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2007年1月24日 (水)

夢のシネマパラダイス142番シアター:蝶の舌

蝶の舌

270c5a 出演:フェルナンド・フェルナン・ゴメス、マヌエル・ロサノ、ウシア・ブランコ

監督・脚本:ホセ・ルイス・クエルダ

(1999年・スペイン・95分)DVD

評価★★★★/80点

内容:スペイン内戦前夜の1936年を舞台に、8歳の少年と老教師の心の交流を描いたドラマ。1年遅れで学校に入学したモンチョは、グレゴリオ先生のおかげで楽しい毎日を送っていたが・・・。

“スズメくんは「自由」に飛び立ったのだろうか。それだけが気になって胸が痛い。”

この映画を観ていて1番引っかかったのがモンチョ少年の表情。

表情があまり顔に出ないというか喜怒哀楽をあまり表情に出さないなぁというのがちょっと引っかかって。

「ニュー・シネマ・パラダイス」の少年ではないなと。むしろ「シンドラーのリスト」に出てくるような、何がなんだか分からないけど隠れないとダメみたいだから隠れようとする赤い服の女の子とか男の子。はたまた「ライフ・イズ・ビューティフル」に出てくる絶望的な状況を全く悟っていない男の子の方に似てるなと。

そう、何がなんだか分かってない。

モンチョ少年は学校に通ってはいながらも、社会的知識は全然ない。

賢い少年ではあるのだけど、幼いというか無知あるいは無垢な男の子。

だから異母姉がヤッてるとこを見ても興奮してないし、兄貴があいつは商売女だと言っても、何それくらいにしか分かってないわけだ。

だからラストにしても母親が怒ってる表情で叫べって言ってるから母親と同じ言葉を叫ぶくらいの感覚じゃないかなと。

先生に向かって直に叫ぶところがこれまた無知、無垢の象徴的場面で、それゆえ凄く哀しいのだけど・・。

逆に兄貴は叫んでる途中で楽団の人が連行されてきて絶句しちゃうわけで。兄貴は無知でも無垢でもないわけだから。

でも、ただ1つ、モンチョ少年が絶対分かっていたことは、先生がトラックに乗せられてどこかに行ってしまってもう会えなくなるんじゃないかってこと。これは絶対分かってたはず。

親友ロケ(の妹はキスしたアウローラ)の父親も連行されて、泣き叫んでいるのを見てるし、前日の夜にはモンチョ少年のなんだか怖いという恐怖の伏線がしっかり描かれているし。そのまた伏線としてはコオロギにロケがしょんべんかけるシーンとか、犬のターザンが殺されてしまうシーンがしっかり生きてくる。

モンチョ少年が、死んだあと天国に行くのか地獄に行くのか怖いと言ったら、たしか先生が「地獄はない。地獄は人間が作り出すものだ。」と言っていたけど、これが地獄なんだと少年はラストの後になって思ったことだろう。

とにかくラストで少年は先生ともう会えないと分かっていたからこそ、あの「ティロノリンコ!」「蝶の舌!」という言葉が出てきたのだ。

母親に叫べって言われたからわけの分からない言葉を叫んだけど、その直後先生から教えてもらったことをあの状況で口に出した!!

かっこよく言えば彼は自立したわけで、普通にいえば成長したってことじゃないかな。そう考えないとラスト直前まで描いていたことが意味をもたなくなっちゃうと思う。唐突に現れる悲劇に対する平凡で平和な日常という構図とはあまり考えたくない。現実はそうかもしれないけれども。

幼い男の子がちょっとずつ大人の世界、人生の不条理さも含めた外の世界を知っていく過程での最も強烈なエフェクトと見たいです。そうすると異母姉のエピソードや中国女のエピソードも生きてくると思うし。

学校に行っていろいろなことを学び、先生からも学び、友達からも余計なことを学び、小さな恋もしちゃってさ。まさに少年の成長過程そのものだよね。

おそらく少年は大人になって先生に向かって「アカ」「不信心者」と言ったことを後悔するのだろうけど。

あとになって知ったけど、このときの内乱を指導したフランコによって1975年まで40年近くも独裁政治を行っていたというのはビツクリだな。オイラ生粋のマドリディスタなのに・・

モンチョ少年はどんな大人になったのかな。

先生に教わったとおり“自由”に飛び立つことができたのだろうか。それとも空しさに打ちひしがれ、孤独として自分の殻に閉じこもってしまったのか・・・。

ああ、どうなったんだろう。それを考えるとこっちが空しくなってきた・・・。

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ミツバチのささやき(1973年・スペイン/仏・99分)NHK-BS

 監督:ヴィクトル・エリセ

 出演:アナ・トレント、フェルナンド・フェルナン・ゴメス、イザベル・テリェリア

 内容:公民館の巡回映画で「フランケンシュタイン」を見た6歳の少女アナは、映画の中のフランケンシュタインと少女の交流の場面に感動を覚える。そして姉のイザベルから村はずれにある空き家に精霊が現れると聞かされたアナは、空き家を度々訪れるようになる。そんなある日、空き家で負傷したひとりの兵士に出会うのだが・・・。

評価★★★☆/70点

スジとしては至極オーソドックスなのだけど、そこにはスペイン人の皮膚感覚でしか理解できないメタファーやイメージ、内省といったものがカモフラージュされていて、これをただの安直なおとぎ話として受け取るには困難な奥行きがある。

そういう深みのある映画だと思うのだけど、その皮膚感覚を持ち得ない自分としては、アナの成長譚、いいかえれば幼女から娘への変貌を神秘的な雰囲気のもとに描き出した作品として見るのが限界だ。

その神秘的な雰囲気はファンタジーともいえるけど、大人にとっては暗く悲しい現実を覆うベールとして働く一方、子供にとっては自我を確立するための道具立てとして機能していて、寓話を紡ぐという本来の意味がよく捉えられていると思う。

舌足らずで多くを語ろうとしない作風にあって、光線の微妙な変化や巧みな効果音の使い方など人物の情感を感覚的に伝える演出力もピカイチで、これが監督デビュー作とは思えない映画としての佇まいを有している。

超のつく寡作監督として知られているヴィクトル・エリセ。40年で3本しか撮ってないって、、、もっと撮ろうや。もったいないったらありゃしない。。

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