夢のシネマパラダイス132番シアター:ノー・マンズ・ランド
出演:ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ、フィリップ・ショヴァゴヴィッチ
監督:ダニス・タノヴィッチ
(2001年・仏/伊/ベルギー/英/スロヴェニア・98分)DVD
評価★★★★/85点
内容:ボスニア紛争真っ最中、“ノー・マンズ・ランド”と呼ばれるボスニアとセルビアの中間地帯に取り残された、敵対する二人の兵士を中心にそれを取り巻く両陣営、国連軍、マスコミが右往左往する様を辛辣に描き、ボスニア紛争を痛烈に皮肉った戦争コメディ。
“正直ウケるし笑える。でも戦争なんてもともとまともなものじゃないし、イカレてることだらけなのだから、いっそのこと笑い飛ばすしかないのかも。”
1番ウケたのが、パンツ一丁になったニノ(セルビア人)が白いシャツを振り回すのを双眼鏡で見つけた両陣営のやりとりだ。
ボスニア側「味方か?」「パンツだけじゃ分からん。」「ムムッ。よし、上官に連絡だ。」
セルビア側「味方か?」「パンツ一丁の男がすぐ引っ込んだので分かりません。」「ムムッ。よし、念のため砲兵隊を呼べ。」
・・・・・ドッカーーン!!
こういうわけの分からん常軌を逸したかんじで戦争って始まっちゃうんだろうなと、ふと思った。
しかもどちらが砲撃しているのか映像では示されていない。前の映像と話の流れからすればおそらくセルビア側によるものなのだろうが、そういう曖昧さもこの映画では随所に目につく。
どっちがこの戦争を仕掛けたかで言い争うチキとニノのやり取りとも重なって面白いし、戦争の本質をえぐることにも繋がっている。
構図的には独立賛成派のムスリム人、クロアチア人vs独立反対派のセルビア人というかたちで、わけの分からないうちに始まり、あげくの果てには三つ巴の領土争奪戦に発展し、わけの分からないうちに終わったボスニア紛争。
しかし、この映画のラストが示すところを考えてみるに、紛争は終結してもそれによって受けた傷痕や野蛮な残虐行為の負の遺産は残され、憎悪や不信感は受け継がれていってしまうのだろう。
それゆえ決してこれが終りではないのだという思い、そしてボスニア・ヘルツェゴビナという国土において他民族同士の共存を新たに作っていかなければならない、その困難を傍観していてはならないという強い思いを感じ取ることができる。
軍服を脱げば外的には敵か味方か判別もつかないような人間どうしが、民族、宗教という内的な帰属意識による区別によって殺し合いをすることの滑稽さを描くこと、そしてあの一見冷めたようなラストを描くことは、この紛争に従軍経験のある監督だからこそ描けることであり、そこに大きな意味を見出すこともできるのだと思う。
(余談)チキがサッカーの元ポルトガル代表ルイス・フィーゴに似てたと思ったのは自分だけか・・・。
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