決まりの名ゼリフ「よしっ、分かった!」がまた聞けたのはそれはそれで嬉しかったけどね。。
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